ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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勝利を呼ぶ少年

 ゴミの一つもなく、清掃の行き届いた校内の廊下をアラタと彼が転入するクラスの担任が一緒に歩いていた。

 担任教師の名前はアイダ・シエ。その落ち着いた佇まいから、まさに大人の女性といった知的な印象を受ける人物だ。職員室へ向かった後、彼女の案内で今、転入先となるクラスへ向かっているところだった。

 

「知っての通り、ここ私立ガンブレ学園は世界でも有数のガンプラバトルに特化した学園なの。組み立てから塗装、改造、仕上げまで、ありとあらゆるガンプラに関する知識を学べるわ。勿論、実戦もね」

 

 ガンプラバトル……その名の通り、ガンプラを用いた戦いのことだ。ガンプラではMG(マスターグレード)RG(リアルグレード)などに骨組みのようにフレームが導入されているが、ガンプラバトルではガンプラバトルシミュレーターという筐体に対応するフレームであるインナーフレームに組み立てたガンプラの外装を装着させることでシステム上でのバトルが可能となる。

 更に特筆すべきはガンプラの出来栄えによって性能が決まることだろう。単純に組み上げるよりも塗装や改造によって完成度を高めれば、それだけの性能が発揮できるという全く新しいeスポーツと言っても過言ではないだろう。そしてこのガンブレ学園こそがガンプラバトルに特化したガンプラのノウハウを学べる専門学校なのだ。

 

「……残念ながら、いつでも好きにバトルが出来る、というわけではないのだけれど……」

「それってどういう……」

 

 休み時間ともなれば、それはもう白熱したガンプラバトルが行われていることだろうと考えていたが、どうやら違うらしい。だが気になったのは、ふと見せたアイダの態度だ。

 まるで、それが本意ではないような、困っているような素振りに引っかかりを感じて、尋ねてみたが、半ば強引に話題を変えられてしまう。

 

「そうそう。キミ、以前住んでたところではガンプラバトルの大会に優勝したことがあったんでしょ?」

「まあ……天才ですから」

「あら、大きく出たわね。でもこの学園のレベルも高いわよ。頑張って、さらなるガンプラバトルの高みを目指してね」

 

 結局、はぐらかされてしまい、追求しようにも目的地にたどり着いてしまった。釈然としないまま、横開きの自動ドアを開かれ、アイダの続いて、足を踏み入れる。

 

 室内は球体型ガンプラバトルシミュレーターが囲むように六台設置され、それぞれに番号が記されている。中央には観戦用モニターが設置されていることから、どうやらここはガンプラバトルを行うことが出来るバトルルームのようだ。

 既に室内は多くの生徒で賑っている。どうやら同じクラスとなる生徒達のようだが皆、アイダの傍らにいるアラタに注目しており、浮ついているのが感じ取れる。

 

「はい、みんな静かにー。みなさんお待ちかねの転入生君ですよ」

 

 教師らしく、ポンと手を叩いてこの場を律すると、傍らに控えているアラタを簡単に紹介し、後は彼自身に自己紹介を任せる。

 

「改めてソウマ・アラタです。皆さんの個性に刺激を受けたいと思っていますので、どうぞよろしく」

「仲良くしてくださいね。ちなみに、彼はガンプラバトルの大会で優勝した経験があるそうですよ」

 

 敬礼のような動作で親指、人差し指、中指の三本指を伸ばし軽くクルッと回して、自己紹介を済ませると、アイダはアラタのガンプラバトルの経験について説明する。

 だがガンプラバトルの大会に優勝した、というのはガンプラバトルに特化したこの学園では注目を集める絶好のネタのようで、ドッとクラスメイト達は盛り上がる。皆、口々にどれほどの実力なのか、などアラタへの関心を強め、一気に期待の視線が集中している。

 

「というわけで、わざわざ普通の教室じゃなく、このバトルルームに集まってもらったということは──」

「「「「ということは!?」」」」

「ミッションでその実力を見せてもらいます!」

 

 生徒達の期待が集まるなか、アイダの言葉に室内全体に響き渡るような歓声が巻き起こった。

 

(……場合によってはスクールカーストに響くやつだな)

「アラタ君のパートナーは……そうね、コウラさん、お願いできる?」

 

 あまりの盛り上がりと比例する期待に天才を自称するアラタの表情にもうっすら緊張の色が見える。そんなアラタを他所にアイダがアラタのサポート役に一人の女子生徒を指名すると、彼女は分かりましたと簡潔に答え、アラタに歩み寄る。

 

「クラス委員長のコウラ・イオリです。よろしく」

「どうも」

 

 アラタが指名された生徒を見やれば、そこには切りそろえた紺青色の髪の少女がいた。委員長、というのであれば納得の人選だ。クラス委員長ことイオリと軽く挨拶を交わしていると、イオリと組むことに羨んだ生徒の声が聞こえてくる。

 

「委員長がパートナーか。いいなー、羨ましいぜ」

「えっ、アンタ知らないの? 委員長。バトルになると──」

「二人とも、準備はいいですか?」

 

 バトルになると何なのか、生徒同士の会話が気にはなるが、最後まで聞く前にガンプラバトルシミュレーターの稼働状況を確認したアイダから準備の有無を尋ねられてしまった。

 

「私はいつでも」

「同じく」

「それでは早速始めましょう! ミッションスタート!」

 

 いくら平静を装っていても鼓動の高鳴りを感じる。いよいよこのガンブレ学園でガンプラバトルが出来るのだ。イオリに続くようにして、アラタはガンプラバトルシミュレーターヘの乗り込んでいく。

 

 ガンプラバトルシミュレーターは球体型の筐体であり、中はガンダム作品に登場する機動兵器MSのコックピットをイメージした作りとなっている。ここにインナーフレームを使用したガンプラとガンプラバトルを行う上での自身のビルダーデータなどが保存された端末であるGBをセットすることによって、システム上に読み込まれた自身のガンプラを操作できるというわけだ。更にはネットワーク上で繋がったプレイヤーとも協力、対戦が出来たりと日夜、ガンプラバトルは盛り上がりを見せている。

 

 そんなシミュレーターにGBと共にセットしたアラタのガンプラはHG(ハイグレード)サイズのRX-78-2 ガンダムだ。何かパーツが取り付けられたり等のカスタマイズこそされてはいないが、それでも表面処理は丁寧に行われ、ディテールアップ等によって精密感の増した純粋たる完成度を目的に作りこまれたガンプラだった。

 

「ガンダム、行きますっ」

 

 その声から楽しみを抑えきれないのが手に取るように分かる。シミュレーターもアラタ自身の準備も全て整った今、アラタが操るガンダムは画面に表示されたカタパルトを駆け抜け、戦場となるバトルフィールドへと転送されるのであった。

 

 ・・・

 

 バトルフィールドに選ばれたのは、工作室をイメージしたステージだった。障害物の役割を持つガンプラや塗料、器材が置かれた机が無数と立ち並ぶこのステージは日常的な生活感のある場所に投影されたガンプラがバトルをするという非日常的な光景が広がる面白いステージだ。

 

「……貴方、ガンプラバトルの経験があるらしいですね」

 

 フィールドにガンプラが投影されると、程なくしてイオリからの通信が入る。センサーが反応した場所を見てみれば、そこにはイオリが作成したと思われるカスタマイズガンプラの姿があった。

 

「委員長のガンプラは宇宙世紀をイメージした機体か」

「えっ? ま、まあ、そうだけど……」

「装備はビームライフルとシールド、バルカンとビームサーベルか、手堅いな。チッピング塗装みたいだけど、ミリタリー系が好みだったり? 流石、委員長と言うべきか、この学園に来て初めて見るガンプラがこれ程、完成度の高いものだなんて最っっ高だなっ」

「あっ、ありがとう……。そういう貴方のガンプラもカスタマイズこそないけど、そのディテールアップは参考になるわ。凄いのね」

「天才ですから」

 

 ガンダムサファイア、それがイオリのガンプラの名前だ。蒼を基調としたそのガンダムタイプのガンプラは、大きな背負い物など華やかさこそないが、逆に言えばどっしりとした堅実な印象もある。しかも塗装剥がれなどのリアリティを持たせるチッピング塗装が施されている。観賞用ならいざ知らず、バトルに使用するガンプラでわざわざガンプラに実感的な印象を加えるウェザリングの一つであるチッピングを施すのは、彼女自身の好みだからなのではないのだろうか。

 

 いきなり自身のガンプラを高く評価されて、戸惑い気味のイオリではあるが、それでも彼女自身、素晴らしい慧眼の持ち主なのだろう。褒められて終わるのではなく、アラタが手がけたガンプラの出来栄えを分析し、称える。最もアラタ自身は飄々としていたが。

 

「っ、敵勢力が……」

 

 しかしそんなやり取りをしているのも束の間、センサーが敵機体の出現を捉える。確認してみれば、複数体のジム、ザクⅡ、ドムがNPC機として出現していたのだ。

 

「……もうお喋りは十分よね?」

「そうだな。まずは目の前の敵に──「……フ、フフフッ」……え」

 

 そろそろバトルに集中しようと思った矢先だった。通信越しに聞こえてくる不気味な笑い声にアラタの動きは止まる。このフィールドには自分とイオリしか出撃していないし、他プレイヤーの乱入も予定されていない。相対的に考えれば……。

 

「ああ、もう我慢できないっ! 早く行きましょうっ!?」

「お、おう……」

「ウフフ、アハハ、アーッハハハッ!! 全部、私が片付けてあげるぅっ! さあバトル開始よっ!!」

「えぇっ……」

 

 やっと先程のクラスメイト達の会話の意味が分かった。彼女は所謂、運転すると性格が変わるタイプの人間なのだろう。敵機体を見た瞬間、スイッチが入ったように興奮して飛び出していったサファイアの後姿にただただ唖然としてしまう。

 

 とはいえいつまでもそうはしていられない。アラタもすぐさまその後に続いて、戦闘に参加する。複数の敵機体が銃口を向け、雨のような弾丸を放つが、軽やかにバーニアを駆使して避けると、ビームライフルの引き金を引き、二発のビームが先頭の二機を貫く。

 そこからは鮮やかな手際だった。素早く距離を詰めると、ビームサーベルを引き抜いて、すれ違いざまに周囲の敵機体を撃破していったのだ。

 

「折角だし、いただきますよっと」

 

 撃破された機体の中には、武装や腕パーツ、パックパックなどのパーツなどを残していた。

 その中からアラタはザクⅡのザクバズーカとヒートホーク、ドムの脚部パーツとバックパック付きのヒート・サーベルを選ぶと、それらのパーツはデータとなって、ガンダムに吸い込まれていく。一体、これはなにを意味するのか? それはすぐに分かることとなる。

 

「フ、フフフ! さあ、もっともっと楽しませてっ!」

「……何にも残ってない。駆け抜ける嵐だな、あれは」

 

 アラタだけが撃墜数を増やしているわけではない。共に出撃したイオリが嵐の如く凄まじい勢いで次々に撃破しいっているのだ。彼女の後には何も残らず、その光景……というより、イオリの暴れっぷりにアラタも苦笑する。イオリさんが楽しそうで何よりです。

 

「……おっと……トリを飾るのはPGか」

 

 すると、近くに反応があり、同時に光の奔流がアラタに襲いかかる。素早く避けて確認すれば、そこにはアラタのガンダムを見下ろす巨大なRX-78-2 ガンダムがいたのだ。これは所謂、PGサイズのガンプラであり、アラタのガンダムが設定の全高に比べて1/144のサイズであれば、PGは1/60。まさに巨人と形容する他ない。

 

「委員長に喰われ気味だし、ここらでサクッと活躍しますかね」

 

 しかし決して圧倒的なサイズ差を見せ付けられても、アラタは臆することなく、寧ろ余裕のある笑みを浮かべたのだ。彼はそのままモニターの一角に表示されているスロットを確認する。

 

 ザク・バズーカ

 ヒートホーク

 ドム(レッグパーツ)

 ドム(バックパック)

 

 これが今、アラタが所持しているデータパーツだ。すると考えるように人差し指で顔の横に添える。

 

「……勝因となるパーツは全て揃った」

 

 頭の中で組み立て説明書のようなイメージが広がっていく。しかしそこに記されているのプラモデルの組み立て方などではない。そこに記されている組み立てるものは──。

 

「さあ、勝利を組み立てようか」

 

 その瞬間、アラタのガンダムの脚部に変化が起こる。何と彼の脚部パーツは熱核ホバーエンジンが内蔵されたドムの脚部へと変化したではないか。

 

 これこそこの世界のガンプラバトルで使用されるシステムの一つ、リアルタイムカスタマイズバトルだ。これは戦闘に参加している機体がそのパーツを破壊されると、パーツとして落ちる。これを取得することによって最大六つとなる自身のストックとなり、戦闘中に換装することが出来るのだ。

 

 ドムの脚部を得たことによって更なる機動性を会得すると、そのまま滑るようにして、PGガンダムの死角に移動すると、装備しているビームライフルをザク・バズーカに換装する。そして、そのまま間接部に連射すると、怯んだところでヒートサーベル付きのバックパックに換装し、同時にヒートホークを装備して二刀流で後ろから膝関節をすれ違いざまに切りつけることで膝を崩させる。

 

「こいつで完成だ」

 

 正面に回りこむと、アラタのガンダムに更なる変化が起こる。それは彼のガンダムが突如、赤く発光したと思えば、換装されていたパーツが全て元通りのRX-78-2 ガンダムの姿になったのだ。そのまま赤い光を纏ったガンダムはビームサーベルを抜き放って、飛び上がるとPGガンダムの頭部から股先にかけて一太刀を入れると、PGガンダムはそのまま崩れ落ちて爆発四散する。

 

 これも覚醒と呼ばれるシステムの一つだ。これを使用することによって、ガンプラは発光し、その性能は飛躍的に上昇すると同時にリアルタイムカスタマイズバトルで換装したパーツや失ったパーツも全て元通りとなるのだ。

 

「クッ、アハハハハッッ!! 最っ高だわっ!!」

「盛り上がってるねー。だがあれほどのガンプラなんだ。是非、委員長ともバトルがしたいっ」

 

 PGガンダムを撃破したことでモニターにはMISSION COMPLETEの文字が浮かび上がる。アラタ達の勝利が確定した瞬間だ。笑みを浮かべるアラタだが、通信越しに聞こえてくるイオリの笑い声と彼女の戦い方にバトルの熱を上昇させながらもデビュー戦となるバトルを終えるのであった。

 

 ・・・

 

「二人とも、素晴らしいバトルでしたね」

 

 バトルを終え、ガンプラバトルシミュレーターから出てきた二人をアイダが出迎える。その後ろには先程の勝利をクラスメイト達が称える声が聞こえてくる。

 

「コウラさんも楽しそうでしたし」

「……インナーフレームに装着したパーツが予想通りに機能したからです」

「あっ、照れてる」

 

 先程の戦闘の、主にイオリの様子は観戦しているアイダ達にも筒抜けだったのだろう。自覚してか、照れ隠しの言葉を口にするイオリだが、思ったままのことを口にしたアラタを肘で突く。

 

「それにしても、二人とも強かったよねーっ!」

「委員長、ランキングの順位は二年生でトップクラスだったよね。転入生も結構上位狙えるんじゃない?」

「くっそー! 僕もバトルしたい!!」

 

 とはいえ、二人のバトルはクラスメイト達の心に火をつけるのには十分すぎたのだろう。興奮気味に先程のバトルについて振り返り、そして最後にたどり着くのは自分もバトルをしたいと言う純然たる想いであった。

 

「みんな、そう言うと思ってました。なので特別に今日は自由にガンプラバトルOKです!」

(……今日は自由に?)

「勿論、生徒会の許可も下りてますよ。ランキングに影響ありません!」

 

 そんな生徒達を見越してか、アイダの言葉に生徒達は沸き上がり、口々に自分のガンプラを自慢したり、どのガンプラを使おうかなどと話している。しかしアラタにはその姿に強い違和感を感じる。

 

(生徒会だのランキングだのって……。今朝のユイ姉ちゃんや先生といい、何が……)

「アラタ、不思議そうな顔をしていますね」

 

 ランキングに関しては成績と考えれば、まだ納得できるが、ガンプラバトルをするだけに生徒会の許可が必要だったりと言うのには、疑問を感じざる得ない。顎先に手を添え、考えに耽っていると、そんなアラタに気付いたイオリが声をかける。

 

「ガンプラバトルのためのこの学園で、みんなただバトルが出来るだけなのに、これだけ盛り上がっている……。その理由、きっとすぐに分かりますよ」

(……勿体振るなあ)

 

 イオリが言う通り、確かに生徒達はバトルが出来ることに本当に嬉しそうだ。その喜びようが少し異常に感じるくらいには。

 一体、その理由は何なのか、結局、この場でイオリの口から話されることはなく、追求しようにもイオリの悔しさや苛立ちが入り混じった複雑そうな表情や自分達のやり取りを見て、悲しげに視線を伏せるアイダに気付き、何とも言えないままこの時間の授業を終えるのであった。

 




プロローグは個別ミッションが解放されるまでのメインミッション4までです。その為、そこまでオリ展開は特になしで突っ走ります。文字数も基本は3,4000字にしたいのですが、何分、詰め込んでいるのでプロローグ終了までご容赦ください……。

因みに主人公の俺ガンダムもプロローグの最後の最後に……。それまではガンダムで戦います。

……えぇい、カスタマイズだけが全てじゃない! 純正だって強いんだやい!
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