ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
バトルを終えたアラタ達がバトルシミュレーターから出てきてみれば、後からゴールデンコスモスも出てきており、特にサカキは敗北が認められないのか、うわ言のように呟いていた。
「原型は勿論、素材や塗料も海外製の高級品……! 最新のバトルシステムまで第02ガンプラ部の部室に用意し、金をばら撒いてチームメイトを集めたんだぞ……!? あれだけ金を……何百万とかけたのに……。」
巨額を注ぎ込んでまで築き上げたものが崩れたような気分なのだろう。
到底、受け入れられないのか、敗因を洗い出そうとするが、このままでは行き着くのは他者への擦り付けだろう。
「メッキなんて剥がれ易いもんでしょ。嗜好品なら兎も角、人が塗り固めた上っ面なんて見てらんないですよ」
その姿は流石に敵とはいえ、見苦しいものがあるのか、アラタはやれやれといわんばかりにため息をつくと、頬をポリポリと掻きながら指摘する。
「ねえ、ガンプラを作るのに、そんなにお金って重要かな?」
「なにぃっ!?」
アラタに続いたのは、バトルを観戦していたユイだった。
ユイの言葉は受け入れられないものなのか、サカキは眉間に皺を寄せ、食って掛からんばかりに睨みつけてきた。
「勿論、ある程度あったほうがいいよ? 工具もしっかりとしたものを使った方が作りやすいし、パーツだってそう……。でもサカキ君は、そのお金をかけた工具に触ったの? マリカちゃんにさせたみたいに全部、人任せじゃないの?」
サカキの眼光には臆することはないものの、それ以上にただ闇雲に金が、素材が、と拘るその姿勢に悲しんでいる様子だったのだ。
「バトルをしていても俺はお前から、見栄っ張りってだけで、なにも感じなかった。メッキっていわれた意味はそこにあるんじゃねえのか」
「……バトルをすれば相手の想いは伝わってくるもんですよ。貴方にはガンプラへも、バトルへの愛が俺達には感じられなかった」
リュウマの指摘に乗りながらショウゴの時同様、思うところがあるようだが、今は極力、表には出さずに話すと、サカキはたじろぐ。
「あ……愛……? 愛だって? 君達にはそれがあると!?」
「当たり前です。自分のクセや好み、戦い方を考えて組み上げたガンプラは私達の分身です。貴方はどうです? その機体のクセを、特性をちゃんと把握できていますか?」
「誰かに作ってもらったガンプラで戦う……。それ自体は否定しない。でもその分、ちゃんとそのガンプラを愛さなくちゃ。作ってくれた人以上に愛せなきゃ、性能だって引き出せないよ」
なにが愛だとばかりに食って掛かるサカキだが、至極当然だとばかりにイオリに即答され、逆に鋭い指摘を受けてしまう。何も言い返せないサカキにユイはアラタから託されたレイジングで戦うリュウマは傍から見て、愛を感じるのか、隣同士で立っているアラタとリュウマを見ると、二人は気恥ずかしそうにそっぽを向く。
「サカキ先輩は……ガンプラが……嫌い、ですか……?」
サカキが指摘の一つ一つに反論できず、悔しそうに顔を歪めていると、今まで黙っていたマリカがおずおずと口を開き、尋ねた。
「なにを言う!? 嫌っていたらバトルなど……そもそもこの学園になど来やしない!」
「だったら、もう少しだけでいいです……。ガンプラのこと……考えてあげてください……」
今まで言われっ放しだったサカキだが、それだけは違うと機敏にすぐさま答える。
その様子に、だからこそどこか悲しそうにサカキが負けた後の悔しさから粗雑に手に握られているオーロドを見つめる。
「そのガンプラならもっと有効な戦術がありました……。パーツも、後付けのものが邪魔しています。そもそもチーム戦用にデザインしたのですから、運用の仕方を変えるなら手を加えないと──!」
「そ、そうか……すまない」
段々とマリカの言葉に熱が入っていく。
ずっと強者と弱者であったサカキとマリカの関係も様変わりし、ガンプラに関する豊富な知識を話され、金に物を言わせていたサカキは初めて知ることも多く、ただただ話を聞いているしかなかった。
「あのさ、マリカちゃんって時々、妙に饒舌になることがあるよね……」
「それだけ、自分のガンプラを愛しているんでしょう。私も少し、気持ちが分かります」
静かながら矢継ぎ早に話すマリカにたじたじのサカキを見ながら、ユイが時々見られるマリカの様子に驚いて、近くのイオリに話しかけると、イオリもマリカの姿を見ながら微笑ましそうに笑う。
「──わかりましたか? サカキ先輩」
一方で漸く一区切りついたのだろう。
ちゃんと身に着いているのかとマリカが確認すれば、いつの間にか正座をして、メモをとらされていたサカキはフルフルと震える。
「ガンプラは愛を注がなければ応えてくれない……。なるほど、至言だ……」
マリカから教えられたガンプラに関する知識はサカキの知らないことだらけであった。
知れば、知るほど、それをガンプラに活かしてみたい、自分の技術として注ぎ込んでみたいという想いが募っていく。
「私は撃墜される刹那、レイジングガンダムに美しさを感じた。あれはきっと……彼が言っていた想いが愛となってそう感じることが出来たのだろうな……」
ふとサカキは長話になって集中力が切れたのか、ぼけーっとしているリュウマを見やると、今の様子から考えられぬ、まさに龍を体現したかのような姿を思い出す。
まさに荒ぶる龍だった。しかし恐怖は感じられず、そこには気高い美しさを感じたのだ。あれこそユイ達が言っている愛なのだろう。
「サクライ君……。今さらだが、どうか私にガンプラの愛し方を……作り方を教えてくれないだろうか……? 私も君が作るようなガンプラが作ってみたいのだ」
「えぇっ!? で、でも……」
オーロドを改めて見つめる。
リュウマの言うとおり、無理やり作らせたにも拘らず、一切の手は抜かれていない。寧ろ、自分が後から取り付けたパーツのせいで、その美しさを損ねているようにも感じられる。
これではいけない、とせめて自分の手で作りたいと願うサカキにマリカは困ったようにアラタ達を見る。
「いいんじゃないかな? ガンプラを心から愛してくれる人が増えるのは、私たちも嬉しいし!」
するとユイがそっと背中を押すように柔らかな笑顔を見せながら答えると、アラタ達も同意するように微笑んで頷いてくれた。
「そ、それじゃあ……時々、なら……」
「ああ、頼む!」
やがて決心がついたのか、おずおずと頷くと、憑き物が落ちたかのようにサカキは嬉しそうに明るく答える。
「あ……出来れば、その。その時は、ソウマ先輩も一緒に……どうですか? みんなも一緒に……」
「そうだね、みんなで顔を突き合わせて作るのも楽しそう!」
どこか恥らった様子で最初にアラタを誘うと、その次にユイ達も誘う。
マリカが誘ったという時点で食い気味に頷いたアラタは勿論のこと、ユイ達も歓迎して頷いていた。
「ヘヘッ……俺と同じこと考えてやがる」
「なにが?」
「いつまでも甘んじてらんねえってことだよ」
そのままガンプラ談義を始めるマリカ達を見ながら、リュウマは先程のマリカが作るようなガンプラを作ってみたいというサカキの言葉を思い出して、人知れず笑みを浮かべる。
その言葉だけでは今一、要領を得なかったのか、アラタが聞き返せば、ハッキリとは答えないものの、向上心を感じさせる笑みを浮かべていた。
「──……そうよ。これがあるべき形なのよ」
結局、なにか分からず、首をかしげていると、不意に耳にか細い声が届く。
イオリだ。どうやら独り言のようだが、その様子は今の雰囲気に反して、どこか暗い。
「強い奴が正義なんかじゃない……。“あの時”だってそうだったじゃない。だから今度は私が証明するんだ……!」
それはまるで自分に固く言い聞かせるように。
だがそれは、傍から見てもどこか急いているようにも見える。
「どうした、委員長? 委員長の恐ろしさなら証明しなくたって、俺が身をもって知ってrrrrrr!!?」
「……なんでもないわ。少し、気が焦ってしまっただけ」
暗い雰囲気を和ませようと、いつもの調子でちょっかいをかけるアラタだが、条件反射の如く、素早く耳たぶを無言で思いっきり引っ張られてしまった。
「……大丈夫?」
「本当に大丈夫だから……気にしないで」
いつもならここで何だかんだで明るくなったりするのだが、一向にイオリは暗いままだ。
流石にこれには冗談をいうのを止め、純粋にイオリを心配するのだが、はぐらかされてしまった。
しかし傍から見ても、イオリがどこか気負っているのは見て明らかだった。