ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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迷える天才

 アラタ達がフウゲツの案内で訪れたのは彼が経営している喫茶店であるSTARKだ。

 優雅なBGMと暖かみと落ち着きを感じさせるアンティークな作りは居心地の良さを自然と形成しており、来店している客の顔一つ一つを見ても穏やかな面持ちだ。

 

「はーん、ガンブレ学園って凄いことになってたんだなぁ」

 

 カウンター席は丁度、アラタ達で埋められており、向かい側のキッチンではフウゲツがユイから現在のガンブレ学園について聞かされていたのか、相槌を打ちながらコーヒーをそれぞれに渡していく。

 

「しかし、サイド0とは驚かされた。それもまさかアラタがリーダーとは……」

「あれ、ナオヤマさん。結構、意外そうだね」

 

 コーヒーを静かに啜りながら横目に同じくコーヒーを飲んでいるアラタを見ながら呟く。その呟きにはアラタがリーダーということへの驚きが込められており、いち早くそれを感じ取ったシオンが何気なく尋ねる。

 

「そりゃそうだ。アラタは昔、しょっちゅうユイの後ろに隠れてるような奴だったんだぜ」

 

 何気なくフウゲツから語られたかつてのアラタ達にユイを除く女性陣は心なしか驚いているようだ。

 だがそれも無理もないことだろう。彼女達が知るソウマ・アラタというのは自称天才自意識過剰のナルシストだ。その普段の自信家ぶりを知っている分、昔とはいえユイの後ろに隠れていたというのは信じられないくらいだ。

 

「じゃあ、アラターはいつ頃、今みたいなナルシーになったの?」

「……寧ろアラタがナルシストというのが驚きなのだが」

 

 そうなってくると何故、アラタは今のような人格となったのかが気になってきたのだろう。だがチナツの問いかけにゲンカクは眉を顰めながら不可解そうに横目でアラタを見やる。

 

「まあ、でも変わりだしたのはやっぱユイが引越し──」

「はいはい、昔話はもうお仕舞いだ。この天っっ才のルーツを辿りたいのは分かるけど、それはその内にソウマ・アラタ補完計画でやれば良いでしょうよ」

 

 しかしフウゲツには思い当たる節があるのか、顎先に手を添えて首を傾げながらも答えようとした瞬間、それ以上の言葉を遮るようにここで漸くアラタが口を開く。

 

「それより他の人達は元気? この後にでも顔を見せに行こうと思うのだけれど」

「変わりねえよ。アラタは兎も角、ユイを見たら驚くだろうなぁ」

 

 話を逸らすようにこの近隣について尋ねると、そこからこの町にはフウゲツやゲンカク以外にどのような人物がいるのか、面白おかしく盛り上がるのだった。

 

 ・・・

 

 

「……どう考える?」

 

 その後、アラタとユイは挨拶をしようと同行するマリカ達と共にSTARKを後にし、カウンター席ではゲンカクがコーヒー片手に神妙な面持ちで目の前のフウゲツに尋ねる。

 

「男子三日会わざれば刮目して見よ、なんて慣用句もあるがアラタの場合、顔を顰めちまうなぁ」

「少し会っただけなのに、妙な違和感を感じる。このままではいけないというような違和感も」

 

 どうやらアラタについての話だったようだ。戯けた態度で答えるものの、彼なりにアラタについて感じることがあるらしく、同様にゲンカクも短い間にもアラタから何か引っかかりを感じて渋った様子を見せる。

 

「そこの所、なにか知らんかね?」

 

 そう言ってフウゲツが向けた視線の先にいたのはアールシュだった。

 彼は唯一、アラタ達と同行することなくこの場に留まっていた。それ故にこの中でガンブレ学園でのアラタを知っているであろう彼に話を聞いてみようと声をかけたのだ。

 

「ガンブレ学園の次はそこでのアラタの話を詳しく聞いてみたいもんなんだがね」

「気安いな。だが良いだろう。俺とていつまでも目の前に歪があるのは避けたいところだからな」

 

 今までアラタ達と一緒に来たものの我関せずと口を開かなかった彼だが、やはり今回、アラタ達に同行した理由の大部分はアラタにあるようだ。

 

「まずはコーヒーを貰おうか」

 

 頬杖をついたまま人差し指を立てて新たにコーヒーを追加で注文する。これはガンブレ学園のこれまでの経緯を聞くよりも長くなるような予感を感じながらフウゲツはりょーかい、と取り掛かるのであった。

 

 ・・・

 

「ここの人達、すっごく強いねー!」

「それにしても会う度にバトルを持ちかけられるとは何と言うポケモ○ワールド!」

 

 そう叫ぶのはシミュレーターでマックスキュートとフリーダムインパルスを操るチナツとアヤだ。

 あれからアラタとユイが語る大人のくせに大人気ない知り合い達を会いに行ったのだが、その度にバトルを持ちかけられ、その標的は同行しているマリカ達にも及び、今もこうしてバトルをしているのだ。

 

 ・・・

 

「相変わらず大人気ないな。これで何回目だ」

「下手に火をつけちゃうと止まらないからねー」

 

 それを外から眺めているのはアラタとユイだった。彼らも例に漏れず、バトルを持ちかけられていたようで薄らと疲労感を滲ませているものの、それでも故郷での久方ぶりのバトルは心を躍らせるものがあったのか、その表情もどこか輝いて見える。

 

「大佐が嬉しそうでシオンも嬉しいよーっ!」

「まあ、否定はしませんけども」

 

 そんなアラタに抱きついてきたのはシオンだった。突然のことに驚くなか、シオンの言葉に改めてモニターに映る見覚えのあるガンプラ達を見て、穏やかに微笑む。

 

「うんうん! 何だか本当の大佐に会えたみたいっ!」

「本当、の……?」

 

 真っ直ぐとアラタを見つめながら話すシオンにアラタはゆっくりと秒針が停止するかのように動きを止める。

 

『君は誰?』

 

 ずっと頭の中にこびりついていた夢の中で放たれた言葉。それが再び脳裏を過ぎる。

 何故だか分からない。その言葉を言ったのが幼い頃の自分だったからなのだろうか、その言葉を思い出せば思い出すほど胸を鋭い刃で突き刺されたかのような衝撃を感じてしまうのだ。

 

「シオンちゃん、ちょーっとくっつき過ぎだと思うなぁ?」

「えぇー! 久しぶりにこんなに近くに大佐といられてるのにー! そうだ、それならユイさんも一緒にくっ付いちゃえば良いんだよ!」

(それが出来れば苦労しないんだけどなぁ……!)

 

 そんなアラタとシオンの間に割って入ったのは表情を引き攣らせたユイだった。突然の割り込みに不満顔を露にするシオンだったが、次には名案だとばかりに子供のように楽しそうな様子で提案するのだが、姉と自負する立場もあるからか、ますますユイは頬を引き攣らせる。

 

「すっごく楽しかったねー!」

「ちょっと休憩させてくださーいぃ……」

 

 そうこうしているうちにバトルを終えたチナツとアヤが戻ってくる。充実したバトルが出来たのか、満足げな様子だが、その分、バトルの疲れもあるのか、アヤに至っては肩をガックリと落としたまま倒れこむようにレイナに抱きつく。

 

「話には聞いていたけど、凄い場所ね。会う人皆、ガンプラが好きなのが伝わってくるわ」

 

 脱力しているアヤを撫でながら続いてシミュレーターから出てきた大人達を見やる。彼らはアヤとは対照的にチナツのように充実そうに笑っており、まだまだバトルをしそうな勢いだ。それはやはり彼らが真にガンプラを愛してやまないからだろう。

 

(学園を離れている間に少しでもその心を癒して欲しいものなのだけれど)

 

 チラリと見た先には、どこか惚けているアラタがいた。詳しいアラタの心境こそ分からないものの彼自身、口には出さないがサイド0のリーダーとして矢面に立つ以上、なにも感じていないわけではないだろう。そんな彼を案じながら少しでもこの三連休の間にただ好きなものを好きだと、そう感じられる有意義なものになるように祈るのだった。

 

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