ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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今日は三話更新しました。とりあえず書き溜めが尽きるまで、ここから毎日一話投稿します。


学園は荒野

 

「ちょっといいかしら」

 

 授業も終わり、放課後の教室では生徒達がガンプラバトル以外での思い思いの行動をしていた。アラタもこの後、なにをしようか漠然と考えていたら、イオリに声をかけられた。

 

「先生から、この学園の案内をしておいて欲しいと頼まれたの。この後、時間ある?」

「ああ、大丈夫。助かるよ」

「即断即決、即実行。さっきのミッションといい、貴方、期待できそうね」

 

 どうやらこのガンブレ学園を案内してもらえるらしい。即答したアラタにあまり優柔不断なタイプは嫌いなのか、思わぬところで評価してもらえた。と言うよりも、戦闘狂のようなバトルをしていても、こちらのことをちゃんと見ていたのが驚きであり、視野の広さを感じさせる。

 

「それじゃあ早速行きましょうか。この学園は広いから、迷わないように……」

「迷わないように?」

「ファンネルみたいにちゃんと付いて来て」

(独特な人だなぁ)

 

 しっかりしているが、独特なワードセンスを感じさせるイオリの案内により、ガンブレ学園ツアーが始まった。

 ・・・

 

「ここはさっきも使ったバトルルーム。オンライン端末でガンプラバトルが出来るわ」

 

 まず最初に案内されたのは、イオリの言うように先程も使用したバトルルームだ。ガンプラバトルに特化しているこの学園であれば、今後もこの場所を利用することは多々あるだろう。

 

「ただし、今は生徒会の許可がないとこのシステムは使えないことになっているの……。本当、馬鹿みたい」

 

 イオリの言葉に転入時のアイダとの話を思い出す。アイダはいつでも好きにバトルが出来るわけではないと言っていた。辻褄を合わせると、イオリの話通りなのだろう。

 だがそれはガンブレ学園はガンプラバトルに特化した学園という触れ込みであれば、眉を顰めてしまうような話だ。イオリ自身、この現状には思うところがあるのだろう。吐き捨てるように言うと、次の場所へ移動する。

 

 その後、全校集会やガンプラバトルの大会が行われる講堂、体育の授業で使ったり、運動部が部活で使うグラウンドを案内された。特にグラウンドに関しては講堂で収まりきれない大人数のイベントなどは、ここを使うこともあるとのこと。イオリの話では、そんなイベントなんて滅多にない、とのことだが、もしあるのならどんなものなのか楽しみではある。

 ・・・

 

「この奥は生徒会室よ。一般の生徒が勝手に入ることは許されない……。そういうことになっているわ」

 

 大方の場所を案内されると、次に紹介されたのは、生徒会室へと続く通路だった。どことなく異様な雰囲気を感じる、そんな場所だ。

 

「……生徒会の話はまた後でしましょう。ここでは誰が聞いているか分からないもの」

 

 こうやって話している限り、イオリは決して生徒会へ良い印象を抱いていないのが伺える。果たして、この学園になにが起きているのか、心の中に靄を感じながら一分一秒とこの場にいたくないと足早に去っていくイオリの後を追う。

 

 ・・・

 

「ここは第08ガンプラ部の部室ね。この学園にはいくつもガンプラ部があるの。それぞれ特色があって、連邦縛りやジオン縛りとか、ジオラマ派やスクラッチメインなんて部もあるわ」

「流石、ガンブレ学園。全部の部活を見て周りたくなるな。うーん、どんな部活動してるんだろ、ワクワクするなぁっ」

 

 次に紹介されたのは部室の一つだ。そこにはガンプラやエアブラシなどの機材だけではなく、一台だけ古い筐体のガンプラバトルシミュレーターが置いてある。ガンブレ学園は自由に個々のガンプラ道を極めるために設立されたと聞いている。であれば部活もさぞ盛んなことだろう。

 

「でも……確かこの第08部は、殆ど幽霊部なんですって。部屋の設備も古いしね。入るなら他の活発な部を勧めるわよ」

「08ってだけでも食いつきそうなヤツとかいそうなもんだがねぇ。まあ食いつくだけか」

 

 放課後と言うのに、部室に人の気配を感じられない。確かにイオリが言うように幽霊部なのは間違いないようだ。とはいえ、別に埃被っているわけでもないので、ここに訪れる部員その物はいるようだ。

 ・・・

 

「これで、大体学園内は案内できたかしら」

「お陰様でね。ありがとう」

「どういたしまて……って、ん……?」

 

 委員長と周るガンブレ学園ツアーもいよいよ終わりの時が来たようだ。このまま教室へ向かおうとしていると、ふと廊下の先が何やら騒がしい。見てみれば、人だかりが出来ているではないか。

 

「あぁ!? なにか文句でもあんのかよ!?」

 

 何かと思い、人だかりの後ろから騒ぎの中心を見てみれば、そこにはまさにチンピラを絵に描いたような生徒が、一人の男子生徒に絡んでいたのだ。

 

「だ、だから、そのパーツは僕の……」

「ここに落ちてたもんだろ? それをオレが拾った。お前のだ、っつー証拠はあんのか?」

「む、無理やりぶつかってきたのは、そっちじゃないか! それで僕はパーツを落として……」

 

 このままでは平行線、いやあのチンピラに丸め込まれて終わりだろう。なぜならば、チンピラの周囲には取り巻きと思われる二人の生徒がいるのだから。男子生徒の指摘に案の定、チンピラは取り巻きに声をかける。

 

「ひっでぇ言いがかりつけてくれんなぁ、オイ! お前等、見てたろ?」

「うぃっす! そいつがショウゴさんにぶつかってきたッス」

 

 この手の手合いは群れれば群れるほど性質が悪い。なにせ三対一のような状況だ。このままでは男子生徒は勢いに押され、泣き寝入りが目に見えている。

 

「一応、聞いとくけど、お前ランキング何位だ?」

「……きゅ、951位」

「ハァ!? クッソ雑魚じゃねーか! 【ラプラスの盾】のショウゴ様、ナメんなよ!?」

 

 この学園にはどうやらランキング制が導入されているらしい。それは単純にバトルか、ビルダーとしての腕か。少なくともバトルに関係しているのは間違いないようだ。

 男子生徒のランキングを小馬鹿にしながら自身の二つ名か何かか高らかに言い放つ。

 

「そう言えば、ショウゴさん。今、ランキング何位なんすか?」

「う、うっせぇ! てめーらより全然上だっつーの!」

「は、はい! サーセンでした!」

「けっ。んじゃ、このパーツはオレが生徒会に届けておくぜー」

 

 ……まぁ当人も自身のランキングはひけらかせるほどのものではないようだが。若干のジャイアニズムを感じさせながら、話も悪い方向に収束しようとしている。

 

「……あの調子に乗っている馬鹿は、モリタ・ショウゴ。三年です。生徒会傘下のチーム、【ラプラスの盾】のメンバーです。ガンプラの実力は大したことないんですけど。あぁやって群れるから皆、文句が言えなくて……」

 

 騒ぎの発端であろうチンピラことショウゴに不快感を露にしながら、事の成り行きを見ていたイオリがアラタに彼について教えてくれる。どうやらラプラスの盾とはチーム名だったようだ。だがどちらにせよ、このまま黙って見過ごすには、あまりに気分が悪い。

 

「じゃあ、ここはヒーローの出番ですかね」

「ちょ、ちょっと待ってアラタ! 気持ちは分かるけど、生徒会関係者に手を出したらこの学園じゃ──」

 

 飄々としているが、ショウゴの横行を止めようとしているのだろう。それを感じ取ったイオリはすぐさま制止しようとする。少なくとも気丈なイオリが止めようとするほど、この学園の生徒会の影響は凄まじいようだ。

 

「──やめなさい! 無理やり奪ったパーツで、貴方は胸を張って戦えるの!?」

 

 だが、見過ごせなかったのは、アラタだけではないようだ。毅然たる声が響き渡り、誰もが視線を向けた先にはユイの姿があった。

 

「なんだあ? てめぇユイ、調子に乗ってんじゃねえぞコラ!」

「そのセリフ、そっくりそのままヤタノカガミでお返しするわ!」

 

「アカツキガンダムの反射装甲ですね、美しい……」

 

 言ってる場合か。うんうんと頷いているイオリを他所に事態はユイの登場によって更に発展していく。

 

「てめぇ、このオレ様が【ラプラスの盾】の一員だって、分かって言ってんだろうなぁ。あぁ?」

「モリタくん、貴方、チームのリーダーでもないのに、自分で言ってて悲しくならないの? 兎に角、その子から奪ったパーツを返しなさい!」

「上等だぁ、そこまで言うなら俺等と勝負だ! 丁度、そこにバトルルームがあるしな!! 万が一、負けたら、このパーツは返してやるよ。ただし、俺等が勝ったら……」

 

 あれだけラプラスの盾がどうだの大口叩いておいて別にリーダーではないらしい。ユイの言うように呆れを通り越してこちらが悲しくなるが、何と事態は思わぬ方向に、ガンプラバトルに移っていく。ただしそのガンプラバトルには条件がつくらしい。

 

「おまえには、すーぱーふみなのコスプレで俺の言うことなんでも聞いてもらう!」

 

 その瞬間、その場の空気はピシッと静まった。

 

(……ユ、ユイ姉ちゃんがすーぱーふみなにだと……!?)

 

 ゴロゴロピッシャーン、そして自称天才の背後には雷が落ちた。

 

(正直、アイツはむかつくが……。な、なんだこの言い知れぬ背徳感は……。み、見たい、見てみたい。久しぶりに会ったらユイ姉ちゃん、前より綺麗になってるし、そう思ってしまうのは決しておかしなことではないはずだ。あぁそうだとも。Pi○iv辺りでR-18タグをかけて検索したって何らおかしな話ではない)

 

「ティターンズVer.かアクシズエンジェルVer.か。今から楽しみだぜぇ。へっへっへへ……」

「……いいわ。その代わり、約束は守ってよ」

「勿論さ。たーだーし……ルールは【G-cube】だ。それ以外は認めねぇ」

 

 自称天才が一人、トリップに陥っている中、葛藤を経て、ユイも苦々しく条件を飲むが、ショウゴは更なる条件を提示してきた。

 

(……きっとユイ姉ちゃんはこれまでコスプレなんかしたことがないはず。っということは、羞恥に苛まれるユイ姉ちゃんが見れるに違いない。俺的にはそちらの方がそそるものがある。因みに羞恥という言葉だけで検索すると、大体、エッチなページばかり出てくるが、内緒だぞ)

 

「【G-cube】は3on3。つーまーり、誰か他におめぇのチームメイトが必要ってこった。この条件飲めなきゃオレ様の不戦勝だな。勿論、今すぐだぜぇ? オレは気が短けぇからよぉ、へっへっへへ」

「くっ……!」

 

 3on3によるチームバトル。普通ならば特に問題もなさそうだが、何か知っているのか、ショウゴは下賎な笑みを浮かべ、ユイは悔しそうに歯を食い縛る。

 

(ここはあえて、ういにんぐふみなもありなのではないだろうか? ただでさえ露出度が高いんだ。ユイ姉ちゃんもダブルで恥ずかしがるに違いない。フミナ先輩で言えば、Figure-riseLABOなんてものもあったな。だがあれは最早、コスプレと言えるのか? って言うか、フミナ姐さん、働きすぎじゃないかね。この短期間でどれだけのガンプラが出ているんだ?)

 

「あいつ、汚すぎる……ッ! ユイ先輩に味方がいないことを知ってて……」

 

(これはヤバイな。考え出したら止まらん。ここはチナッガイ辺りでも……って、は? ユイ姉ちゃんに味方がいない?)

 

 完全に妄想の世界にダイブしていた自称天才だが、ここで漸くイオリの一言で現実に帰ってきたようだ。そのまま不可思議そうにユイを見る。

 彼女は幼馴染で小学生の途中まで一緒だったが、決して悪い人間ではない。それどころか、今朝の校門での出来事だったりと寧ろ仲間に恵まれていそうな誠実かつ可憐な人物だ。そんなユイに味方がいないなんて信じられなかった。

 だが、皮肉なことに困っているユイを見ても、誰も名乗りをあげようとしない。それは助けたくても自分と天秤にかけてのことだろう。誰もがユイから目を逸らしているのだ。

 

「──さて、そろそろヒーローがサクッと解決しますよっと」

 

 たった一人を除いて──。

 

「えっ!? ちょっと、アラタ! さっきも言ったけど相手は生徒会関係者だって……!」

「お気遣いありがとう。でも一日一回は善行をするように心がけててね。なぁに後のことはその時、考えるさ」

 

 人混みを押し分けて、ユイのもとへ向かおうとするアラタの腕を後ろから掴まれる。彼の今後の学園生活を考えて、制止してくれているようだが、少なくともそれはアラタを止める理由にはならなかった。

 

「……分かったわ。私も覚悟を決める」

「あれまぁ。でも……ありがとう」

 

 飄々としているが、その瞳は決して揺るがぬ意思を感じさせる。彼は本気なのだ。だからこそそれは対面するイオリにも伝わったのだろう。アラタの手を離すと、二人は頷きあって、騒動の渦中に飛び込んでいく。

 

「ユイねぇ……ん”ん”っ! ユイ先輩、大丈夫?」

「私たちが参加します! チームに入れてくださいっ!」

 

 口に出しかけた幼い時の呼称を飲み込みながら、軽い笑みを見せるアラタとその後に続いたイオリがユイの助っ人に名乗りを上げた。

 

「えっ……!? 貴方達……!?」

「ケッ! そんな即席のチームで俺らに勝ってかよぉ!」

 

 思わぬ助っ人にユイも驚いているが、つまらないものを見るようにショウゴは吐き捨てる。

 

 

「──さぁーッ! ついに始まります。旧生徒会ミカグラ・ユイ率いる急造レジスタンスチームと現生徒会傘下の実力派チーム【ラプラスの盾】モリタ・ショウゴとの因縁のバトル!!」

「この声は……まさか!?」

 

 一触即発の空気が流れるなか、そこに一石を投じるかのように響き渡らんばかりの声が聞こえてくる。一体、何なのか分からず、アラタが顔を顰めていると、その傍らにいたイオリはその正体に気付いたようだ。するとその声に応えるように人混みからマイクつきのヘッドホンを装着したダブルお団子ヘアの少女を筆頭に数人の生徒が押し寄せる。

 

「そうです、ワタクシが放送部部長のシャクノ・リンコです! "バトルあるところにリンコあり!” この場はワタクシは実況を務めさせていただきます!」

「あぁッ!? ホントにお前等はどこにでも出没するよなぁ。ったく、しゃあねぇ。じゃあ俺らがこいつらをぶっ倒すところ、しっかりと放送しやがれ!」

「言われなくてもバッチリ動画で全校に放送いたします!」

 

 どうやら乱入してきたのは、放送部だったようだ。しかもこのバトルはこの場だけではなく、全校に放送されるようで、それを聞いたユイは息を呑む。

 助けてくれるのは嬉しいが、この場だけならまだしも全校に配信されたら敗北した場合、転入したばかりのアラタの立場が一層、危ういものとなる。

 

「ア、アラタ君! 本当に良いの? もし負けて全校に配信なんてされたら、アラタ君が「大丈夫だよ」……えっ?」

「昔とは違う。ユイ先輩が知ってる幼い頃の俺とは違うんだ。なんせここにいる俺は天才だからな」

「アラタ君……?」

 

 幼馴染であり、弟のようなアラタを案じるが、言葉の途中で遮られてしまう。まじまじと見てみれば、どこか自分に言い聞かせるように神妙な顔付きで答えているのだ。だがそれも一瞬ですぐに飄々としたものに変わり、戸惑ってしまう。

 

「さぁ、それでは白熱のガンプラバトルにィー……レディーーッ! ゴォーーーッ!!」

 

 だがそれを追求する間もなく、ガンプラバトルの火蓋は切って落とされるのであった。

 




別に変態じゃない。コスプレ姿を見たいと思うのは当然の帰結だ。
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