ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
「みんな、遂にこの日が来たわ。生徒会本部に乗り込む日が」
いよいよ生徒会との決戦の日となった。
今日という日の為にやれることは全てやってきたつもりだ。しかしだからといって何も思わないわけではなく、ユイ達の表情には薄らと緊張の色が見える。
「……絶対に勝ちましょう。ユイ先輩」
「もう……コソコソとガンプラを作りたくないです。完成したガンプラを取り上げられたくないです」
だがそれ以上に絶対に勝つんだという想いがそれぞれの瞳には宿っている。
想いを同じとするイオリはマリカの言葉にユイは強く頷く。
「その意気だよっ☆ それじゃあ、そのまま勝っちゃおーっ!」
「今のサイド0ならイケるって! ぜーったい勝てる! みんなのデコにアドバイスしたアタシを信じて!」
決戦に臨もうとしているのはアラタ達だけではない。
彼らを支えようと寄り添ってくれていたシオンやチナツ達もまたこの場に集っているのだ。
「祝勝会の準備してんだからおじゃんにすんじゃねえぞ」
「そっちこそ、みみっちいもん用意すんなよなっ」
応援に駆けつけ、普段と変わらぬ態度で接してきてくれるマスミにリュウマも口角を吊り上げながら二人は拳同士を打ち合わせる。変わらぬ何気ない会話、今この瞬間においてどれだけ救われることだろう。
「今こそ友情・努力・勝利の時ですっ!」
「やるべきことはやった。今更振り返る必要もあるまい。だからこそ貴様等は前だけを見ていろ」
時刻が刻一刻と迫るなか、アヤやアールシュなどそれぞれが激励の言葉を送り最後にレイナが一歩踏み出る。
「なにが待っていようと私達はいつでも受け止める……。だから……いってらっしゃい」
「ああ、いってくる」
どんな結果になろうともアラタ達を待っていてくれる者達がいる。それこそ一人ではないのだと改めて実感できる。そんな想いを胸にアラタは頷くと周囲を見渡して……。
「さあ、勝利を組み立てようか」
この場に集まった一人一人を改めてその瞳に焼き付けると三本指をクルリと回して堂々と言い放つ。今ならばきっと誰にも負ける気がしない。そんな想いを胸に秘めながら生徒会室へと向かうのであった。
・・・
「このホールを抜ければ生徒会室よ。ただ、一般の生徒が勝手に入れないように厳重なロックがかかっているはず……。生徒会室に入ることが出来るカードキーは生徒会役員にのみ与えられているから生徒会役員以外が入るのは難しいわ」
ガンブレ学園の生徒達の様々な感情が籠もった視線を送られながらサイド0とその道を共に歩もうとする者達は生徒会室へと通ずるホールの前に到着した。かつて生徒会に所属していたということもあり、ユイは生徒会室の仕組みを説明する。
「──その通りだ」
生徒会とのバトルをしに来たのだ。まずは生徒会室に入らねばなるまい。そうして生徒会室へと向かおうとした矢先、柱の陰から冷たい刃のような冷徹な声が響き、ユイ達を震わせる。
「ここから先は何人たりとも通さん。ここを通りたくば私達を倒していくが良い」
「それが出来れば、の話ですが。どちらにせよ、ここでどちらかが屈するのは事実です」
そこから生徒会室への進行を阻むように現れたのはセナ、リョウコ、アカリの三人であった。
リョウコ、そしてアカリもセナにも負けぬほどの冷徹さを見せながらその瞳を鋭く細めて、”敵”を見る。
「……どういうことですか、副会長。私達を潰す程度なら生徒会長が出てくる必要はない……。そういうことですか?」
「ユウキ……。生徒会長の考えは俺の及ぶところではない」
サイド0に立ち塞がるのは紛れもなく生徒会に所属する者達だ。しかしその中で唯一、その長であるユウキの姿はない。恐らくはその先の生徒会室にいるのだろが、それにしてもこの後の及んでまだそのような態度を取るのかと不快感を露にするイオリにセナは視線を流しながらどこか複雑そうに答える。
「この争いをここで終わりにします。私は刃……。ただ切り伏せ、生徒会の天下無双を証明するだけです。それが……今の私に出来る唯一のことですから」
「俺も今出来ることをするだけだ。今出来ることは限られてるのかも知れねえ。けど俺達はその先にある明日って奴にいくらでも可能性を広げて見せる」
「……何故、今になって」
「あ?」
「こちらの話です」
ただ生徒会に仇なす者を倒す……。その意志を瞳に宿しながらサイド0を見据えるアカリにリュウマも己の想いを口にする。そんなリュウマの姿を眩しそうに見つめながらポツリと零すも、すぐに意識を切り替え、生徒会会計としての役割を果たそうとする。
「今、ここにいるのは生徒会書記のオオトリ・リョウコだ。故に語るべき言葉はない。お前たちにこの学園を変える力があるか否か、確かめさせてもらおう」
「リョウコ……」
一方、生徒会書記、そしてラプラスの盾のリーダーとしてこの場にいるリョウコはあくまで厳格な態度を見せる。その姿からはかつてアラタに全力でぶつかってくれと懇願してきた姿は重ならない。そんなリョウコにアラタは兎も角、ユイは複雑そうだ。
「……ユイ先輩、大丈夫ですか? お友達が相手で」
「大丈夫、とはいえない。でも負けない。負けられない」
リョウコを前にして思うところがあるであろうユイに対してマリカは気遣おうとするも、ユイは心配は無用とばかりに気丈にリョウコを前にしてもまっすぐと見据える。
「ガンプラバトルで強い者こそ正義、弱い者は悪。ここでそれを証明してやろう」
「あぁそう……。でもそんなものは証明できないと思うけど」
バトルへの火蓋を切るようにサイド0へ己のGBを取り出すセナだが、アラタはその言葉に興味がなさそうに前髪を弄っていた。そんなアラタに並び立つようにマリカとイオリが前に進み出る。
「わたしの知ってるガンプラバトルは……っ! 楽しくて、素敵で、格好良くて……っ……そういうものですっ!」
「ええ、生徒会の証明なんて違う……。違うとようやく本当の意味で気付けました」
自他共に認めるほどの臆病ではあるものの、今この場においては違うのだと己の意志をハッキリと示すように気丈に話すマリカを支えるようにその肩に手を添えながらイオリもかつての自分を振り返りながら答える。
「だから切り開くよ。そういう明日を!」
例え誰が立ち塞がろうとも決して臆することなくユイは叫ぶ。その姿にリョウコやアカリがどこか背けるように視線を伏せるなかサイド0の後ろから放送部が姿を現す。
「遂にやってきましたこの一戦! 怒涛無双の快進撃を続けるサイド0と副会長率いる精鋭部隊のバトルッ! この緊迫のバトルはワタクシ、シャクノ・リンコが放送部の独占生配信にてお送りします!」
分かってはいたもののどこかリンコの登場に安心してしまう。彼女はいつもと変わらない振る舞いで殺伐とした空気を彼女のトークによって中和していくかのようだ。そんなリンコの姿に微笑みながらアラタもGBを取り出そうとするが……。
「待てよ」
そう言ってアラタを制したのはリュウマであった。
「ここは俺達が行くぜ。生徒会長が引っ込んでるっつーなら、こっちもそうしようじゃねえか」
そんなリュウマに並び立ったのはユイとイオリであった。
このバトルはこの三人で臨もうとしているのだろう。
「だけど向こうとは明確に違うものがあるよ」
「あの人達の間からは温もりを感じない。でも私達は違うでしょ」
3on3とはいえ、バトルをするつもりでいたアラタは驚いているとユイとイオリは安心させるかのように微笑む。その笑顔は見ているだけで温かく包んでくれるかのようだ。
「お前だけが戦ってるわけじゃねえ。だからここは俺達に任せろよ」
「……筋肉馬鹿のクセに最近はまともなことばっか言いやがる」
ドンとアラタの胸を叩くリュウマにその言葉の意図を読み取ったアラタではあるが、どこか素直になれない部分があるのか、憎まれ口を吐く。
「じゃあ任せましょうか。大切な仲間達がそう言ってくれるんだから」
だがそれぞれの顔をしかと見たアラタは三本指をクルリと回す。自分だけで抱え込むのではない。仲間を信じているから、だからこそいかに大事なバトルとはいえ任せることが出来るのだと。
「さあ、ガンブレ学園の行く末を決める対決の前哨戦となるこの戦い。果たしてどちらに軍配があがるのかァーッ! それではガンプラバトル、レディーーッ! ゴォーーーーッ!!!」
それぞれがシミュレーターに乗り込み、準備を整える。モニターにはカタパルトが表示されるなか、リンコの実況がこのバトルを見つめる全ての者の関心を煽る。
「レイジングガンダムボルケーノ、出るぜ!」
「ガンダムリリィ、行きます!」
「ガンダムサファイア、出撃するわッ!」
カタパルトを駆け、バトルフィールドへと飛び込む。長はおらず、連なる者達によるこの戦い。その激闘の火蓋は遂に切られるのであった。