ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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第三章 さあ、切欠を組み立てようか
エアブラシを巡る戦い


 ランキングバトルも終え、少しは張り詰めた空気も薄れていったある日のこと。

 ここは第02ガンプラ部。ゴールデンコスモスの根城となるこの場所にシオンを筆頭にサイド0の姿があった。

 しかし、満面の笑みを浮かべて、満足そうにしているシオンとは対照的にサイド0の面々はどこか頬を引き攣らせている。

 

 そんなサイド0を知ってか知らずか、この部室の主とも言える存在であるサカキはシオンの前で傅くと……。

 

「シオン様、部室の改修完了いたしました! これからここは、偉大なるシオン公国の拠点のひとつとして機能することでしょう」

「サカキさん、ありがとー! これでガンブレ学園を生徒会から解放する足がかりが出来たねっ!」

 

 なんと第02ガンプラ部はシオン公国の拠点のひとつになってしまったのだ。

 シオンの要望を取り入れて、シオン好みに改修されたこの部室を見せたいと連れて来られたアラタ達はただただ唖然とするしかない。

 

「……第02ガンプラ部を占拠してしまいましたね……。これでいいんでしょうか?」

「えっと……サカキ君達がいいなら、いいんじゃないかな。……多分」

 

 サカキが改心するのは喜ばしいことだが、まさかシオン公国の一員になるとは想像すらしていなかったイオリは目の前の光景に、近くのユイに問いかけると、これに関しては、ユイも何ともいえないのか、頬を引き攣らせたまま首を傾げて、サカキ達を見つめている。

 

「ジークシオンッ!!」

 

 ……まあ、サカキどころか、この第02部員達も満足そうにしているので、それで良いのかもしれない。

 

「──ちぃーっす! イオリンいるー?」

 

 シオン公国は一体、どうなっていくのか。

 これには流石のアラタ達も一抹の不安を感じていると、突然、第02部の扉が開かれる。

 驚くのも束の間、部室に飛び込んできたのは、チナツだった。

 

「誰かね、君は!? なんの許可があって、この“シオン公国第二支部”に入ってきた?!」

「しお……え? ここって第02ガンプラ部じゃん……?」

 

 突然の来訪者に詰め寄るサカキだが、当のチナツはこの部室を第02ガンプラ部だと認識しているため、訳が分からず、助けを求めるようにアラタ達に視線を送ると、彼等もどうすることも出来ないのか、首をフルフルと横に振っていた。

 

「それで、どうしたの、ちなちー? ……その様子だと何か悩みがあるんだよね?」

「なにそれ、シーちゃんってば、ニュータイプなの!? そうそう、実は相談があってさー!」

 

 そんなチナツに助け船を出すように他ならぬシオンが声をかける。

 悩みと聞いて、まさかと思っていたイオリだったが、どうやら的中していたようで、今まで臆面もなく、そのような素振りを見せなかったチナツは心底、驚きながらも、悩みを話し始める。

 

「でさ、あたし、ガンプラをデコりまくるのが趣味じゃん? けど最近、文句つけて塗装用の備品を独占しているチームがあってぇ」

 

 なにやらチナツの悩みとは、この学園の塗装ブースに関することらしい。

 塗装ブースを独占しているというチームの名を口にしようとするチナツなのだが……。

 

「名前はぁ……えっと……えあ……?」

「もしかして、生徒会傘下の“AIRBRUSH OF Z”?」

 

 中々、名前は出てこないのか、うーん、と人差し指を顎先に添えて困ったように眉を寄せると、再び助けを求めるようにイオリを見てくる。ため息をつくように肩を落としたイオリはチナツが口にした僅かな単語から最も近しいチームの名を口にすると、チナツはピンと来たように食いつき……。

 

「そう、それ! アタシのデコプラに文句ばっか言って、道具とか使わせないようにしてくんの。ほんっっとひどい話! あたしは派手にデコりたいのにーっ!」

「それは問題ね。自由に塗装できないなんてガンプラの魅力の一つを潰されてるようなものよ」

 

 どうやら話題に出たAIRBRUSH OF Zなるチームが学園の塗装ブースを独占して、思うような塗装が出来ないとのこと。怒りを露にするチナツに、ユイも酷い話だと顔を顰める。

 

「わかります……! サテライトシステムとか、ビームウイングとか! 派手な塗装をしたくなること、ありますよね……! 派手な塗装も……ガンプラ作りの一部です。だからそれを否定されるのは……悲しいです……」

「ちなちーの言い方だと深刻さが伝わり辛いけど……リーダーのシロイ・マスミ先輩は塗装にかけては右に出る者はいないと言われてるほどの人だけど、自由な塗装を制限するなんてやりすぎね。間違いは正さなくちゃ……」

 

 それはユイだけではなかったようで、マリカやイオリも同じような反応を示して頷いていた。

 

「ぜーったい、あたしの塗装のほうがカワイイしー! デコる楽しさを全く理解してないよ、あの人達。えあぶらっしゅーは学園のみんなから、デコる楽しさを奪ってるって、マジで。だからサイド0で殴りこみにいっちゃおうってワケ」

「……そこまで言うのなら、何もしないわけにはいかないか。一先ず、そのAIRBRUSH OF Zの部室に行ってみよう」

 

 普段は快活でサバサバしているチナツが、これだけ不満を露にしているのだ。

 流石に無碍には出来ないと、アラタも腰をあげるのだった。

 

 ・・・

 

『ジークシオン! ジークシオン!!』

「ジークシオン! ジークシオン!!」

 

 AIRBRUSH OF Zの部室へ向かっていたのだが、一度、シオンが廊下に出れば、シオン公国の臣民達の目に留まり、あっという間に人だかりが出来て、いつもの光景になってしまう。

 

「……先に行くか」

「……ほんっと、いつ見てもスゲェな。日に日に人が増えてんぞ」

 

 チラリとシオンは先に行って良い、と目配せしてきた。

 その意を受け取ったアラタはその光景に何ともいえない様子で一瞥すると、リュウマ達もその後を追おうとした瞬間……。

 

「あら……みんな揃って、お出かけかしら」

 

 レイナと同伴していたアヤと鉢合わせした。

 サイド0が集まっていることと、その雰囲気からどこかでバトルをしようとしているこはを察してはいるようだ。

 

「これからえあぶらっしゅーの部室に殴りこみにいくの!」

「えあ……? まあ、でも穏やかではないわね」

 

 すると、切欠であるチナツが意気揚々と目的を話すと、えあぶらっしゅーという言葉に覚えがないため、不思議そうに首を傾げると、殴りこみ、という単語に僅かに面食らった様子を見せる。

 

「二人はこれから部活?」

「ふっふーん、これから部室で今度の三連休の予定を立てる予定なのです」

 

 レイナとアヤが一緒にいることから、これから第10ガンプラ部に向かうのかとアラタが尋ねれば、なにやらアヤはむっふーと胸を張りながら、答える。予定は未定ではあるが、どうやら充実した休みにするつもりのようだ。

 

「そういや、今度の月曜が創立記念日で三連休だっけか?」

「ここ最近は激動だったから、すっかり抜け落ちてたな」

 

 アヤの三連休という言葉に思い出したかのように声を上げるリュウマはそのまま、アラタを見ると、彼も忘れていたのか、なんともいえない様子で首をフルフルと横に振っていた。

 

 すると、アヤは早く部室に行きたいのか、話を切り上げようと口を開く。

 

「とにかく、私達は忙しいのです! ここで寄り道している暇はないので──」

「どうせなら私もご一緒していいかしら? 気にならないというのなら嘘になるわ」

「まあ、人生は寄り道だらけですからねっ! 私も寄り道しちゃおっかなー!」

 

 レイナが同行する意を示した瞬間、これである。

 意見を180度変えたアヤにアラタ達は苦笑するなか、AIRBRUSH OF Zの部室へと向かっていく。

 

 ・・・

 

「たーのもーう!」

 

 AIRBRUSH OF Zの部室にたどり着いたアラタ達だが、ノックするよりも早くチナツが乗り込んでしまった。

 これにはなし崩しにその後を追うしかなかった。

 

「なんだぁ、君達は?」

 

 突然の襲撃に似た来訪にAIRBRUSH OF Zに所属する部員達が面食らっているなか、その中で部長であるシロイ・マスミが驚きながらも対応しようとする。その巨漢ぶりは凄まじく、下っ腹に関してはボタンが弾けて、露になっているほどだ。

 

 部長であるシロイを見つけ、早速、アラタ達がこの部室にやって来た理由を話そうとした瞬間……。

 

「──随分と騒がしい。入室時にはノックぐらいしろ」

 

 冷淡な声が静かにその場に響き渡った。

 

「貴様たちは……サイド0だったな。よく群れで動いていると聞いているが」

 

 そこにいたのは現生徒会副会長のセナ・ダイスケだった。

 眼鏡の下の鋭い眼光を静かに、アラタ達サイド0へと突きつけるのであった。

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