ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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悲鳴が聴こえる

 アラタとマリカがチャレンジしたのは月面基地を舞台にしたミッションだ。

 既にNPC機は二人によって撃破されており、残すはボスエネミーとなる強襲機動特装艦アークエンジェルのみであった。

 

「ノイマンマニューバのないアークエンジェルなんて怖くない、とは言い切れないか!」

 

 月面基地をフォトン装甲を輝かせ、鮮やかに翔けるG-ブレイカーはリフレクターモードとビームプレーンを展開しながら、アークエンジェルの砲撃を回避するが、それでもイーゲルシュテルンやバリアントなどモニター全体を覆い隠すような攻撃を前にアラタも笑みを浮かべつつも、冷や汗をかく。

 

「いきましょう、先輩っ」

「おっ、マリカちゃん……前に出るか」

「はい! マリカマルには前に進んでもらいたいですからっ」

 

 すると、アークエンジェルの攻撃を怖れずに、掻い潜りながら突き進むマリカマルの姿を捉える。

 やはり以前、アラタと一緒にバトルをした時の影響か、臆さずに前に出ようとする意志を手に取るように感じることが出来た。

 

「なら、その道を開けてやらなくちゃいけないな」

 

 リフレクターモードによって吸収したエネルギーを全てフォトントルピードに回す。

 

 これはあくまでガンプラバトル。

 ならば原作のように低出力に抑える必要もなし。

 高出力で放たれたフォトントルピードによって周囲の武装やリニアガンが破壊されると、その際に発生する光をそのままエネルギーに変換したG-ブレイカーは水を得た魚のように素早くアークエンジェルの懐に潜り込むと、アサルトモードによる高出力ビームを放ちながら、後方から抜け出る。

 

「さあいけ、マリカちゃんっ!」

 

 トラフィックフィンとビームライフルのありったけを放ち、スラスターの一部を破壊して、バランスを崩させると、瞬時にマリカに指示を出す。

 コクリと頷いたマリカマルはツインアイを輝かせると、そのまま超高インパルス長射程狙撃ライフルを構え、最大出力で放つ。

 狙い澄まされたその一撃はアークエンジェルのメインブリッジを貫き、轟沈させるのであった。

 

(マリカちゃん、前よりも強くなってるな)

 

 轟沈するアークエンジェルを尻目にミッション前にクリアできなかったといっていたことから、手放しで喜んでいるマリカマルの姿を見ながら、先ほどの戦闘を評価していた。

 

 ・・・

 

「わぁっ……!」

 

 バトルを終えて部室で合流すれば、マリカは先程のバトルを思い出してか、感激のあまり今にも泣き出しそうなほど嬉しそうに表情を輝かせていた。

 

「先輩と一緒にプレイして良かったですっ! 本当に、本当にっ、これまで何度やってもクリアできなかったから……っ!」

 

 今まで苦い思いをしていた分、アラタと一緒であったとはいえ、クリアしたときの喜びは一入なのだろう。

 マリカはそのまま嬉しさのあまりアラタに詰め寄る。

 

「うれしい! 本当にうれしいです! やっとクリアできた、あのミッション……。やったぁ……!!」

 

 勝利を心の底から噛み締めていたマリカだが、ふと知らず知らずに自分がアラタの間近にいたことに気付く。

 アラタからの反応がないまま、慌てて距離をとると……。

 

「あ、あの……ごめんなさい! 舞いあがっちゃって……」

「……」

「今日も先輩のガンプラ、カッコ良かったです。動きも、すごく勉強になって……」

「……」

「あのっ……私も早くバトルを覚えて、お役に立てるよう……頑張りますからっ!」

「……」

「先輩……?」

「──」

「し、死んでる……」

 

 一向に反応がないため、不審に思って見上げてみれば、そこには目を瞑ったまま、非常に良い顔で合掌して動かない自称天才がいた。

 まあ脈はあるので、本当に死んでいるわけではないようだが、いくら何か反応を貰おうと袖を引っ張ったりしたところで、アラタの雰囲気が輝くばかりで余計に反応を得ることが出来なかった。

 

「!」

 

 どうしよう、と慌てていると不意にマリカのスマートフォンに着信が響く。

 

「……っ!」

 

 誰だろう、とスマートフォンを取り出して、送り主を見た瞬間、マリカは目に見えて、目を見開き、息を呑んだ。

 すると狼狽えながら周囲を見渡すと、埒が明かないとばかりにその華奢な手をがら空きのアラタの頬に叩くように触れる。

 

「あだぁっ!?」

「ご、ごめんなさい、先輩……。ちょっと、急用が……そのっ……」

(あ、あれ……? 俺、マリカちゃんにビンタされたの? どっちかっていうとショックのほうが大きくて、ビンタってよりはタッチだったけど……)

 

 漸く我に返ったアラタに、このようなことをしたのは初めてだったのだろう。

 頬を抑えながら今の状況とマリカを交互に見るアラタに謝りつつも、どこか焦った様子で話す。

 

「少し、部室を空けます……。イオリ先輩と、トモン君には、えっと……戻るの、待たなくて良いと伝えて置いてください……」

「そ、それはいいけど……。なにかあった?」

「なっ、なんでも……ない、です……。きょ、今日はこれで失礼します!」

 

 目に見えて、落ち着かないマリカを気遣って、声をかけるが、なにか後ろめたいことでもあるのか、声をかけられただけで酷く震え上がり、アラタが戸惑っている間に一気に捲し立てて、部室を後にするのであった。

 

 ・・・

 

「なんだったんだろうな、マリカちゃん」

 

 マリカが部室を後にして、十分弱が経過した。

 やはりあれだけ不審な態度をとられれば否が応でも気になってしまうのは致し方ないことだ。

 

 自身のスマートフォンを取り出して、連絡先のマリカを表示させたまま固まる。

 このまま連絡をとるのは簡単だが、答えない、もしくは嫌がられる可能性は大いにある。

 どうするべきかと頭を悩ませていると──。

 

「──なあ、もしかしたら部室にもういるんじゃねえの?」

 

 廊下の先から能天気にも思えるリュウマの声が聞こえてきた。

 あの筋肉バカ、やっと来たかとスマートフォンをポケットにしまおうとした時であった。

 

 ピロリロリーン

 

 その時、アラタに電流走る。

 

『あれ、イオリ先輩に会わなかったんですか? さっき無理やりトモン君を連れて先輩を探しに行くって言ってましたけど……』

 

 思い出すのは数十分前のマリカの言葉。

 そして今、部室にやってきているであろうリュウマの話の内容を察するに、相手は……。

 

(イオリチャンと同じ部屋にいられるか! 俺は自分の部屋に……。えぇい、どこかに隠れさせてもらう!)

 

 そのままスクッと身を起こすと、周囲を見渡す。

 どんどん廊下から聞こえてくるリョウマの声と足音が大きくなっていることから、今更、部室を出ることは出来ない。

 

 であれば後は隠れてやり過ごすのみ。

 部室内で隠れられるような場所を探して、見渡していると、ふと先ほどまで利用していたガンプラバトルシミュレーターが目に留まる。

 

 ・・・

 

「あれ、部室にもいねえか」

 

 数分後、リュウマとイオリが第08部の部室にやって来た。

 部室内は蛻の殻であり、当てが外れたとリュウマが首の辺りを摩っていると……。

 

「……いえ、リュウマ。アナタの言っていることは正しかったわ」

 

 隣にいたイオリが突然、声を上げた。

 確信のあるようなハッキリとしたものだ。

 スンスン、と鼻を鳴らし、やがて嗅ぎつけたとばかりに獰猛な笑みを浮かべると部室内のガンプラバトルシミュレーターに向かっていく。

 

「見ぃーつけた」

 

 一つ、また一つと部室内のシミュレーターが開かれていく。

 そして最後に残ったガンプラバトルシミュレーターの前に立つと、薄ら笑いを浮かべながら、ゆっくりと扉を開けば、そこには両手で口元を抑えて、必死に呼吸音が漏らさないようにしているアラタの姿が。

 

「ま、待てたぜ、ハニー」

「他の女の匂いをつけたまま、よく言えたものね。この甘い香り……レイナ先輩と……もう一人いるわね」

「なんで分かるんだよ!?」

 

 せめてもの余裕か、冷や汗をダラダラとかいたまま、三本指を振るってウインクするアラタだが、その直後にイオリからさも当然のように言われた言葉に悲鳴に似た声をあげる。

 

「さて、待っててくれたのよねぇ? じゃあ、人の連絡をずっと無視した理由をじっっっくりと聞かせてもらおうかしらぁ?」

「ひっ!? りゅ、リュウマたすっ! 助け──!」

 

 ジリジリと迫るイオリにアラタは助けを求めながら、後ずさるがそれがいけなかった。

 スペースが空いたアラタがいるシミュレーターにイオリはそのまま乗り込むと、アラタと密閉空間の二人きりとなるようにシミュレーターの扉をゆっくりと閉め、助けを求める声はたちまち悲鳴に変わる。

 いつものことで慣れているリュウマはくだらねえことに付き合わされた、とアラタの悲鳴とイオリの高笑いをBGMにプロテインバーを咥えるのであった。

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