ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

83 / 97
異世界の扉

「……ガンブレ学園か。ガンプラ学園のような場所が実在するとは」

 

 如月奏を名乗る少女とアラタが邂逅を果たしてから数十分、奏は第08部室のガンプラを眺め、その出来栄えに感嘆の声を漏らしながら先程アラタから聞かされたガンブレ学園について話す。

 

「それよりアンタ、どうやってここに……? いつの間にシミュレーターに乗り込んでたし、まるで突然、現れたみたいだ」

 

 目に映るもの全てが新鮮であるかのように興味を示している奏に壁に寄りかかりながらアラタは問いかける。彼女は先程まで自分が使用していたシミュレーターから現れた。それこそ言葉通り、突然に。あまり悪い人物のようにも思えないが、それでも素性が分からないことに違いなく、アラタは油断なく奏を見つめている。

 

「どうやって……と言われてもな」

 

 とはいえ奏自身も答えられるものならすぐにでも答えたい様子なのだが、彼女もまだ状況が呑み込めてはいないのか、視線を伏せる。その脳裏にはシミュレーターにいた以前の記憶が過ぎっていた。

 

 ・・・

 

 アラタとの邂逅より以前、奏はとある施設にいた。

 そこはGB博物館と呼ばれるGGF博物館という施設を前身に持つ場所だ。東京台場の地に存在するこの場所は長い歴史を持つガンプラについて知る為に存在する。

 

「……こんな場所に呼び出して、何のつもりだ」

 

 どうやら奏がこの場所にいるのは誰かに呼び出されてのことのようだ。

 とはいえ、彼女の表情には余裕はなくどことなく焦燥感を滲ませていた。

 

「──……手がかりになる。確かにそう言っていたんですよね」

 

 そんな奏の傍らには一人の少女がいた。

 腰まで垂れた艶やか茶髪と可愛らしくもキリッとした精悍な顔立ち。そして何より特徴的なのはその真紅の瞳であろう。静かな物腰と共に横目で奏に問うと彼女は確かに頷く。

 

「こんな物まで送りつけて……。なにを考えている」

「ええ、ガンプラのフレームであることは間違いなのでしょうが初めて見る物でした。わざわざこれでガンプラを作れだなんて……」

 

 そう言って奏と少女が取り出したのは専用ケースの中に納められたガンプラであった。

 彼女達もまたアラタ達のようにガンプラに携わる者なのであろう。それぞれがカスタマイズを施されたガンプラはどちらも並のビルダーではまず再現することすら難しいほど精巧に作られており、それだけで彼女達のビルダーとすての実力を知ることが出来る。

 

【──を──ぅ──か】

「っ!?」

 

 そんな矢先であった。

 突然、奏の頭に途切れ途切れの声と共にまるで電流が迸るような感覚が走ったのだ。

 突然のことにふらついた足取りを正しながら今の感覚はなんだったのかと周囲を見渡すと自分達以外の利用客達の中から目に留まるものがあった。

 

「ガンプラバトルシミュレーターのプロトタイプ……」

 

 そこに置かれていたのはガンプラバトルの始まりともいえるシミュレーターのプロトタイプであった。

 何故、そんなものが目に留まったのかは分からない。しかし奏はまるで誘われるようにプロトタイプに向かいだし、奏と共にいた少女も突然の奏の行動に戸惑いながらもその後を追い、二人はプロトタイプに乗り込む。

 

「……いきなりこんな物に入ってどうしたんですか?」

「わ、分からない。だが……私を呼んでいるような……」

 

 どこか窮屈そうに身を寄せながらプロトタイプのシートに身を預けている奏に何故、わざわざここに入ったのかを尋ねると奏も自分で分からないのか、不可解そうに漠然とした言葉を口にするその時だった。

 

「「っ!?」」

 

 突如として彼女達の足元からどこからともなく光の粒子が溢れ、シミュレーター全体を包もうとしていた。

 

 

 

『……俺は一人なんかじゃない』

 

 

 

『俺達は……いつだって一つだッ!』

 

 

 

『……勝因となるパーツは全て揃った』

 

 

 

『──さあ、勝利を組み立てようか』

 

 

 

 奏の耳に何処からともなく年若い何者かの声が聞こえてくる。その声の正体が分からぬまま、やがてシミュレーター内を包む光は全てを包み込んで二人の少女の視界を奪い、暗転していった……。

 

 ・・・

 

(とはいえ……そんなことを話して信じてもらえるかどうか)

 

 そして気付けばこの世界(・・・・)にいた。

 実際に自分の身に起きた出来事とはいえ、あまりに荒唐無稽な話であることを自覚している為、正直に話したところで目の前の青年は信じてくれるだろうか。いやそれ以前に話として成立しない可能性すらある。

 

「っ!?」

 

 そんな時であった。第08部室の扉がノックされたのだ。

 

『──失礼いたします。生徒会長様はいらっしゃいますでしょうか? こちらにいらっしゃるとお聞きしたのですが……』

 

 どうやら目的はアラタらしい。

 アラタとしても今、自分に用があるのは全然、問題ない。ただ問題があるとすれば本来ならばこの学園にいるべきでない存在がまさにすぐ近くにいるということであった。

 

「マ、マズイ! ちょっと隠れてろッ!」

「えっ!? い、いや、どこにっ!?」

「どっか机の下にでも隠れてろって! は、はーい! どうぞー!」

 

 慌てて奏の身を隠そうと普段、マリカが愛用している机の下に押し込むアラタ。なにこの扱い!?と奏からの不満が聞こえてくるなか、アラタは身嗜みを整えながら来訪者を出迎える。

 

「はじめまして、オオグロ・ドロスと申します」

 

 扉が開いた先にいたのは褐色肌に銀髪の髪を持つ特徴的な容姿を持つ少女であった。その顔立ちからしてハーフだろうか。とはいえガンブレ学園の制服を身に付けている以上、この学園の関係者であることは間違いないようだ。

 

「少々家庭の事情により短期休学してアメリカにおりましたが、この度帰国して復学しました。生徒会長が変わったという話を聞き、ご挨拶に来た次第です」

「あぁそれはどうも。生徒会長ソウマ・アラタですよっと」

 

 礼儀正しく頭を下げるドロス。その落ち着いた物腰や雰囲気はまさに良家のお嬢様といったところだろうか。わざわざ挨拶に来たドロスにアラタは奏を押し込んだ机の前に庇うように立ちながら三本指をくるりと回して挨拶する。

 

「私は復学して間もないですが、アラタさんのお話はお聞きしております。ガンブレ学園に転入して間もないというのにあのシイナ・ユウキ率いる前生徒会を打ち倒したとか」

「それだけ聞くと俺が凄いみたいだけど、実際はベストマッチな仲間達がいたからだよ」

 

 彼女が休学したのはアラタが転入してくる前のようでどうやらユウキ達生徒会のことは知っているようだ。だからこそあれだけの圧政を強いていた前生徒会を短期間で打ち倒したというアラタに羨望の眼差しを送るなか、くすぐったそうに肩を竦めながら普段、この部室にいる仲間達に思いを馳せる。

 

「……やはりただのお人ではないようですね」

「そりゃあ天才を自称してますから」

 

 自分の手柄であると話だけではなく、仲間達に思いを馳せるその優しい瞳に常人にはないものを感じ取ったドロスの言葉におどけながらウインクする。

 

「アラタさん、不躾なお願いであることは承知の上ですが、私とバトルをしていただけないでしょうか?」

「喜んで。下校時間までまだ時間もあるし、お付き合いしますよお嬢様」

 

 だからこそそんなアラタがどれ程の実力なのか気になったのだろう。

 バトルを申し込むドロスにアラタも笑みを浮かべながら頷くと、二人はガンプラバトルシミュレーターへと乗り込んでいき、セットアップを始める。

 

「あっ、あれ……私、完全に放置されてる……」

 

 両者の出撃準備が整うなか、ぴょこぴょこと外はねになっている髪を動かしながら机の下から顔を出した奏は戸惑っていると不意に背後の窓が開き、風が吹き込んでくる。

 

「やっほー、やっと来たね。おねーちゃん」

 

 流れる風に髪を靡かせながら振り返ってみれば、そこには窓辺に腰掛けながら棒付きキャンディを舐めるルティナの姿があるではないか。

 

「ルティナ!? お前、どうして……。いや、それよりも私達をあの場所に呼び出した理由はなんだ!?」

「えー、少しは落ち着きなよ。久しぶりに会ったんだからぎゅーとしてくれるとかないの?」

 

 どうやら奏とルティナは顔見知りのようだ。血相を変えてルティナに詰め寄る奏。その言葉からアラタに出会う前、GB博物館に呼び出したのは目の前にいるルティナであるようだ。とはいえ、当のルティナはおどけた様子を崩そうとせず、不満そうに唇を尖らせる。

 

「落ち着いていられるかッ! この一ヶ月、父さんが行方不明なんだぞ!? その手がかりを知っているとお前があのフレームを送りつけて、あの場所に呼び出したから向かったのに今ではこんな状況だッ!」

 

 父親が行方不明と語る奏。どうやらGB博物館にいた理由もそこに関係しているらしい。知っていることは全て話せ。そう言わんばかりの奏にルティナはつまらなさそうに肩を竦めると奏の背後にある観戦モニターを見やる。

 

「だーかーら、落ち着きなって。如月翔が行方不明になっている理由も今、おねーちゃんがここにいる理由も全部、あそこにあるから」

 

 奏の唇に自分が舐めていた棒付きキャンディの先端を添えながら、彼女の隣に立って顎先で観戦モニターを指す。

 

「ソウマ・アラタ、ν-ブレイカー……行きます!」

 

 そこではもう既にドロスは出撃し、今まさにアラタも出撃しようとしていた。

 

「ガンダム……ブレイカー……」

 

 カタパルトを駆け抜け、光輪を放ちながら出撃するガンダムの姿を見つめながら奏はポツリと零す。その名にルティナはクスリと笑うなか、今まさにアラタとドロスのバトルが始まるのであった。




<いただいたオリキャラ&俺ガンダム>

刃弥さんからいただきました。

キャラクター名 オオグロ・ドロス
性別:女
年齢:18歳
身長:170cm
容姿:褐色肌。腰まで届くロングの銀髪で瞳の色は金色。
   高身長で、モデルのようにスタイルが良く美人で巨乳。

ガンブレ学園の生徒でユイのクラスメイト。父親が日本人で母親がアメリカ黒人のハーフ。そのため褐色肌に銀髪という特徴的な容姿を持つ。
母方の祖父がお金持ちの資産家で母がお嬢様だったため、彼女自身の性格も振る舞いも礼儀正しいお嬢様そのものである。
生まれはアメリカだが、物心つく前に父の仕事の都合で日本に来たため、中身はほぼ日本人。
ただし長期の休みの時には、よく母の実家のアメリカに遊びに行っていたため、向こうの文化は知っており、英語もペラペラ喋れる。
祖父の経営する会社がガンプラチームを持っていることもあり、ガンプラは幼い頃からやっており、バトルの実力も相当のもの。
ただし美的センスが若干狂っており、ガンダムヴァサーゴやアルケーガンダムといった禍々しい機体を『可愛い機体』と言っている。
アラタが学園に来る直前に家庭の事情により、短期休学して家族でアメリカに行っていたが、文化祭直前に帰国して復学する。


ガンプラ名 サタンギガントガンダム
WEAPON GNバスターソード
WEAPON GNバスターソード ライフルモード
HEAD  ガンダムエピオン(エンドレスワルツ版)
BODY  ガンダムヴァサーゴ
ARMS  アルケーガンダム
LEGS  アルケーガンダム
BACKPACK イージスガンダム
SHIELD  シールド(エピオン)

カラーリングは全身が黒。
基本はアルケーガンダム同様にGNバスターソードとGNファングで戦うが、ヒートロッドによる中距離及びメガソニック砲による遠距離攻撃も可能で、
実際のバトルではオールラウンダーな戦い方をする。ドロスのお気に入り(彼女曰く可愛い機体)のパーツを使って組み上げた機体。

素敵なオリキャラと俺ガンダム設定、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。