ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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まなざしの想い

 荒野に轟音が響き渡る。マスミの助言を聞き入れたリュウマはマスミの他にも彼に協力してくれるショウゴ達や三馬鹿と共にバトルを繰り広げており、今もショウゴとバトルをしていた。

 

「俺様のガンプラ、味わわせてやるぜ!」

 

 ショウゴのガンプラはかつての継ぎ接ぎのものとは違い、彼自身が手がけたものだ。

 かつて奪ったパーツ達よりも完成度で劣る点こそあるものの、ショウゴが自分のクセを考慮して作られたガンプラはかつてのザルグよりも動きが段違いであった。

 当然、作製したショウゴ自身も一から完成させたため愛着があるのだろう。バトルの腕だけではなく、操縦するその顔は楽しそうで溌剌とした笑みを浮かべている。

 

「良いガンプラじゃねえか……ッ!」

 

 それは何よりバトルをしているリュウマにも伝わっていた。

 元々、シングル戦を行わせたのはマスミだ。一対一の状況の方が正確に相手のバトルへの姿勢が分かりやすいだろうと考えてのことだった。

 実際、その通りでショウゴだけではなく、マスミを筆頭にサカキやシロイ、三馬鹿達と幾度もバトルをしたのだが、特にショウゴやサカキ、シロイに関してはかつてとは違い、まさに憑き物が落ちたようにバトルをしていてガンプラに対する愛を直接感じられた。

 

 ・・・

 

「負けちまったぁーっ!」

 

 結局、バトルその物はリュウマが勝利を納めてシミュレーターから出てきたショウゴは頭を抱える。

 

「けど、今度は負けねえぞッ!」

 

 しかしリュウマとは違い、怒りや悔しさを撒き散らすことなく、寧ろ次は勝つんだとばかりに活気溢れる笑みを向けてくると、近くにいたサカキやシロイにアドバイスを求める。

 

「……あの頃が嘘みてえだな」

 

 ガンプラやバトルについて暑く語り合うショウゴ達の姿を見つめながら、リュウマは何とも言えない複雑そうな様子で呟く。

 かつてはパーツ狩りや財力に権力など他者の痛みを気にかけず、横暴を働いていた彼等だが今では真摯にガンプラに向き合っている。それはバトルをしていても感じられた。あの頃、感じなかった輝きが今のショウゴ達にはある。それは何より彼等がガンプラを楽しんでいるということなのだろう。

 

 反面、自分はどうだろうか。

 アラタに応えようと思うあまり、勝敗に拘って楽しむことを忘れてしまった。そんな自分がサイド0として楽しかった学園を、と改革を訴えていたと思うと自嘲してしまう。

 

「けど俺だって違う」

 

 暗い表情もすぐさま力を宿していく。

 マスミの言葉を受けた分、より相手に集中することが出来るようになった。だからこそ相手の想いもより感じ取れるようになった。

 ショウゴ達のガンプラを楽しむ想い、もっと上を目指そうとする愛を間近に感じ取って触発されるように胸の内で小さな火が灯るように熱いものを感じるのだ。これこそマスミが言っていた心火というものなのかも知れない。だからこそこの火を消すわけにはいかないのだ。

 

「よーし、今度はチーム戦しようぜ!」

 

 力が宿った表情は段々と溌剌なものになっていく。

 胸の内の火をどんどん燃え上がらせるかのように三馬鹿やショウゴ達へバトルを持ちかけると彼等も快く頷いてバトルを始めていく。

 

 チーム戦によるバトルが開始される。ショウゴ達は元よりリュウマも触発されたかのように少しずつレイジングを駆るその動きから勝敗に拘るあまりに感じられたぎこちなさはなく、自由に伸び伸びとした解放感が感じられるようになっていった。

 

 その様子を温かく見守っていたマスミだが不意になにか視線を感じ取る。

 嫉妬のような負の感情だ。なにかと思って見てみれば、そこにはフードを目深く被った青年がいたのだ。

 フードから僅かに覗かせる瞳は真っ直ぐバトルを映す観戦モニターに注がれているもののその瞳から伺える感情は決して友好的なものではない。

 

 気になってマスミはそのまま声をかけようとするのだが、向こうもマスミに気付いたのだろう。

 まるで逃げるかのようにその場から立ち去っていく。

 しかし立ち去るなかでフードの下のその口元から忌々しそうに歯軋りするような音が響くのであった。

 

「アイツ、どっかで見たような……」

 

 声をかける間もなく去っていくその後姿を見つめながらマスミは首を傾げる。

 先程のフードの人物に見覚えがあるのだろう。それを思い出そうとするも丁度、バトルに変化が起こり、マスミの注意はそちらに向けられるのであった。

 

 ・・・

 

「それじゃあな!」

 

 幾度もバトルをしていたら時刻はすっかり夕暮れとなってしまった。

 今日はそろそろ解散しようとそれぞれが帰路につこうとするなか、活き活きとした様子でショウゴは手を振って走り出す。それはまるで時間が惜しいといわんばかりの充実した輝かしい表情だった。

 

「……アイツ、本当に変わったな」

「何でも今ではバトルの実況動画投稿にハマっているらしい」

 

 かつてとは見違うようなショウゴを見送りながら、ふと零した印象にサカキが答える。

 ショウゴが動画配信者になっていたなど初耳だったのだろう、驚いた様子でサカキを見れば「そこそこの再生数を稼いでいるよ」と話してくれた。

 

「道を誤っていたが本来の情熱を取り戻したということなのだろう。バトルの楽しさをもっと広めたいと充実した様子だったよ」

 

 パーツ狩りを止めた後の学園での生活を見る分にはシオン公国の臣民の印象でしかないのだが私生活は充実した日々を送っているようだ。確かにバトルをしていてもショウゴの腕はかつてとは比べものにならなかった。

 

「勿論、それは彼だけじゃないがね。私も知っての通り自分でガンプラを作っている。日々、ガンプラと触れ合うことで感じられる高揚感に胸を躍らせているよ。今では何故、サクライ君に作らせていたのか分からないくらいだ」

「最近だと1/1スケールのガンプラを作ろうって企んでるって聞いたよ」

 

 ショウゴについて話すサカキだが、彼自身もまたかつてとは違うのだろう。話す言葉だけではなくその表情からも確かに楽しんでいるのだろうという想いを感じ取ることが出来る。そんなサカキに彼が密かに抱いている野望をシロイが話しながら交じってくる。

 

「そういうアナタも塗装やカスタマイズに以前よりも力を入れているそうじゃないか」

「アラタ君やコウサカさんに刺激を受けてね。近いうちにコンテストがあるんだ。最近、思うように塗装が出来なかったけど今なら最高の塗装が出来ると思うんだ」

 

 そんなシロイに微笑を向けながら彼の近況について触れれば、彼もまた柵から解放されて望むままの塗装が出来ているのだろう。その時は是非見に来て欲しいと晴れ晴れとした様子だ。

 

「案ずる事はない。私達でさえ再び変われたのだ。君の中の火も再び燃え盛ることだろう」

 

 不意にまっすぐ見据えたサカキの言葉に驚く。いやサカキだけではなくシロイもまたその言葉に頷きながらリュウマを見つめていた。

 楽しみを見失い勝敗に拘っていたリュウマの中の変化はマスミだけではなく、バトルをしていたサカキ達も気づいていたのだろう。

 

「今一度、龍が空を駆ける時を楽しみにしているよ」

 

 いや、もっと言えば前々からだったのかもしれない。ガンプラビルダーだけではなく虐げる側にいたからこそリュウマを放っておけず、この三連休を費やしてくれるのだろう。リュウマへ期待の言葉を投げかけながらサカキやシロイもこの場を後にし、今日は解散となるのであった。

 

 ・・・

 

 段々と薄暗くなる空の下、ショウゴは歩いていた。もう間もなく自宅へ到着することだろう。彼の頭の中には今度、どういった動画にするかなど常に考えているのだろう。だがそれも苦ではないらしく寧ろ傍から見ても楽しそうだ。

 

「……」

 

 そんなショウゴから離れた場所にリョウコとアカリの姿があった。尾行しているのか、物陰に隠れながら様子を伺っているようだ。しかし、ショウゴを尾行しているのではないらしく彼女達の視線はショウゴの後方の電柱に向けられている。

 

 そこには身を隠すクゼ・ヒロトの姿があったのだ。

 ゲームセンターから姿を消した後も様子を伺っていたのだろうか、ショウゴを尾行しており、それを察知してこうして後をつけているわけだ。

 

(何事もなければ良いのだが……)

 

 この時間帯のこの道は人気がなく、なにか胸騒ぎを感じさせる。

 ショウゴの後をつけてなにをするつもりなのかは知らないが、それでも何事もなく終わって欲しい。

 しかしこの直後、リョウコの予想もしなかった出来事が彼女を待ち受けるとは想像すらしていなかったのだ……。

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