ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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AOZ攻略戦

「生徒会──セナ副会長!?」

 

 AIRBRUSH OF Zの部室に訪れたアラタ達だが、そこにはまさかの人物がいた。

 まるで無価値な存在を見つめるかのような冷淡な視線を突きつけてくる眼鏡の青年にイオリは面食らった様子を見せる。彼こそはこのガンブレ学園生徒副会長のセナ・ダイスケなのだ。

 

「ほぅ、俺の名は知っているようだな。コウラ・イオリ」

「アナタこそなんで私の名前を……?」

 

 イオリの反応に感心しながらも、彼女の名を口にするセナに、サイド0の一員とはいえ、よもや生徒会、ましてや副会長が一生徒の名前を覚えているとは思っておらず、訝しんで驚いていると……。

 

「知っているとも。特に貴様の名前は“色々と有名”だからな」

「……ッ」

 

 だが寧ろセナからすれば、それは可笑しいとばかりに、どこかイオリを嘲笑しながら話す。

 思い当たる節はあるのか、息を呑んで目を伏せるイオリは拳をギュッと握る。逆に何のことなのか分からないアラタ達は顔を見合わては、首を傾げてしまった。

 

「色々と有名って、そりゃあソウマさんを追い掛け回してるってのは有名ですよねぇ」

アラタ(コイツ)で困った事があれば、コウラに言えってのは有名だな」

「俺で困ることなんて天才過ぎることくらいでしょ。流石にこれは委員長でも止められ──」

 

 空気を読めとばかりの無言の肘打ち。

 言いだしっぺはアヤとリュウマなのに、何故、俺だけ……とアラタが悶えていると……。

 

「……貴様がソウマ・アラタか。いくら羊を集めたところで獅子には勝てない。ここで始末してしまいたいが……なにぶん、忙しい身でな。後にも予定が詰まっている」

 

 アラタをその目に映したセナの視線はより鋭くなる。

 その瞳にあるのは、嫉妬や怒りか。しかし、多忙であるのは事実のようで、意識を切り替えるように眼鏡の位置を正すと、背後に控えていたシロイに目をやる。

 

「人にはそれぞれ為すべき役目がある。シロイ、ここは任せても良いか?」

「は、はい! この僕とAIRBRUSH OF Zにお任せください! 必ず、勝ってご報告します!」

「当然だ。わかっていると思うが、生徒会は敗北を許さない。今の地位を守りたくば、精々、足掻くが良い。では、例の件は任せたぞ」

 

 セナに見られただけで萎縮してしまっているシロイを見るだけで、その力関係が分かる。

 だが、その緊張はセナにとって悪い方向に働いてしまったようで、シロイはあわあわと口を開く。

 

「お、お任せください! 必ずや秘密兵器・強化塗装を完成させ、さらなるラプラス・ネストの躍進を約束します!」

「余計なことを口に出すな!」

「すっ、すみません! 会長のガンプラ強化計画は秘密だったのに……」

「……。もし完成させられなかった時は覚悟しておけ」

 

 緊張からとはいえ、ベラベラと口走るその無能さに苛立ちを感じながらも、なるべく平静を保つように息を吸い、AIRBRUSH OF Zの部室を後にしようとする。

 

「……貴様が本当に会長の期待に応えられるかどうかなど、すぐに分かることだ」

「……会長の……期待……?」

 

 すれ違いざまにいまだ鋭い視線を突きつけてくるセナに、それよりもその言葉の意味が分からず、アラタは顔を顰めていると、既にセナはその後ろにいるレイナに顔を向けていた。

 

「アイゼン、貴様は利口な人間だと思っていたのだがな」

「あら、過去形なのね」

 

 セナの言葉に対して気にした様子もなく、大袈裟に肩を竦めると、一切の恐れのないその態度にセナは眉を顰める。

 

「当然だ。遊び心などというくだらないテーマを掲げる第10ガンプラ部だけではなく、サイド0にまで肩入れする……。第10ガンプラ部もタダで済むと思っているわけではないだろうな」

「その時は夢の国のベアッガイを筆頭にモザイクなしで全世界に公開するわ」

「……この魔女め」

 

 ミッキ……夢の国のベアッガイを筆頭とした第10ガンプラ部の最深に封印されているベアッガイ達を使用しての自爆行為に何もいえなくなったのか、クイクイッと指を震わせながら眼鏡の位置を直したセナはAIRBRUSH OF Zの部室を去っていくのであった。

 

「ふう……危なかった。秘密計画がバレるところだったよ」

 

 セナがいなくなったことにより、部室内を支配していた息苦しさから解放されたシロイは安堵した様子なのだが……。

 

「いや、バレてたから! 全部言ってたから!!」

「ええ……っ! バ、バレちゃった? ああ~、どうしよう! 僕の地位が! 権限が! ガンブレ学園の塗装水準がハチャメチャになっちゃうよぉっ!!」

 

 とはいえ、秘密計画とやらは完全に筒抜けだった為、誰もが何とも言えなくなっているなか、チナツがツッコミを入れると、シロイは途端にあたふたと慌てふためく。

 

「ちょっとちょっとー! それを言うなら、今のほうがチョーヤバイしー!」

「はい、今回はガンプラの塗装の件でお話に来ました」

 

 頭を抱えて悶えているシロイにそれどころではないとチナツの言葉を引き継ぐようにそもそもこの部室に訪れた理由をイオリが明かす。

 

「ダメだダメだ! 絶対認めない! ガンプラ塗装の指導権は僕がこの力で勝ち取ったんだ! 手放す気はないぞ!」

「力でガンプラの在り方を決めようなんて……そんなのは間違っています!」

「そーだそーだ! 間違ってるぞー! デコる道具は自由に使えないし、派手でカワイイ感じにデコるのは禁止されてるし、塗装部の部長はシロイっちだし!」

 

 力、という言葉はイオリにとって最も無視できない言葉なのか、ピクリと反応して、雰囲気を厳しいものに変えると、それに気付かぬまま、チナツはイオリに便乗する。

 

「え、ええっ……? そのおかげでガンブレ学園の塗装技術の水準は保たれているのに。大体、僕が部長だと何がいけないのさ!」

「あたしよりデコるの下手なんだもん! そんなの楽しくないじゃーん!」

 

 傍から見れば、駄々っ子に振り回される巨漢の光景なのだが、イオリが力、という言葉に反応するように、シオリにとって、聞き捨てならない言葉があったのか、眉を顰めると、怒りを見せる。

 

「ぼ……僕の塗装は学園一だ! おまえらのお遊びの塗装とは格が違うんだからな! ガンプラバトルでそれを証明してやる!」

「最初っから、そのつもりだもーん。アラター、準備はいい?」

 

 塗装に関しては譲れないものがあるのか、躍起になってバトルに挑むシロイに待ってましたとばかりにチナツは自身のガンプラを取り出す。言いだしっぺだけあって、自分もバトルに参加するようだ。

 

 アラタが頷いて、そのままバトルに進むのかと思いきや、突然、部室の扉が開いた。

 

「お待たせ~! シオンが会いに来たよーっ」

 

 そこには臣民達との交流を終えたシオンが遅れて部室にやって来ていたのだ。

 

「なんだぁ? 僕はこれからバトルで忙しいんだ。用事なら後に……って、ダイクウジ・シオンちゃん!?」

 

 張り詰めた空気の中、サイド0と火花を散らしていたシロイは門前払いをしようと、突然の来訪者であるシオンをその目に映した瞬間、明らかに動揺していた。

 

「アナタがAIRBRUSH OF Zのリーダーのシロイ・マスミさんね? ちょっとお話があるの!」

「が、学園のアイドルが僕に話をっ!? そ、それってもしかして……」

 

 臣民だったのか、シオンの乱入にすっかりバトルどころではなくなったシロイにアラタ達が呆れているなか、シオンの言葉になにやら妄想を膨らませて、非常にだらしない表情を見せると、シオンは満面の笑顔で……。

 

「ちなちーのデコり塗装を認めてあげてくださいっ」

 

 彼女の想いをまっすぐに打ち明けたのだ。

 これにはチナツも「わーお、直球ぅ~」とアラタと共に口笛を吹いている。

 しかし当のシロイは固まっており……。

 

「話ってそれだけ……? めくるめくバラ色の展開は? この高鳴る鼓動は……?」

「シ、シオンちゃん、その話はもうしているっていうか……」

 

 流石にこれからバトルを行う相手とはいえ、震えているシロイを気の毒に思ったのか、ユイがシオンに声をかけると……。

 

「あっ、そうだったんだ! ごめんね、シロイさん。シオンはみんなのシオンだからっ♪ そういう展開はちょっとナイかなって」

 

 一切の悪気なしに放たれた言葉にシロイは別の意味で白くなっていく。

 目の前で粉砕された哀れな男の姿にアヤが念仏を唱えて、アラタ達は合掌する。

 

「く、くっそー! 僕の純情がっ!! 丁重にお断りされたのが余計に腹が立つ!! この胸に燃え盛るナニか……。発散しなければ収まらないぞぉっ!!」

「あっ、ならガンプラバトルよ、シロイさん! シオンと大佐があなたの目を生徒会という悪夢から覚まさせてあげるっ!」

「もう覚めたよ! 勘違いの恋心っていう甘い夢からなぁっ!!」

 

 そもそも最初はセナの指示でバトルが始まろうとしていたのに、今では私怨が見え隠れしている。

 そんなシロイを知ってか知らずか、アラタに抱きついたシオンがバトルを持ちかけると、火に油を注ぐ結果となり、シロイの背後に轟々と燃え盛る炎が見えるほどだ。

 

「この恨み、晴らさでおくべきかぁ~~っ!!」

「……晴らさなくて良いんじゃないですかね」

 

 シオンに抱きつかれている姿に嫉妬の炎を燃やすシロイだが、もう面倒臭くなってきたのか、アラタは投げやりに答えると、再びAIRBRUSH OF Zの部室の扉が開く。

 

「──塗りは一瞬、筆は一生、塗装の道も下地から。幾多の塗装師が挑んだ数々のガンプラが脳裏を過ぎります。祈りをこめて塗られたガンプラ達が熱い魂を宿してバトルを繰り広げます! ガンブレ学園の明日を染め上げるのどっちだ!?」

 

 大体、分かってはいるが、振り返ってみれば、やはりというべきかリンコを筆頭とした放送部の姿が。

 表情を引き締め、キメ顔で話すリンコに掛け持ちしている間柄か、レイナが軽く手を振るなか、リンコのパフォーマンスは続く。

 

「激しくぶつかりあう生徒会派AIRBRUSH OF Zとサイド0の熱いバトル! ……の筈ですが、シロイ・マスミ! 私怨の炎が燃えているようにも見えます! なにはともあれ、放送部部長たるシャクノ・リンコが見逃すはずもありません!」

 

 シオンを離そうにも中々、離してくれないどころか、更に力を強めてくる。

 その姿が更なる燃料を投下しており、じとっとした熱苦しさを感じるほどだ。

 

「生徒会派と改革派のバトルの行方は!? そして暗躍するシオン公国の正体とは──! 謎が謎を呼ぶガンプラバトル、レディーーー! ゴォーーーーッッ!!!」

「それじゃあ、バイブスあげてこーっ!!」

 

 遂にいつものように実況付き戦いの火蓋が切って落とされた。

 チナツを筆頭にアラタとシオンがバトルシミュレーターに乗り込み、シロイ率いるAIRBRUSH OF Zとのバトルに臨むのであった。

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