ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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第二章 さあ、経験を組み立てようか
予兆の夢


 ──夢を見た。

 

 そこはどこまでも続くような真っ暗な世界で、浮遊感と共に自分という存在を感じることは出来るもののいくら手足をバタつかせたところで1㎜も移動することも出来ない闇の世界だった。

 

「……っ……?」

 

 ただただ孤独。身が凍っていくような錯覚さえ味わうなか、目の前に強烈な光があふれ出る。

 それはまさにこの闇の世界全てを照らすような強く、それでいて温かさを感じる光だった。

 

「G-ブレイカー……?」

 

 その光を放つのは一機のガンダムだった。

 各部のフォトン装甲はその光はまるで脈打つように輝く。

 

 その機体はG-ブレイカー。

 しかしそう断言できなかったのは、自分が知るG-ブレイカーとその細部が違ったからだ。

 目を凝らして、よく見ようとしても圧倒的なその光がかえって、その姿をぼやけさせるのだ。

 口にしたその名前に応えるようにバックパックから光輪を放つと、やがてそれはどんどん大きくなっていき、やがてその光に耐え切れず、目を閉じてしまうのであった。

 

 ・・・

 

「……夢、か」

 

 窓から差し込む朝日に顔を顰めると、ゆっくりと瞼を開く。

 見知った自分の部屋で、アラタは目を覚ましたのだ。

 

 凝りに凝った身体を解す。

 アラタが眠っていたのは、作業ブースとして使用している机。

 どうやら今日もガンプラの作成中に寝落ちしてしまったようだ。

 

「今のは……」

 

 握ったまま寝てしまい、体温が移ったニッパーを片付けながら、目の前に飾られているG-ブレイカーを見る。

 家にいる際はケースから出して、いつもこうやって飾っているのだ。

 

 だが今はそれよりも先程の夢のことが気になって仕方がない。

 G-ブレイカーであって、G-ブレイカーではないあの機体……。断片的にではあるが、そのシルエットはハッキリと覚えている。

 

 しかし今日は登校日だ。

 時間を確認したアラタは仕方ないと意識を切り替えるように一息つくと、席を立つのであった。

 

 ・・・

 

 ショウゴとのバトルから数日後、学園に向かう最中にユイと出会い、更に道中でリュウマ、イオリ、マリカと合流し、登校していくサイド0の面々。学園に近づけば近づくほどガンブレ学園の生徒達の姿も多く見受けられ、彼等の好奇の視線に晒される。

 

「おい、アレって噂のサイド0じゃないか?」

「え? ラプラスの盾のモリタを倒したっていう!? なんだよ、可愛い子ばっかりじゃん! やべえ、ちょっと応援しようかな……」

 

 これが一人や二人ではなく、そんな風に見えないなぁなど好き勝手に話題にされていくサイド0。

 流石にこれにはサイド0の女子達はどこか辟易とした様子だ。

 

「な、なんだか……話題になってます、ね……」

「結構、派手なデビューになっちゃったからね。でも、毎日の登下校でこれは、ちょっと恥ずかしいかな……」

「どことなく不純な動機も見え隠れしますが……。それでもここまで噂になるのは、生徒会のあり方にみんな、心のどこかで不満を持ってたんでしょうね」

 

 気恥ずかしくはあるが、イオリが言うように全くの話題にならないよりはこうして大きく噂が広がるのならば、それだけ関心も高い証拠でもある為、断然良いだろう。

 

「なら、この調子で名前を売っていけば──」

「賛同者がきっと増えてくる。そう思います」

 

 それこそサイド0の目指すべき目標だろう。

 賛同もなく、ただ正しいと突き進む行動など愚の骨頂なのだから。

 

「どうもどーも、アナタの学園のソウマ・アラタです! 何卒、なにとっぞぉっ! よろしくお願いいたしますっ!」

「あぁ? 可愛い子って俺らも入ってんのか? そっかー、俺って可愛かったんだなー」

「……まあ、おかしな方向に名前が売れる可能性も否めませんが」

 

 胡散臭い笑顔と共に周囲の生徒達に手を振るアラタと一人、変に納得しているリュウマの二人を見ながら、イオリは頭が痛そうに重い嘆息をつくのであった。

 

 ・・・

 

「なあ、お前らあのラプラスの盾のモリタ先輩、倒しちゃったってホントかよ!?」

 

 話題は教室内に入っても変わらずであった。

 いや寧ろこうして何人かの生徒に囲まれて問い詰められる分、こちらの方が大変なのかもしれない。

 

「あの人、ランキングはともかく強さは上のほうだろ? すげーなー」

「え? なんか口ばっかりで、実はあんまり強くないって噂もあったけど……」

「それにしたってすごいよー。ソウマ君もコウラさんも一気に有名人だもんね」

 

 こちらが喋るよりも早く盛り上がっている生徒達。

 名前が売れるということは今後、こうやって注目されたり、質問攻めにされるのを覚悟しておかねばなるまい。

 

「……別に有名になりたくて戦ったわけじゃないわ。ただ、あの人達が許せないだけ」

 

 あまり注目されたり、囲まれたりするのは然程、好きではないのか、それとも何度もこのように噂や質問攻めされて、流石に辟易しているのか、イオリはうんざりした様子で答えていた。

 とはいえ、それはそれで、格好良いだの、 俺、好きになっちゃったかもだの言われてため息をついていた。

 そんな朝のやり取りをしていると、ホームルームの時間が迫り、アイダが教室にやってくる。

 

「はい、皆さん静かに。ホームルームはじめますよ」

 

 ホームルームに意識を切り替えようとしていると、ふと手持ちのGBに反応があった。

 何だと思い、隠れて確認してみれば、差出人はRECOCOであった。

 

【やっほー、元気ー? 今日も放課後、ミッションしない? チャットで待ってるからね~】

 

 どうやらガンプラバトルの誘いだったようだ。

 思えば、ここ最近のゴタゴタのせいか、RECOCOとこうしてやり取りをするのも久しく感じる。

 

「……アラタ、ホームルーム中よ。先生に怒られても知らないんだから」

 

 分かった、とホームルームの最中ということもあり、手短に返信をしていると、見かねたイオリが注意をするのだが……。

 

「はい、コウラさん静かにね」

「すっ、すみません……!」

 

 下手に声を出したのが、仇となってしまったのか、眉を顰めたアイダに逆に注意をされてしまった。

 驚いてピシッと背筋を伸ばしながら謝るイオリだが、やはり原因は隣の自称天才のため、納得いかないように文句を言いたげにアラタを見る。

 

 

 

「なんで私が怒られなくちゃ──」

 

 

 

「m9(^Д^)」

 

 

 

 その瞬間、イオリとアラタは両腕を掴み、取っ組み合う。

 

 

「──!!!! ──!!!!!!!!!!!!」

「コウラさん、いい加減にしなさい!」

 

 

 アラタと掴みあいになりながら声にならぬ怒りの叫びをあげるイオリに他のクラスメイト達がまたやってるよ、と見慣れた光景なのか、大して反応もしないなか、アイダの注意が教室に響き渡るのであった。

 

 ・・・

 

 放課後、今日もサイド0の活動を行いつつ、補習の為、今日は来れないリュウマの他に、スマホを見て、慌てた様子で部室を去っていたマリカを皮切りに今日は解散となった。

 ユイが一緒に帰ろうと誘ってきたわけだが、今日は約束があるため、一人で帰ってもらった。

 部室に一人になったところで約束通り、RECOCOのチャットへ向かい、交流を始める。

 

 《やっほー。聞いたよ! ラプラスの盾のメンバーと戦って勝っちゃったって!》

「その話題、聞き飽きたよ」

 《でも本当に今までみんな生徒会の権力に怖がって手を出せなかったのに……。すごい! 立派! カッコイイ!》

「知 っ て る」

 《流石に言いすぎか、って言おうとしたのに……》

 

 流石にアラタもいい加減、この話題には飽き飽きしているようだが、それでも自分を褒める言葉には自慢げな表情……所謂、どや顔で笑みを浮かべている。これにはRECOCOも苦笑してしまっている。

 

 《それじゃあ今日もミッションいいかな? 例によって、そんなに時間取れないんだー》

「なんだったら、時間があるときに誘えばいいのに。別に俺はそれでも構わないよ」

 《そういうわけにもいかないんだよね。それじゃ、ミッションスタート!》

 

 急ぎ急ぎでミッションを行おうとするRECOCOに日を改めることを提案するが、そうも出来ないらしい。

 そのまま押しきられる形でRECOCOと出撃していくのであった。

 

 ・・・

 

「さっすが、活躍中のチームのリーダー君は動きが違うね!」

 

 バトルフィールドとなる宇宙空間を二つの翼が飛び交う。

 鮮やかな手際で群がる敵機体を撃破すると、G-ブレイカーに寄ったグリーンドールは見違えてさえ感じるアラタの動きを称賛する。

 

「前に一緒にミッションした時から時間が経ってるからな。天才は常に一歩前に進んでるものなんだよ」

「もぅー……そういうところがなければもっとモテそうなんだけどなー」

 

 機体越しに三本指を回すアラタの彼らしさを感じる発言に苦笑しながらも、RECOCOは改めてこれまでのサイド0とアラタの活動を振り返る。

 

「でも、本当に色んなことがあったみたいだね。一年生のトモン君、三年のアイゼンさん。それに一番の驚きはあのアールシュ君と交流を持ったことだよ」

「気付けばって奴かな。こうしてRECOCOと一緒にバトルをしてて思うけど、やっぱりどんなバトルも無駄にはならないんだ。全部、俺の中に吸収されていく」

「うんうん、まさにガンプラビルダーだね!」

 

 ガンプラが好きだからこその悲しみを教えてくれたリュウマ、ガンプラを楽しむことを、遊び心を

 忘れないで欲しいと注意してくれたレイナ、何より自分のガンプラこそが最強だ、と自分の愛をぶつけてきたアールシュ。これまで出会った者達から教わったことは決して無駄にはならないだろう。

 

「そういうRECOCOはどんな交流があるの? それだけの腕だ。さぞ凄い人達が知り合いにいるんだろ?」

 

 RECOCOのグリーンドールやそれを駆使する動きを見れば、只者ではないのが分かる。

 さぞ色々な経験をしてきたことだろう。だがその質問は先程まで明るく笑っていたRECOCOの表情は、アバターだというのに石のように固まる。

 

「え”っ……あぁうん……と、友達かー。そうだね……あはは」

「あっ……」

「その察したみたいな顔、止めて欲しいなぁ!? いやいないわけじゃないよ!? ただ少ないだけだよ!」

「アラタとRECOCOゎ……ズッ友だょ……!!」

「だから止めてっていってるでしょー!」

 

 ふざけ過ぎてしまったようだ。

 ぷんぷんと目に見えて、怒ったRECOCOのグリーンドールは飛んでいき、アラタもごめんごめんとその後を追いかける。RECOCOとの賑やかな時間はもう少しだけ続くのであった。

 

 ・・・

 

 《今日のバトルも楽しかったー! やっぱりガンプラバトルは最高の気分転換だね!》

 

 賑やかなミッションも終了し、ボイスチャットで僅かな時間を交流に費やしていた。

 なんだかんだで二人で行うミッションは楽しかったのだろう。アバターとはいえ、満面の笑みを浮かべていた。

 

 《それじゃ、今日はこの辺で! 生徒会と戦うのは怖いけど、気分転換ぐらいなら協力するからっ!》

「そうだな……。流石にギスギスしたバトルは気が滅入る」

 《でしょでしょ! また一緒に遊んでね!》

 

 もう下校時間もかなりおしてしまっている。

 そろそろ帰り支度を始めなくては、まずいだろう。なんだかんだ言いつつも良好な関係は築けているようで、お互いに笑顔でチャットを終える。

 

「さて、俺も帰るか……」

 

 凝った身体を解しつつ、部室から見える外の景色を何気なく眺める。

 夕暮れに染まる茜色の空には鳥達が気ままに飛んでいた。

 

「翼、か……」

 

 飛んでいる鳥やRECOCOのグリーンドールの翼を何気なく頭に思い浮かんでいると、不意に今朝、みた夢を思い出す。

 

 G-ブレイカーであって、そうではないあの機体。

 シルエットは覚えていても実体は確かには掴めず、手を伸ばしても届かない状態だ。

 いつか形に出来る日は来るだろう、不思議とそんな確信を持ちながら、アラタも帰り始めるのであった。

 




【悲報】書き溜め、ついに尽きる
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