ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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学園のゆくえ

「これでアンケート用紙は集まったわね。アラタ、アナタので最後よ」

「はいな」

 

 放課後の教室では、クラス委員長であるイオリがアイダが言っていたアンケート用紙を全て集めていた。

 アラタもその手伝いをしており、彼の用紙を回収すれば、これで全てが揃う。

 

「アナタはどんなこと書いてるのかしらね」

「見てもいいよ」

 

 アンケートは匿名のもので、誰がなにを書いたかは分からない。

 アラタから用紙を受け取りながら、ふと興味を覚えたイオリは何気なく口にすれば、別に見られて困るものじゃないのか、あっけらかんと答えられた為、それならとアラタのアンケート用紙に目を通す。

 

 Q1 学園内でイジメなど辛いことはありましたか?

 

 A  辛いわー天才過ぎて辛いわー

 

 Q2 ガンプラバトルで何か感じることはありますか?

 

 A  G-ブレイカーが俺にもっと輝けと囁いている

 

 Q3 あなたはそこにいますか?

 

 A  見りゃわかるだろ

 

 途中まで読んで、これ以上は止めた。

 チラリとアラタを見れば、とても良い笑顔でサムズアップしているのが憎たらしい。

 

「……兎に角、これで全部ね。あとは私が職員室まで持っていくから、あなたは先に部室で待ってて」

 

 この男に一々、ツッコンでいると身が持たない。

 アンケート用紙を全て集めて、トントンと整えながら、後は自分で届けると声をかける。

 とはいえ、手早く住んだのはアラタの協力もあったからだ。

 少し言いにくそうに視線を彷徨わせると、去り際に……。

 

「そのっ……ありがとう。手伝ってくれて」

「あっ、デレた」

 

 これがなければ……と無言のアイアンクローを放ち、アラタの悲鳴が響き渡ると、机に突っ伏すアラタを他所にイオリは職員室に向かうのであった。

 

 ・・・

 

「酷い目に遭った……」

 

 それから暫らくして、やっと回復したアラタはイオリに言われたとおり、部室へ向かおうとする。

 だがふと廊下の方からざわつくような声が聞こえ、なんだろうと足を止めていると、この教室の入り口にリョウコが姿を見せたではないか。

 

「……ここにいたか」

 

 どうやら目的はアラタだったようだ。

 相変わらず眉を寄せ、厳然とした表情でアラタのもとへ歩み寄ろうとする。

 

「あぁ、オオトリ先輩」

「……えっ」

「えっ」

 

 ……それもアラタの前では崩れるわけだが。

 アラタが何気なく口にした呼称に厳しい顔つきだったリョウコもショックを受けたかのように固まったため、呆気にとられてしまう。

 

「きょ、今日はちゃん付けじゃないんだな……」

「この間、ちゃん付け止めろって嫌がってたじゃないですか」

「そ、その通りだが、オオトリ先輩というのは……きょ、距離感があるような……」

「いやだって、一応は俺達対立してますし、距離感とか言っちゃいます?」

「そうだがっ……そうだが……っ……!」

「それが嫌なら、ラプラスの盾のリーダーで」

「……んーっ! んー……っ!」

「えぇっ……」

 

 リョウコちゃんからのオオトリ先輩呼びは一気に距離が開いたように感じたのだろう。

 最後には涙目でなにか訴えかけようとしているリョウコに困惑してしまう。

 

「……ところでなにか用、リョウコちゃん」

「っっっ!! ちゃ、ちゃん付けで呼ぶなっ!」

(面倒臭いな、この人……)

「コ、コホン……今日はお前達を粛清しに来たわけではない」

 

 ため息をつきながら、望み通り? ちゃん付けで呼んだら、言葉とは裏腹に表情を輝かせ、非常に嬉しそうにしている。その姿に内心、ため息をついていると、リョウコから本題を切り出される。

 

「モリタの話は聞いた。お前達にも色々と迷惑をかけてしまったようだな……。すまなかった……。アレはモリタ自身の不徳。そしてリーダーである私の監督力不足だ。お前たちをどうこうという話ではない」

 

 高揚を隠すように咳払いすると、今更手遅れなのだが、スッと澄ました表情を浮かべる。

 何なのだろうと思っていたが、どうやらショウゴに関することで謝罪に訪れたようだ。

 

「今日はその件ではなく、お前と少し話をしてみたかったんだ」

「まあ、それは別に構いませんけど」

「だが、ここは少し目立つな……。向こうのバトルルームに行こう。それで構わないな?」

(目立つのは、色んな意味でこの人のせいだと思う)

 

 ラプラスの盾のリーダーであるリョウコがこの教室にいるだけで、周囲の注目を引くのに、それ以上にアラタと下手に絡めば、騒がしくなってしまい、余計にだ。

 とはいえ、そのことを口にすれば、なにを言われるかも分からない為、アラタは黙ってリョウコと共に移動するのであった。

 

 ・・・

 

 アラタとリョウコの二人が移動したのは、同階のバトルルームだった。

 これまでリョウコとはバトルルームで縁があったが、利用していたバトルルームは一階だったりと、こうして二年生階のバトルル-ムに訪れるのは初めてかもしれない。

 

「二年生階のバトルルームに来るのは久しぶりだな」

 

 この場には他に利用する者もおらず、アラタとリョウコの二人きりだ。

 楽しかった日々を思い出してか、どこか懐かしそうに目を細めるリョウコだが、所詮、それは過去のものだと首を横に振る。

 

「……昔はよく、ここでユイとバトルをしたんだ。あの頃は楽しかった」

 

 彼女にとってユイとバトルをしていたその時間は輝かしい思い出なのだろう。

 かつて利用したバトルシミュレーターを物悲しげに触れる。

 

「……すまない、感傷に浸ってしまった。今の言葉は忘れてくれ。私は今でもユイにどんな顔をして会えば良いか分からなくてな」

「……そういう風に苛まれる程、仲が良かったんですね」

「……そう、だな。少し昔話に付き合ってもらえるか? といってもほんの一年前の話だ」

 

 物寂しげなリョウコの背中を見て、アラタはバトルシミュレーターへと続く段差に腰掛けながら話すと、後悔か、悲しげに目を伏せたリョウコはバトルシミュレーターから、そのままアラタの隣に座る。

 

「かつて私とユイは、同じ生徒会の仲間だった。友人だったと……そう思う。ユイはとても優しく、強い奴だった」

「それは……まあ、知ってますけど」

「だから彼が……現生徒会長であるシイナ・ユウキが学園の改革のために、生徒会を乗っ取ろうとした時も、最後まで抵抗していた」

 

 ユイの人柄は知っている。

 幼い頃に離れ離れになったが、今、再びガンブレ学園で再会した彼女はアラタが知るままの優しく、芯のある強さを持つ女性のままだった。

 だからこそ例え一人でも、それでも現生徒会を良しとせず、最後まで抗ったという姿は容易に想像できてしまう。

 

「だが私は……飲み込まれてしまった。生徒会長の強さ、そして強さを求めるあの渇望を前に、自分では敵わないと、そう諦めてしまった。彼等の作ったシステムはある意味、正しい。向上心を煽るランキング制、強者に与えられる生徒会特権、強き者をより強く、というその理想。それは強いビルダーを生み出すという観点で見れば、間違いなく成功しているが……」

 

 今でも現生徒会長であるシイナ・ユウキを相対した時のことを鮮明に覚えているのだろう。

 その声は、その身体は僅かに震えていた。

 

「……時々、思うのだ。いつからだろう……この学園のバトルで、生徒達の笑顔が見れなくなったのは、と……。今の生徒会の、弱者を蔑ろにしたあの強さは本当に正しいのか、お前たちを見て、ふとそう思ったんだ」

「──俺は別に諦めたり、立ち止まってしまうような人をあれだこれだと非難するつもりはありません」

 

 強さに飲み込まれた結果に訪れた強さを絶対とする今の学園の風潮。

 未来になにが待つかは分からない。だからこそ選んだその選択肢によって見る”今”にリョウコはどこか後悔しているように見える。

 そんな彼女に今まで黙って話を聞いていたアラタは口を開く。

 

「だって後悔したりしたからこそ、どうすれば良いか、見えてくるでしょ。過去は変えられないけど、でも、少しでも良い方向へ道を戻すことは出来るはずです。だって、それは何より過去が教えてくれた教訓だから。人は過去を労わりながら、未来へ繋げることが出来るって俺は信じてます」

「それはお前達と一緒に、ということか……? いや……それは出来ない。私が今、生徒会を抜ければ、あそこには弱者のことを考える人間が一人もいなくなってしまう。それでは本当に……この学園から笑顔が消えてしまう」

 

 例え生徒会を内側から変えることは出来ないとしても、少しでも緩和材になることは出来るかもしれない。

 今の空気に後悔しているからこそ、リョウコは今なお生徒会に残り続けているのかもしれない。

 

「なあ、アラタ。私がこんなことを言うのはおかしいかもしれないが……私はお前達の活躍に期待している。サイド0とう新たな風が、この学園に新しい何かを運んできてくれるかもしれない、とな。私は生徒会の人間だ。表立って支援することは出来ないが……お前はお前の信じるものを貫けば良い」

 

 今回、こうやって連れ出されてまで話を持ちかけられたのは、内心で今の生徒会が齎した影響をよしとしないリョウコが、これから一層の激動の中に身を晒すであろうアラタやサイド0へ彼女なりに激励を送りたかったのかもしれない。

 

「言いたいことは、これで全部だ。つき合わせて悪かったな」

「ラプラスの盾のオオトリ・リョウコちゃん先輩リーダー……」

「……そこまでいくと、もうよく分からんな」

 

 アラタのスマートフォンにイオリからの着信が入り、震えている。

 どうやらいまだ部室に顔を出していないことに対して、不審に思って電話してきたのだろう。

 それを見たリョウコは一息つくと、すっと立ち上がる。

 

「過去を労わりながら未来へ繋げる、か。お前と話せてよかった……。ではな、アラタ」

 

 最後に振り向きざまにどこか儚い表情を見せながらリョウコはバトルルームを去っていった。

 その姿が頭に残ってしまったのか、一人残されたアラタはため息をつきながら、頭をポリポリと掻くと、彼もまた部室へ向かう為、この場を去るのであった。

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