ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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囚われのガンプラビルダー

「結局、昨日、マリカちゃん戻ってこなかったね」

「私には……少し様子がおかしかったように見えました。何か、悩みでも抱えているのでは」

 

 翌日の放課後、第08ガンプラ部の部室にはマリカを除くサイド0の面々が集まっていた。

 話題は去り際の言葉とは裏腹に結局、戻ってくることはなかったマリカのことであり、皆、彼女になにかあったのかと案じていると、部室の扉が開き、そこにはおどおどとした様子のマリカがいた。

 

「あ……こ、こんにちは……。……その……みなさん、お元気ですか?」

「私は元気だけど、マリカちゃんは?」

 

 口で言って、結局、戻ってこなかったこと自体、気にしていたのか、どことなく気まずそうに話しかけてくるマリカにユイは柔らかく微笑むと、彼女の挨拶に返す。

 しかし、今日の彼女はどうにも挙動不審であり、ピクリと震えると……。

 

「わ……わたしは、その……げ、元気ですよっ!」

「そう言うわりには、目の下にクマが出来ているような」

「目がちょっと腫れてるようにも見えるよ?」

「どことなく負のオーラが見えるな……。大丈夫? リュウマの雄っぱい揉む?」

「なんだよその励まし……。っつーか、栄養足りてるか? なんか前よりも肉付きが悪くなってんじゃねえの」

 

 声を上擦らせて答える彼女にますます不審さが感じられる。

 口々に今のマリカの姿に感じたことを口にしていると、やがて四人は顔を見合わせ……。

 

「「「怪しい」」」

「……怪しいわね。もしかしてこれは……!」

 

 ユイが何か確信したかのように声を上げ、じーっと視線がマリカに集中するなか、その視線に耐え切れなくなったのか、ビクッと身体を震わす。

 

「な……なんですか? こ、これは勉強のし過ぎで……わ、わたし、ちょっと今日も用があるので……す、すみません……!」

「あっ! ちょっと待って……!」

 

 最後には涙目になって、声を震わせながら逃げるように去っていくマリカを呼び止めようとするも、その声は届かず、マリカは去っていってしまった。

 

「これは……問題ですね」

「そうね。きっと誰にも言えなくて悩んでいるのよ」

「ユイ先輩、心当たりが?」

「ええ、とりあえずマリカちゃんを探すわよ」

 

 明らかに不審な態度のマリカにイオリが顔を顰めていると、なにやら今のマリカについて分かったことでもあるのか、ユイはうんうん、としたり顔で頷いているとマリカを探そうとする。

 

「けどどうすんだよ。この学園、だだっ広いんだから闇雲に探しても仕方ねえんじゃ……」

「任せておきなさい。昨日から彼女が挙動不審だったから、ケータイのGPSに細工をしておいたわ。こちらで位置情報の把握が可能よ」

「……イオリちゃん、時々凄いよね」

 

 とはいえ、マリカを探すにもどうすれば良いのか、とリュウマが頭を掻きながら悩んでいると、得意げな顔で自身のスマートフォンの画面を見せるイオリに彼女以外の面々は顔を引き攣らせる。

 

「……」

 

 アラタもその一人だったが、ふと何かに気付いたようにハッと顔をあげると、背を向けて、自身のスマートフォンのGPSの設定を調べようとした瞬間……。

 

「──余計なことはしないほうがいいわよ?」

「アッハイ」

 

 握り潰さんばかりの握力で肩を掴まれてしまった。

 振り返るのも恐ろしいが、耳元で囁かれた天使の悪魔の声に操り人形の如く流れる動作で大人しくスマートフォンをしまう。

 前の一件があったからってきっとなにもない。なにもないんだ。いいね?

 

 ・・・

 

「どうやら、彼女はこの中のようです」

 

 イオリが細工したGPSの反応を頼りに校内の廊下を歩いていると、とある部室の前にたどり着いた。

 

「ここは……第02ガンプラ部……!」

(前に部活巡りした時は金持ちとそれに群がる奴等の集まりって印象だったなぁ……。あの時、部長はいなかったけど)

 

 何故、マリカが第02ガンプラ部に9いるのか?

 ユイが困惑するなか、この部室の印象を思い出しながら、アラタ達はなるべく音を立てぬようにして第02ガンプラ部の部室へは入っていく。

 

 ・・・

 

「静かに、足音を立てないように……。それにしてもこの設備、凄い……!」

「……はい。正直、羨ましいです」

 

 摺り足忍び足と第02ガンプラ部に潜入するよ、眼前の光景に圧倒されてしまう。

 第08ガンプラ部の設備など足元にも及ばないほど、最新の加工設備が整えられていたのだ。

 二本の柱型のショーケースには趣味か何かなのか、精巧に作られた百式とゴールドスモーが飾られていた。

 

「──それなら、私達のチームに入ってはどうかな?」

 

 本来の目的も忘れて、第02ガンプラ部の最新設備に夢中になっていると、突然、後ろから声をかけられた。

 ビクッと震え、ブリキ人形のように振り替えれば、そこには金色の長身の男子生徒が立っていた。

 

「お初にお目にかかる者もいるな。サカキ・シモン……。輝ける精鋭部隊、ゴールデンコスモスのリーダーだ」

「そ、それじゃあ……っ!」

 

 流石に聞き耳を立てるどころか部室にまで入ったのだから、バレるのは当然か。

 自己紹介を、とばかりに名を明かすサカキに途端にユイはわなわなと震える。

 一体、どうしたのだろうかと全員の視線がユイに集中していると……。

 

「まさかあなたがマリカちゃんの片思いの相手!?」

 

 その言葉が事態を混沌へ導いた。

 

「ユイ先輩、なにを言って──」

「な、なんですとおおぉぉぉぉおっ!!!?」

 

 思いもしない発言に部室の奥にいたマリカも「……え」と反応して顔を出すなか、呆れるイオリの言葉は飛び跳ねるように反応した自称天才によって遮られ、頭が痛そうに眉間を抑える。

 

「っんだよ、水臭ぇな。ちょっと待ってろ。今、コンビニで赤飯のレトルト、買ってくっから」

「えぇい、マリカちゃんが好きになった男だ。否定するような真似はすまい! それよりもマリカちゃんをどう思っているかだ! 両思いだというのなら、今すぐ式場を抑えてくるから神妙に待て!」

 

 各々、勝手に祭りか何かのように第02部の部室から出て行こうとする男二人だが、いつの間にか背後に滑り込んだイオリによって一瞬のうちに無力化された。

 

「……ユイ先輩、どういうつもりなのでしょうか?」

「え? だって、いつもチャットしてて夜眠れなくなるぐらいで、泣き腫らした目をしてたり、って。てっきり私……「ユイ先輩、少し黙っててください。今、シリアスな場面なので」は、はい……」

 

 足元に男二人が突っ伏すなか、指をぽきぽきと鳴らしながら事と次第によってはと、ギロリと鋭い視線で見られたユイは縮こまりながら答えるが、その最中にビシャリと被せられ、沈み込む。

 

「……さて、どういうことです? どうしてマリカが生徒会傘下の貴方といるんですか」

「別に驚くようなことではないと思うが? 彼女は私と取引をしていたに過ぎない」

 

 なんだこの茶番は、と痛々しいサカキの視線に咳払いをして、気を取り直しつつ再び、イオリとサカキの問答で場の雰囲気は張り詰めたものになっていく。

 

「そう、取引だ。知っているかな? 君たちが根城にしている第08部室……。あそこは本来、取り潰しの予定だったことを。そこで私が救いの手を差し伸べたのさ。我がチームのガンプラを作る限り、あのカビ臭い部室の取り潰しは待ってやろう、とね。バトルの腕は最低クラスでも、ビルダーの才能はあったようなのでね。勿論、無理やり脅してどうこうという話ではない。美しくない行いは、私の最も嫌うところだ」

 

 その言葉に回復したアラタはかつてのイオリの言葉を思い出す。

 第08部は殆どが幽霊部員だという。

 現にアラタ達もマリカ以外の08部の部員を見たことがなく、実質、マリカ一人といっても過言ではない。

 であれば取り潰しも妥当なところだろう。

 

「そんなの、断れるわけないじゃない! 脅迫と一緒よ!」

「……それは生徒会の権力を利用したということですね」

 

 しかしだ、口では脅してはいないというが、そうせざる得ない状況に仕向けているのは明白だ。

 初めてマリカと出会った時の、心の底から辛そうに今の生徒会はイヤだと、限界だと口にする彼女の姿が脳裏に過ぎり、ユイとイオリは口々にサカキを非難する。

 

「何の問題がある? 利用できるものは全て利用するべきだ。それこそが強者の特権なのだからね。私には権力と金があり、彼女にはビルダーとしての腕があった。妥当な取引だと思うけれどね?」

「……そう、それが貴方の考えなんですね」

 

 絶対的強者としての驕りなのか、嘲るような物言いがイオリの怒りを買ったのか、彼女の雰囲気はどんどん険のあるもに変わっていく。

 彼女は人一倍、驕り高ぶる強者と虐げられる弱者という関係に敏感なのかもしれない。

 

「……確かに最新の設備に触れながらガンプラを作るのは、マリカちゃんのスキルアップに繋がるかもしれないし、それで実質、第08部というよりサイド0の活動拠点になっているあの部室がなくならないのは良い事尽くしなのかもしれない」

「ほぅ、少しは話が分かる者がいたか」

 

 どんどんと緊迫していくなか、今まで黙って話を聞いていたアラタがフラフラと立ち上がると、彼が口にしたその内容にサカキは愉快そうに笑う。

 

「でも……うん。少し試してみようか」

 

 アラタにどんな意図があるのか、とユイとイオリが困惑しながら彼を見つめるなか、アラタは陰で生徒会傘下のチームと繋がっていたことが明るみとなり、ビクビクしているマリカに視線を移すと彼女は身体を震わせながら怯えていた。

 

「マリカちゃん、キミはどっちがいい?」

「えっ……?」

「俺達とサカキさんのどっちといたいのかな」

「で、でも……私……」

「この際だ。キミが好きなほうを選べば良い」

 

 もしかして非難されるのか、そう思っていた矢先、穏やかな口調で問いかけられて戸惑ってしまう。

 サイド0を裏切っていた手前、アラタとサカキとの間で視線を彷徨わせるマリカの背中を押すように話すと、やがてマリカは意を決したように駆け出し、そのままアラタの胸の中に飛び込む。

 

「せんぱ、いぃっ……! わだ、し……わたしっ……!」

 

 アラタの胸に飛び込んだ瞬間、今まで耐えたものが決壊したかのように嗚咽を漏らし、涙を流すマリカの震える背中を優しくポンポンと撫でる。

 

「……でも、それでマリカちゃんが喜んでいるのならの話だ。泣き腫れた目の下にクマまで作って……更には前よりも痩せてる……。こんなに追い込むほど酷使して、とんだブラック案件だな」

 

 普段からマリカを可愛がっているアラタだ。

 泣きじゃくるマリカを受け止めて、優しく包むようにその背中を撫でながらも、人目も気にせず、ここまで泣いているマリカを追いやったサカキには煮えくり返る思いなのか、鋭い眼光を突きつける。

 

「か、彼女はガンプラだけではなく、キミ達を裏切ってサイド0の情報を私に流していたのだよ? お陰で私は、キミ達のガンプラの弱点も把握している。それでも彼女と共に行動し、彼女が信じることが出来るとでも!?」

「……っ!」

 

 流石に普段、変人で通っているアラタの刃物のような眼光には慄いたのか、狼狽えながら彼女が行ったスパイ活動についても口にし、全てを明かされてしまったマリカは震える。だが、次に声を上げたのはリュウマだった。

 

「っんなの、知るかよ。俺は信じるかどうかなんざ直感で決めてんだ。俺はマリカを信じるぜ」

「おっ、筋肉バカのわりにはマシなこと言うじゃないの。まっ、そういうことだ。俺はこれからもマリカちゃんと共に行動し、マリカちゃんを信じて、マリカちゃんを愛で続けるよ」

 

 べーっと舌を出すリュウマの子供のような行動に苦笑しつつも、ポンポンとマリカの頭を撫でるアラタに、表情こそ胸板で隠れて見えないもののマリカは耳まで真っ赤にして、今にも湯気が出そうだ。

 

「私も信じるよ。私達はマリカちゃんのガンプラを愛する心を信じる」

「……まぁ、それだけは絶対に変わらないものでしょうしね」

 

 さらりと何言ってんのよ、とイオリに後頭部を叩かれるなか、ユイとイオリは優しくアラタに抱かれるマリカの肩に触れ、マリカは泣き腫らしたぐしゃぐしゃな顔で感激したように鼻を啜る。

 

「さて、俺達はこのままイイハナシダナーで帰れるけど、そっちの気は済まないみたいね」

「当たり前だ! このような茶番を見たくて、やってきたわけではない! どの道、こうなっていたのだ、今ここで投資した資金の差こそが、そのまま戦力の決定的な違いとなることを教えてやる!」

 

 温かな雰囲気のなか、アラタがチラリとサカキを見れば、そこには不愉快そうな様子でこちらを睨んでいるサカキの姿が。

 学園の反乱分子であるチームとこうして相対した時から、こうなっていたのだとサカキはマリカに作らせたガンプラを取り出す。

 

「──グゥーットタイミイイィーーーングゥゥッ!!!」

 

 両者の間で火花が散るなか、突然、第02ガンプラ部に滑り込んできたのはリンコだった。

 

「第02ガンプラ部の前を通りかかったワタクシ、シャクノ・リンコは偶然にもサイド0とゴールデンコスモスのバトルに居合わせました!」

「ホントかー? ホントに偶然か-?」

「これはもう実況するしかありません! 片や生徒会派、片や反体制派の両チームは一体、どんなバトルを繰り広げるのかー!?」

 

 誰もが驚くなか、スライディングから素早く起き上がり、パフォーマンスを行うリンコにリュウマが呆れながらツッコミをいれるが、聞き入れられることはなく、そのまま続けられる。

 

「さて、マリカちゃん、俺と一緒に出撃してくれるかな?」

「でも……私、皆さんを裏切るようなことをしたのに……」

「マリカちゃんに背中を預けられるから頼んでるんだ。大丈夫、全部終わったら空港をバックに良い感じにGet w○ldが流れてる感じになるさ」

 

 普段のようにユイやイオリと出撃するとばかり思っていたから、思わぬ申し出に驚くしかない。

 だが、自身を見下ろしてまっすぐと目を見て話すアラタの姿にやがてマリカはゴシゴシと袖で目元を擦ると、はいっ!と強く頷く。

 まあ、その隣でイオリがどんなスケールの話にするつもりよ…… と呆れていたが。

 

「今回は俺も行くぜ」

「やる気満々だな」

「ああ。野郎はマリカに作らせたガンプラで、俺はお前に作ってもらったガンプラで戦う。そこにどんな違いがあるのか……。俺自身でも確かめてみてえんだ」

 

 すると今度はリュウマが名乗りを上げた。

 以前は連携が取れるからと渋々断念していたが、今回はその想いが強いようで、ケースから取り出したレイジングを見つめながら、まっすぐに答える。

 

「なら、今回はこの三人で勝利を組み立てようか」

 

 ユイとイオリに目配せすれば、彼女達も快く頷いてくれた。

 そんな二人の気遣いに感謝しながら、アラタは余裕たっぷりに三本指をクルリと回すと、マリカは途端に輝かんばかりに表情を明るくさせる。

 

「それでは注目の一戦! ガンプラバトル! レディーーーッ! ゴオォォーーーーーーオッ!!!!!!」

 

 出撃するメンバーも決まり、いよいよ生徒会傘下のゴールデンコスモスとの戦いの火蓋が切って落とされるのであった。




ビルドダイバーズの特別編を見て、またガンダムベースに行きたいなぁと思ったり。あそこでワールドクラスの方が作成したガンプラを見てると、感銘を受けたり刺激になったりしますねー。

鉛筆を使ったザクも素晴らしいけど、個人的にはネガポジ反転をすることで本来のカラーリングになるように作られたガンダムバルバトスルプスレクスネガティヴが好きだったり……(まあ、単純にこれを作った方のファンというのもありますが)

ただ辛いのは同じガンダムファンでも、ガンプラを作る派とそうでない派で行った場合、温度差があることなんですけどねぇ……。
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