ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
その名はゲネシス
湯気が揺れるなか、濃褐色の水面に映る自身の顔を見つめているのはイオリだった。
今、彼女がいるのはとある喫茶店であり、注文したコーヒーからは香ばしい香りが鼻をくすぐる。
昼下がりのこの時間は客足も落ち着き始め、中々ゆったりとした時間が流れている。
店内の穏やかなBGMが優美な雰囲気を作り上げるなか、嗜むようにコーヒーを一口。香りに劣らず、美味である。
「あんまー」
そんな和やかな時間を打ち壊すように気の抜けた声が目の前から聞こえてくる。
あまりの声に頬を引き攣らせながら、前を見ればそこには顔を隠してしまうのではないかという程のジャンボパフェをもきゅもきゅ食べているイチカの姿が。
ゲームセンターで再会したイオリは話を持ちかけると用件を聞こうとこうして喫茶店に訪れたわけだが、真っ先にこのジャンボパフェを注文して以降、イチカは特にイオリに目をくれることはなく、パフェを貪っていた。
「そ、そろそろ話を……」
「……別に待ってくれなんて言ってないけど。勝手に話してて」
「えぇっ……」
とはいえ、いつまでもパフェを食べては頬を緩ませるイチカの姿を見ているわけにはいかない。
早速、話を切り出そうとするのだが、大して興味がないのか、パフェから目を逸らすことなく答えられ、唖然としてしまう。
「言っとくけど、私に相談した奴の殆どはため息ついて帰るからそのつもりで」
「いや、その……」
「あっ、今、ガッカリした? だよねー。私、ゴミみたいな人間だし、イチカの名は一つの花って書くけど、一花の一はマイナスの一だし」
(この人、こんな人だったっけ……?)
自分の中で影を照らす光の如く神格化されていた憧れの人物のイメージがまさに音を立てて崩れていく。
あの時、暴虐な振る舞いをしていた自分を諌めた凛々しいあの姿から一転、気怠るげな半開きの目で負のオーラを纏ってボソボソと話す姿に目眩すら感じてしまう。
「あっ、あの……なにかありました?」
「なにもなさ過ぎっていうか、こっちのセリフなんだけど」
あまりに卑屈なイチカを心配するのだが、私はいつもこうだ、そんな目で見るなとばかりに言い返される。
イチカ自身、イオリがわざわざこうして自分に会いに来たのにはなにか理由があるのだろうと考えたのだろう。
さっさと用件を言えと促すように鋭い瞳を向けられ、イオリは息を呑みながらも、意を決したようにおずおずと話し始める。
「……実は最近、ちょっとガンプラの楽しさを見失ってた気がするんです。色んなことに囚われて空回りして……。今思うと、本当にバカだったなって」
生徒会を、何より過去の自分を意識するあまり暴走してしまった自分。
そこにガンプラを楽しもうとする想いはなく、まるで兵器のようにガンプラを手段にしてしまっていただけだった。
「でも、そんな私の目を覚まさせてくれた人が……仲間達がいるんです。それで思い出せました、初めてガンプラを作った時の感動を」
今でも自分の身体の全てを包み込んでくれた温もりを手に取るように思い出すことが出来る。
それはまるで自分が初めてガンプラを作り上げた時に感じた温かさに非常に似ていたのだ。
楽しさ、喜び、愛おしさ。それら全てが一つになってその温もりを生み出すことが出来たのだろう。
「……私は、私のようにガンプラの楽しみ方を見失った人達に、ガンプラの強さだけじゃなくて楽しさをもっと知って欲しい……。それが私の、本当に目指すべきものだと気付けたんです」
あの温もりはきっと広げることが出来る。
強さだけが絶対正義に凍りついた学園の氷を溶かすことが出来るかもしれないのだ。
それはきっと自分を見失って空回りした自分が、何よりもそれによってあの尊い温もりに気付けた自分ならば広げることが出来るはずだ。
「でも、言葉だけじゃ届かないことだってある。ただ理想を抱くよりも、真の強さを身につけないといけないって思ったんです。私に強さを教えてくれたアナタのように」
かつて見上げた翼。
あれこそが強さなんだと、自分もそうなりたいと思えるほどの鼓動の高鳴りはきっと嘘ではない。
自分もバトルを通して、相手になにかを伝えられるような強さを身に付けたいと思ったのだ。
「だから、イチカさん! この三連休の間……いえ、少しの時間でも構いません! 私を鍛えてくれませんか!?」
見上げた翼に手を伸ばすしか、まだ出来ない。
だか絶対に届かせる、自分もその高みに飛び立ってみせるという強い意思を宿したその瞳をまっすぐイチカに向けて、頭を下げる。
「……私も……っ……イチカさんや……彼のように強くなりたいんです……っ!」
強さとはなにかを教えてくれたイチカだけではない、
その脳裏には自分を包んでくれた自称天才の姿が過ぎる。
普段は飄々としているものの,それでも彼の愛は本物だ。人を思いやり、救うことが出来る彼のようになりたいのだ。
暫しの間、沈黙が包み込む。
自分が伝えられる精一杯の想いを伝えた。
しかしだ、いくらイオリがイチカを尊敬していたとしても、所詮、たった一回、しかも当時の自分の印象など最悪もいいところだろう。イチカがこの申し出を断ったところで何らおかしな話ではない。
「……ケッ、野郎絡みかよ」
「えっ」
頭上から拗ねたような声が聞こえてくる。
あまりに場違いにも思える声色に唖然としながら、顔を上げれば、そこにはつまらなさそうに頬杖をついてロングスプーンの先をクルクル回してるイチカの姿が。
「はっ、その彼ってのはなんだ? 彼ピッピって奴か? あ?」
「なあぁっ!? そ、そういうわけじゃ! か、彼は大切な仲間で……っ!」
「はいはい、そういう反応もお腹一杯なんだよこっちは。青春で良いデスネー。こちとらもうすぐ
所謂、彼氏いない暦=年齢という奴なのか、非常に拗らせた態度を取り始めたイチカ。
容姿も綺麗で可愛らしいのだから、寧ろ彼氏はいると思っていたが、どうやらそうではないらしい。
今まで以上に負のオーラを纏いながら、捲し立てるようにぶうぶうと口を尖らせていた。
果たして、これがいつまで続くのかと思った時、「今年のクリスマスも黒く染まるぞ」と相変わらずブツブツと文句を言いながら、伝票を持って会計に向かおうとする。
「あ、あのっ! どこへ……?」
「……ゲーセン。さっさと来い、イオリア充」
「リ、リアルが充実し過ぎてるなんてそんな……」
「チッ」
おもむろに立ち上がって、どこへ行こうというのか、その小さな背中に尋ねるも、自分の呼称に思わず両頬に手を添えて照れてしまうが、イチカからは心底、忌々しそうな舌打ちが聞こえてくる。
「……まあ、なんだ」
そんな彼女だが、ふと、その嫉妬に溺れた表情も和らいだ。
「……傍にいる奴のように強くなりたい……って気持ちは分からんでもない」
今まで見たことがないほど柔らかく優しい笑みを見せる。
果たして彼女の脳裏には一体、誰が過ぎっているのだろうか。
だが、それでも彼女がここまでの表情を見せるのだ。きっと素晴らしい人物なのだろう。
そんな笑みを見せるイチカを年上ながら可愛らしく思いながらも、イチカに連れられて近くのゲームセンターへ向かう。
・・・
「……まずは今の君を知りたい。言いたいことは分かるな」
「はいっ! 今の私を全力でぶつけます!」
ガンプラバトルシミュレーターの前にはイチカとイオリの姿が。
これからバトルをしようというのだろう、顎先でシミュレーターを指すイチカにイオリはサファイアを取り出すことで応えると、頷いたイチカとともにそれぞれシミュレーターに乗り込んでいく。
「……目指すべき、か」
シミュレーターに乗り込んだイチカは自身のガンプラをセットすると、マッチングを待ちながら、先程のイオリを思い出す。彼女は強くなった。少なくともあの場で話をした時の熱意でそれは感じ取れた。きっと自分と出会った後に素晴らしい出会いをしたのだろう。
「……そうだな。目指すべきだと思ったのなら、諦めるわけにはいかないな」
脳裏に過ぎるのは軌道エレベーターで離れ離れになってしまった”トモダチ”。
だが、自分は再会を諦めているわけではない、きっと輝かしい未来が訪れると信じて、そこを目指しているのだ。
だからこそ、あの少女の想いを無碍にすることなど出来なかったのだ。
──彼女は可能性。
「アマミヤ・イチカ」
──この世界に、怨恨を断ち切る英雄や未来を掴む覇王は存在しない。
「ゲネシスガンダムアンリミデッド」
──故にその因子を持たず、彼女は彼女のまま独自の強さを身につけた。
「出る」
──あり得たかも知れないもう一人の新星だ。
分かる人には分かる話。
イチカはガンブレ3(DLC含む)を主軸に生きてきた前々作組とラスボスゲームクリエーターがいない世界線のボッチをイメージしていただければ分かりやすいかなと(双子の妹とかはいる
【挿絵表示】
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ガンプラ名 ゲネシスガンダムアンリミデッド
元にしたガンプラ ビルドストライクガンダム
WEAPON GNソード(射撃と併用)
HEAD ビルドストライクガンダム
BODY アカツキ
ARMS イージスガンダム
LEGS ビルドストライクガンダム
BACKPACK フリーダムガンダム
ビルダーズパーツ レールガン×2(両腰)
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