ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

51 / 97
燃える瞳

 高層ビルが立ち並ぶ荒廃した無人の市街地が大きく揺れる。

 建造物を打ち破って姿を現したのはレイジングガンダムだ。

 しかし、レイジング自身が自ら建造物を打ち破ったわけではなく外因があるようで膝をつきながらも何とか体勢を立て直して前方を見据える。

 

 そこには崩壊した建物の瓦礫の上を踏みしめながら、ゆっくりとこちらに向かってくるガンプラの姿があった。

 ガンダムEz-8をベースに黒と黄を基調とするカラーリングのガンプラの名前はガンダムEz-A。右腕部には2連装ビームライフル、左腕部には5連装ロケットランチャーを装備して、バックパックにはガンダムヴァーチェの可動式2連装ビーム砲を装備した火力を誇るカスタマイズが施されたガンプラだ。

 

「──っんなもんか? テメエの力ってのは」

 

 ビルダーであるマスミは煽るような物言いで目の前で膝をつくレイジングに言い放つ。

 現在、レイジングとEz-Aの一対一によるバトルが行われているのだが、マスミのバトルの腕はリュウマの予想を大きく上回っており、大きく損傷しているレイジングとは対照的にEz-Aはほぼほぼ無傷なのだ。

 

「全っっ然、足りねえなぁ。もっと俺を満たしてくれよ」

 

 所謂バトルジャンキーという奴か、さながら獰猛な獣のような笑みを浮かべたマスミと共にEz-Aの2連装ビームライフルの銃口がキラリと光る。その姿に息を呑んだ瞬間、さながら刃のように形成された大出力のビームが放たれたのだ。

 避けるには間に合わず、咄嗟にレイジングは各部の装甲を展開するとレイジングフィンガーを繰り出す。ビーム同士がぶつかり合って発生した衝撃波は周囲の建造物を崩壊させていくほどの激しさを見せるが、徐々にレイジングは圧され始める。

 

「激甚! 苛烈! 強勢! 吹き飛んじまいなぁッ!」

 

 真っ向から膨大なエネルギーがぶつかり合っているというのに、Ez-Aは怯むこともなくマスミは口角を吊り上げると振り払われた2連装ビームライフルと共に押し負けたレイジングは後方の高層ビルにまで吹き飛ばされ、衝撃によって倒壊したビルの瓦礫に襲われ埋まってしまう。

 

「──だあぁあっ!」

 

 勝負はついたのか。いや違う。

 リュウマの咆哮とともに瓦礫が吹き飛び、レイジングは姿を見せる。

 

「負けらんねえ……ッ! コイツで戦う以上、負けらんねえッ!」

「チッ……仕方ねえ奴だな」

 

 レイジングは既に満身創痍だ。到底、半ば無傷であるEz-Aを相手に勝機などないだろう。

 だがそれでもリュウマの中に過ぎったアラタに応えようとビームナギナタを支えにEz-Aに向かっていこうとするそのあまりに悲壮な姿を目の前にマスミは肩を落としてため息をつく。

 

「散りな」

 

 近づけさせることも許さず、Ez-Aの全砲門が向けられる。

 反抗を許すこともなく無慈悲に引かれたトリガーによってレイジングは砲撃の海に呑まれるのであった。

 

 ・・・

 

「くそッ。また負けた!」

 

 シミュレーターから出てきたリュウマは悔しそうに床を蹴る。

 畑仕事も終わり、落ち着いてから場所を近くのゲームセンターに移して何度かマスミとバトルをしたわけだが、そのどれもがまともに損傷を与えられることもなく、一方的にやられてしまっているのだ。

 やはりフラストレーションが嫌でも溜まってしまうのだろう。

 歯を食い縛って、苛立ちを表すかのように顔を顰めてしまって近寄りがたい雰囲気を醸し出してしまう。

 

「情けねえ真似してんじゃねえよ」

 

 あまりの姿に見かねてマスミが嗜める。

 悔しがるのは勝手だが、それで周囲の人間が眉を顰めてしまうような態度はすべきではないだろう。

 

「第一、お前がバトルする理由は何なんだよ」

「あぁ?」

 

 自分でも思うところはあるのだろう、バツの悪そうな顔を浮かべるリュウマに彼のバトルをする理由を尋ねる。しかし、何故そんなことを聞かれるのか、その真意が分からないのだろう。リュウマの表情はたちまち怪訝そうなものに変わる。

 

「なにかありゃコイツを使う以上は負けらんねえだなんだって。そんなこと言ってから負けんだよ」

「っ! コイツはアラタが俺に──!」

 

 小指で片耳を穿りながら面倒臭そうに話すマスミにたちまちリュウマは食って掛かる。

 レイジングはアラタがリュウマへの期待を象徴するようなガンプラだ。彼にとって使い勝手が良いようにと突き詰めて作製されている。

 リュウマもそのことを重々に理解しているからこそ詰め寄るのだが、小煩そうにマスミの手が両頬を鷲掴みにしてそれ以上の言葉を喋らせないようにする。

 

「それだ。お前は結局、アラタがアラタがってアイツに縛られてんだよ」

 

 その言葉はある意味で衝撃だった。

 自分はただアラタの期待に、想いに応えようとしていただけだ。しかしマスミはそれが縛られていると指摘したのだ。

 

「お前がバトルをしてんのは義務感かなにかか? アイツの想いに応えなきゃって考えるあまり、バトルに余裕がなくなってんだよ」

 

 誰かの想いに応えようとする姿勢その物は否定はしない。だがアラタに託されたレイジングだからこそ無様な戦いは出来ない、負けるわけには行かないと焦るあまり空回って本来の実力を発揮出来ていないのだ。

 

「そんなバトルって楽しいか? お前はアイツの期待を背負おうとして押し潰されそうになってんのに気付いてねえ」

 

 かつてのサカキがマリカがガンプラに込めた想いに気付けず、十分に性能を発揮出来なかった。逆に言えばリュウマはアラタの想いに応えようとするあまり彼自身の実力を十分に発揮出来ていないのだ。

 

「ガンプラバトルってのは戦争なんかじゃねえ。言っちまえば祭りみてえなもんだ。だからこそ思う存分に楽しむことが出来るし、ただ目の前のことだけに夢中になれる。一回、頭の中を真っ白にしてバトルをしてみろ」

 

 果たして最後にガンプラバトルを楽しいと思ったのはいつ頃だろうか。

 学園が今のようになっていつの間にか、楽しいなんて思うこともなかった。それまではガンプラバトルをしようともなれば喜んで挑んだし、勝っても負けても笑っていた。しかし今では眉間に皺を寄せて、険のある表情でバトルをすることが多かったような気がする。

 

 ……最後に楽しいと思ったのは、レイジングのデビュー戦ともいえるふみなチャレンジの時だろうか。

 あの時は自分では到底、作れないようなガンプラに感激し、大きな刺激を受けた。だがそれ以降はアラタとの模擬戦など数える程度しかない。

 

「バトルを楽しむのは難しいことじゃねえ。心火(しんか)だ。お前の心の火をもう一度、燃やせ」

 

 リュウマの胸板を叩きながら、好戦的な笑みを見せる。

 だがそれでいてどことなく温かさに似た優しさを感じるのだ。

 

「第一、お前みたいなバカはあーだこーだ考えるような柄じゃねえだろ」

「あぁー! バカっつったな! せめて筋肉つけろってんだよ!」

「知らねえよ。言うほど筋肉ねえだろ、この脳筋」

「着痩せするタイプなんですゥ! このドルヲタ!」

「お前こそこの間、せめてマスミンって呼べって言っただろ。因みにこのンはシーたんの名前から貰ってだな──」

「ぜってぇ呼ばねえっつっただろ、ジャガイモッ!」

 

 先程のやり取りから一転して子供の喧嘩のような騒々しさを見せ始めるリュウマとマスミ。

 傍から見ていた三馬鹿もまたやってるよ、と呆れているなか、このやり取りを見ていた者が他にもいた。

 

「……騒々しいな」

「楽しそうにも思えます」

 

 リョウコとアカリだ。

 あの後、ゲームセンターに訪れたわけだがリュウマ達に気づき物陰に隠れて様子を伺っていたのだ。

 

「……」

 

 しかしその最中、穏やかな笑みを見せていたアカリの目が刃のように鋭く細まる。

 そこにはゲームセンターに訪れたばかりであろう一人の青年がいた。

 大体、自分達と同じような年頃だろうか、目深く被ったフードから中々、表情は見えないが一瞬だけその顔をアカリは捉えることが出来た。

 

 クゼ・ヒロト。

 リョウコが危険人物と考えるほどの青年が噂通り姿を見せたのだ。




ガンプラ名 ガンダムEz-A
元にしたガンプラ ガンダムEz-8

WEAPON 2連装ビームライフル
WEAPON ビームサーベル
HEAD ガンダムEz-8
BODY ガンダムEz-8
ARMS フルアーマーガンダム(サンダーボルト)
LEGS ジェスタキャノン
BACKPACK ガンダムヴァーチェ

活動報告にリンクがあります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。