ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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ジークシオン!

 自称天才ガンプラビルダーことソウマ・アラタが転入してから、かれこれもう一週間近くが経った。彼の転入を切欠に結成された新チーム・サイド0が活動を始めるなか、アラタ自身は学園生活をどう過ごしているのか……。

 

『……』

 

 ここは第05ガンプラ部の部室。

 連邦縛りが特色であるこの部だが、この場にいる部員達は皆、厳しい顔をしてガンプラを作っており、楽しんでいるというよりは、皆、ピリピリしているような印象を受ける。

 

「チイイィィィィーーースッッッ!」

『!?』

 

 そんな場所にハイテンションで滑り込んできたのは、自称天才であった。

 

「ソウマ・アラタでえぇぇすっ!! 部活の見学で来ましったー!!」

「な、なんだアイツは……」

「あれ……確か噂の転入生じゃなかったかしら……」

 

 一度、背を向け、そのまま大きく背中を反り返らせながら挨拶をしてくる奇人(アラタ)を前に05ガンプラ部の面々もざわつき始める。

 

「えっ、じゃあ生徒会に歯向かっているっていう……「ほうほう、ここが連邦縛りの……」……って、勝手にウロチョロするなっ!!」

「実は今、色んな部活を回ってて、その特色に触れさせてもらってるんですよね」

「はあ!? 兎に角、アナタの存在は困るのよ! ほら、みんなで追い出すわよ!」

「なにをぅ! は、離しなさいよ! そんなこと言って俺に乱暴するつもりでしょう、小説版08小隊みたいに!」

「「しねーよ、とっとと帰れ!」」

 

 先程まで張り詰めていた空気もアラタの乱入によって、騒々しいものとなってしまった。

 

 

 そしてそれから数十分が経つ頃には…。

 

「鹵獲機か……。良いじゃないか、その案貰ったよ!」

「でしょ!? 昔、ゲームでZガンダムのティターンズカラーを見た時の格好良さはいまだに覚えてるんだ!」

「そうなってくると、どの機体にするか悩むわね……」

「そんなの自分が好きな機体で良いでしょ! 楽しくなってきたぁっ、フウゥゥゥッフウゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!!!!!!!」

 

 何だかんだで打ち解けて、ガンダムやガンプラ話に花を咲かせるのであった。

 

 ・・・

 

「アナタが転入して、もう一週間近く……。もう慣れた……っていうより、馴染みすぎよ」

「そうかね」

 

 そんなある日の昼休み。

 イオリと昼食をとっていたら、ふとそんなことを言われ、自覚がない為、首を傾げる。

 しかしアラタの噂は彼女も耳にしているのだろう。そうよ、と苦笑交じりに頷く。

 

「──ハロー! みんな、元気にしてた?」

 

 昼食も終え、イオリと談笑をしていると、不意に入り口のほうから弾むような声が聞こえてきた。

 

「そ、その声!」

「その美貌!」

「そのオーラ!」

「あ、あなたはガンブレ学園の至宝にして……!」

「1000年戦争に一度の美少女と呼ばれた……!」

 

 それだけならば特に気にする必要もなかったのだが、その声に一部の男子生徒達が強い反応を示し、アラタは入り口へ顔を向ける。

 

「「「「「シオン様!!」」」」」

 

 そこにはブロンドの髪を膝元まで届くほどの長いツインテールにした可憐な、まさに美少女がいたのだ。

 

「そうだよっ。シオンはガンブレ学園のアイドル! みんなを笑顔にする為、今日も頑張るからっ!」

 

 ガンブレ学園のアイドルなど初耳だが、アイドルを名乗るに相応しい容姿と雰囲気を兼ね備えている。

 その制服もガンブレ学園のもののようだが、まるでアイドル衣装か何かのようだ。

 キラッと☆を投げかけるように、愛想を振りまきながら、きゃぴきゃぴと話している。

 

「ジーク・シオン! ジーク・シオン!」

「「「「「ジーク・シオン! ジーク・シオン!!」」」」」

 

 極めつけはこれである。

 普通ならば、なにやっているんだと呆れるところだが、シオンを崇拝する一部の生徒達はシオンを崇めるようにして拳を高く突き上げている。

 

 その光景を目の前にして、イオリは表情を引き攣らせており、そのままアラタに視線を向ければ、なにやら彼は頭を抱えていた。

 

「シオン……金髪……うッ、頭が」

「ど、どうしたの……?」

「なんでもありませんわ……」

 

 何故、いきなりお嬢様口調なのか。

 そんなイオリの疑問を他所に振り払うように頭を振ったアラタは改めてシオンと呼ばれた少女を見る。

 

「うんうん、今日もシオンの民は笑顔に溢れてるねっ。……って、今日の目的は違うの。このクラスにサイド0のリーダーがいるって聞いたんだけど……」

「目的はアナタみたいね」

(俺の本能がアイツはハザードだと……ヤベーイ! と訴えかけている)

 

 ファンであるシオンの民? に満足しつつ、シオンは教室内を見渡している。

 どうやら目的はアラタのようだが、正直言って、先程のノリはアラタでも乗り切れない部分がある。

 言ってしまえばベクトルが違うのだ。

 

 イオリに何も言わないようにと自身の鼻先に一指し指をあてつつ、まだこちらに気付いていないシオンの目を逃れようと人知れず動き出す。

 

「はい、そこの怪しいあなたっ! そう、そこのあなたっ! 止まりなさい!」

「バレた──!?」

「いや、ダンボールに隠れて移動するのなら、まだしもガンプラの箱に隠れてっていうのは無理があるでしょ」

 

 しかしその途中でシオン自らに止められてしまった。

 思わず驚愕するアラタだが、一連の流れを眺めていたイオリは重いため息をつく。

 というのも、この自称天才、某伝説の傭兵のようにやり過ごそうとしたわけだが、その為の道具がダンボールではなく、頭に被せるのが精々のガンプラの箱だったのだ。本当に隠れる気があったのかと言いたくなる。

 

 MG、もしくはPGの箱にしておくべきだったか、とわりと本気で考えているアラタを見ながら、シオンは彼こそがサイド0のリーダーだとシオンの民に告げられる。

 

「あなたがリーダーのソウマ・アラタ君? はじめまして、ダイクウジ・シオンって言います! よろしくねっ」

「えぇい仕方ない……。そう、俺が天っっっ「少しいいかな?」……天才キャンセル、最近なかったのに」

 

 アラタに歩み寄りながら、キラッキラな笑顔で自己紹介をするシオンに腹をくくったアラタは三本指を回そうとするが、ズイッと耳元で話しかけられ、吐息で僅かに震える

 

「……ちょっとここでは言えない話がしたいの。一緒に来てくれない?」

 

 耳元で他の生徒達には見えない角度で先程までの底抜けに明るい態度とは違い、真剣な物言いで話すシオンに、アラタも眉を顰める。

 深刻な何かがあるのだろうか? 羨望と嫉妬の視線がアラタに突き刺さるなか、サイド0絡みということもあり、ついて来ようとするイオリを制してシオンと共に教室を出るのであった。

 

 ・・・

 

 シオンに連れられて来たのは、第10ガンプラ部の部室だった。

 まだ全てまでは程遠いが色んな部活を見て回ったが、やはり第08ガンプラ部の部室に比べると、設備から何まで良いものが揃っており、全然違う。

 

「ここなら落ち着いて話せるね。教室や廊下だと誰が聞いているか分からないもの」

「それで用件は?」

「あぁうん。ちょっと待ってね。今、バトルをしてるみたいだから」

 

 その言葉にアラタは部室内のバトルシステムを見れば、生徒会を考えてか、オフラインで稼動しているシミュレーターがあり、近くのモニターにはその戦闘の様子が映し出されている。

 

 シルクハットを思わせる頭部と左目に埋め込まれた丸型高感度センサー。ブリッツガンダムをベースにカスタマイズされたそのガンプラはその特性を活かして、トリッキーに相手を手玉にとって、瞬く間に撃破させた。

 

「怪盗……?」

「うん、ガンダムマスカレイド。騎士や武者、海賊がいるなら怪盗がいても良いでしょ? 凄く強くて格好良いんだよっ」

 

 その特徴的な外観と戦い方から、思わずそんな印象を抱くと、シオンも自慢するように大きく頷いて、その名を明かす。そうしていると、戦闘を終えたバトルシミュレーターから一人の少女が現れる。

 

「あら、待たせてしまったかしら」

 

 ふわりと揺れる純白の髪。ガンダムマスカレイドを持って、現れたのは、アラタがプレバイで出会ったアイゼン・レイナだった。

 

「アナタはっ……!?」

「えっ、知り合いなの?」

「少しだけね」

 

 レイナに驚いていると、まさか知り合いだったとは思わなかったのだろう。シオンの問いに驚いているアラタを一瞥しながら、クスリと笑う。

 

「ようこそ、第10ガンプラ部へ。ここはSD系をメインにしつつ【遊び心】をテーマにしているわ。私はここの部長だけど、放送部の掛け持ちもしているの。まあ、実況というよりは学園内ネットにバトルのレポートなんかを配信するお手伝いが主なんだけどね」

「レイナさんはね、シオンの相談役なんだよっ」

 

 レイナによく懐いているのだろう。

 その腕に抱きつくシオンを横目に周囲を見渡せば、確かにSDガンダムを主にしているが、それだけではなく、個性的なガンプラ達が多くあった。

 

「……いや、ちょっと待て。このベアッガイ達って」

 

 飾られているガンプラ達の一角にはベアッガイ達のコーナーがあった。

 それだけなら、特に問題はないのだが……。

 

「このDCコミックス辺りに登場しそうな世界最高の探偵っぽいのは」

「バットガイよ」

「……この孤独なSilhouetteは……?」

「コブラッガイ」

「……更にその隣のカラー○イマーがついた紫色のベアッガイは……」

「3000万年の眠りから蘇ったティッガイ」

「オールアウトォッ!」

「遊び心よ。何なら禁忌のあまり封印された夢の国のベアッガイ……ミッk──」

「やめろぉっ! 生徒会を潰す前にこの学園が潰れるッ!!」

 

 見た目こそベアッガイなのだが、その配色やアレンジにモザイクをいれるべきか考えてしまうレベルの禁断のベアッガイ達がその存在感を大いに放っていた。

 

「それで話って言うのは~……あなたがチームを作って、生徒会に対抗してるってウワサを聞いたのっ」

「まあ、確かにそうだが……」

「じつは、シオンも最近の生徒会に不満があるの。みんなから笑顔とガンプラバトルを奪った生徒会を絶対に許しちゃいけない……! だからアナタと力を合わせて生徒会を倒せればと思って今日、会いに来たの」

 

 レイナとそんなやり取りをしていると、横からシオンが本題を切り出す。

 ふざけている少女だと思っていたが、生徒会に不満を持つ存在であり、ユイと同じくその打倒を目指しているようだ。

 

「でも、その前にアナタがその資質があるのか、確かめさせてもらうからっ!」

「なにで? もしかしてバトル?」

「そうね。それもアリかも知れないけど、今回は違うの」

 

 ビシッと指差してきたシオンに生徒会と渡り合う為の実力があるのか、ガンプラバトルで見定めようというのかと考えたアラタだが、レイナは首を横に振る。

 

「後輩君は月末に行われる【ふみなチャレンジ】を知っているかしら」

「……?」

「説明するわ。この学園にはビルドダイバーズのような小型の射出成形機があるの。普段はクリアできる人間が数える程しかいない高難易度のミッションをクリアした上で使える学園ランキング上位者の特権のようなものなんだけど、ふみなチャレンジはバトルロワイヤル形式の中で登場するすーぱーふみなを倒せたビルダーが射出成型機を使えるの。ふみなの攻撃力は高いけど、高難易度ミッションに比べて、AIが単純化されてるから戦術を用いれば、ランキング下位でも射出成型機は利用できるってわけね」

 

 とはいえ、それでもその多くがランキング上位者が撃破して射出成型機を利用しているんだけどね、と付け加えられる。

 確かに下位ランカーでも好きなパーツを手に入れられるというのであれば、それは魅力的だろう。

 

「それを俺にクリアしろと? 別に今は欲しいパーツはないけど……」

「少し違うわね。ついて来てくれるかしら」

 

 魅力的な話だが、今のG-ブレイカーを改修する予定はない。

 だが、今回は別にアラタにふみなチャレンジを行わせるつもりではないようだ。

 再び場所を変えるようで、肩にかけたブレザーを靡かせながら部室を出るレイナをシオンと共にその後を追う。

 

 ・・・

 

「あそこにいる彼が今回の主役よ」

 

 三人がやって来たのは、校舎の裏だった。

 何でこんな場所に来たのか、と疑問に思っていると、レイナは物陰で立ち止まり、ある場所を指す。

 

 そこには頭頂部を編みこみにした青年がいた。

 細身ではあるが、着やせするタイプなのか、アラタに比べてもガッチリとした体付きだ。

 しかし、大股で座り込んでいる姿など、どこなく粗暴さを感じさせる。

 

「彼は一年のトモン・リュウマ。ガンプラバトルの腕は目を見張るものがあるけど、モデラーとしては……まあ、初心者に毛が生えた程度ね」

「今回の主役って……主役は俺でしょ? 天才ですよ?」

「あなたのそういうところは嫌いではないわ。でも今は静かに、ね? 後で飴ちゃんあげるから」

 

 子ども扱いはするな、と目で訴えるが、はいはい、と頭を撫でられてしまった。

 やはりこの女性といると、調子を崩される。兎に角、今はあそこにる一年の生徒ことトモン・リュウマに集中しようと、話に耳を傾ける。

 

「彼は今、ガンプラバトルどころかこの学園にいる意義を見失ってしまっている。だからこそアナタに解決して欲しいのよ」

「なにがあった?」

「それはアナタ自身で聞き出して。私の口から言うことは簡単だけど、それじゃあ意味がないの」

 

 カウンセリング紛いのことをさせようというのか。

 これは少々、厄介なことになったな、と顔を顰める。なにせ意義を見失っている、としかレイナの口からは教えられないのだから。

 

「大丈夫よ。アナタがガンプラを愛し、楽しんでいるのならきっと難しいことではないわ」

「ホントに?」

「ええ、彼の心に触れてみて。そうすれば彼の想いも届くし、アナタの想いも伝わるはずよ」

 

 不安はある。

 しかしレイナには、アラタならばリュウマをどうにかすることが出来るという確信があるのか、微笑を崩さず、アラタの胸に触れる。その手からレイナの温もりが伝わってきた。

 

「……ま、学園を変えるなら、遅かれ早かれ、こういうこともしないとな。Love&Peaceのために頑張りますか」

「ええ、後は任せるわ」

 

 やがてアラタも決心がついたのだろう。

 飄々とした笑みを浮かべながら三本指をクルリと振ると、レイナは激励をこめて、その肩に触れ、シオンとこの場を後にする。

 

 ・・・

 

「ねえねえ、レイナさん。本当にバトルの腕を確かめなくて良かったの? ウワサは聞いてるけど……」

「そうね。バトルの腕は必要だわ」

 

 アラタと別れ、廊下を歩いていると、ふとシオンに尋ねられた。

 ガンプラバトルの実力という面でいえば、ラプラスの盾のメンバーを打ち破ってはいるが、それでもその目で確かめたわけではない。

 そんな不安な面持ちのシオンにレイナは安心させるように微笑む。

 

「でも結局、それは手段だわ。ルールを戻したところで生徒達の心まで戻るとは限らない。だって一度変わってしまってるんだもの。一番大切なのは、その心に想いを響かせられるかよ」

 

 力だけでは足りない。

 アラタに、その資質があるのか、見定めるように目を細めたレイナは口元に微笑みを残したまま、力が支配する学園を歩くのであった。




ガンプラ名 ガンダムマスカレイド
元にしたガンプラ ブリッツガンダム

WEAPON トリケロス
HEAD ガンダムAGEⅡマグナム
BODY シナンジュ
ARMS ブリッツガンダム
LEGS ストライクノワール
BACKPACK ブリッツガンダム
SHIELD 
拡張装備 大型マニピュレーター
     丸型センサー

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