ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
太陽が燦々と輝き、刃のような陽射しが照りつけるこの砂漠がサイド0とAIRBRUSH OF Zのバトルステージに選ばれた。ステージの特徴としては一面に広がる砂と切り立った岩石、二つのピラミットが存在することだろうか。
《さあ、今回のG-cubeは争奪戦ッ! 果たして、どちらのチームがキーパーツと共に栄光を掴めるのか! 実況のこのシャクノ・リンコと共に見届けてください!》
バトルフィールドにそれぞれのガンプラが投影されると、同時にリンコの実況も始まる。
早速、サイド0側が今回のキーパーツの位置を探し出そうとするのだが……。
「うぅっ、砂漠って歩き辛ぁーい!」
「シオンも得意じゃないよー!」
サイド0のガンプラ達が動こうとしても、砂に足を取られて満足に動けやしないのだ。
ステージは常にランダムとはいえ、サイド0側は局地的な戦闘を考慮したガンプラではない。思うようにいかない操縦できない状況にチナツとシオンは悲鳴を上げている。
「……防砂はしてないわけじゃないけど。AIRBRUSH OF Zのガンプラに比べたら長期戦は不利か」
ランダムだからこそガンプラにも汎用性が求められるわけだが、それでも付け焼刃だ。
防砂の類は塗装の腕が求められる。であればAIRBRUSH OF Zのほうが上手であろう。長期戦は不利と判断して、キーパーツを探すのだが……。
《──おぉっと、AIRBRUSH OF Z! 早速、キーパーツを奪取! このまま獲得なるかぁっ!!》
「なにっ!?」
何とAIRBRUSH OF Zは早速、キーパーツを見つけ出したというのだ。
アラタがすぐさまセンサーを確認すれば、キーパーツであるデータパーツを取得したことによって、そのガンプラのポイントがセンサー上には現れていた。
「まずいって! 早く行かないと……っ!」
「──待て、ちなちー!」
このままでは勝負がついてしまう。
慌てて動き出そうとするチナツにアラタは制止しようとするのだが、その声は届かず、マックスキュートが飛び上がった瞬間だった……。
「──きゃあぁあっ!?」
その瞬間、飛び上がったマックスキュートを狙って、バズーカの砲弾が襲い掛かってきた。
避けるには間に合わず、直撃したマックスキュートは大きく吹き飛ぶと、地面に叩きつけられる前にG-ブレイカーが受け止めた。
しかし、それが仇となったのか、砲弾が次々にG-ブレイカー達に襲い掛かる。
マックスキュートを受け止めた拍子で身動きがとれないG-ブレイカー達はまともに直撃を受けてしまい、吹き飛んでしまう。
「……大まかな場所は分かったッ!」
だが、無意味に砲弾を浴びたわけではない。
マックスキュートと共に体勢を立て直すと、砲弾が放たれた方向に向かって、フォトントルピードを広範囲に放つ。
「退けっ! 退くんだっ!」
動きがあった。
迫るフォトントルピードにシロイがチームメイトに指示を見せると、今まで砂の中に隠れていたガンプラが姿を見せる。
それはドムをベースとしたミリタリー塗装が為された機体であった。
このフィールドにこれ以上にないくらいの相性のそのガンプラの名前はドムタクティーク、通常のドムよりもZガンダムのパーツを組み込み、機動力を底上げしている印象を受けるガンプラだ。
「学園の秩序と塗装を乱す奴は、今ここで粛清してやるっ!」
他にもAIRBRUSH OF Zのガンプラはどれもミリタリー塗装が為されている
しかし姿を確認できたところで、シロイ達は動揺することなく、ホバー移動によって砂煙をあげながら、縦横無尽にフィールドを駆け巡り、攻勢に出た。
「アラター、ここは任せてっ!」
「……ちなちー?」
「キーパーツは取られたままだしね。アラターに任せたいんだっ」
するとマックスキュートがG-ブレイカーの前に躍り出る。
それはまるでドムタクティーク達を引き付けようといわんばかりだ。
アラタを信じているからこそのチナツの想いに頷くと、G-ブレイカーはキーパーツ奪取のためにスラスターを稼働させ、光輪を放ちながら飛んでいく。
「いかせるかぁっ!!」
「大佐の邪魔はさせないよー!」
G-ブレイカーの意図を察したのだろう。
すぐさまその後を追撃しようとするシロイ達だが、突然、横槍が入る。
迫る射撃を回避しながら、相手を見てみれば、そこにはシオン専用ガンダムの姿があり、マックスキュートと合流すると、ドムタクティーク達へ向かっていくのであった。
・・・
「……G-ブレイカーの機動力でもギリギリか」
一方、アラタもキーパーツを奪取したガンプラを捉えていた。
しかし、やはりそこはAIRBRUSH OF Zのガンプラというべきか、容易にはパーツを奪わせない。
「……だけどッ!」
アサルトモードを起動させて、ビームライフルと共に無差別に解き放つ。
放たれた無数のビームは砂漠に着弾すると、勢いよく砂煙が舞い上がり、視界を阻むだけでなく、その動きも牽制する。
「これッ……でぇっ!!」
その間に急接近したG-ブレイカーはそのまま勢いを利用して、こちらに向けられたハイパーバズーカを回避するとシールドによる打突を浴びせる。
そのまま脚部を高トルクモードに変化させると緑色に染まった脚部による重々しい一撃をお見舞いして、サマーソルトの要領で宙に蹴り上げると、ビームサーベルを引き抜いて一刀両断する。
《ここでサイド0がキーパーツの奪取に成功! このまま回収なるかぁっ!?》
爆発の中から零れ落ちたデータパーツであるメイスとハイパーバズーカを取得する。
このまま回収装置に向かおうとした瞬間、アラートが鳴り響いた。
「それ以上、好き勝手はさせないぞッ!」
何とシロイのドムタクティークがこちらに迫ってきていたのだ。
その後方にはドムタクティークを追撃するシオン専用ガンダムとマックスキュートの姿があり、どうやら向こうでもAIRBRUSH OF Zの機体を撃破することには成功したようだが、それでも無事とはいえず、二機とも大きく損傷が目立っている。
「それ以上? いや、もう十分だ」
既にアラタの頭の中には組み立て説明図のイメージが広がっていたのだ。
人差し指を顔の横に添えていたアラタはゆっくりと目を開いて、ドムタクティークを捉えると……。
「さあ、勝利を組み立てようか」
G-ブレイカーのメインカメラが輝くと、シールドとライフルを捨て、ドムタクティークに向かっていく。
一体、何の意図があるのか? ドムタクティークの背後にいるマックスキュート達に目配せするように顔を向けると、データパーツからバズーカをリアルタイムカスタマイズによって換装する。
「そんなものぉっ!」
そのまま辺り一面に撒き散らすように砲弾を放ち、土砂を巻き上げ、ドムタクティークを牽制する。
しかしシロイもセナから指示を受けるほどの実力者だ。砂煙に動揺することなく、そのまま土砂を突っ切って、ビームナギナタを引き抜く。
「流石の塗装というべきか……。確かにお遊びといわれても仕方ないかもな」
土砂を真っ向から突っ込んだとしても、一切、衰えることのないその機動力と防砂仕様にはただただ驚嘆するしかない。確かにこの場にいる誰よりもシロイの塗装技術は抜きん出ているだろう。
「けど、遊びでも俺達は本気だ」
ビームサーベルを逆手で抜き、そのままビームナギナタの刃を受け止め、鍔迫り合いに発展する。
周囲にスパークを散らすなか、間近に迫るドムタクティークの頭部にバルカンを撃ち込んで、仰け反らせると、そのままハイパーバズーカをさながら鈍器のようにして叩きつける。
「シオン達のハートは負けてないよっ!」
そこにすかさずシオンが脚部を撃ち抜いて、動きを封じたのだ。
「これは戦争じゃなくてガンプラバトル! 本気で楽しまなくちゃ損だよねっ!」
それが大きな隙となったのだろう。
背後に迫るマックスキュートは大きく飛び上がって、太陽を背にして回り込むと両腕部にエネルギーを集中させる。
「あ、あれは……っ!」
太陽を背にするマックスキュートの姿にシロイは目を見張る。
彼は堅実な塗装のみを選んで、派手な塗装は遠ざけていた。
しかしどうだろうか、太陽を背にクリアパーツを輝かせるあのガンプラに一瞬といえど、美しさを感じてしまったのだ。
「チナチースペシャルアタァーック!!」
太陽を背に輝かんばかりのマックスキュートはドムタクティークに突撃する。
スターバーニングナックルによって幾度となく拳を叩きつけると、最後にはアッパーカットで打ち上げて、そのままピースサインを作って、決めポーズをとる。ドムタクティークがマックスキュートの背後で爆発するなか、G-ブレイカーは回収装置にキーパーツを収め、バトルに勝利するのであった。
・・・
「終わった……。ガンプラ塗装道も……恋も……! それだけじゃあない。僕は、僕はぁ……! あのガンプラを……輝くあのデコ塗装を一瞬でも美しいと思ってしまった……!」
バトルを追え、シミュレーターから出てくれば、敗北のショックからか、マスミは膝をついて愕然としていた。
「どうしてバトルに負けたら、塗装道? が終わるの?」
「……ぼ、僕らはこの学園に高度な塗装技術を広めたかった……。語り合う仲間が欲しかった……」
すると、そんなシロイに合わせて、ちょこんと屈んだシオンは彼に尋ねると、負けてしまったからか、自棄になったかのように、理由を話し始めた。
「けれど、何の後ろ盾もない僕らに世間は厳しかった……。熱弁を振るうほど、生徒達は離れていったんだ。だから僕は考えた! 今の学園を支配するランキング制、その上位に与えられる生徒会特権! それさえあれば、塗装道を学園中に広められる!」
熱心に語れば語るほど、離れていく周囲。
伝え方の問題もあるだろうが、それでも人が離れていくというのは悲しいものだ。だからこそシロイは強引にでも動いたのだろう。
「だが、生徒会からは“バトルに実用的ではない塗装は禁止”と釘を刺され……せめてリアル志向ならいいだろうと、オシャレ塗装を禁止してきたというのに……」
「ね、このガンプラ……。シロイ君が塗ったの?」
しかし根本で自由に語り合う仲間が欲しいと思っての行動は逆に道を狭めてしまった。
もう燃え尽きたかのように項垂れているシロイにふとユイがドムタクティークを手に取ると、声をかける。
「あっ、当たり前だろ!? バトルでの視認性や迷彩性能まで考えたスペシャルな塗装だぞ!」
「そっか。私ね、シロイ君のガンプラを見たことがあって、その時は素直に凄いなって思ったの」
自分で塗ったのかといわれては黙ってられないのか、シロイはすぐさま立ち上がって、抗議するように答えるが、ユイはドムタクティークを見つめたまま、何ともいえない表情を浮かべている。
「でも……なんでだろ。今のこのガンプラからはそういう感じがしない。ワクワクしない」
「……つまらないって言いたいのか?」
物悲しげに話すユイにシロイが眉を顰めるが、その直後に押し黙る彼女の無言は肯定を示していた。
どこか重苦しい雰囲気が部室内を満たすなか、こんどは チナツが口を開く。
「シロイっちがデコったガンプラとアラターがデコったガンプラ……。見比べてみたら?」
「……どういうこと? どう見ても、僕のほうが仕上げも綺麗だし、バトルでの性能が高いスペシャル塗装だけど」
「それってデコってる時、楽しかった? 笑顔でデコってた?」
チナツからの目配せを受けて、アラタはユイが机に置いたドムタクティークの隣にG-ブレイカーを置く。
二つのガンプラを見比べて、自分のほうが塗装技術は上回っていると、口にするシロイだったが、直後に放たれたチナツの言葉にショックを受けたように目を見開く。
「た、確かにバトルに有利な配色、性能を高まる塗り方ばかりを気にして塗っていた。ミスをすれば最初からやり直しで緊張の連続だった……」
「デコられたガンプラを見れば、どんな気持ちで塗られてたか分かるじゃん。ガンプラって、そんな気持ちで塗って楽しいかな?」
確かにドムタクティークは綺麗な仕上がりだ。恐らくはこの場にいる誰よりも。
しかし、どうだろうか、まるで機械が塗ったかのように正確性だけを求められて、窮屈な印象を受けるのだ。
初めてアラタと出会った時、G-ブレイカーから感じた温かな想いはこのドムタクティークからは感じられなかった。
「ハア……やっぱり完敗だな。分かってたよ、自分でもつまらない塗装してるって。でも仕方なかった。生徒会の要求に応える為、AIRBRUSH OF Zを潰されないためにはさ……。でも負けてしまった。生徒会は負けを許さない……。もうどうすれば良いのかな……」
塗装の腕を自負しているシロイは認められないとばかりに顔を顰めていたが、やがて観念したように肩を落とす。
しかし、サイド0に負けてしまった以上、今後、AIRBRUSH OF Zはどうなってしまうのか、そう考えるだけで、憂鬱になって、何も見出せなくなってしまった。
「また好きなように塗装すればいいんだよ! 大丈夫、シオンが応援してあげるっ!」
シロイに何と声をかけるべきか、言葉を悩ませていると、不意にシオンが満面の笑みで答えたのだ。
「シオンは専門外だから詳しくは分からないけど……シロイさんのガンプラが綺麗に塗られているのは分かるのっ。そんな人が悪い人なわけないもん! だから、シオンが応援してあげるっ」
「ぼ、僕の塗装を……理解してくれるのか……!?」
「うんっ! だからシロイさんもシオン公国の一員として、シオンを応援してっ! きっとみんなが笑える学園に変えて見せるからっ!」
屈託のない笑みを見せるシオンにシロイは肩を震わせて、感激のあまり涙を流す。
それはまるで天使を目の前にしているかのようだ。
「だって、シオンの……シオン公国の目的は、シオンが総統になって、誰もが平等で争いのない笑顔が溢れる学園を築くことなんだからっ!」
アナタもその中にいるんだよ、といわんばかりにシロイに手を差し伸べたのだ。
「ジッ……」
『ジ……?』
するとマスミは小刻みに震えながら、ポツリと何かを呟く。
辛うじて聞き取った言葉をアラタ達が首を傾げて、呟くと、突然、シロイは感激の涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、拳を高らかに突き上げる。
「ジークシオン! ジークシオン!! ジークシオン!!!」
今まさに臣民が再び生ま変わった瞬間を目にしたのだ。
この流れは……と頬を引き攣らせていると、突然、部室の扉が開き、そこからサカキやショウゴ、マスミに三馬鹿達他の生徒がぞろぞろと部室内に雪崩れ込み……。
『ジークシオン!! ジークシオン!! ジークシオン!! ジークシオン!!』
「みんな、ありがとー! シオンは絶対、やり遂げるからねっ!」
いつの間にお決まりの光景が出来上がってしまった
その中心にいるシオンは響き渡らんばかりの声に応えるように大きく拳を突きあげて、飛び跳ねていた。
「またこの流れ……」
「いいじゃん、面白くってさー。アタシもシオン公国に入っちゃおうかなー!」
もう何度、目にした光景か分からず、頬を引き攣らせるイオリに抱きつきながら、こういったお祭り騒ぎは好きなのだろう、冗談交じりにチナツはシオン公国の姿を見つめていた。
「ふぅ……。でも、これでちなちーと塗装の件は片付いたかしら」
チナツを引き剥がしながら、収拾がついたことに安堵のため息をつくイオリだが、すぐさまその表情は厳しいものになる。
「残るは生徒会の本丸……! これで生徒会長まで手が届く……ッ!」
生徒会傘下の大きなチームはラプラスの盾を残して、殆どを撃破した。
であれば、後はもう生徒会のみだ。
「アラタ、みんな。少し話があるの」
するとイオリはどこか急いた様子でアラタ達サイド0のメンバーに声をかける。
その急いた様子は傍から見ても分かるのか、怪訝そうに顔を見合わせるアラタ達だが、一先ずは第08部へと向かうのであった。