ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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このガンプラに誓って

 放課後、ふみなチャレンジが遂に開催された。

 普段は広々と感じる工作室のバトルステージもこの日ばかりは所狭しとガンプラで埋め尽くされている。

 

「すーぱーふみなはまだ出てきてないみたいだね……ッ」

「一定数のNPCを倒さないと出現しませんからね……。それに他のビルダーにも注意を払わないと、こちらがやられてしまいます……!」

 

 公式戦は普段ではG-cubeで執り行われることが多いバトルシステムだが、ふみなチャレンジではバトルロワイヤル形式が採用されている。

 バトルステージにはいつも通り、NPC機が現れるわけだが、それ以上にビルダー達のガンプラもいるのだ。下手をすれば、いつものG-cube以上に気を張らねばならないだろう。

 

 《フィールドには新造チームのサイド0の姿もあるぞ! だがまだ活躍しているとは言い切れないっ! 特に委員長! いつものヤベーイデストロイヤーっぷりはどうしたぁっ!? やはりおr……天才がいないとダメなのかァッ!!》

「アナタがいないとじゃなくて、アナタのせいでしょうがぁッ!」

 

 つぶさに行われる実況に溜まらずイオリが吼える。

 普段のリンコの実況だけなら、まだしもその実況だけではなく、見た目的にも集中しきれない。

 戦闘狂のイオリでさえ、ビルドのせいでスイッチが入りきらないのだ。

 

 そんな矢先、センサーが一層、けたましく鳴り響く。

 ビルダー達の顔つきが変わるなか、フィールドの中心にPGサイズのデータが構築されていく。

 

 パワードジムカーディガンをメイド服に落とし込んだ至高の衣装。

 スカートの下のスパッツとニーソックスの間に生まれる絶対領域。

 やがて全ては形成されると、ポニーテールをふわりと揺らし、愛らしくウインクするすーぱーふみなが現れたのだ。

 

 《ここですーぱーふみなが登場です! これを撃破したビルダーがふみなチケットを手にいれ、射出成型機を利用することが出来ますッ!》

 《おぉっと、ふみなが現れるや否や一部の男子ビルダーのガンプラがスカートの真下を目指し始めたァッ! 被弾覚悟の突撃だ! 彼等が手にしたいのはふみなチケットではなく、その上から覗く神の領域をその目に納めるためッ!! 頑張れ、紳士達!!》

 

 すーぱーふみな、ここに登場。

 一目散にすーぱーふみな(一部はそのスカートの下)を標的に向かって、戦闘が開始される。

 だが、スカートの下よりもその胸部が柔らかいかどうかが気になります。

 

 《因みにビルドさんはすーぱーふみなを作成されたことはありますか?》

 《ええ、勿論。理想のために試行錯誤を何度も重ねましたよ。美少女系はコスメ系を加えると、また違うかもしれませんね》

 

 しかし、レイナの前情報通り、ふみなの攻撃力は凄まじく、特にW型の高出力ビームであるウイニングビームは放たれたが最後、その後には何も残らなかった。

 

「──これがコイツのデビュー戦なんだッ! 無様な結果には出来ねえェッ!!」

 

 着実に減っていくビルダー達のガンプラ。

 しかしその中にはいまだ健在のレイジングの姿があった。

 

「女を殴るみてぇで気は進まねえが、仕方ねえェッ!」

 

 レイジングの性能はアラタが言っていた通り、リュウマの技量を十二分に発揮できる性能を持っていた。

 自然と高揚感が生まれるなか、レイジングはスラスターを稼働させ、フィールドの地を蹴ると、すーぱーふみなの顎先を直下から殴るり、仰け反ったすーぱーふみなへ続けざまにその首元を蹴り、大きく吹き飛ばす。

 

 追撃しようとした瞬間、レイジングのセンサーが接近する攻撃を知らせ、回避運動をとる。

 リュウマが意識を向けてみれば、そこにはショウゴのザルグの姿が。

 

「てめぇ、俺がふみなチケットを手に入れるんだから邪魔すんな!」

「あぁっ!? そんなこと知るかよッ!」

 

 今、このフィールドで一番、すーぱーふみなを撃破する可能性を持っているのは、レイジングだ。

 その勢いを削ぐ為ザルグが横やりを入れてきたわけだが、それが余計にリュウマの戦意を燃え上がらせた。

 

「俺にコイツを……熱い想いを託してくれた奴がいるんだッ! 今、バトルをしてんのは俺だけのためじゃねえ!」

「な……なんだコイツ!? こんな奴が学園にいるなんて聞いてねえよッ!!」

 

 レイジングから放たれる全ての攻撃は継ぎ接ぎのザルグを瞬く間に追い詰めていく。

 ショウゴが慌てふためくなか、重々しい一撃がザルグを大きく怯ませた。

 

「負ける気がしねえ、負けらんねえ! 俺が……いや、コイツが掴むのは勝ちだけだッ!!」

 

 全ての力を解き放つようにレイジングの各部の装甲が展開され、内部装甲がフィールドを照らすほどの輝きを放つ。レイジングが右腕を立て構えると、リュウマの叫びと共に突撃していく。

 

「レイジングゥウウウッッッ!!!! フィインガアアアアァァァァァーーーーーーァアアアアッッッ!!!!!!!!!」

 

 それはまさに猛る龍の咆哮。

 唸りをあげながら、液体金属で覆われたマニピュレーターがザルグの頭部を掴みあげる。

 ギチギチと激しいスパークを発生するなか、ザルグの耐久値を瞬く間に減少させ、やがてその全てが尽きると、力無くその腕部が垂れる。

 そのままザルグをすーぱーふみなへ投げつけることでその衝撃を加味させ、ザルグごとすーぱーふみなを撃破する。

 

 《ヴィクトリーィッ!! 栄光を掴んだのは荒ぶる蒼き龍・レイジングガンダムだぁっ!!》

 《Wake up burning! Get RAGING DRAGON! Yeeeeeeah!》

 

 ザルグを投げ飛ばしたレイジングはそのまま腕を空に突き出したまま、静止している。

 威風堂々たるその様に誰もが息を呑むなか、リンコとビルドから高らかに勝利者の名を告げられるのであった。

 

 ・・・

 

「中々、やるじゃんか」

「どうよ! 俺の必殺拳ーっ!!」

(あれはシャイニングフィンガーだけど、そこはノリってことでツッコムのは野暮か)

 

 バトルを終えたリュウマの元には何食わぬ顔のアラタがやって来ていた。

 ふみなチケットが渡されるなか、リュウマは誇らしげに自身の二の腕を叩き、そのヤンチャな子供のような姿に苦笑してしまう。

 

「ッしゃあっ! 今の俺は怖いもんなしだッ! 誰でもかかってこいよ!」

「ったく……レイジングは俺が作ったんだ。お前がバカなのは構わないけど、レイジングの品位まで落とすなよ」

「あぁ!? お前、俺のことバカじゃねえみてえなこと言ってたよな!?」

「そんなことより、ズボンのチャックが全開だぞ」

 

 誤魔化してんじゃねえ、と言いつつも、見てみれば確かにファスナーが全開だった。

 

「うわっ、マジか! いつから!?」

「わりとお前と出会った時から」

「二週間前じゃねえか! なんで教えてくんねえんだよ!?」

「シリアス場面のどのタイミングで言うんだよ。大体、毎回チャック全開なのに何で気付かないんだ、バカ」

「またバカっつたな! このやろーっ!!」

 

 いそいそとチャックを閉めつつ、からかえばからかうほど、面白い反応を返してくれるリュウマと賑やかな時間を過ごしていると……。

 

 

 

「──……随分、楽しそうね」

 

 

 

 強烈なプレッシャーと共に肩を掴まれた。

 

 

 

「……私、これでも結構、心配してたのよ。目の下に隈まで作ってたし。それをあんなふざけたことをしでかすなんてね」

「HAHAHA……か、仮面モデラービルドは俺じゃないぞ……。確かに凄くイケてはいたg「へえ、まだそんなこと言えるんだ」あだだだだだだっ!!!?」

 

 今のイオリに覚えがある。

 昼休みで彼女に追いかけられた時と同じだ。何とか彼女から逃れようとするが、ミシミシと凄まじい力で肩をつかまれ、溜まらず悲鳴を上げる

 

 

 

「──今回は私も見逃せないなあ」

「えっ」

 

 

 更にもう片方も掴まれてしまった。

 いつもの優しげな雰囲気とは違い、身の毛の弥立つような恐ろしさを背後からもう一つ感じる。

 

 

「ゆっっっっっくりと……」

「邪魔の入らない部室で……」

「「話しましょう?」」

 

「ひぃっ!? リュウマ、助けっ! あ、あああ、あああああぁぁぁぁぁぁぁ……──」

 

 

 両腕をガッチリと拘束されて、連行されていく自称天才。

 その姿を見たリュウマの頭の中では、ドナドナが流れていたという……。

 

 ・・・

 

「あぁっ……まだ身体が痛む……」

 

 翌日の放課後ではまたボロボロのアラタが廊下を歩いていた。

 昨日のことは思い出すだけでも恐ろしいが、”あれ、私は好きですよ”とフォローしてくれたマリカに癒されにいこうと部室へ目指していた時だった。

 

「アラタくーんっ!」

「ぐふっ!?」

 

 背後から突然、軽い衝撃が襲う。

 首元にはか細い手が巻きついており、誰かと思えば、自分に抱きついているシオンが。

 するとそのまま誰にも話が聞かれないであろう、人気の無い場所まで連れて行かれる。

 

「すごいね、流石、ユイさんやイオリさんが認めた人! さっきリュウマ君を見に行ったら、ガンプラを凄く活き活きと作ってたよっ!!」

「! そうか、アイツ……」

 

 ユイとイオリの名を聞いた瞬間、ビクリと震えるが、その直後のリュウマの話に人知れず微笑む。

 

「……あなたの力があれば、シオンの夢が叶えられるかもしれない」

「なんか言った?」

「あ、独り言が口に出ちゃったみたい。この話はまた今度ねっ」

 

 再びガンプラへ積極的に関わり始めたリュウマを見て、ふと漏らした期待感に満ちた言葉を漏らすシオン。

 だがその言葉が聞き取れず、聞きなおしてもいつもの調子で誤魔化されてしまった。

 

「シオンはあなたみたいな人が現れるのをずっと待ってたの!」

「ほぅ……1000年に一度のこの天才を……」

「シオンも1000年に一度の美少女って言われてるのっ。 だからシオンと二人で、ガンブレ学園にガンプラバトルと笑顔を取り戻そうねっ」

 

 この調子ではあるが、やはりガンブレ学園の現状を憂う気持ちは本物のようだ。

 それならばとシオンに掴まれた手を握り返して頷いていると、シオンはせ-のっと合図を送り……。

 

「えいえいおー! えいえいおー!!」

「……」

「……も~! どうして一緒にやってくれないのーっ!?」

 

 乗らなかったことでさながらぶりっ子のように膨れっ面を作るシオンだが、やはりその乗りには完全には乗り切れない。そんなアラタにシオンはふと悲しげな表情を見せると……。

 

「もしかして、シオンと一緒に戦うの……嫌? シオンはガンブレ学園のアイドルとして、すべての生徒が等しくガンプラバトルを出来るように愛と笑顔と勇気で生徒会と戦いたいのっ!」

「俺は友情・努力・勝利派なんだ」

「勿論、それも大事っ! だからあなたが必要なのっ。だからお願いっ! シオンと一緒に戦って!」

 

 熱意を語るシオンは、やがてそのまま半ば強引にアラタに言い渡す。

 

「というわけで、アラタ君をシオン公国の大佐に任命しますっ! 機体でも、肩でも赤く塗ることも許可しちゃいます!」

「貴様、塗りたいのか!?」

「冗談ですっ。シオンとシオン公国の勝利の為に頑張ってね、大佐っ」

 

 本人の意思は無関係にシオン公国の大佐に任命されてしまったアラタは冗談じゃないと抗議しようとするも、言うだけ言って、ばいばーいっ、とシオンは去っていってしまった。

 

 ・・・

 

「頭が痛くなるな……」

「あっ、先輩、お疲れ様ですっ」

 

 シオンとのやり取りを思い出して、頭痛を感じながら部室に入れば、アラタの癒しこと和やかにマリカが出迎えてくれた。

 他にもユイやイオリもおり、全員、揃ってるのだが……。

 

「おう、やっと来たか」

 

 そこにリュウマまでいたのだ。

 

「お前……どうして?」

「あー……なんだ。一応、お前にゃ世話になったからな」

 

 何故、この場にリュウマがいるのか、驚いていると素直な性格ではないのだろう。

 ポリポリと頬をかきながら、アラタの元へ歩み寄る。

 

「俺もサイド0のメンバーに加えてくれ。俺も一緒に戦いてえんだ」

 

 勢いよく頭を下げ、サイド0への加入したいと口にしたのだ。

 

「……お前、そのことがどういう意味か分かってるのか?」

「あたりめぇだ。けどな、最高のビルダーになるには今の学園じゃいけねえんだ。だから俺も戦う! その方が一番の近道だろ」

 

 まだサイド0の風当たりは正直、強いと言ってもいいだろう。

 それを覚悟した上でリュウマはサイド0へ加入したいと言っているのだ。

 頭を下げたままのリュウマを一瞥し、周囲を見渡せば、ユイ達は自身の判断に任せると笑みを浮かべていた。

 

「……最っ悪だ。お前みたいなタイプは断っても、しつこそうだしな」

「そっ、それじゃあ!」

「……不本意だが、よろしくな」

 

 巻き込むこと自体は本当に不本意だったのだろう。

 しかしリュウマの意思が固いのは見ているだけで伝ってくる。

 観念するように肩を下げたアラタはリュウマに手を差し伸べると、リュウマは弾けるような笑顔でその手をがっしりと掴む。

 

「いってぇっ! どんな握力してんだ、バカ!」

「またバカって言ったな! せめて筋肉を付けろよ、筋肉を! このバカ!」

「俺をバカ呼ばわりだと? ならお前もガンプラぐらい付けなさいよ!」

 

 まるで幼い兄弟の喧嘩を見ているかのようだ。

 その光景にユイ達は顔を見合わせて、クスクス笑っている。

 

「けど、これで俺もサイド0で戦えんだなっ!」

「悪いな。G-cubeは三人用なんだ」

「あっ!? そ、そこら辺なんとかなんねえのかよ!?」

「ならないのが今のこの学園なんでしょうが」

 

 リュウマが加わったことでサイド0も一層、賑やかになっていく。

 どこを見渡しても、この部室は笑顔に満ちていた。

 

 

「──チッ、あのヤローまでサイド0かよ」

 

 

 しかし、それを部室の外から、忌々しそうに吐き捨てる者がいた。

 

「調子に乗りやがって。そろそろ焼きでもいれねえとな」

 

 ショウゴだ。

 周囲に当り散らしながら、彼は準備を進めるためにこの場を去るのであった。




トモン・リュウマ

【挿絵表示】


俺色に染め上げろ、ブレイカー!
(金のルーブクリスタルかぁ。手に入れられるか怪しいなぁ。あれって夕方まであるんだろうか)
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