ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
(……委員長にはどう埋め合わせするかな……)
放課後となり、これから部活動へ励むであろう生徒達の賑わいのなかに、ボロボロの自称天才がいた。
バトルでは態度が控えめにいって荒々しくなるイオリだが先程、追跡者と化した彼女は凄まじかった。
一切の無駄のない動きは風を切り、段々と近づいてくる足音だけが恐怖感を煽り、言葉を発さず、ナイフかと思うほどの冷たい視線を突き刺してくる。
スライディングキックを受けて転んだ自分を見下して素振りのように肘を振るうあの姿はまさに悪夢そのもので、その直後の記憶はない。
これが後に学園の守護神にして抑止力となる対自称天才用決戦兵器・イオリチャンの誕生である。
意識を取り戻した後は兎に角、謝って謝って謝り倒した。チナツと出会ったという事情も全て話しすと、チナツのことを知っているようで、それはそれで驚いており、最終的には埋め合わせを条件に許してもらえた。
軋むように痛む体のまま、一先ず部室へ向かう。
イオリはアイダに委員長として用件を頼まれてしまって、遅れるそうだ。
「そっ……ソウマ先輩っ。お疲れ様ですっ」
そんな矢先、おどおどとした様子のマリカと鉢合わせした。
「どしたの? 俺に何か用?」
「そういうわけではなくて、ですね。ちょっと、お見かけしたので……えへへ」
(可愛い)
はにかみながら話す姿はさながら小動物のようで、痛んだアラタの身体すら癒していくようだ。
一人で勝手にマリカに癒されていると、会話を失ったマリカは沈黙に耐えかねて、そわそわと動き出す。
「……あ、あの……ごめんなさい……。わたし、口下手で……」
(それなのに俺に声をかけてくれたのか。可愛い)
「ぶっ、部室! 部室に行きましょうっ! ねっ、先輩!」
(マリカちゃんは後輩可愛い)
完全にアラタの心を掴んだのだろう。
もう今のアラタにとって、マリカが何か喋るたびにだらしのない顔付きになり、誘われるまま一緒に部室へ向かう。
・・・
「じ、実は先輩に相談があるんです!」
どうやらイオリだけではなく、ユイもまだ到着していないようだ。
二人だけで部室に到着し、思い思いに気ままな時間を過ごしていると、不意にマリカに声をかけられた。
「恋・愛・相・談? 良いじゃなぁーい……うふふふっ」
「ち、違います! そのっ……わたし、バトルが苦手で……」
まさかこれは恋の相談なのかと一人勝手に妄想して、口元に手を添えながら、気持ちの悪い笑みを浮かべていたが、どうやら秘密とはバトルに関することのようだ。
だが、そもそもマリカがバトルが苦手なのは、出会った時に聞いている。
「先輩達が難なくクリアしてるミッション……わたし、クリアしたことなくて……。先輩の動きを参考にしたいので、一緒に出撃してもらえませんか?」
「あぁ、成る程……。なら、行こうか」
「あ、あの……本当に……?」
「俺はマリカちゃんの前だけでは嘘つけないの」
こんな可愛い後輩の前で嘘をつく不貞な輩がいるのであれば、Are you ready? からのとび蹴りを浴びせるところだ。
アラタが快諾すると、ありがとうございます! と心から嬉しそうにバトルシステムの準備を進めると、二人は出撃するのであった。
・・・
「──マリカちゃんのガンプラ、初めて見たな」
バトルフィールドとなったのは、曇天が広がる熱帯雨林ステージであった。
滝のある渓流の近くで合流しつつ、アラタはモニター越しでマリカが手がけたカスタマイズガンプラを見つめる。
ストライクガンダムをベースにしたそのガンプラはバスターガンダムやイージスガンダムなどの同じGATシリーズのパーツを組み込んで仕上げたものであり、その名はガンダム・マリカマルだ。個性的な名前ではあるが、それがマリカが一生懸命に考えた名前だと思うと、微笑ましかった。
「ど、どうでしょうか」
「流石の腕前だ。ガンプラ制作だけなら、サイド0の中で一番、上手いかもしれない」
「それは言い過ぎですよ! それに先輩っ……自分のこと天才って言ってるのに……」
「天才は認めるものは認めるものさ。さて、そろそろ来るぞ」
まさか普段から自分のことを天才と言っているアラタが自分を含めて、サイド0の中で一番、上手いなどというとは思っていなかったのだろう。流石に恐れ多いと、恐縮しているマリカに自身を持たせるように通信越しで笑うと、そのままセンサーが反応した場所を見やる。そこには既に多くのNPC機の姿が。
「参考にするのは良いが、まずはマリカちゃんのバトルも見ておきたい。サポートするから好きに動いてくれ」
「は、はい!」
ビームライフルで敵機体を牽制しつつ、マリカに促すと緊張からかその声を震わせながらマリカマルを動かす。
マリカの動きその物はバトルが苦手で口にするだけあって、ぎこちのなさを感じるものの、それでも筋その物は悪くはなく、アラタのサポートがあったとはいえ、出現したNPC機の全てを撃破した。
「どうでしたか……?」
「悪くないよ。ただ自信がないのかな? おっかなびっくりって感じがする」
根本的な部分で彼女は自分に自信がないのだろう。バトルで見え隠れするぎこちなさは自分に出来るのか、という不安から来るものだろう。
「じ、自信なんてないです……。わたしはソウマ先輩が羨ましいです。どうすれば、あんな風にできるんですか」
「……俺を真似するのだけは止めたほうがいいよ」
「え……?」
「なんでもない。なら、別のアプローチをしてみようか」
一瞬、アラタから感じた強烈な違和感。
普段の唯我独尊っぷりから想像が出来ないほど、今にも消え去りそうなほど儚く感じたのだ。
だが、そのことを尋ねるよりも前に話の流れを持っていかれてしまった。
「自分が信じられないのなら、自分が作ったガンプラを信じてみたらどう?」
「ガンプラを……」
「それは自分の全てを注ぎ込んで作ったものでしょ? 作りこまれたガンプラが見れば分かる。そこまでしたのは、自分のガンプラが最強だって、このガンプラで勝ちたいんだって思ったからでしょ?」
「それは……」
わざわざカスタマイズしてまで作ったのは負けるためではないはずだ。
リョウコも言っていたが、ガンプラを見ればファイターのことは大体分かる。継ぎ接ぎで愛のないショウゴのガンプラなど比較にもならないほどの想いをマリカマルから感じるのだ。
アラタの指摘は間違ってはいなかったのだろう。なにか考えるようにジョイスティックをギュッと握む。
だが、バトルその物は終わっていない。その証拠にセンサーが反応すると、前方にPGサイズのガンダムが現れたのだ。
「あ、あわわ……」
PGガンダムを見た瞬間、マリカは目に見えて慄いている。
どうやらこのミッションがクリアできない、と言っていたのは、あのPGガンダムが原因だろう。
既にこちらを捉えているPGガンダムはビームライフルの銃口を向けると、PGの名に恥じぬ大出力のビームを解き放つ。
マリカが思わず、息を呑んで目をギュッと瞑るなか、マリカマルの前に躍り出たG-ブレイカーはフォトン装甲シールドを構えると、各面からエネルギーで形成されたビーム・プレーンを次々と展開して、迫り来るビームを全て吸収する。
「ガンプラをどう動かしてあげたいか考えるんだ。それが勝利へのパーツの一つになる」
その言葉を残して、G-ブレイカーはパーフェクトパックから光輪を放ちながら、PGガンダムへと向かっていき、戦闘を開始する。
「綺麗……」
バトルの最中だというのに、思わずそんなことを無意識のうちに呟いてしまった。
光輪を放ち、鮮やかな光の尾を引いて、空を舞うG-ブレイカーはなんと美しいことか。その光輪とバックパックも相まって、天使にさえ見えるほどだ。
ガンプラをどう動かしてあげたいか、きっとアラタはG-ブレイカーに何の枷をなく、ただ心のままに共に飛んで欲しいと考えているのだろう。それは見ていて、楽しさと美しさを感じるほどだ。
「あっ……!?」
知らず知らずにG-ブレイカーに夢中になっていると、不意にPGガンダムが標的をマリカマルに変えたのだ。放たれたビームを辛くも避けるが、それはプラフだったのだろう。矢継ぎ早に放たれた頭部バルカンを受けて吹き飛んでしまう。
(……わたしはやっぱりソウマ先輩みたいには)
大きく吹き飛んだせいで、後方の滝から落ちてしまう。このままでは滝つぼに落ちるのは時間の問題であろう。
モニターに広がる落下していく光景に先程の空を自由に舞うG-ブレイカーを思い出す。結局、自分はあんな風には出来なかったのだ。
「──ただ落ちていくことが、マリカマルにさせたいことなの?」
目を瞑って、もうダメだと、自分はバトルは出来ないと考えていた時、シートが揺れた。
恐る恐る目を開けば、そこにはマリカマルの腕をしかと掴んで、自身を見下ろしているG-ブレイカーの姿があった。
「やっぱりわたしには……先輩のようには……」
「初めから上手く出来る奴なんて限られてるよ。でも、だからこそ何度躓いたって、立ち上がることが出来る。もう一度、聞くよ。このまま落ちたい? それとも……飛びたい? あの空より高く」
「飛ぶ……?」
「ああ、マリカちゃんなら出来る。なぜなら、キミにはその術があるから」
一度、諦めかけたその心もアラタの言葉に明かりが灯り、ハッとしたように目を開いたマリカは表情を引き締めると、バーニアを全て稼動する。その姿に微笑んだG-ブレイカーはそのままマリカマルと共に浮上する。
「ほら、簡単でしょ? ガンプラを想い、信じるんだ。そして相手が立ちふさがったら、こう言ってやれ」
G-ブレイカーはマリカマルの腕を放すと、ビームライフルとシールドを捨て迎撃しようとするPGガンダムへ一直線に接近し、一気にその眼前に迫り、マニピュレーターから右腕にかけて、深緑色に染まる。G-ブレイカー・高トルクモードだ。そのまま右腕を振り上げると……
「止めれるもんなら止めてみな」
顔面に全力の拳を叩き込んだのだ。
「さあ、マリカちゃん。勝利を組み立てようか」
「はいっ!」
PGガンダムが大きく仰け反った間にG-ブレイカーはマリカマルと合流すると、アサルトモードを発動させる。収束火線ライフルを前に、ガンランチャーを連結させ、超高インパルス長射程狙撃ライフルを構えたマリカマルと共に放った高出力のビームはPGガンダムを容易く貫き、ミッションをクリアするのであった。
・・・
「わたし、あのミッション……何回やってもクリアできなかったんです。それなのに……先輩がいるだけであんなに簡単に……。やっぱりソウマ先輩は凄いです、カッコいいです!」
「そ……そう……?」
「そ、尊敬! 尊敬しちゃいますっ!」
バトル終了後の部室では先程のバトルに感動したマリカが感激のあまりアラタに詰め寄っていた。
頭頂部に生えているぴょんとしたあほ毛は犬の尻尾のように揺れ、さながらマリカの姿は子犬のようだ。
自画自賛をよくするアラタもこの手の褒められ方には慣れていないのか、気恥ずかしそうにしている。
「わたし、作るのは好きだけどバトルは全然で……。でも、先輩のお陰で少しは自信が持てたというか……。あのっ……もしよければ……今後もバトルの仕方……教えてくださいっ……。わたしもっ、先輩みたいに……あんな風に綺麗にガンプラを動かしてみたいんです」
「俺でよければお安い御用よ。モデラーだけじゃないマリカちゃんのバトルを見ていきたいし」
「あ、ありがとうございますっ! 放課後は大体、ここにいますのでっ、いつでも来て──!」
よほど、あの勝利が嬉しかったのだろう。
いつもの人見知りする性格が考えられないほど、人に詰め寄って饒舌に話すマリカの姿に、ついつい苦笑しながら頷いていると、部室の扉が開き、マリカが震える。
「遅くなってごめんなさい」
「ごめん! ちょっと日直の仕事が残ってて……」
そこにはアイダの用事を済ませたイオリと日直の仕事を済ませたユイの姿が。
最も水を差された形となったマリカは、今の気持ちを表すようにペタンとあほ毛が垂れてしまう。そのことに気付いていないユイとイオリを中心にサイド0の活動が始まっていく。
「あのっ……さっきの話……。ま、待ってますからっ」
その最中、ちょいちょいと制服の裾を掴まれ、マリカは小さく、それでも楽しみを待つ子供のように話すのであった。
・・・
「んーっ……。それじゃあ、今日はもう帰ろっか」
時間は過ぎて、あっという間に下校時間となってしまった。ユイ達が思い思いに帰り支度をするなか、アラタだけは違った。
「あれ、どうしたの、アラタ君?」
「ここのバトルシステムとスキャナ側の調整をしときたくてね」
「えっ、ホントに!?」
帰り支度をしないままブレザーを脱いだアラタはそのままシミュレーターに向かっていく。
マニュアルも存在するため、それほど難しい作業ではない。
「そっ、それならわたしもっ……ご一緒します……!」
「私も! ユイ姉ちゃんが手伝うよ!」
「……!?」
「委員長がダチ○ウ倶楽部の流れなのか判断に困ってるから、俺一人でやるよ。そんなに難しくないし、この天才がすぐ終わらせちゃいますよ」
先程の一件もあってか、妙に積極的なマリカが手を上げると、続いてユイも手を上げる。
手伝うことはいいのだが、私も! 私も! と手を上げる流れに既視感を覚えたイオリは自身も乗るべきか、悩んでいると見かねて、アラタはフォローしつつ、シミュレーターのシートに滑り込む。
「むぅ……ならお言葉に甘えて。じゃあ最後に部室の鍵を閉め忘れないようにね? 帰り道は気をつけるんだよ? 危ない人がいたら──」
「分かったから帰って」
すぐこれである。
心配してくれるのは嬉しいが、今はそれで喜ぶ年齢でないのを悟って欲しい。
子供のような不満顔を浮かべるアラタに苦笑しながら、ユイ達は最後に改めて調整をしてくれるアラタに礼を言いながら、部室を後にするのであった。
・・・
《フレンドからの新着メッセージが一件あります》
あれから一時間弱が経過しただろうか。もうすっかり夕日が窓から差し込んでいる。
漸く調整を終えて、凝った身体を解しているとバトルシステムが届いたメッセージを知らせる。
フレンドといえば、このバトルシステムだと先日、共にバトルしたRECOCO一人しかいない。
開いてみれば、正解だった。
【サイド0結成おめでとー! なんだか色んな意味でスゴイ転入生が現れたって、噂になってるよー。ところで良かったら、この後、一緒に遊ばない? Okならボイスチャットに来てね!】
それが文面だった。
時計をチラリと確認し、まだ下校時間まで余裕があるのを確認すると、チェックがてら、その誘いに乗って、ボイスチャットを起動させる。
・・・
《──アラタ君、だよね?》
「ええ、まあ」
チャットルームに入ると、アラタがボイスチャットを来たことは向こうでも確認できたのだろう。スピーカーを通して、可憐な声が聞こえてくる。
《はじめまして、RECOCOです! ……って、前に1回、一緒に遊んでるよね。こうしてまた会えて嬉しいなっ》
「会う、ね。言い得て妙だな」
シミュレーターのモニター内にはRECOCOを名乗るアクア色のボブヘアの少女がいた。所謂、アバターであろう。彼女こそがあのグリーンドールのビルダーのようだ。
ネット上の交流なので、何とも言えず、首をかしげていると……。
《こんな可愛い子でびっくりした? やだなー、アバターだけで嬉しいわ~》
「なんか言動がオバサンっぽい」
《オバっ……!? キミって結構、意地悪だね……》
アラタを置いてけぼりに勝手に一人ボケを始めるRECOCOだが、思ったことをそのまま口にしたナイフのような一言にアバターだというのに、蹲って悶えていた。
《さっ、早速だけどミッションいいかな? 誘っておいてなんだけど、あんまり時間ないんだ》
「そろそろ下校時間だし、ちゃちゃっとやっちゃいましょうかね」
《うんっ! アラタ君のガンプラ、この前より更に進化してるよね! でも、私のガンプラだって凄いんだからっ!》
気を取り直して、ミッションをプレイしようという。
アラタとしては以前のようなバトルが好みではあるが、RECOCOの実力の一端を知っている。
もしも彼女とバトルをするのなら、長丁場の激戦となり、少ない限られた時間のなかでは厳しいだろう。
語尾に♪がつきそうなほど、声を弾ませたRECOCOと共に出撃していくのであった。
・・・
アラタのG-ブレイカーとRECOCOのグリーンドールによる協力ミッションは、お互いが実力者ということもあり、大して苦戦することもなく、全て順調に進んでいた。
「キミのガンプラ……こうやって近くで見ると、本当に綺麗だね」
NPC機を倒し終え、一息つきながらRECOCOは改めてG-ブレイカーを見つめると、その感想を口にすると、そのままもの悲しげに……。
「今のこの学園だと眩しいくらいだよ」
「G-ブレイカーが綺麗で眩しいのは至極当然としても、この学園で、か」
「うん……。今のガンブレ学園はね、皆、ただ勝つ為のことしか考えてない。その為にトランザムとか強いパーツのガンプラばかり求めて……。そのことは決して悪いことじゃないけど、でも……勝つ為だけが第一で皆、そのガンプラに向き合ってあげられている気がしないんだ」
「愛が足りない、と……」
「だからキミのガンプラが眩しいよ。ガンプラその物だけじゃない。そのガンプラを愛する君の気持ちがその動きから伝わって来るんだもん」
アラタが転入してずっと感じているが、やはりこの学園は力が全てだ。
ただただ勝利だけを求めて、作ったガンプラが弱ければもう使わない。より強いガンプラを……。その流れは非常にギスギスして、ガンプラへの敬意を全く感じられないのだ。
だからこそ少なくともアラタよりもこの学園を知っているRECOCOにはアラタとG-ブレイカーが眩しく感じられた。
「……でも、そういうRECOCOのガンプラも綺麗だよ。凄い手が込んである」
「えへへ、ありがとう」
そう語るRECOCOのグリーンドールにも愛を感じられた。
そう、それはまるで……。
「長い時間のなかで熟成された技術が注ぎ込まれている」
「……うん?」
「その技は俺なんかじゃまだ手が届かない。まるで何十年と培ったかのような……」
「……」
「そう、まるで田舎のおばあちゃん家のような安心感さえある」
「ごふっ!」
全て褒め言葉のつもりだったのだが、どういうわけか、途端にRECOCOは悶えるなか、後続のNPC機達が出現する。
「そこまで年取ってないもん……。精々、一回りかどうかだもん……」
「どしたの? さあ、勝利を組み立てようか」
ブツブツと聞き取れないぐらいの声量で呟いているRECOCOに首を傾げながら、アラタは早速、NPC機達へ向かっていくのであった。
・・・
《うぅっ、まさか言葉のナイフを受けるなんて……》
「ふぃー……終わった終わった。愛のあるガンプラと行動するのは心が温かくなるな」
バトルを終え、先程のアラタの言葉が尾を引いているのか、なにやら落ち込んでいるRECOCOを他所にアラタは満足げに語る。その高揚感はボイスチャットを通じて、RECOCOにも伝わったのだろう。
《……うんっ! 面白かった! やっぱりガンプラサイコー! 友達と遊ぶともっとサイコー! あっ、勿論、アラタ君はもう友達だからね? 一緒にガンプラバトルした仲じゃないっ!》
「いきなり元気になった……。でも、うん。RECOCOみたいな人だと俺も嬉しい」
《えへへ……ありがとう!》
RECOCOも心からガンプラを、ガンプラバトルを愛しているのだろう。
そんな彼女に友達といってもらえるのは、純粋に嬉しかった。
《……さーてと、そろそろタイムリミットかな。今日はありがとう。私、アラタ君とサイド0を応援してるから!》
「こちらこそ。今後ともよろしく」
《本当は私もお手伝いしたいんだけど、目を付けられるわけにはいかなくて……ごめん》
やはりRECOCOも現状に思うところがあるようなのだが、やはり生徒会の存在の大きさと己の立場を考えてしまうようだ。
申し訳なさそうに謝ってくれてはいるが、それでも応援してくれる者がいる……。今のアラタにはそれだけで十分だ。
《あ、そうだ。また連絡するから、私からのメッセージ、キミの個人のアドレスにも届くように設定しておいてね》
「ああ、連絡を待ってる」
《うん、必ず! それじゃあ、これからも頑張ってねっ!》
ただ純粋にRECOCOとの時間は楽しかった。
願わくば、これが当たり前となる学園になってほしい。お互いにそんなことを考えながら、RECOCOはボイスチャットを退出し、アラタもシステムを終了させて、帰り支度を始める。
・・・
「RECOCO、か」
人の少なくなった学園の廊下をアラタは一人、歩いていた。
考えてるのは、RECOCOのことだ。アバターと接しただけで、どのような人物かは分からないが、それでもガンプラへの愛は本物だった。
だがしかしやがてアラタの目はどんどんやさぐれていく。
「……俺知ってるんだ。女の子のアバターを使う奴は男だって。俺知ってるんだ。昔ネトゲで貢いだ末に絶望したもん」
「──え”っ」
女性のアバターで昔、トラウマになる事件でもあったのか、嫌な事件だったね……と据わった目で呟いていると、今の話を聞かれたのだろう。
声が聞こえたほうを見れば、頬を引き攣らせているアイダの姿が。
「あれ、先生じゃないですか」
「え、ええ。今から帰りなんだ。気をつけてね」
「はい、それじゃあ先生、また明日」
「うっ、うん。とっ、ところでさっきのアバターの話なんだけど、何も女の子のアバター=男の人って決め付けなくても良いんじゃないかな……? 女の子だって普通に使うわけだし……」
「……? まあ、そうですね。変な話を聞かれてお恥ずかしい限りです。それでは」
なにやらどことなく必死にアラタの認識を変えようとするアイダに首を傾げながらも、アラタは別れを告げて、帰り始める。その背中を見送りながら、アイダは人知れず肩を落とすのであった。
第一章まで書き溜めはあるけど、その一章ももう少しで終わってしまう…。早くまた溜めねば…。