ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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シオン、ライブのあと

「それでは皆さん。朝のホームルームでも言いましたが、放課後までにアンケートを書いておいてくださいね」

 

 ある日の昼休みに授業を終えたアイダがそう言い残して、教室を去ると、思い思いの昼休みが始まる。

 

「限定プラモとかって、どこまで手を加えてる?」

 

 アラタもアラタで何人かのクラスメイト達と何気ない会話に時間を費やしていた。

 

「種類にもよるかなー。クリア系ならコンパウンドって感じだけど」

「メッキやクリアって作るの慎重になるよなー」

 

 ガンプラ作りは例え同じキットでも人によっていくらでも変わってくる。

 そんなガンプラ談義をしていると、廊下の先から幾つもの忙しい足音が聞こえてくる。

 アラタ達が顔を覗かせれば、そこには何人かの男子生徒達が血相を変えて廊下を走り去っていた。

 

「なんだ、あいつら。ホールに去っていったけど」

「──お、おい! 大変だぞ! シオン様が講堂でゲリラライブをするらしい!」

 

 疑問に思っていたら、たまたま後から来た生徒にシオンのライブについて知らされる。

 然程、興味のないアラタは特に反応はしなかったが、その場で話していたクラスメイト達は違った。

 

「マジかよ! 俺たちも行かなきゃ!」

「アラタ、お前も行こうぜ!」

「いや、別に……「ほら、早く!」おい、抱えるな。かーかーえーるーなー!」

 

 シオンのライブともなれば、人が変わったように他の生徒達と同じく講堂へ向かおうとする。

 特にわざわざ向かうつもりもなかったアラタだが、半ば一緒にいたクラスメイト達に抱えられて、講堂に向かうのであった。

 

 ・・・

 

 講堂に到着してみれば、凄まじい熱気と歓声に包まれていた。

 盛り上がりを見せる多くの生徒達の視線の先の壇上にはパフォーマンスをするシオンの姿があり、まさにアイドルのライブだ。

 到着して早々、クラスメイト達は早く自分を参加しようと抱えていたアラタを投げ捨て、ライブに参加していった。

 

「ジーク・シオン! ジーク・シオン!!」

『ジーク・シオン! ジーク・シオン!! ジーク・シオン!!! ジーク・シオン!!!!』

 

 痛む体を起こしながら、壇上を見ればシオンに合わせて響き渡らんばかりのコールが行われている。

 アイドルのライブに参加したことはないが、こういうものなのだろうかとアラタは一人、取り残されたままその様子を眺めていた。

 

「この調子でシオン公国の臣民を増やしちゃうぞっ! みんな、シオンについてきてね!」

 

 シオンが何か口にすれば、面白いほどに観客が、シオン公国の臣民達が大声で応える。

 

「「「「「シーたんっ! シーたんっ!! シーたんっ!!!」」」」」

 

 中にはプレバイの店員であるマスミと三馬鹿、更にはショウゴの姿もあるではないか。

 勢いを見せる臣民達にシオンは満足げに頷くと……。

 

「うんうん、その調子っ! じゃあ、一曲歌おうかなっ! 聞いてね、メビウスの時空を越えて!」

 

 アウトだろ、と思うのはアラタ一人のようで、誰にも止められることなくイントロが流れる。

 それに合わせてシオンのその小柄で可憐な身体を曲に乗せて、動き始める。

 それが臣民達の刺激となり、ボルテージが上がっていくのだが、それが悪い方向にも働くようで……。

 

「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!! 好きだ! 好きだァーッ!!」

「ちょ、ちょっと、ダメ! ステージまで上がってこないで! ルール違反だよー!?」

「ルールなんて知らないっす! 俺、もう我慢できなくって!」

 

 なんと興奮のあまり、生徒の一人が壇上まで駆け上がっていったではないか。

 あまりの行動にシオンも歌どころではなく、何とか宥めようとするのだが、近づけば近づくほど興奮してしまうようだ。

 血走った目で近づいてくる生徒にシオンもたまらず悲鳴をあげてしまう。

 

「おいおい、これはちょっとやりすぎじゃあ……」

「誰か助けないとマズいんじゃないの……?」

 

 シオンに熱狂していた生徒達も流石に困惑し始める。

 誰か、誰かと迫られているシオンを助けてくれる存在を求めていると、不意にシオンに迫る生徒の腕が強く捻られる。

 

「てめぇ、シーたんになにしようとしてんだ」

「痛っ、いてて。冗談っす! 本気じゃないっす!!」

 

 なんとマスミがシオンの為に駆けつけたではないか。

 腕を捻られている生徒は勘弁してくれとばかりにマスミの腕を叩くと、程なくして解放される。

 

「あ、ありが──「目の前にシーたんがッッッッッ」……え?」

「デュフフ……アマタ・マスミ29歳独身プレミアム購買部勤務。ドゥフッ! ……は、初めてあなたを見た時から心火を燃やしてフォーリンラブでした」

 

 これで一安心……かと思いきや、そうはいかなかった。

 非常に気持ちの悪い笑みを浮かべながら、マスミはじわりじわりとシオンに近づいていく。

 

「あ……握手してください。握手……あああああ、ああ、あくっ、あくしゅ!」

「ヤベェ、事案だ! お前ら、カシラが通報される前に止めんぞ!」

「ウザイ……。なにやってんだよ、あのオッサン……」

「もう僕たちで通報しちゃう?」

 

 シオンを助けたヒーローから一転、気持ちの悪い不審者となって、怯えるシオンに迫っていくマスミに三馬鹿のリーダー格が緑髪と赤髪の青年に声をかけて、壇上に向かおうとするのだが、ふと足を止める。

 

 じわじわと迫るマスミだが、ふと肩をポンポンと叩かれる。

 いいところを邪魔されて、顔を顰めながら振り返れば、そこにはアラタの姿が。

 

「Ready go」

「Overflow……?」

 

 笑顔で頷かれたかと思えば、そのままイオリチャンに刻み付けられた技を仕掛けられ、たちまちヤベエエェェと悲鳴をあげ、程なくしてマスミもギブアップして沈静化する。

 漸く終わったかと誰もが胸を撫で下ろしていると、安堵したシオンがアラタに駆け寄っていく。

 

「ありがとう、大佐っ!」

「はいはい、これで一日一善行のノルマクリアね」

「シオン公国の臣民も時には暴走しちゃうの。だから大佐はいつもシオンのことを守っていてねっ!」

「まったく……レイナはなにやってるんだ?」

「今日は放送部のお手伝いで来れないって……。シオンさびしい」

 

 くすんと泣き真似しつつも、シオンは三馬鹿によって正座させられている暴走した生徒とマスミのもとへ向かっていく。

 

「もう悪いことしちゃダメだよ! シオンは”みんなのシオン”なんだから」

「は……はいっす」

「申し訳ねぇ……」

 

 自分が襲われかけたにも関わらず、柔らかで可憐な笑顔で人差し指を立てながら、優しく注意するシオンに、これには暴走した二人も縮こまりながら反省する。

 

「助けてくれた大佐には特別褒賞として、シオンと一緒にミッションさせちゃいます! じゃあ、早速行こっ!」

 

 シオンの関心は既にミッションに向いてしまった為、ライブどころではなくなり、アラタの手を引くと、駆け抜けるように講堂を後にする。

 

「し、シーたん、俺も助けたんだけどっ……!」

「その後のせいでプラマイゼロだろ」

「カシラには、もう少しスマートって言葉を覚えて欲しいもんだね」

「ウザイ……」

 

 正座していたマスミもシオンの後を追おうとするが、痺れが来たのか、そのまま跳ねるように転んでしまう。

 後に残った三馬鹿は咎めながらも、痺れたマスミの足の裏を突くのであった。

 

 ・・・

 

 シオンに連れられて、やって来たのは第08部の部室だった。

 今は誰もいないようで、アラタとシオンの二人だけの空間となっており、途端にシオンは恥らうように身体をもじもじと揺らす。

 

「こうやって二人きりだと、二人の秘密の場所みたいで、ちょっとドキドキしちゃうなっ」

「なるほど。ここでスキャンダルが撮られると」

「むぅ、シオンはその辺り、ちゃんとしてるから大丈夫なの。じゃあ、準備はいい? ミッション開始するよっ」

 

 少しは照れるかと思いきや、飄々と両手の親指と人差し指を合わせ、カメラに見立てて、こちらに向けてくるアラタにぷくっと頬を膨らませながらも、シオンはバトルシミュレーターのセッティングを済ませると、二人で出撃するのであった。

 

 ・・・

 

 フィールドとなる地下基地に投影されたG-ブレイカー。

 障害物となる周囲の施設を見渡していると、程なくしてシオンのガンプラも現れた。

 

 νガンダムをベースにしたそのガンプラは右肩にはシールド、左肩にはスパイクのショルダーアーマーなどジオン系のパーツを組み込まれた白とピンクを基調にしたガンプラだ。

 名前はダイクウジ・シオン専用ガンダム。……いや、これが実際にこのガンプラに名付けられた名前なのだ。

 

「よーし、大佐! いっくよーっ!」

「あ、ああ……」

 

 NPC機達が出現し、警戒するのも束の間、まるでモビルトレースシステムでも使用しているのかと思うほど、片手をあげ、きゃぴきゃぴとポーズをとると、先陣を切る。

 シオン専用ガンダムの登場から面食らっているアラタは我に返りながら、慌ててその後を追う。

 援護するのは当然としても、シオンが一体、どのようなバトルをするのか、それはそれで興味はあった。

 

 NPC機達との戦闘が開始された。

 銃口を向けられるよりも早くシオン専用ガンダムが動いた。

 まず素早く銃口を向けることによって、相手の銃器を破壊すると、すかさず二射目で本体を貫いたのだ。

 

「凄いな……」

 

 それだけでも凄いというのに、なによりシオンのバトルの特徴は一つ一つの動きがポージングのように様になっていたのだ。

 最初こそ困惑させられていたシオン専用ガンダムも今ではその動きを目で追いたいと思えるほどだ。

 

 しかし、こちらは二機に対して、敵機体は無数にいる。

 その中の一機がシオン専用ガンダムにライフルを向けるも、シオンはまだ気付いてないようだ。

 その引き金に指が添えられた瞬間だった。

 

「っ!?」

 

 シオン専用ガンダムの背後で爆発が起きる。

 ライフルを向けていたNPC機が爆発し、驚いたシオンが振り向けば、まだ彼女が気付いていなかった他のNPC機達が次々に撃破されていた。

 

「援護するから好きに動いて。もっと見てみたいんだ、その動きを」

 

 シオンの動きはアイドル故か、その一挙手一投足がパフォーマンスのように美しく、楽しめるものだった。

 それはシオンの才能もあるが、このガンプラをこうやって動かしたいという想いがなければ出来ないものだろう。

 

「……うんっ! 分かった! ちゃーんと近くでシオンの動きを見ててね、たーいさっ!」

 

 まるで花冠のようにシオン専用ガンダムの周囲にビームプレーンが展開され、さながらステージのようだ。

 であれば、死角となる位置にいるNPC機がG-ブレイカーによって撃破され、光となる姿はステージを照らすライトだろうか。

 

 全ての準備は整った。

 まさにアイドルのパフォーマンスのようにシオンのバトルが再び始まるのであった……。

 

 ・・・

 

「大佐、凄いっ! 前にバトルを見た時よりも、動きが綺麗だったよっ!」

 

 バトルを終えて、見たいものが見れて満足していると、一足先に待っていたシオンがタタタッと駆け寄ってくる。

 

「ライブでも、バトルでも、シオンのことを守ってくれたし……。やっぱりシオン公国に大佐は欠かせない人なのっ! シオンの目に狂いはないのだーっ!」

 

 先ほどのライブでのアラタと、バトルでのG-ブレイカーを思い出してか、頬を染め、何度も嬉しそうにうんうんと頷くと、屈託のない笑顔を見せる。

 

「もっともっと実力をつけて、打倒生徒会を成し遂げ、優良種たるシオン公国の独立を目指すぞーっ!」

 

 えいえいおー! と子供のように元気よく飛び跳ねるシオンに苦笑していると、ふと時計の針が昼休みがもう間もなく終わってしまうのを知らせてくる。

 

「これからもよろしくね、大佐っ!」

 

 シオンもそれを見てか、アラタにウインクしながら手を振ると、一足先に教室へ向かってしまった。

 

「大佐、ねぇ」

 

 一人残されたアラタも先ほどの騒々しさから一転、静かになった部室を去っていく。

 

「俺が大佐ならシオンは誰? ギレン? デギン? キシリア? 謀る? 謀っちゃう?」

 

 そこで大佐に対するララァとは出てこないようだ。

 そんな物騒なことを呟きながら、アラタも教室に戻っていくのであった。




※【このガンプラに誓って】にリュウマのキャラ絵を追加しました
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