ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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曇天を抜けて

 ガンブレ学園の行く末を決める前哨戦となる戦いが始まった。

 バトルのステージに選ばれたのは曇天から雨が絶え間なく降り注ぐ熱帯雨林地帯であった。

 

 周囲の木々に身を隠すように降り立ったレイジングボルケーノ、リリィ、サファイアの三機はすぐさま相手の出方を伺うように様子を見ようとした瞬間、彼らの周囲を全てを焼き尽くさんばかりの暴力的なビームの数々が降り注ぐ。

 

「秩序を乱す反乱分子め……。すぐに潰してやる」

 

 続いてドシリと鈍重な着地音を響かせて降り立ったのはセナのクリンゲ・ズール率いる生徒会精鋭チームだ。

 今の攻撃もクリンゲ・ズールによるものなのだろう。銃口から硝煙を漂わせながらセナは先程までレイジングボルケーノ達がいた燃え盛る木々を見つめながら嫌悪感を露に吐き捨てる。

 対してその背後に控えるリョウコとアカリの表情は芳しくない。いや彼女達も今の自分達の表情を自覚しているわけではないのだろう。それがどのような内容であれ、彼女達はあくまで生徒会に所属する者としての責務を果たそうとしている。だからこそこのバトルにおいて一切、手を抜くつもりもない。だがそれでもなにも思わないと言えば嘘にはなるのだろう。

 

「──ウオァラァッ!」

 

 そんなリョウコとアカリも驚愕で目を見開く。

 先程まで全てを蹂躙するかのように轟々と燃え盛っていた炎が突如として吹き飛んだのだ。

 その中心にいるのは両腕を大きく広げた紅蓮の龍の姿が。その背後には守られるようにリリィとサファイアの姿もあり、お互い健在なようだ。

 

「すぐに……なんだって?」

 

 煽るようなリュウマな物言いに舌打ちするセナだが、レイジングボルケーノの背後にいたリリィが飛び上がり、バスターライフルの引き金を引く。唸りを上げて突き進む一閃にクリンゲ・ズール達はすぐさま飛び退いて回避するが、そこに更に追い打ちをかけるようにサファイアによる射撃が放たれる。

 

 クリンゲ・ズール達に迫る無数のピーム。しかしそれらはクリンゲ・ズール達の直前で露のように消え去る。

 

 キラリと一筋の刃が煌めく。幾多のビームが泡粒のように霧散するなか、刀を払うように一振りした戦国エクシアは刀身を指先で軽く撫でて腰を落とすと……。

 

「ッ!」

 

 幾多の雨を裂き、閃光の如くレイジングボルケーノに迫る。

 その爆発的な速度に息を呑むも、既に戦国エクシアの刃はレイジングボルケーノの喉元を穿つように放たれていた。

 

「リュウマ!?」

 

 野性の勘とでもいうべきか、寸でのところで白羽取りの要領で刃を防いだレイジングボルケーノだが、戦国エクシアの勢いまでは防ぐことは叶わず、周囲の森林を巻き込んで後方にまで押し切られてしまう。

 

 イオリがすぐさま援護しようとビームライフルの銃口を戦国エクシアの背中に向けようとするのだが、その行動を遮るように左右からメガ粒子砲が放たれ、リリィとサファイアはすぐさま飛び退いて避ける。

 

「他人の心配をしている場合か?」

 

 パルフェノワールによる砲撃だ。

 展開した両腕が本体に戻るなか、リョウコはリリィとサファイアを鋭く見やる。その隣に立ったクリンゲ・ズールを操るセナはフンと鼻を鳴らし……。

 

「ソウマ・アラタを控えさせたことを後悔しているのではないか? 奴がいなければ烏合の衆でしかないからな」

 

 このバトルにそれぞれの長は参加してはいない。

 これまでのサイド0の活躍はアラタの存在をきっかけに驚異的な躍進を見せてきた。そんなアラタを抜きにしてこのバトルに臨んだユイ達を驕りであると嘲笑うかのようにシニカルな笑みを見せたセナはクリング・ゲールと共に一気に加速してリリィ達に迫る。

 

 並みのファイターではまず反応しきれないほどの速度を持って前腕部に備えられたビームサーベルを出力して襲い掛かる。前述のように並みのファイターであればこの時点で撃破されてしまうだろう。

 

 しかしそうはならない、そうはいかないのだ。

 

「……ほぉ」

「……その言葉、否定できなかったのは事実です」

 

 ここで今までサイド0を嘲笑っていたセナに初めて僅かに感心したような声が漏れる。

 モニターを見る彼の視線の先にはクリンゲ・ズールの一撃を己のビームサーベルで受け止めたサファイアの姿があるではないか。

 

「でも、今は否定できるッ!」

 

 間髪いれずリリィの拳が放たれ、クリンゲ・ズールは両腕を交差させるように防ぐも勢いに圧されてパルフェノワールの傍まで押し切られてしまう。

 

「アラタが進む後ろ姿に続くんじゃない。私達はアラタと肩を並べて進むッ!」

「私達はその為に強くなった! アラタ君を苦しませる為じゃない、心からくしゃって笑ってくれるためにも」

 

 アラタがいたから……。それを何よりも自覚しているのはユイ達だ。だからこそ彼女達は強くなろうとした。

 これ以上、アラタ一人に背負わせない為にも、幾多の道のりを経て、その重荷をサイド0として共に背負うことが出来たからこそ負けるわけにはいかない、弱いままではいけないのだ。

 

「フンッ、よくも青臭いセリフを恥ずかしげもなく言えるものだ。今に学園の物笑いの種にしてやる」

「……副会長、あまり侮るべきではないかと」

 

 ユイ達の意志を疎むように顔を顰めたセナはどこまでも彼女達を侮蔑する物言いをするのだが、一方でユイ達の姿をまるで眩しそうに見ていたリョウコは注意を払いつつジョイスティックを握り直すのであった。

 

 ・・・

 

「──何故、今になってッ!」

 

 轟くように周囲の森林を薙ぎ払いながら、その戦いは行われていた。

 一方は獄炎の紅蓮龍・レイジングボルケーノ、一方は蒼き鎧武者である戦国エクシアだ。

 

 今、攻勢に出ているのは戦国エクシアだ。

 研ぎ澄まされた剣技はまさに達人のようであり、これほどの激しい戦闘が行われてはいるものの戦国エクシアが切り裂いた障害物の類の全てが綺麗な切断面を見せている。そんな剣技をまさに野性の獣のように粗暴さで迎え撃つのはレイジングボルケーノであった。臀部に供えられたテイルブレードを駆使して獣のような荒々しさと予想もつかない動きで全て防ぎきっているのだ。

 

「っんだよ、今だ何だってッ!」

 

 戦闘の刹那に聞こえてくるアカリの言葉に要領を得ず、問うリュウマ。彼女はバトルの前も似たような趣旨の発言をしていた。一体、この発言にどのような意味があるというのだ。

 

 しかしリュウマの問いかけに答える者は誰もいない。

 その問いかけから返ってくるのはただ相手を傷つける鋭く冷たい刃だ。

 

「アナタの動きは……見えていますッ!」

 

 かつて静を体現したような戦い方をしていた戦国エクシアだが、今は違う。静から動へ。出し惜しみをしないとばかりにトランザムを発現させると紅き残光を走らせ、一気にレイジングボルケーノの背後に迫る。

 

「ッ!?」

 

 ここでレイジングボルケーノが背部に損傷を受けてしまった。

 続く追撃を回避して何とか一太刀だけで済ませるものの、その一太刀による損傷は大きくすぐに追いつかれて掌底打ちを受けて、雨に濡れた泥道を削って吹き飛ばされてしまう。

 

「……もっと早くアナタ達と……アナタと知り合えていたら」

 

 まるで涙のように降り注ぐ雨道を通ってレイジングボルケーノの元に向かう戦国エクシア。それを操るアカリの表情は垂れた前髪からは伺うことが出来ない。しかしその柔らかな唇から漏れ聞こえたのは酷く哀しげな声だった。

 

「ですが……もうどうにもなりません……。信念も折れ、ただの刃に成り下がる道を受け入れてしまった今の私には」

 

 このままではいけないとかつては思った。

 しかし生徒会は自分の想像よりあまりにも大きな存在だった。真正面から挑んでも結果は明白……。ならばせめて内側から変えてやると意気込んで生徒会への道を進んだというのに何の結果も残せぬまま生徒会という存在に飲まれてしまった。

 

 かつての気高い志は露のように消え、残ったのは自分への嫌悪と受け入れてしまった現状。

 もしももっと早く、サイド0に、リュウマと出会えていたのなら果たしてどうなっていたのだろうか。そんな考えても仕方のないことだと分かっていながらも頭から消えない問答を繰り返しながらアカリはレイジンゴブルケーノに刃を振り下ろす……。

 

「……ゴチャゴチャうるせえな」

 

 だがその刃を持つ腕を受け止められたではないか。

 それに気付いたアカリが見下ろせばそこには膝立ちのまま防ぐレイジングボルケーノの姿があった。

 

「だぁーっ! まどろっこしいんだよッ! 小難しい言葉を使ってれば頭良いと思いやがってェッ」

 

 いい加減、耐え切れず爆発したかのようなリュウマの声が響き渡る。

 驚いた戦国エクシアが距離をとろうとするが、レイジングボルケーノが掴む腕からは逃れられず、ならばと膝蹴りを放とうとするのだがすぐさま空いた腕で払われる。

 

「あーだこーだ言ってねえでお前はどうしたいんだよッ!」

「……それを口にしたところで何も変わりません。アナタが馬鹿であるということも」

「せめて筋肉つけろってんだよォッ」

 

 面倒臭そうに本題を聞き出すような問いかけをするリュウマに我に返ったアカリは嘆息するが、最後の言葉にリュウマは律儀に反応してしまう。

 

「大体、何も変わらねえだぁ? そりゃあ悟ったような面してる奴じゃあ何も変わらねえだろうよッ!」

「……ですが事実です。私は生徒会のミツルギ・アカリ……。もう今更、どうしようもない」

「どうしようもねえんじゃねえだろッ!」

 

 両機が間近であるなか、声を張り上げるリュウマに諦めを表すように視線を流すアカリだが、リュウマの言葉にピクリと震える。、

 

「お前はもう変われねえって決め付けてどうして良いか分からねえから諦めただけだ! いくら澄ました顔してようがなあ、お前だって俺達と同じなんだよッ!」

「アナタ達と……?」

「俺達だってそうだ! 一人だって思ってる時はどうして良いか分からなかった。でも近くにいる誰かがいたからどうすれば良いのか……どうしたいのかが分かったんだ!」

 

 かつて一人の少女がリュウマのことを強い存在であると評した。

 しかし直後に彼はそれを否定したのだ。それは何より彼自身が自分という存在を理解しているから。

 

「俺に手を伸ばしてくれたヒーローがいる! アイツに出会えたから俺は強くなれた! アイツのお陰で俺の世界が色づいたんだ! 何が正しいかどうかなんて俺には分かりやしねぇ! けどな、アイツが負った傷さえ癒えるような世界を俺は作りてぇ! それが俺の答えだ!」

 

 リュウマの言葉に熱が籠もっていくのと共にレイジングボルケーノも呼応するように紅き輝きを纏う。それはまさに暗闇に光を灯す気高き輝きであった。

 

 この光を、強さを与えてくれたのはあの日、自分に手を伸ばしてくれた彼がいたから。未練を残したままガンプラから離れようとする自分を鼓舞し、信じてくれた彼がいるから今、自分はここにいる。人知れず傷を負い続けた彼の傷が癒えるような優しい世界を創造する為に自分は戦うのだ。

 

「生徒会が何を壊そうが、俺の……俺達の心までは壊されやしねえェッ!」

 

 覚醒の輝きに息を呑んだアカリはすぐさま距離を取ろうとするもレイジングボルケーノは戦国エクシアを竜巻の如く空高く投げ飛ばしたではないか。

 

 すぐに姿勢を立て直そうとするのだが、さながら昇り龍のように一筋の閃光となったレイジングボルケーノの突進を受けて、更に空へ突き進む。

 

「これ、は……っ」

 

 やがて曇天の雨雲を越えた先にあったのは燦々と輝く太陽だった。

 今、自分がいるのは遥か雲の上、そこはまさに穢れなき空が広がる美しき世界だった。

 

 そんなアカリも戦国エクシアのアラートに我に返る。

 レイジングボルケーノの反応があったのだ。

 

「っ……」

 

 レイジングボルケーノはもう周囲にはいない。一体、どこにいるのか、アカリは周囲を見渡していると不意に天から陰が差した。咆哮は太陽であり、見上げた先には太陽を背にする気高き紅蓮龍の姿があるではないか。

 

「この心がある限り……負ける気がしねえッ!」

 

 レイジングボルケーノの装甲が展開されると同時に覚醒の輝きはまるで翼のように広がっていく。

 右手に液体金属を纏ったレイジングボルケーノはただ一直線に戦国エクシアへ向かう。何にも囚われることなく、ただ真っ直ぐ前だけを見て。

 

 戦国エクシアも何とか対抗しようと刀を構えて穿つように放つ。

 しかし心のどこか迷いのある刃では吠え猛る紅蓮龍に傷を負わせることすら叶わず、刀ごと粉砕されて胸部を貫かれる。

 

「……生徒会のミツルギ・アカリの戦いは終わりだ。もう義務も何もねえ筈だ。だから……もう一度、聞くぜ……。お前は……どうしたい?」

 

 レイジングボルケーノと戦国エクシアとの間に穏やかな時間が流れる。生徒会の一員として戦ったミツルギ・アカリはその役目を終えた。

 

 今ここにいるのは一人の年頃の少女なのだ。

 不意にアカリの頬に熱い涙が流れるのを感じた。まるで今まで塞き止めたものが決壊して止め処なく溢れてしまうかのように。

 

 リュウマの問いかけに対して彼女の脳裏に浮かんだのはかつてのリュウマの私室で二人きりで過ごすミツルとリュウマの姿。あの時の自分は心から笑い、何より温もりに包まれていた。

 

「わたし、はっ……」

 

 こちらを見つめるレイジングボルケーノの姿は不思議と優しく感じた。それが何故なのかは分からない。しかし目の前の紅蓮龍を操るであろう青年に想いを馳せるように手を伸ばすと戦国エクシアは大爆発を起こす。後に残ったのは太陽を背に輝きを失わぬ紅蓮龍だけであった。

 

 ・・・

 

「ミツルギがやられた……? 無様な」

 

 戦国エクシアの撃破はセナ達のもとにも届いていた。侮蔑するサイド0を相手に敗北を喫したアカリに対して吐き捨てるような物言いをするセナだが、その言葉を糾弾するかのように鋭い刃が走る。

 

「生徒会長の考えは副会長の及ぶ所ではない……。確かにそうやって人を見下してばかりのアナタなら……生徒会長どころか誰の心だって分からないでしょうね」

「なにっ!?」

 

 そこには中破まで追いやられているサファイアの姿が。しかしビルダーであるイオリの目にはいまだ衰えぬ戦意がギラギラと輝いていた、諦めを感じさせないその姿勢だけでもセナからすれば目障りでしかないというのにその言葉はセナの怒りを誘うには十分だった。

 

「ソロモンの魔女として暴虐を尽くしていた貴様が人の心を語るなど笑わせるなっ!」

「確かにその通りです。その名前は私の一生に付いてまわることでしょう」

 

 クリンゲ・ズールとサファイアの剣戟は鋭く激しく。だがそんな中でもサファイアの攻撃は着実にクリンゲ・ズールの装甲を削っていく。

 

「それでも私はこの名を背負い、向き合い続けます! 過去と向き合う痛み、誰かを傷つけてしまった痛み……。痛みが何であるか理解しているからこそ、私は誰かの心に寄り添いたいッ! それがソロモンの魔女であった私と、サイド0の一員である私が辿りついた答えですッ!」

 

 遂にはサファイアの一撃がクリンゲ・ズールを押し切ったではないか。姿勢を崩したところに更なる追撃がその装甲を裂く。

 

「アナタは確かに強い……。でも、それだけです。それだけでは強さを求めるだけの魔女と同じなんです。それに気付けないアナタに……私は負けない」

「……ふざけるな。俺が負けると言うのか? そんなことはありえない……。ありえないんだ! 生徒会長と……ユウキと共にある為には強くあらねば──!」

 

 何とか体勢を立て直し、対峙するクリンゲ・ズールとサファイア。イオリの言葉の一つ一つに動揺するセナはこれ以上、自分の心を乱す元凶を消し去りたいという想いを表したようにサファイアに突撃する。

 

「俺に……何の価値が……」

 

 両機はすれ違う。静寂が支配し、ただ雨音だけが響き渡るなか、クリンゲ・ズールは完全に崩れ、その機能を停止する。その刹那、聞こえてきたのは闇の中に放逐されたような絶望に溢れる言葉だった。

 

「……このバトルに負けた程度でアナタの価値が決まるわけないでしょう」

 

 機能を停止したクリンゲ・ズールの虚しき姿を見つめながら、イオリは静かに零す。

 その言葉はどこまでも穏やかで柔らかく、優しいものであった。

 

 ・・・

 

「リョウコはやっぱり強いねッ!」

 

 アカリ、そしてセナまでもが撃破され、これを見守る生徒達を賑わせるなか、最後の一機となったパルフェノワールと交戦しているのはリリィであった。両者の実力はほぼ拮抗し、その美しい機体も無残な損傷の跡が目立つなか、弾んだようなユイの声が響く。

 

「でもね、リョウコと離れたこの一年……。私も強くなったんだよッ!」

 

 バスターライフルとメガ粒子砲が飛び交うなか、溌剌としたユイと共にリリィはパルフェノワールに近接戦闘を仕掛け、両機は激しい格闘戦へと発展していく。

 

「何故、そんなにまで楽しそうなんだっ!? もうこの場の敵は私しかいないという余裕か!?」

 

 そのあまりにも場違いなユイの態度に眉を顰めたリョウコは不可解そうに声を張り上げる。

 しかしその問いかけを投げかけたリョウコでさえその言葉が間違っているのは分かっていた。ユイはそのような人間ではない。それは分かっている……。分かっていてもユイが何故、このような態度をとっているのかが分からなかったのだ。

 

「……確かに緊張感に欠けるかもしれないね。私もバトルをするまでは正直、不安に潰されそうだった。でも……今はそんなことどうでもよくなったの!」

「だから何故!?」

 

 リリィとパルフェノワールの拳が打ち合い、周囲に衝撃を与えて木々をざわめかせるなか、ユイの言葉が理解できないリョウコはどこか悲痛さを感じさせながら叫ぶ。

 

「リョウコとバトルをするのが楽しいからだよ!」

「なに……?」

 

 だが、その理由はあまりにも単純だった。どこか肩透かしを受けたように間の抜けたような声を漏らすリョウコ。しかし先程のユイを振り返ってもそれが冗談の類であるとは思えない。彼女は本当にそう思っているのだ。

 

「リョウコとこうやって直接、バトルをするのは一年ぶりだよね? この一年、お互い別々の道を進んだけど、それでも私が知っているリョウコよりも遥かに強くなってる! そんなリョウコとバトルが出来てるのが凄く嬉しくて楽しいのっ!」

 

 以前、リョウコとバトルをしていた時も彼女はアラタと戦闘をしており、ユイが絡むことはなかった。しかし今、こうしてリョウコとバトルをすることによって彼女の強さを肌に感じて、その実力に驚くと同時に感激しているのだ。

 

「ガンプラバトルってやっぱりこういうものだよ! 強いから正義、弱いから悪とかじゃない。楽しむことが一番なんだよ!」

 

 ユイの言葉が紡がれ、リリィの攻勢が強まる度にパルフェノワールの動きが段々と鈍くなっていく。それは枷がないから自由に動き回れるのに対して、自分自身に枷をかけてしまったから鈍重になってしまったかのように。

 

「それがお前達の原動力であることは分かっている……。しかし……ここまでのものかッ」

「サイド0だけじゃないよ。それはきっとガンプラビルダー全員のもの……。それはリョウコだってそう」

 

 遂にはリリィの一撃がパルフェノワールを跪かせたのだ。

 以前、アラタと共にミッションをしたが、肩を並べるのではなく対峙すればこれほどまでに強敵となるのだ。そのことを改めて実感するリョウコだが、ユイの言葉にピクリと反応する。

 

「だからね……。私達は勝つよ。みんなが当たり前のことを当たり前に楽しめるようにッ!」

「……ならば、この盾を越えて行けッ!」

 

 ユイの決意はもう問わずとも分かる。ならば後は決着をつけるだけだ。手を抜くつもりはない。お互いに全力で次の一撃に全てを込めるだけだ。

 リリィとパルフェノワールは同時に地面を駆ける。それはまさに全身全霊。二人の少女の叫び声が重なるなか、二つの拳が放たれる。

 

 

 

 

 

「……やはり……お前は強いな」

 

 

 

 

 静寂が全てを包む。誰もが固唾を呑んで見守るなか、リリィの渾身の一撃を受けたのを確認しながら、自分の拳が届かなかったことに無念さや悔しさを感じさせながらも、どこか穏やかに呟いたリョウコと共にパルフェノワールは崩れ落ち、勝利を手にしたユイ達を祝福するかのように青空が広がっていくのであった。




バレンタイン絵
イチカ

【挿絵表示】


イチカ「きょ、今日……バレンタイン……って……。だ、だから……っ!」

通りすがりのペチャパイ「どうしたの、あれ?」
通りすがりの双子の妹「ホワイトデーに向けての先行投資だって意気込んでチョコを渡そうとしたけどコミュ障だから悶々としてるって感じ」

以前より、オリキャラの募集について感想などで触れられていましたが、そろそろ企画を動かそうと思っております。詳しくは活動報告まで
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