ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
紅く輝く想いで
──力こそが全て。
──あの頃の私は疑いもなしにそう思っていた。
──……あの人に出会うまでは。
・・・
天まで届く一筋の光。
この世界には宇宙エレベーターが存在する。
太平洋赤道上に浮かぶメガフロートから静止軌道ステーション、そしてその先端のカウンターウェイトへとテザーと呼ばれる糸で繋がっているこの建造物は人類が30年と言う時間を費やして作り上げた未来への扉である。
その宇宙エレベーターも実はウイルスによって二度も危機に陥ったことがある。
しかしその度に不測の事態からも復帰し、今では盛んに宇宙開発が行われ建造から早一年が過ぎようとしていた。
そんな宇宙エレベーターなのだが、その裏ではその二度の事件に大きく関わっていた者達がいたのだ。
これは自称天才と、彼を巡る物語が始まる一年前に起きた出来事。
その圧倒的な実力から、“ソロモンの魔女”や“鉄血の乙女”などと呼ばれた少女の話だ。
・・・
この日はガンプラバトルの全国大会であるジャパンカップへの道を掴み取れる大会が行われていた。
今回の大会形式はシングル戦だ。参加者は地区大会を越えたビルダー達が集まり、観客達もどのようなバトルが行われるのかと高揚感を露にするなか、現在、準決勝戦が行われており、ガーベラ・テトラをベースにカスタマイズされたガンプラと蒼を基調とした堅牢なガンダムタイプのガンプラによるバトルが行われていた。
「──うあぁあっ!?」
バトルフィールドで恐怖に染まった悲鳴が響き渡る。
それはガーベラ・テトラのカスタマイズ機を操るビルダーのものであり、通信越しにその悲鳴を聞いた対戦ビルダーである紺青色の髪の少女が口角を吊り上げ、歪な笑みを浮かべる。
「その程度なのぉ!? もっと楽しませて頂戴ッ!!」
バトルは一方的なものだった。
確かに圧倒的な実力差はあるだろうが、何よりそのバトルには粗暴さが感じられた。
相手を尊重するどころか嘲り、バトルの相手ではなく、憂さ晴らしが出来るようなサンドバックのように、一方的で見るに耐えない蹂躙劇によって、勝敗が決する。
・・・
「あれって、確かソロモンの魔女……だよな?」
「……うん、確か鉄血の乙女とか呼ばれてるよね」
準決勝戦が終了し、勝利を収めてシミュレーターから現れた紺青色の髪の少女を周囲のビルダー達は畏怖するように見つめる。だが、少女にとって、それすら心地良いのか、そのまま相手のビルダーへと向かっていく。
「全く話にならないわね」
一体、どのような言葉が投げかけられるのか。
固唾を呑んで周囲が見つめるなか、紺青色の髪の少女から放たれたのは、心底、落胆したかのような言葉だった。
「そんな腕でよく準決勝まで上り詰められたものだわ。操縦どころか、ガンプラを組む技術もまるでなってない」
まるで鋭利な刃のような言葉は相手のビルダーの心を深く抉っていくのは傍から見ても、良く分かる。
少女の言葉に次に繋げられるような助言などない、ただただ相手を詰るだけのものだった。
遂には相手のビルダーが持つガンプラにまで矛先が向けられる。
「そんなガンプラに何の価値もな──」
だが、その言葉が最後まで言われることはなかった。
傍若無人に振舞う少女の肩が不意に掴まれたのだ。
今まで周囲に怖れられるばかりで、こんなことは初めてだったのか、露骨に不愉快そうに誰なのか振り返ると……。
「……」
そこにいたのは、気怠げながら、まっすぐとこちらを見つめる真紅の瞳を持つ人物だった。
「アナタ、確か……」
特徴的なその真紅の瞳を持つ顔立ちに覚えがあるのか、少女が何か口にするよりも前に、その人物は少女の脇を通り抜け、少女とバトルをしていたビルダーの元に歩み寄ると、気にするな、と労いの言葉をかけつつ、そのガンプラとバトルについて助言すると、この場から遠ざける。
「私の言葉を無視する気!?」
話しかけたにも関わらず、無視をした目の前の人物に怒りを滲ませながら詰め寄る。
少女の年は中学生ぐらいだろうか、今までソロモンの魔女とまで呼ばれて好きに生きてきたせいか、こんな風に無碍に扱われたのは初めてなのだろう。
その顔は傍から見ても、分かるほど怒りに満ち満ちていた。
「……価値を決めるのは他人じゃない」
するとここで漸く目の前の人物は口を開く。
その冷淡にも見える真紅の瞳を前に少女が思わずたじろぐ。
「……あのガンプラも完成するまでに時間や費用、何よりも情熱が詰め込まれている。それはきっと自分に力を与え、励ましてくれる。それを無価値だと誰が決め付けられる」
淡々と、それでいて攻め立てるような言葉に少女も先程までの威勢を失ってしまう。
反論する言葉は出てこないが、それでも今まで思うように生きてきた少女はこのように他者から追いやられる状況は初めてなのか、到底、受け入れられないとばかりにその表情に怒りを滲ませていた。
「……言いたいことがあるなら決勝でぶつけてみろ。その方が分かりやすい」
言葉で言っても無駄かと肩を落とすと、少女に背を向けて、去っていく。
その言葉からあの人物が決勝の相手なのだろう。
自分に恥じをかかせたあの人物に吠え面をかかせてやろうと、紺青色の髪の少女は決勝の時を迎えるのであった。
・・・
「う、そ……」
決勝は圧倒的なものだった。
先程まで一方的に蹂躙されていた少女のガンプラは逆に手も足も出ないまま追い詰められていたのだ。
このようなことは初めてなのだろう、少女は目に見えて動揺していた。
「なん、で……? 私は負けない……。だって……私は強いから……っ……。そうやって今まで勝ってきて……ここまで来たのに……。そうじゃなかったら……」
強者こそが常に正しい。
中学生の身である少女はそんな風に考えていたのだ。
そして、そうやって今まで傍若無人にただ力を振り下ろしていたのだ。しかし強者の座にいられぬ自分など……。
「私に……何の価値が──」
だが、その言葉はまたも最後まで放たれることはなかった。
「──このバトルで負けた程度で君の価値が決まるわけがないだろう」
ふと通信越しに聞こえて来たあの真紅の瞳を持つ人物からの声に顔を上げれば、モニターにはその人物のガンプラであるビルドストライクガンダムをベースに高軌道接近型のカスタマイズが施された蒼いガンプラが光の翼を広げていた。
「負けたのなら、次に繋げれば良い。君が価値がないと言おうとしたガンプラも君に負けた反省点を踏まえて、発展するかもしれない」
その姿はあまりに美しく、澄み切った青空を背にこちらを見下ろすそのガンダムに少女は目を奪われてしまう。
「やがてそれはその人にしか持てない
するとそのガンプラは赤色の輝きを身に纏う。
それはまるでそれを操るビルダーのこれまで積み重ねた全てを表すかのように煌いて、このフィールドの全てを照らすほどの輝きを見せる。
「だから君も躓いたのなら、また立ち上がって進めば良い。その時、きっと君は強くなっているから」
輝きを纏ったガンプラは装備しているGNソードを展開すると、天へ掲げる。
するとGNソードの刀身を媒体に膨大なエネルギーを纏った光の刃が振り下ろされる。
「その時を楽しみにしている」
──本当に強い人がいるのなら、あぁいう人なんだろう。
──力は所詮、力でしかなくて、正しさを決めるのは自分の心の強さなんだ。
振り下ろされた刃に恐怖を感じない。
寧ろ、何だか心の中に広がっていくような温かさを感じる。
少女は敗北してしまったが、その瞳に先程まで宿っていた驕りや傲慢さはない。
その瞳に輝きを宿し、変化の兆しが見えていた。
・・・
「アジアツアーの特集記事があったよ!」
そして現在、ガンブレ学園の08部の部室では、今日もサイド0の面々が集まるなか、ユイがホビー誌を片手に慌しくやって来ていた。
ユイが持ち込んだ雑誌には小規模だが開催されている国際大会のツアーの特集が組まれており、アラタ達はゾロゾロと読み始める。
「あっ、確かこの優勝した方、宇宙エレベーターの……」
「うん、ウイルス事件を解決した人だね。しかもこれでアジアツアー二連覇だって!」
そこには優勝者の記事も組まれており、そこに写る人物は有名な人物なのか、マリカが反応すると、ユイは素直にその実力に感心していた。
「どんな人なんだろうな。バトルしてみてぇぜ」
「……とても強い人なのは間違いないわ。そのガンプラも、心も」
リュウマもその実力を直に感じてみたいのか、戦意を見せると、その様子に苦笑しながら、イオリはどこか懐かしそうにそこに掲載された優勝者を見つめる。
「どれどれ……。えーっ……と……優勝者は……」
するとアラタもその雑誌を覗き込んで、特集記事に目を通すと、優勝者の姿を見つめる。
「アマミヤ……」
そこに写るのは、ボサッとした茶髪に、気だるげで特徴的な真紅の瞳を持つ……
「イチカさん、か」
少女だった。
アマミヤ・イチカ
【挿絵表示】
分かる人には分かる人。もっと言うとプロトを再構成した人
因みにガンブレ2の小説の修正も終わり、息抜きついでに3小説も色付けして描き直したキャラ絵を追加しながら修正を始めました。ただこっちは2ほど簡単な修正ではなく、場合によっては内容を若干弄ってます(大まかな流れは同じですが)