ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
《好きな機体はヴィクトリーガンダム! シャクノ・リンコが今日も実況をお届けいたします!!》
ショウゴとその取り巻き二人とのバトルの場に選ばれたのは転入時の挨拶代わりでバトルをしたあの工作室のステージであった。
アラタ達のガンプラは全てステージ内のロッカーの上に投影されて、出現する。リンコの実況と共にいよいよバトルが始まった。
「アラタ君、いざとなったらお姉ちゃんの後ろに来て良いからね?」
「それ結構、心に来るんだけど……。こうなったらバトルで証明するか」
どうにもユイからはまだ守らなくてはいけない弟のような扱いをされているらしい。だがそんな扱いは御免である。いつまでも世話のかかる弟ではないとモニター越しに隣に立つユイのガンプラを一瞥する。
ユイのガンプラはシャイニングガンダムをベースにカスタマイズしたガンダム・リリィという名のガンプラだ。アクアカラーのそのガンプラはシャイニングをベースとしていながら、頭部と武装にバスターライフルとシールドが使用されているウイングガンダム、バックパックのスラスターウイングなどウイングガンダムを
《さあ、今回のG-cubeは決戦型です! 果たして、どちらのチームが栄光を掴めるのかっ!》
とはいえ、もう既にバトルは始まっている。実況と共に注意を促すようにシミュレーター内のセンサーが敵機を感知して、けたましく反応すれば、こちらに迫る三機の一つ目の姿があった。
「来た! 「ハハ、アハハハハハハッ!」……え……?」
「ぜーんぶ、蜂の巣にしてあげるわッ!!」
すぐさま臨戦態勢をとるユイだが、不意に通信で聞こえてきた高笑いに戸惑う。これは明らかに女子のものであり、現チーム内で女子は自分とイオリだけ、誘われるまま見てみれば、既にギラドーガをベースにカスタマイズしたガンプラを使用する取り巻き達と戦闘を開始しているサファイアの姿が。
「あ、あの子、急にキャラが変わったような……気のせいかな……?」
「あれがデフォだよ」
まさに狂犬と言えば良いのか、時に過激なことを口走りながら、戦闘を行うサファイアの姿を見ながら、アラタに問いかけてみると、どこか達観した様子で答えられてしまう。
だが二人とも観戦しているわけではないのだ。二人も戦闘に加わると、真っ先にショウゴがアラタのガンダムに迫ってくる。
ショウゴのガンプラの名はザルグと言うらしいが、ジオン系で纏めているものの塗装も統一していないアンバランスな印象を受けるガンプラだった。
「てめぇ、【ラプラスの盾】に歯向かったら、タダじゃおかねぇからな!」
「歯は向けないっす。盾を突くだけっす」
大型ヒートホークとビームサーベルによる鍔迫り合いが発生する。接触回線で啖呵を切られるが、それを逆手にとって飄々と答える。
「そのガンプラ、見たまんまの継ぎ接ぎっすね。パーツの出来も均一じゃないし……それ、今まで奪ったパーツを組み合したものでは?」
「あぁ? だったらどーしたよ!?」
鍔迫り合いの最中、ザルグの出来について触れるが、サファイアの時と比べて、明らかに落差があった。それはザルグへ、というよりはショウゴへの落胆であろう。
「シャフリヤールの言葉を借りるのなら、愛が足りない。ただ勝ちたいだけ、って感じですかね」
「それの何が悪いんだよ! 勝ってナンボだろうが!」
ザルグの動きその物は単調で読みやすい。だからこそ攻撃の一つもガンダムに届かない。故に反撃は容易かった。苛立ちと共に放たれた大型ヒートホークを回避すると、そのまま持ち手の腕を切り落としたのだ。
「まあ確かに勝ちたいっすよね。でもそれだけだと、あまりに殺伐としてる」
どこかモノ悲しげにさえ感じる言葉を皮切りにそこから怒涛の追撃が放たれ、瞬く間にザルグの損傷は増えていき、そのたびにショウゴは慌てふためく。
・・・
「ターゲット確認! これより破壊するわ!」
「ま、まじかよ!?」
一方で既に取り巻きとの決着もつきつつあった。ユイの実力も決して低いものではないのだろう。シャイニングをベースにした事を活かした多彩な拳法を駆使して敵機を追い詰めると、そのまま掌底打ちで宙へ打ち上げると、バスターライフルを放つことで光の奔流の中へ消し去る。
「見えているわッ!!」
「な、なんなんだよ、コイツぅっ!?」
「怯えなさいッ! 竦みなさいッ! ガンプラの性能も活かせぬまま消えていきなさいッ!!」
そしてイオリの方でも勝負はついたようだ。荒れ狂う嵐のような猛攻を前に取り巻きの一人も成す術もなく、撃破されてしまった。
・・・
《おぉっ!! レジスタンスチーム、瞬く間に二人のプレイヤーを撃破ぁっ!》
「んなっ……!? も、もう俺一人かよっ!」
取り巻きが撃破されたことにより、もうショウゴのみとなってしまった。そしてそのショウゴのザルグもアラタとの戦闘により、中破以上に追い込まれてしまっている。そんなアラタはどうしていいかも分からず、右往左往しているザルグを見据えると……。
「さあ、勝利を組み立てようか」
ビームサーベルを構えると、バーニアを稼動して一直線にザルグへ向かっていく。ザルグはザクマシンガンを乱射するが、シールドで防いでいる為、特に効果はなかった。
しかしショウゴもタダで終わる気はないのか、脚部のミサイルを全て発射する。すかさずガンダムが頭部のバルカンで迎撃するが、そのせいで目の前はモニター一杯の爆発で包まれてしまった。
「いただきぃっ!!」
そこに上方からザルグが大型ヒートホークを振りかぶりながら、爆炎を抜けて姿を現す。勝利を確信したのだろう。その声はとても弾んでいるように聞こえる。
「──敗北を、ね」
だがギラリとガンダムはザルグにカメラを向けたのだ。ショウゴが息を呑むなか、シールドを投げ捨てたガンダムはビームサーベルを両手に構えることで上空から迫るザルグの胴体に突き刺して空中で爆発させる。これによってレジスタンスチームの勝利が確定するのであった。
・・・
「くそ! くそっ! くそぉっ! こんなの認めねぇ!!」
バトルを終えたアラタ達。しかし往生際の悪いショウゴはバトルの結果に納得せず、周囲の物に当り散らす始末だ。
「認められないのは、貴方の弱い心。勝負はついた、私達の勝ちよ」
「ぐっ……ぬうぅぅ……!!」
「約束よ! パーツを返して!」
バトルを観戦していた周囲もそんなショウゴに口に出せずとも迷惑そうにしているなか、毅然とした態度でユイはショウゴに言い放った。
「……ケッ、いるかこんなもん! ほらよ!」
一応、約束は守るつもりはあるのだろう。悔しさを滲ませながら、自棄になって男子生徒から奪ったパーツを投げつけると、素早くアラタがキャッチし、そのまま観戦していたパーツを奪われた男子生徒に手渡す。
「てめぇら、【ラプラスの盾】に……生徒会に歯向かって、このままで済むと思ってんじゃねえぞ! ……おめぇら、撤退だ!」
「「へい!」」
嬉しそうに何度も何度もありがとう、と感謝の言葉を口にする男子生徒に笑みを見せる三人を見ながら、捨て台詞を残すと、取り巻きと共にそそくさとバトルルームを去っていった。
「ふぅ……危なかったぁ。ありがとうね、アラタ君と……」
「コウラ・イオリ、二年です。好きな作品は【第08MS小隊】や【0083】、最近ですと【サンダーボルト】などが好みです」
「結構、渋い趣味してるのね。バトル中はなんというか……凄かったけど……」
ユイとイオリはこうして話すのは初めてなのだろう。最もユイの中でイオリは強烈な印象を残すことには成功しているようだが。
「実は……ユイ先輩。私、先輩のことずっと応援してました。今まで、何も出来なかったんですけど……」
「そうだったんだ……。ありがとう、嬉しいよ」
「……」
「あっ、照れてる」
助っ人になる前のアラタとのやり取りを見るに、ずっと見ているしか出来なかったのだろう。どこか申し訳なさそうに話すイオリだが、ユイの全然気にした様子もなく、それどころか無垢な笑みを向けてくれるその姿に照れた様子で視線を彷徨わせる中、傍らにいたアラタの呟くに肘打ちを浴びせる。
「アラタ君も巻き込んじゃってごめんね。いきなりで訳が分からないよね?」
「いきなりって言うか……ぶっちゃけもう最初っからだけど」
「うん……。その辺のこと、一度きちんと説明しないと……ね。ここはちょっと人が集まっちゃったから、場所を変えようか」
いよいよ自由にガンプラバトルが出来ないこの学園のこと、そしてそこに関与しているであろう生徒会のこと、それらが明かされる時が来たようだ。ラプラスの盾のメンバーであるショウゴを打ち破ったことで、配信を聞きつけた生徒達で賑いだすなか、アラタ達三人は場所を変えるのであった。
(……勝ってナンボか。分からくもないけど、でも、こんなバトルばかりならゴメンだね)
ユイ達の後について行きながら、先程のバトルを振り返る。あのバトルを満たす空気はただ勝ちたいという勝利への渇望だけ。その想いその物は決して間違いではないだろう。しかし行き過ぎた想いが楽しもうという想いその物を打ち消しているのだ。
(俺がしたいのは、想いをぶつけ合って、互いを高めあうような……。あの決勝のようなバトルなのに)
ふと脳裏に自分が優勝したガンプラバトルの大会の思い出が過ぎる。あの時の自分も、そして相手のファイターも心から楽しんでいるのが伝わってくる最高のバトルだった。
「どうしたの?」
「……あぁ、いやなんでもない」
当時の思い出に耽っていると、ユイに声をかけられる。どうやら、考えるあまり歩く速度が遅くなってしまったようだ。先程までの考えを振り払い、再びユイ達に合流するのであった。
・・・
「第08ガンプラ部……。ここなら誰も来ないと思います」
ショウゴ達とのバトルを終え、イオリの先導でアラタ達がやって来たのは、先程、案内された第08ガンプラ部であった。幽霊部であり、人気のないこの部室なら、確かに落ち着いた話が出来るだろう。改めて自己紹介始める。
「改めまして、2年のコウラ・イオリです。C組の学級委員で、転入生の案内中でした」
「私は3年A組のミカグラ・ユイ。アラタ君とは小学校まで一緒の学校だったけど、途中で私が引っ越してしまったの
「そうだったんですか。じゃあ幼馴染ってことですね」
「ええ、アラタ君は昔、私のことをユイ姉ちゃんって私に手を引かれて……」
「その話はもう良いっ」
幼い頃のアラタを思い出したのだろう。フフッと微笑みながら、当時のことを話そうとするユイだが、食い気味に止められる。どうやらアラタにとってそのことを表に出されるのは恥ずかしいようだ。
だが、アラタのその反応も可愛らしいのだろう。ごめんごめんと笑いながらもユイは表情を真剣なものにする。
「でも、ごめんなさい。二人を巻き込んでしまって……」
「そんなことないです! 私も生徒会の横暴はもう我慢が出来ないと思っていました……。私みたいな考えの生徒はかなり多いと思います」
誰かを巻き込んでしまうのは本意ではなかったのだろう。申し訳なさそうに謝るユイにそんなことしなくていいと首を横に振り、生徒内に溜まっているであろう不満を口にする。
「けど、表立ってそんなこと言ったら、元生徒会役員の私達みたいに……潰される。アラタ君にはどうしてこの学園が今みたいになってしまったのか、それをちゃんと説明しないとだよね」
(……やっとか)
ユイの言葉にイオリが複雑そうに押し黙るなか、今まで実情を知らないため、蚊帳の外だったアラタに声をかけられる。今までずっと思わせ振りで何か分からず、釈然としないままだったアラタはここでやっと知れるのかとユイを見る。
「元々、私は一年生のときに立候補をして、生徒会の副会長をやっていたの」
「なんか分かる気がする」
「えへへ、そうかな? それでその頃の生徒会は、みんなこの学園を良くしよう、もっとガンプラに打ち込めるように……って頑張ってた。でも……春休みが明けて、私達が二年生になる頃、ある二人が元生徒会役員達にガンプラバトルを挑んできたの」
かつては副会長に立候補し、務めていたというユイ。その優しい人当たりを知っているアラタもすぐに想像できるのか、納得すると、それを嬉しそうにはにかみながら、この学園のターニングポイントとなった出来事を話す。
「ひとりは現副会長のセナ・ダイスケ。そして……現生徒会長のシイナ・ユウキ」
「ッ!?」
一人目について特に反応しなかったアラタだが、二人目であり、現生徒会長の名を聞いた瞬間に音を立てて立ち上がったのだ。
「ど、どうしたの?」
「……ッ。いや、なんでもない。続けて」
目を見開き、呆然としているアラタに二人は驚き、ユイが声をかけるが、我に返ったアラタは複雑そうな表情を浮かべたまま椅子に座り、続きを促す。
「う、うん……。元生徒会役員達も、みんな強かったわ。実際、それぞれが全国大会で活躍できるレベルのガンプラビルダーだった。それなのに……二人は圧倒的な力で元生徒会役員達を蹂躙したの。元生徒会役員の、誰も二人には勝てなかった。勿論、私も……。それは、学園クリーン作戦とも呼ばれたわ」
「……たった二人に」
「ええ、そんな元生徒会役員が、生徒たちから支持されるわけもなかった。だから次の生徒会役員選で立候補した彼等を、その時の生徒達は次世代のカリスマとして支持してしまったの。それはまるでジオンの亡霊やコスモ貴族主義に熱狂するみたいに……“強い者が正義、弱いガンプラビルダーが悪である”と──」
どうやらこの出来事によって、今の学園への道が決まってしまったようだ。話を聞いていると、今まで黙っていたイオリが口を開いた。
「入学してすぐでしたけど、覚えてます。私達当時の一年生も、圧倒的な力を目の当たりにして、それが正しいと思ってしまった」
「でもまさか、今みたいな状況になるなんて、その時は誰も思ってなかった……。副会長のセナ君は政治家の親を通じて、政財界にまで及ぶ力を持っているの。だから、このガンブレ学園を含む都市計画そのものに圧力をかけた。結果、先生達もなにも言えなくなってしまったわ……。残っていたほかの生徒会役員達もすぐに辞めさせられてしまったわ、一人を残して……。そうして学園内で誰も反抗できる者がいなくなってから、生徒会は一方的な色々なルールを定めたの」
「そこからは私も分かります。“強者こそ正義、ガンプラの強さが人の価値すら決める”……。その生徒会の方針はそのまま学園の方針になっている」
「なにその世紀末」
それは当時のユイ自身も、今の状況になるとは思っていなかったのだろう。だが結果としてガンプラに関わる理想の学校とも言えるこの場所は変わってしまった。悲しげなユイに静かに頷きながらイオリが学園の状況に顔を顰めているアラタに顔を向け……
「まず、去年から学園内ランキングが導入されたの。これは毎月に一度、ランキングバトルで変動するわ。ランキングバトルは3on3のG-cube形式。撃墜数だけではなく、サポートや立ち回りを含めて、総合的に評価される……。ランキング上位者には学園側からの資金的、人材的なサポート、将来の進路も厚遇される。だから強い人はより強くなっていく……。それだけなら“バトルに強い学園を目指す”ということで問題はなかった。でも学園は歪な方向へと突き進んだ」
「ランキング上位者に、ランキング下位の人は逆らえない……。校則になくとも、自然とそうなってしまったの」
「……こんなのおかしいですよ、ユイ先輩! 少なくとも私が憧れていた誰もがガンプラを楽しめるガンブレ学園ではないです!」
「そうね……。私達元生徒会役員がもっとしっかりしていれば……」
生徒会によって導入された様々なルール。しかしそれは弱肉強食のような世界を作り上げてしまった。このことに異を唱えるイオリに、ユイも自身の不甲斐なさを嘆き、もっとあぁしてればと後悔の念に駆られているにが見て取れる。
「……違うでしょ。それは自惚れだ」
「でも、元生徒会役員だった私が負けなければ……」
「過去は苛まれるものじゃなくて労るものだ。それより今を考えるべきっしょ」
今まで基本的に飄々とした態度をとることが多かったアラタが、一切のふざけもなしにユイの目を見て、真摯に話す。
「……そうね、ありがとう。今更、どうこう言っても仕方ない。前を向いて立ち上がらなくっちゃ」
「それでこそ。じゃあ、ここで一つ、俺からの提案だ」
アラタの言葉が届いたのだろう。僅かに考えるように俯いたユイはやがて振り切るように顔をあげて笑みを見せる。
その姿に満足したアラタはポンと手を叩いて注目を集めると、軽く両手を広げ……。
「俺達でチームを作ろう」
「えっ!? それって私達で生徒会と戦うってこと?」
思いも寄らぬアラタの提案にユイが驚いていると……。
「……ユイ先輩。私、やります」
「イオリちゃん……」
「今までユイ先輩が一人で戦うのを見ているだけでした。でも……もう嫌なんです! だってこの学園は私達の学園じゃないですか! 生徒会だけのものじゃないはずです!」
ここでイオリもチームへの参加を表明してくれた。もう我慢できない、目を逸らしたくないという強い想いにユイも驚いていると、イオリはそのままアラタへ目を向ける。
「それに、私には彼が新しい力を齎してくれる……。そんな気がするんです」
「アラタ君が、新しい力を……」
アラタから感じる可能性を口にするイオリに、ユイもまじまじとアラタの顔を見つめる。
「ごめんね、アラタ君。私、キミをこんな戦いに巻き込みたくなかった……。でも、やっぱりイオリちゃんと同じ。どこかで期待してたのも否定できない……。都合のいいことを言っているのは、分かってる。だけど……」
葛藤があるのだろう。だがやがて、決心したようにスッと深呼吸をすると、アラタの前に立って、真剣な眼差しと共に頭を下げる。
「私達と一緒に……生徒会と戦って!」
ユイが頭を下げた。それほどまでにこの学園を元に戻したいのだろう。イオリが驚いているなか、黙っていたアラタは肩を落として、立ち上がると……。
「チームを作るって言ったのは、そういうことでしょ。なぁに、この天っっっ才ガンプラビルダーがサクッと解決しちゃいますよ」
((天才を強調した))
自己紹介の時と同じように三本指をクルリと振りながら、自信に満ち溢れた答えを返してくれたのだ。二人が安堵しながらも苦笑していると、音を立てて部室の扉が開いた。
「──生徒会規定事項6乗4項。学園の生徒は、生徒会および生徒会役員への反抗の意思を持つことを許されない」
予期せぬ来訪者に驚いて視線を向ければ、そこには腕章をつけた高身長の茶髪をショートカットにした女子生徒が入室してきていた。その鋭い瞳はクールでありながら、気の強さも感じ取れる。
「リョウコ!?」
「生徒会へ通報があった。お前たちがここで生徒会への反逆を共謀している、とな」
呼び捨てで呼ぶことから少なくともユイにとって距離の近い人物なのだろう。リョウコと呼ばれた女子生徒は気にした様子もなく、この場に訪れた理由を口にする。
「生徒会書記のオオトリ・リョウコ先輩……。先程の話にも出た、前の生徒会役員でただ一人、現生徒会へ残っている人よ。それから生徒会を支持するチーム……ラプラスの盾のリーダーでもある」
「……成る程、ね」
驚いているユイを他所に誰か分からずに首をかしげているアラタに近づいたイオリがそっとリョウコについての上方を耳打ちで教えてくれた。
ラプラスの盾で言えば、やはり先程のショウゴ達であろう。そのチームのリーダーであれば、更に厄介なことになるかもしれない。
「先程のチンピラみたいな人達もラプラスの盾のメンバーって言ってました。これは面倒なことになりましたね……」
「──誰がチンピラだゴラァ!」
「わっ、出たっ!」
それはイオリも同じことを思ったのだろう。しかし何気なく言ったその言葉に入り口から怒鳴り声が聞こえ、そのままショウゴまでもが取り巻きと姿を現すと、お化けが出たように驚く。
「今度こそぶっ潰してやらぁ!」
「やっぱり、チンピラそのものじゃないですか……」
とはいえ、その粗暴な発言にどの口が否定するのかと呆れてしまうが。
「二年のコウラと、お前は……転入生か。悪いことは言わない。ユイに手を貸すのはやめておけ」
「俺には悪いことにしか聞こえませんけど」
「私たちは、ユイ先輩と戦うって決めたんです!」
場を正すように咳払いをしたリョウコはイオリと、そして話は聞いていたのだろう。新品の制服を着たアラタに忠告をするが、聞き入れる気のないアラタは飄々と返し、イオリも強く反発する。
「……仕方ない。それでは、力でねじ伏せるしかないようだ。バトルルームに移動するぞ」
言葉で言ったところでどうにもならないと、ため息をついたリョウコはバトルルームへの移動を提案する。
どうやらガンプラバトルを行うようだ。待っていたとばかりにショウゴも血気盛んに行くぞ、ゴラァとリョウコの後に続く。
「先程バトルが終わったばかりなのに、まさかの連戦ッ!」
「うおッ」
仕方ないと椅子から立って、ユイ達と共にバトルルームへ向かおうとしたアラタだったが、不意に現れたマイク越しに喋るリンコに身を震わせる。
「ここに再度、レジスタンスチームとラプラスの盾の戦いの火蓋が切って落とされようとしています! ミカグラ・ユイの前に立ちふさがるは、かつての生徒会のメンバーでもあるラプラスの盾のリーダー、オオトリ・リョウコ!」
「……本当に神出鬼没なんすね」
「さぁーッ! この因縁のバトルの結末やいかに!? それではガンプラバトル、レディーーッ! ゴォーーーッ!!」
よくもまあ、そこまで口が回るものだと思いながらも、放送部による実況付きで再びガンプラバトルの火蓋が切って落とされるのであった。