ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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筆が乗るような強い刺激が欲しい……。


憎悪へのシナリオ

 ──覚醒

 

 使用条件こそ分からぬものの、一度発現させればガンプラの性能を大幅に飛躍させるという破壊と創造の力。ガンブレ学園でいえばアールシュ・アニク・カルナータカなど上位ランカーがその力を使っている。

 

 ……僕はあの力が眩しかった。

 なんでそんな風に感じたのかは分からない。

 でも、あの光はそう……まるでビルダーのガンプラへの想いが形となったかのようで眩しかったんだ。

 

 僕は今まで必死に走ってきた。

 どれだけ自身をすり減らすようなことになっても最後には栄光を掴みとってやるんだと躍起になってきたつもりだ。

 

 そのお陰で入学してから徐々にだがランキングも上がり始めていた。

 後少しで下位ランキングから脱することも出来る……。これで今まで苦しんできた分も報われるんだと思っていた矢先、僕はアイツに出会った。

 

 ──トモン・リュウマ

 

 ガンブレ学園のランキングは大まかに三つに分かれている。

 下位ランカーで構成されるCASUAL、中間に位置するSTANDARD、そして上位ランカーによるHARDCORE。何の後ろ盾もない一年生はまずその殆どが下位ランカーであるCASUALとしてのスタートを余儀なくされる。

 

 その下位と中間ランキングとの境目で僕はアイツを知った。

 丁度、奴と僕のランキングは一つ違いだった。次のランキングバトルでどちらが下位ランキングを脱することが出来る、そんな状態だったんだ。

 

 それだけならば、ただの競合相手として片付けることが出来る。

 なんてことはない、これまでのようにただ目の前の相手を倒すことだけを考えれば良い。

 

 だけど、アイツは……アイツだけは違った。

 アイツは……楽しそうに笑っていたんだ!

 

 だからなんだろう。

 僕があんなことをして、今に至るのは。

 

 しかし何て忌々しいことなんだろう。

 漸く上位ランキングに名を連ねることが出来て、全てが上手く行き始めたこのタイミングでアイツがまた僕の前に……よりにもよってあの“輝き”を手に入れたなんて。

 

 ……もうまどろっこしいことをしても仕方ない。

 幾ら遠回しなことをしても、アイツはきっといつかまた目障りな存在として僕の前に現れるだろう。

 

 ……ならいっそのこと、奴を墜としてしまえば良いんだ。

 

 ・・・

 

 マスミとのバトルを終えたリュウマはその後、明日もバトルをしようと解散して自宅に帰宅していた。今日はショウゴ達に会えなかったものの連絡を取ってみれば、どうやら明日は顔を出してくれるそうだ。自分達がゲームセンターに訪れる前に一体、なにがあったのかは知らないが、この分だと安心していいだろう。

 

「ふっふーん、今日のバトルは素晴らしかったでござるなぁ」

 

 ……相変わらずこの怪しさの塊である忍者は当たり前のようにこの場にいるのだが。

 

「お前、当たり前のようにいるけど、家とか大丈夫なのか?」

「ちゃんと帰るでござるよ。それともおはようからおやすみまで拙者が傍にいて欲しいのでござるかー?」

「昨日はおやすみからおはようまでいたな。ベッドは一つしかねえんだぞ」

「……あー……流石に心臓に悪かったので今度、厄介になる時は寝袋持って来るでござるよ」

 

 どうやら昨晩は一緒のベッドで眠ったらしい。最も特に気にした様子もなく、あくまでベッドの問題について話すリュウマにミツルは昨晩のことを思い出してか、口当てをしていても分かるほどに照れながら視線を逸らす。

 

「大体、男女で寝床を共有するというのは……」

「今更かよ。いきなり夜中に押しかけてきた訳分かんねえ奴の為に俺は床やソファーで寝る気はねえ。けどその逆も何だから一緒にベッドで寝るかって話だろうが。第一、徹夜でガンプラを仕上げた後にちょろっと寝ただけだろ」

 

 もじもじと身体を揺すって恥らうミツルとは対照的に呆れた反応を見せるリュウマ。どうやら一緒のベッドで寝たといってもさして長い時間、一緒に寝ていたわけではないようだ。

 

「そういや、お前のガンプラってどんなのなんだよ」

 

 とはいえその少しの間でもミツルには色々と刺激的だったのか、恥らったままだ。そんな彼女に彼女が扱うガンプラについて尋ねる。最もその質問に今まで恥らっていたミツルはピタリと動きを止める。

 

「ずーっと気になってたんだよなぁ。ビルダーとしての技術は本物だし、すっげえガンプラ作ってんだろ?」

(……まさか本当に気付いて……? いやまあ、アチラは深く絡んではないでござるが)

 

 無邪気にミツルのガンプラに興味を示すリュウマの姿に答える言葉も見つからず頭を悩ませる。しかしこの場にいるのは皆が知っての通りミツルでござる。

 

「それよりも覚醒でござるよ。あの力、今後も使えるのでござるか?」

「マスミの話だと覚醒して以降はシステムでサポートされてるらしいぜ」

 

 自身のガンプラから話を逸らそうと半ば強引に話題を覚醒に変えると、どうやら今後はアールシュのように任意で覚醒を発現することが出来るようだ。

 

「……他人が持てない力を手にすると孤独感ばかりが強くなるでござる。お主には今のお主のまま成長して欲しいのでござるよ」

「それってどういう……」

「……なに、拙者の知り合いにそう感じる御仁がいるのでござる」

 

 どこか普段のおどけた態度も鳴りを潜めて意味深に話すその内容にリュウマは顔を顰めるが、ミツルはそれが何であるのか、直接明言することなく立ち上がる。

 

「明日が三連休の最終日。総仕上げ、この目で見させてもらうでござるよ」

 

 穏やかな口調で話すとミツルはにっこりと笑みを浮かべて、この場を後にする。一人、残されたリュウマを窓から差し込む夕焼けの光が照らしていた。

 

(覚醒、か……)

 

 ベッドに倒れこむと、先程の話題に出てきた覚醒について思いを馳せる。あの時の自分はただただバトルに夢中になっていたため、バトルを終えるまでよもや自分が覚醒していたなど思いもしなかった。

 

 ふとスマートフォンを取り出して連絡帳の中に登録されているアラタの名前を表示させる。

 アラタに連絡して、覚醒のことを教えるべきか。しばらくジッと画面を見つめていたリュウマだが、やがてスマートフォンを枕元へ放り投げ、少しの間、仮眠を取るのであった。

 

 ・・・

 

「リュウマ、聞いたぜ。新しいガンプラ、出来たんだってな」

 

 翌日、時刻通りゲームセンターに訪れてみれば、マスミ達やミツル以外にもショウゴ達の姿があった。昨日は会っていなかった為、どのような様子かは分からなかったが、今こうして接する限りでは特に問題らしい問題はないだろう。

 

「ヘッ、何ならすぐにでもどんなもんか教えてやっても良いぜ」

「余程の自信……いや、ガンプラへの愛というべきか。良いだろう! その言葉に乗ろうではないか」

 

 どうやらマスミから既にレイジングボルケーノの存在は知らされていたらしく昨日、居合わせていなかったショウゴ達は興味津々の様子だ。そんな彼らに挑発のように拳を打ち合わせて好戦的な笑みを見せるとリュウマの新ガンプラとバトルをしてみたいというのは共通しているのか、サカキの言葉に便乗するようにショウゴやシロイなどもシミュレーターに乗り込んでいく。

 

「……む?」

 

 それから数分後、バトルが始まり、苛烈さが観戦モニターからも伝わってくるなか、ふとミツルの視界の端に見覚えのある人影がシミュレーターに乗り込んでいく。その姿に目を鋭く細めるもまずは様子を見てみようと観戦モニターに視線を戻すのであった。

 

 ・・・

 

「っ!? 凄いガンプラだ! これ程の動きが出来るなんて……ッ!」

「アンタが上手い塗装を教えてくれたからだ。感謝してもしきれねえ」

 

 バトルフィールドとなる市街地でリュウマ達のバトルは行われていた。レイジングボルケーノはリュウマ自らが作製したこともあって、噛み合わせは十分なのだろう。レイジングを使用していた頃よりもその動きに硬さはなく元々のセンスも相まってか怒涛のラッシュはシロイをも驚かせる。

 

「もらったぜー!」

 

 シロイとのバトルを続けるレイジングボルケーノの背後をとったショウゴは標準を定めると引き金を引こうとするが、その前に横から唸るような一撃が放たれて吹き飛ばされてしまう。

 

 レイジングボルケーノに装備されているテイルブレードだ。まさに龍の尾のような強靭な一撃も相まって、レイジングボルケーノとバトルをしていると、獰猛な龍と戦っているかのような錯覚さえ感じてしまう。

 

「やはり私が感じた気高き龍の姿は嘘ではなかったな……」

 

 ただバトルに強いだけではなく、そこに活力を感じるレイジングボルケーノの姿にサカキはかつて自身の目を覚ます一因となった龍の復活したその姿に人知れず微笑む。今のリュウマとならばきっと高みを目指せるような最高のバトルが出来るはずだ。

 

「っ!?」

 

 そう思っていた時であった。突然、上空からバトルをしていたレイジングボルケーノ達を狙って土砂降りのような砲撃の嵐が襲い掛かってきたのだ。咄嗟に避けて、仕掛けてきた相手を見やると……。

 

「あの野郎は……!?」

 

 リュウマを除くショウゴ達の顔が強張る。そこにいたのはかつてショウゴ達を無残にも撃破したサイコ・ケルググだったのだ。

 

「なんだ、アイツがどうしたんだよ?」

「……あのガンプラは昨日、私達とバトルをした相手だ」

 

 明らかに様子がおかしいショウゴ達に問いかけると、サカキは苦々しくサイコ・ゲルググを見つめながら答える。やはり昨日のことということもあって苦い思い出になっているようだ。

 

「ただ負けただけではない。あのガンプラの原動力はまるで負の──」

 

 それ以上の会話が紡がれることなくサイコ・。ゲルググからの砲撃がレイジングボルケーノ達目掛けて放たれる。咄嗟に散開して割けると、リュウマは鋭くサイコ・ケルググを見据える。

 

「なんだか良く分かんねえけど、アイツ等が世話になったみてえだな」

 

 レイジングボルケーノに集中する砲撃の嵐の中から突破口を見つけると、リュウマはジョイステックを強く握り締め、レイジングボルケーノは地を蹴ってサイコ・グルググへ反撃に打って出る。

 

「……ッ」

 

 ここでリュウマは何か違和感を感じた。レイジングボルケーノが接近しようと転じた瞬間、サイコ・ゲルググの砲撃が緩まった気がしたのだ。しかし今更、止まることは出来ず、殴りかかるとその手は容易く受け止められた。

 

「──こうしてバトルするのは初めてだったかな」

 

 不意に接触回線で聞こえてくるサイコ・ゲルググのビルダーの声。しかしその言葉はまるでリュウマを知っているかのような物言いだった為、当のリュウマは思い当たる節もなく顔を顰めている。

 

「以前はバトルをする前に君から棄権したからな」

「俺がバトルで棄権……? そんなこと……──」

 

 サイコ・ゲルググからの言葉に記憶を巡らせる。自分がバトルを棄権することなどあっただろうか。そう思って、過去の記憶を辿ると一つだけ思い当たる出来事があった。

 

 それはサイド0に加入する前のランキングバトルだ。当時の自分は自身のガンプラを無残にも破壊されてしまったこともあってバトルをする気にもなれず、ランキングバトルを棄権したのだ。

 

「まあ、自分のガンプラが壊されたんじゃどうやったってランキングバトルの結果なんて見えてるけど」

「……学園の奴か。わざわざ何の用だ」

 

 リュウマの反応から察しがついたのだろう。煽るような物言いが神経を逆撫でするなか、相手がガンブレ学園の生徒であることを察したリュウマはその目的について尋ねようとする。

 

「陰からやったって仕方がない。今度はバトル“でも”君のガンプラを壊してやろうと思っただけさ」

 

 その言葉にリュウマは息を呑むと同時に彼の脳裏にはかつて破壊された自身のガンプラについての記憶が過ぎる。

 

 涙を流し、絶望して、身を焦がすような怒りを抱いたあの日──。

 今でも忘れるわけがない。リュウマが言葉を失っていることで彼が察したことに気付いたのだろう。サイコ・ゲルググのシミュレーターの中でクゼはリュウマの怒りを誘発するかのように歪な笑みを浮かべるのであった。

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