ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway 作:ウルトラゼロNEO
ガンブレ学園生徒会長ソウマ・アラタと復学したオオグロ・ドロスとのバトルが開始された。舞台となったのは市街地ステージであり、既にドロスが操るサタンギガントガンダムを捉えたアラタは機体の特徴を知ろうと観察する。
機体のベースはアルケーガンダムだろうか? 武装は身の丈ほどあるであろうGNバスターソードとGNファングに加え、シールドのヒートロッドやメガソニック砲を持つその機体はどの距離でも対応できるであろう。ガンブレ学園の生徒達の多くと交流してきたが、まだこれほどのビルダーがいるのかと思うとたちまち嬉しく感じてしまう。
「さて早速、お手並み拝見といきましょうか」
バトルはもう既に始まっている。
一見しただけでもそのガンプラの出来栄えからビルダーとしての実力は理解できた。ならば次に気になるのはバトルの実力だ。小手調べと言わんばかりにアサルトモードを起動させたν-ブレイカーは二挺のビームライフルと共に射撃と砲撃による遠距離攻撃を仕掛ける。
対してドロスのサタンギガントはν-ブレイカーの行動に反射的に反応するとすぐさま身軽なまでの操縦でそれら全てを掻い潜ってν-ブレイカーに近づき、GNファングを放つ。
獰猛なピラニアのようにν-ブレイカーに迫るGNファングに対してアラタは一瞬だけ目を細めるとすぐさま二挺のビームライフルを用いて正確に墜としていく。
次で最後、そう心の中で呟いた矢先であった。
ν-ブレイカーのシミュレーターがけたましく真横からの危険を知らせてくる。何とそこには既に大振りのGNバスターソードを振り被っているサタンギガントがいるではないか。
「──ッ」
一閃。
明確な意思をもって振り下ろされたGNバスターソードであったが、ドロスが予想していた感覚とは違うものが刃から伝わってくる。
何と目の前には高トルクモードを発現させ、白羽取りの要領でGNバスターソードの切っ先を受け止めているν-ブレイカーの姿があるではないか。
「ウチにはセンスだけは一人前の格闘バカがいるんでね。そう簡単にはやらせないよ」
そのままGNバスターソードを払い、高トルクモードによる蹴りを浴びせながらアラタは微笑を零す。彼の脳裏には荒ぶる龍の姿があるのだろう。共に戦ってきた気高き存在の動きを熟知しているからこそ、近接戦においても対応出来ているのだ。
「流石、というべきでしょうか。これなら私も心置きなくバトルできそうです」
「最っ高だな。それじゃあいよいよ本番といきましょうか」
ユウキ率いる生徒会を打ち倒したと聞いていたため、その実力を侮っていたわけではないが、この短時間においてアラタの実力は自分の予想を上回っていた。強者を前にしてドロスは微笑を浮かべるなか、アラタも余裕綽々と三本指をクルリと回し、ν-ブレイカーとサタンギガントはバトルを再開し、熾烈を極めるのであった。
・・・
「とても楽しくて……とても充実したバトルでした。復学したばかりで不安もございましたが、アナタのような方が生徒会長で本当に良かったです」
「お褒めに預かり光栄ですよっと。俺こそこうしてバトルが出来て良かった」
それから暫く。バトルを終えた二人は健闘を讃え合うように握手と共に笑みを交わす。アラタにとっても、ドロスにとってもお互いに良い出会いとなったのは二人の表情を見れば手に取るかのように分かる。
「何でも近々、文化祭が行われるとか」
「ああ。新生都会が発足してから初の大仕事なんだよ」
ふとドロスが近々、執り行われる文化祭について触れるとアラタはいつものような飄々とした態度を取りながらもどこか緊張感を帯びた様子で話す。やはり言葉通りアラタを生徒会長とする生徒会が発足したということもあって意識は強くあるのだろう。
「生徒会が変われば学園の雰囲気も変わる。かつての生徒会からユウキ達の生徒会、そして俺達の生徒会……。その方針は様々で正反対とも言える。生徒会は兎も角としてもそれにつき合わされるのはその学園にいる人達なんだ。そんな皆に少しでも楽しんでもらえるような文化祭にしないと……」
「とはいえ、根を詰め過ぎるのは禁物かと。見たところお一人で残っているようですし」
「そこは心配ご無用。言ったろ、ベストマッチな仲間達がいるって」
これまでの生徒会が続けてきた方針をユウキ達の生徒会が一気にガラリと変えた。それだけで在籍する生徒達は大きく戸惑ったはずだ。弱肉強食の世界とはいえ、漸くその空気が完全に浸透しようとした矢先にアラタ達の生徒会が発足したのだ。
生徒達には多大な迷惑をかけていると考えているのだろう。そう語るアラタを危惧したドロスが諌めようとするが、かつてのアラタとは違うのか、一人で抱えこむことはせず三本指をクルリと回して信頼感を宿しながら答える。
「……改めてアナタが生徒会長で安心しました。文化祭には私の親友を誘いたいと思っているのですが……」
「大歓迎だよ。その時は是非紹介してくれ」
バトルを楽しもうとする真摯な姿勢、そしてこの場にいない仲間への信頼感など少ない時間でもアラタの人柄に触れて安心したのだろう。柔らかな笑みを零すドロスの言葉に笑みを浮かべながら答えるとそろそろドロスも帰ろうというのだろう、入ってきた扉に近づいていく。
「……アナタのような人がもっと早く現れれば……“あの人”も救えたかも知れませんね」
「えっ……?」
帰りしな、不意に零したか細いドロスの意味深な呟きに眉を顰めるアラタだが、聞きなおそうとするよりも早く彼女はいえ、それではと会釈を返しながらこの場から去っていった。
「──やーっと終わった」
かすかに聞こえたあの人、という言葉。それが一体、誰なのかと顔を顰めていると不意に背後から声が聞こえてきた。あぁっと思い出したように振り返ってみれば、そこには奏と……ルィテナがいた。
「増えてる……」
「あっ、いや……コイツは……」
奏は兎も角としてルティナに関しては予想外なのだろう。面食らった様子で明らかに困惑している アラタに何と説明しようものかと奏が頭を悩ませていると……。
「説明なんていらないよ。だって、もう会ったことあるし」
まどろっこしいとばかりに奏の言葉に口を挟みながらルティナはケースから自身のガンプラであるパラドックスを取り出してアラタへ差し向ける。ルティナを初めて見たとしてもパラドックスについては鮮明に覚えているのだろう。困惑していたアラタの表情も見る見るうちに驚きに変わっていく。
「あはっ、やっぱり覚えててくれたんだねっ」
「あの時の……。いや、何でお前が……」
そんなアラタの態度を可笑しそうに笑いながら無邪気な様子を見せるルティナ。とはいえアラタからすればルティナの情報を少し知れたからといって困惑を覆せる材料になるわけではなく余計に戸惑ってしまっている。
「ガンダムブレイカーに会いに来たんだよ」
すると今まで無邪気な様子を見せていたルティナはスッと目を細めてアラタを見据える。
「ガンダム……ブレイカー……?」
「そっ。ちょっとしたコラボみたいなもんだよ」
「コラボ……?」
確か生徒達の中からそんな風に呼ばれた記憶はあるが、だからといってそれが目の前の少女達がこの場にいる理由になるのだろうか。
「うん。ここにいる
ルティナはクスリと笑みを浮かべながら奏に視線を移す。アラタからすればガンダムブレイカーといわれてもピンと来ないが、少なくとも奏ならば何か知っているのかと彼女を見やる。
「……一つ疑問がある」
「ああ、そうだな。っていうか疑問だらけだ」
するとアラタの視線に気付いた奏はポツリと零し、アラタも同意するように頷く。
ガンダムブレイカーや目の前の少女達。疑問など吐き出せばいくらでも出てくる。一体、なにがどうなっているというのだろうか。
するとアラタの言葉に頷いた奏は口を開き、アラタと共通する疑問を口に──。
「どっちが先輩後輩だ?」
しなかった。
「出撃の時、アラタと言っていたな。とするとアラタさん? いや待て、私の方が年上だよな? だとすると私の方が先輩? いや年下でもガンダムブレイカーとしての先輩である場合もあるわけだし、例え異なる地であろうと諸先輩方のように敬意を払うべきか……。えぇい、ルティナはどう思う!?」
「どーでも。ってーか、おねーちゃんの方が先輩だと思うよ」
「なにぃっ!? ともなれば遂に私にも後輩がッ!」
明後日の方向への疑問にアラタが呆気に取られている間に捲し立てるかのようなマシンガントークを繰り広げる奏。話を振られたルティナは心底どうでも良さそうにするなか、その返答に表情を輝かせた奏はアラタの手を取る。
「改めて如月奏だ! よろしく頼むぞ! 気軽に奏先輩と呼んでくれちゃっても良いからなっ」
(あぁこの人、面倒臭い人だ)
手をブンブンと振りながら外ハネになっている髪をピョコピョコと揺らす奏にアラタは奏という人柄を直感時で感じ取るのであった。
・・・
一方、茜色が差し込む空の下、学園近くの歩道橋にはレイナの姿があった。
欄干を背にどこかアンニョイな表情を浮かべる彼女の視線は手に持ったスマートフォンの画面に注がれている。
「……たった一人の友達も救えなかったくせに今更、なにをしているのかしらね」
そこにはトークアプリが開かれており、どうやらレイナは誰かにガンブレ学園の文化祭への誘いの連絡をしたようだ。しかし自分が送った文面を見つめる彼女の口元には自嘲的な笑みがあり、人知れずレイナは雑多とした人混みの中に消えていくのであった。