ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
創造の扉
私立ガンブレ学園……ガンプラの制作、及びガンプラバトルに特化した人材教育を目的とした大規模学園都市の一翼を担う学園である。生徒達は皆、ガンプラを愛し、切磋琢磨することでその技術と精神を磨き上げる。
言語や文化の壁を越え、ガンプラが世界中の人々に愛されるようになった今日において、この学園都市における成果が日本の未来を占うと言っても過言ではない。
この学園は広大な敷地に建てられており、最新鋭の設備が導入することによってガンプラ界の次代を担う有望な人材を育て上げようというまさに先進的な学園だ。
九月一日、そんなガンブレ学園の正門の前には、一人の男子生徒の姿があった。下ろし立ての制服に身を包み、正門から覗き込む校舎を澄ました顔で見つめてはいるが、心なしか高揚しているのが感じ取れる。実は彼、今日からこのガンブレ学園に転入することとなっているのだ。
「──キミ……もしかして、アラタ君?」
いざ新たなスクールライフの一歩を、と踏み出そうとした瞬間に声をかけられる。調子を狂わされ、声の方向を見れば、そこには腰まで届きそうな赤みがかった茶髪を結う白いリボンが特徴的な少女がいた。
純白なリボンと制服、そして柔和な顔立ちから、まさに白百合のような少女だ。青年がアラタ、という自分の名に反応したことでやっぱりっ、と嬉しそうな声をあげる。
「覚えてない? 小学生の途中まで一緒だった、ミカグラ・ユイだよ!」
「ミカグラ・ユイ……。──ミカグラ・ユイ!? ホントに!?」
少女の名前を聞き、三つの点が頭上に浮かんだ瞬間、アラタは眼を丸くして驚いている。どうやらユイの口ぶりから、この二人は幼馴染の間柄のようだ。
「あの頃、よく一緒に作ったり、バトルしてたよね。懐かしいなぁ……。あの時は、お父さんの仕事の都合で引っ越しちゃったけど、こうしてまた会えて嬉しいっ!」
「……やめなさいよ、恥ずかしい」
「でも、転入生ってキミのことだったんだ……。確か、いっこ下だから二年生だよね? 私は三年生だからお姉さんってことで、昔みたいに【ユイ姉ちゃん】って呼んで良いよ?」
「やめなさいって言ってんでしょうがっ」
マイペースなユイに過去のことを掘り返されて、アラタは赤面しながら恥ずかしそうに叫ぶ、が、二人とも再会を心から喜んでいるのだろう。プッと同時に笑い合う。
一頻り笑うとユイはアラタのことをまじまじと見つめる。一体、何なのか、もしかして顔に何かついているのか、訳が分からず首をかしげていると……。
「アラタ君、久々に会ったけど、期待させてくれそうって言うか、キラメキを感じると言うか……。この感じ……きっとニュータイプよ! 人類の新たなる革新っ!!」
ピロリロリーン、ではなく、いきなりなにを言い出すのかこの人は。しかも、むふーっと満足そうにしているので頭が痛くなる。
「……あー……えっと、ごめんなさい。ちょうど最近、ガンダムXを観なおしてて、結局、今日も朝まで──」
「そういうとこ変わらないな」
「あははっ、そのキミの冷静なツッコミもね」
突き刺さるような呆れた視線を感じて、ユイは気まずそうに目を逸らす。どうやらどこか残念な性格の持ち主のようだ。だが、それが嬉しいのだろう。どこか懐かしそうに微笑を浮かべるアラタにユイもつられて笑う。
「うん……。キミみたいに外から来た人が、この学園を……──世界を変えていくのかも」
「は? いやいや、流石にいきなりスケールがでか過ぎて意味が……」
「分からないって? ふふっ、今はそれで良いの。私も負けないように頑張るわ」
なにやら一人で納得しているようだが、突然、スケールの大きな話をされたアラタは結局、その含みのある言葉の意味が分からず、釈然としていないようだ。
「それじゃあ、なにか困ったことがあったら相談して。私のほうがお姉さんなんだから、遠慮せずに、ね? それこそ昔みたいにユイ姉ちゃんって私が手を引いて──」
「それではミカグラ先輩、俺は職員室に行く都合があるので」
「ごめんごめん。って、そろそろホームルームが始まっちゃう! それじゃあ、またねっ!」
どうやら余程、アラタは幼少期にユイを姉と懐いていたようだ。が、それを多感な思春期に掘り返されたくはないのだろう。最後には、まるで拗ねた子供のような態度をとりはじめるアラタを、それはそれで弟のように可愛らしく思いながら時間を確認し、そろそろ自身の教室に向かうため、別れようとする。
「あっ、そうそう。忘れてた!」
アラタも見送った後に職員室へ向かおうとした時であった。ユイは大きく踏み出した一歩を、そのままクルリと踵を返すと腕を後ろに組んで振り返り、とびっきりの笑顔で──。
「私立ガンブレ学園へようこそっ!」
これがガンプラの