ガンダムビルドブレイカーズ Snatchaway   作:ウルトラゼロNEO

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再び重なりゆく道

「今日という日は俺の人生の中で色濃く刻まれた日であろうな」

 

 アラタと奏が参加するとバトルロワイヤルとは一方でガンブレ学園を上機嫌で散策しているのはアールシュであった。

 

「……随分と上機嫌ですね。セレナ・アルトニクスさんに会えたからですか」

「わざわざ言わせるな。あのセレナ・アルトニクスだぞ。世界を股にかけて活躍するガンブラビルダーに出会うだけではなく短くも充実した時間を過ごせばこうもなろう」

 

 その隣をチョコチョコ歩いているのはMC姿のアサヒであった。

 相変わらず露出度の高い衣装は周囲の男子達の視線を引き、そのことで若干、悦に入っていたアサヒだが今はそれよりも思うところがあるのか、どこか暗い面持ちで鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌なアールシュに対して口を開くと彼は大きく肩を竦めながら横目でアサヒを見やる。

 

「大体、貴様のそのしみたれた顏はなんだ? 太陽同然なこの俺の隣でそのような顔を浮かべるとは不敬にもほどがある」

「……話には聞いてましたけど本当にそういうことを言う人なんですね。初めて見ました」

 

 上機嫌なアールシュに反して、その隣のアサヒは眉間に皺を寄せて不機嫌そうな様子だ。

 そんなアサヒにいつもの唯我独尊ぶりを見せながら彼なりに尋ねてみれば、アサヒはため息を吐きつつ出店がある方向を見やる。

 

「はい、イチカ。あーんっ」

「あー」

「いや、待てイチカ。こっちのジェラートのほうが……」

 

 そこには彼女の兄であるユウヒがカップ入りのストロベリーアイスクリームをアイススプーンで手頃に一口サイズに掬うと言われたままに口を開けるイチカに食べさせようとする。

 そんなユウヒに言われたままに口を開けるほど彼に気を許しているイチカの姿を見て、エイジは何やら焦った様子で自身が持つ抹茶のジェラートを食べさせようとアイススプーンで掬う。

 

「兄と不仲なのか?」

「……そういうわけじゃないです」

 

 三人のやり取りを、というよりはユウヒを見て、どこか複雑そうにしているアサヒにアールシュが何の気なしに尋ねれば、アサヒは否定はするもののその表情は崩さない。

 

「……眩しいんですよね。私ってどちらかと言うと内向的ですし……。でも、兄は違う。いつだって自由に振舞ってて……」

 

 決してユウヒと不仲ではないと語るもののユウヒに対して劣等感を抱いてはいるようだ。

 

「いえ、兄だけじゃないです。ここの学園にいる人達はみんな自由で輝いて見えるんです。みんな自分が作ったガンプラが一番だって……。私だってそうです。私だって……この学園にいる以上、ガンダムが好きで……ガンプラが好きで……。だから私が作ったガンプラ達には誇りを持ってます。でも……それを大っぴらに言うことは出来ないんです」

「……自分に自信がないから、か」

「……はい。ましてやその熱意を示す人がいればいるほどそう思ってしまうんです」

 

 内向的であるが故に気後れしてしまう部分があるのだろう。

 ガンプラ愛溢れる周囲にまるで眩しそうに目を細めながら、どこか自嘲めいた口調で話す。

 

「……少しでも自信がつけたくてリンコさんの推薦を受けてMCに就きましたけど……駄目ですね。どんなに取り繕ったって何もない私じゃ一杯一杯ですよ」

 

 アールシュの前に躍り出て、手を後ろで組むとやや前屈みになりながら苦笑気味に話すアサヒ。その瞳にはうっすらと涙が浮かんでおり、イベントMCという大役も相まって余裕がないのが見て取れる。

 

「──ここにいらっしゃいましたか」

 

 アサヒに対してアールシュがなにか言おうとしたその時であった。

 アールシュとアサヒのすぐ横に空から何かが降り立つ。ひゃう、と可愛らしい声を上げてアールシュの後ろにアサヒが隠れるなか、二人が降り立ったものが何なのか見てみれば……。

 

「いやはや、流石の人混みというべきか……。随分と探したでござるよ」

 

 そこには頭巾から艶やかなツインテールの黒髪を垂らした頑風羅流のミツルがいるではないか。とはいえ、リュウマは兎も角、アールシュはミツルを目にするのは初めてであり、その忍者の出で立ちには些か面食らった様子だ。やがて肩を震わす姿を見て、アサヒも冷や汗を流すのだが……。

 

「……クハハハハッ! 普段ならば不敬その物だが、ここまで来るとちょっとした余興よなぁ。よい、許す!」

「拙者、なにかを許される覚えはないのでござるが」

 

 一周回って、という奴だろうか。ミツルの姿に哄笑をあげるアールシュに意味が分からないとばかりにミツルは肩を竦める。

 

「それはそうとアールシュ殿を見てもらいたいものがあって推参したのでござる」

「ほぅ、笑わせてもらったのだ。話は聞いてやろう」

 

 どうやらミツルがわざわざアールシュの元に現れたのは彼が理由らしい。

 奇天烈なミツルに随分と機嫌を良くしたのか、アールシュはミツルの話に耳を傾けようとする。

 

「では、これを」

 

 そう言ってミツルは懐からスマートフォンを取り出すとアプリを起動させる。それはガンブレ学園放送部などがバトルを配信する際に動画を視聴する際に使用する動画アプリであり、今まさに画面にはバトルの映像が飛び込んできた。

 

 ・・・

 

「ウオオオォォォオラァアアッッッ!!!!!!」

 

 紅蓮竜が咆哮を上げ、放った拳はバトルをしていた相手プレイヤーを真正面から撃破する。今、レイジングボルケーノがバトルに参加しているのはまさに文化祭の目玉であるバトルロワイヤルだ。

 

「ったく、アラタのヤロー。いきなり飛び出したと思ったら、あの変な姉ちゃんといんだもんなぁ」

 

 拳を引きながらレイジングボルケーノが見やる方向にはν-ブレイカーとブレイカークロスゼロの姿があった。今まさにあの二機を中心にバトルが行われていると言っても過言ではなく、どのガンプラ達も自然と吸い寄せられるかのようだ。それも他ならぬリュウマも同じであり、ブレイカークロスゼロと共にいるν-ブレイカーに面白くなさそうな反応を見せる。

 

「あー、リュウリュウがヤキモチー? まあ、アラターとはベストマッチな仲だしねー!」

「あぁ!? そんなんじゃねえよ! 俺はぽっと出の奴とアラタがずっといるってのが気に入らねえってんだ!」

「……それをヤキモチって言うんじゃないでしょうか」

 

 バトルに参加しているのはレイジングボルケーノだけではなく、近くにはマックスキュートやマリカマルの姿があった。複雑そうな面持ちのリュウマに早速、おもちゃを見つけたとばかりにからかい始めるチナツにリュウマは食って掛かるが、その発言にマリカは苦笑してしまう。

 

「けどリュウマ君の気持ちも分かるよ。いつの間にあんなビルダーと……。あの実力はまさに武力介入を開始し、圧倒的な力を示したソレスタルビーイングのようだよ」

「さらに言えば姉キャラ……。これ以上の姉キャラによる姉介入は止めてほしいものだが」

「あれでも、私とリョウコとレイナちゃんにあの人……。これ丁度、4人だよ。マイスターの数だよ。アネスタルビーイングだよ」

 

 近くにはリリィやパルフェノワールの姿もあり、ν-ブレイカーと行動を共にするブレイカークロスゼロにその実力には素直に感嘆しつつも苦虫を嚙み潰したように話しているのだが、不意にユイが零した素っ頓狂な一言にパルフェノワールは無言でリリィの後頭部を殴る。

 

「大丈夫だいじょーぶっ! おねーちゃんは強火になるほどの推しがいるからっ!」

 

 そんなリリィとパルフェノワールだが、ふと高揚感溢れる通信が飛び込んでくる。

 発信源を探ってみれば、そこには我が物顔とでも言うかのようにバトルフィールドを光の翼を広げて飛び回ってはバトルをするパラドックスの姿があるではないか。

 

「あはっ! アーッハハハハァッッ!! ほんっと最っっ高!! 色んなバトルが出来て、心が弾むなぁっ!」

 

 純粋にバトルを楽しんでいるのだろう。口角を吊り上げ、狂気孕んだ笑みを浮かべながらルティナは次々にこのバトルロワイヤルに参加しているビルダー達に勝負を挑んでいる。

 

「んにゃぁ?」

「ったく、とんだバーサーカーだなぁあっ!」

 

 その最中、ふとパラドックス目掛けて突っ込んできた機体があるではないか。

 あえて受け止めたパラドックスがそのまま押される形で相手を見てみれば、そこには先程リュウマと口喧嘩していたカワグチ・タツマが駆るG-レイダーだった。

 

「だが、そういうの嫌いじゃねえ。さあ暴れようか……G-レイダー!」

「へぇ、おにーさん、ルティナと遊んでくれるの? 嬉しいなぁっ!」

 

 本能のままに相手を求めるようなタツマはν-ブレイカー達よりもパラドックスに魅かれたようだ。するとお互いに光の翼を広げたまま喰らい合うようなバトルが始まる。

 

「ホント凄いね、あの娘……」

「まったくだな。バトルが好き……というのは我々も同じだが奴とはベクトルが違う気がする」

 

 パラドックスとG-レイダーのバトルを目の前にして、ユイやリョウコの視線はパラドックスに注がれる。

 戦い方その物は武術を嗜んでいるのか、洗練された技を取り入れているのだがバトルに対する姿勢は野性味に溢れ、まるで本能的に相手を貪るかのように向かっていくのだ。

 

「──とはいえ、バトル好きは共通しています。バトルをしないのはもったいないかと」

 

 不意に通信が入り、ユイとリョウコが反応すればその先にはドロスのサタンギガントガンダムとその傍らにはもう一機、緑色の竜を思わせるガンダムの姿があった。

 

「へっへーん。今日という日を楽しみにしてたからね。目一杯楽しむぞーっ!」

 

 ビルダーはどうやらレンのようだ。

 彼女が手掛けたであろう緑色の竜を思わせるガンダムの名はドラゴノイドガンダム。レジェンドガンダムの武装を取り入れて、一見すれば遠距離タイプを思わせるがその予想とは反してドラゴノイドは溌剌なレンに応えるように飛び出し、その後をサタンギガントが追う。

 

「今はバトルに集中しようか!」

「ああ。目の前のバトルを蔑ろにする気はない!」

 

 ドラゴノイドとサタンギガントとのバトルに備えて、リリィとパルフェノワールが身構えるなか笑顔を交わし合ったユイとリョウコは同時に飛び出していくのであった。

 

 ・・・

 

「確かサタンギガントはオオグロ・ドロスのガンプラであったな。帰国していたのは聞いていたが……。ふむ、やはりビルダーとしての腕は確かだな。しかしバトルロワイヤルについては聞いていたが、これは予想以上だな」

「よもやこのようなバトルを見て、ただ傍観するだけの器ではなかろう?」

 

 スマートフォンの画面に映し出される戦闘の様子を隅々まで舐めるように見ていたアールシュは躍動する情熱に引っ張られるように口角を吊り上げる。

 そんなアールシュの表情を見て、口当てはしているもののハッキリと分かるほどくつくつと笑みを零しながら煽るような物言いをする。

 

「フン、どういう意図かは知らんがその挑発に乗ってやろう。この俺を抜きにして盛り上がるなど不敬その物よなぁ」

 

 ここまではミツルの予想通りだったのだが、次の瞬間、思わず間の抜けた声を漏らしてしまう。

 なんとアールシュはアサヒをいきなり小脇に抱えたのだ。

 確かにアサヒは華奢な体でアールシュが抱えるには何の問題もないだろうが、これはアサヒにとって予想うらしていなかったようで短い悲鳴を漏らしてしまっている。

 

「バトルロワイヤルであったな。よい、ならばこの俺が今すぐに参戦してやろう」

「う、うむ……。それは結構なのでござるが、なぜ、アサヒ嬢を……」

 

 善は急げとばかりにバトルロワイヤルが行われている会場の方向へ視線を向けるアールシュは今すぐにも向かいそうな勢いだが、小脇に抱えられているアサヒは無防備になってしまっているスカートから見え隠れするレース生地のパンツを何とか隠そうとジタバタしていた。

 流石に同じ同姓として不憫に思ったのか、ミツルが頬を引きつらせながら問いかければ……。

 

「俯いてばかりいるこやつに太陽の視点というものを教えてやろうと思っただけよ」

 

 チラリと小脇に抱えられているアサヒを見るその太陽の如き黄金の瞳はまるで鬱蒼と生い茂る森林の陰に差し込む木漏れ日のように優しく、温かなものであった。

 そんな瞳と目が合ったアサヒは相変わらずスカートの裾は両手で抑えるものの抵抗するような動きは止めて大人しくしている。その姿にフンッと軽く鼻を鳴らしたアールシュはそのままバトルロワイヤル会場へと向かうのであった。

 

「さて……。これで大方、目ぼしい生徒に声をかけたと思うのでござるが……。あの赤い瞳の少女の頼みとはいえ、どういうことでござろうか」

「──なあ」

 

 どうやらミツルは誰かに頼まれてアールシュをはじめとした生徒達をバトルロワイヤルへの参加を促しているようだが、当人もその頼まれたことの真意を推し量れてはいないらしく、小首をかしげていると不意に声を掛けられる。

 

「……バトル、してるのか」

 

 声をかけられた方向を見やれば、自分に頼み事をしていきた少女と同じような鮮血のような赤い瞳と目が合った。

 同時にミツルの顔も緊張で強張る。そこにいたのはトークショーで招待され、先程までユウヒとエイジに取り合いのようにアイスを食べさせられていたイチカであった。

 

「ふぅん……。面白そうだな」

 

 ガンプラビルダーとして著名人であるイチカを前に緊張しているのか、うまく声を出せずにいるミツルを他所にイチカはそのままミツルの腕のスマートフォンからアールシュに見せていたバトルロワイヤルの映像を見やる。

 

「慣れないことばっかやって肩が凝ってたんだ。折角だし、参加するか」

「おっ、漸くイチカっぽい顔になってきたね」

 

 今まで気だるげであったイチカの瞳に活力が宿る。

 それは一見すれば普段のイチカと何の変りもないようにも見えるのだが、長い付き合いだけがそれが分かるのだろう。後ろかろぴょんぴょんと抱き着きながらユウヒは嬉しそうにしているとそのことに同意はするもののユウヒの行動はよろしくなかったのか、エイジは慌てて引きはがそうとする。

「何か必死じゃなーい?」と何やら確信犯のようにエイジを煽るユウヒであったが、イチカは即行動するタイプなのか、二人を置いてバトルロワイヤルの会場へと向かい、その後をユウヒと出遅れてエイジも追う。

 

 ・・・

 

「おっとぉっ!」

 

 一方、バトルロワイヤル内でブレイカークロスゼロとフィールドを駆け巡っていたν-ブレイカーは大きく後退し、先程、ν-ブレイカーがいた場所を極太のビームが過ぎていく。

 

「さっすが、バトルロワイヤル用に作ったPGだ。簡単にはいかないな」

 

 ν-ブレイカーの視線の先にいるのはPGクラスの所謂、ファーストガンダムだ。

 武装はシンプルで少ないのだが、その分、一つ一つが強力で堅牢な装甲は易々とは突破できそうにない。

 現に今もブレイカークロスゼロはPGガンダム相手に鍔迫り合いとなっているのだが、やや押され気味だ。

 

「ならっ!」

 

 このままでは埒が明かないと判断したのか、すぐさま切り払ってPGガンダムから離脱するブレイカークロスゼロと同時にν-ブレイカーアサルトモードを起動させ、連結させたビームライフルと共に高出力ビームを放つ。

 

 すると反応したPGガンダムも行動を起こした。

 何とビームライフルを構えるとそのまま引き金を引き、ビーム同士のぶつかり合いに発展したのだ。

 

「クッ……自分で作ったガンプラとはいえ、コイツはまずいな」

 

 あのPGガンダムはアラタが文化祭のバトルロワイヤル用に作成したものだ。

 しかしただサイズ差があるとはいえ、アサルトモードと連結ビームライフルの合わせ技をもってしても、PGガンダムのビームライフル一発と漸く拮抗できる程度なのだ。しかしそれもやがては押されていってしまっている。

 このままではマズイとアラタが次の一手を模索していたその時であった。

 

 PGガンダムのビームライフルの銃口、その一点を狙った一撃が的確に打ち抜いてエネルギーを暴発させたのだ。

 

「あのガンプラは……ッ!」

 

 一番にそのガンプラに気づいたのは奏であった。

 その様はまるで見逃すはずがないとばかりに体を大きく震わせて、そのガンプラを目で追い続けている。

 

 それはガンダムAGE-2をベースとした白いガンプラであった。

 しかし両腕の装備はAGE-2マグナムのものであり、装備されたFファンネルはまるでブレイカークロスゼロのCファンネルをイメージしたかのようなカラーリングであり、武装はユニコーンガンダムのビームマグナムとAGE-2マグナムのシグルシールドだ。

 

 その白いガンプラは一切の迷いのない動きでFファンネルを展開しながらPGガンダムへ一気に近づくと陽動の役割も担っているFファンネルがその巨躯を傷つけるなか、同時にそのメインカメラへビームマグナムの痛烈な一撃を叩き込む。

 

 メインカメラを失ったこともあり、PGガンダムは対象を見失ったような素振りを見せるなか、白いガンプラは一気に離脱すると上方へと舞い上がり、Fファンネルもその後を続く。

 

「──ッ!」

 

 白いガンプラの“ファイター”は目を鋭く細める。

 するとシグルシールドに装備されたFファンネルのエネルギーは集約されて、この広大な宇宙に巨大な光の剣を形成する。

 

 誰もがその光景に目を奪われる。

 まるでそれは全ての心に希望を宿すような強い輝きを放っていたのだ。

 そして次の瞬間、その輝きは一直線にPGガンダムへと振り下ろされ、真っ二つとなって撃破する。

 

 まるで光に誘われるかのようにν-ブレイカーは白いガンプラへと近づいていく。

 理由は分からない。だがあの白いガンプラの元へ向かわなければならない、問わねばならないことがある気がしてならないのだ。

 

「ア、アンタ……。ガンダムブレイカーなのか……?」

 

 なぜそう思ったのかも分からない。

 しかし雰囲気と言うべきなのだろうか。

 この白いガンプラは奏と同じ何かを感じるのだ。

 

「……ガンダムブレイカー、ですか。生憎ですが違います」

 

 すると漸くここで白いガンプラの操縦者は言葉を発する。

 それは少女のものであり、静かでありながら確かな強い意志を感じるのであった。

 

「私は……私です」

 

 その言葉は何か深いものがあった。

 多くの悩みを経て、勝ち取った答えのような揺るぎのないもの……。

 もっと話したい、無性にそう思ったアラタが続けざまに声をかけようとした瞬間──。

 

「のおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーぁぁあああっっっっ!!!!!!!」

 

 ブレイカークロスゼロが一直線に白いガンプラへ突っ込んできたのだ。

 面食らうアラタだが、少女はまるで慣れっこのように大した動揺も見せず、さながら闘牛士のように機体を反してサラリと回避する。

 

「なんでだぁあっ!? ずっと会いたかったんだぞぉっ!? 私がいなくてお前が泣いてるんだと思ったら胸が張り裂けそうで……ッ!! 今こそ奏お姉ちゃんの胸に飛び込んでおいでっ! さあ、ハリーハリーハリィイイイイッッッッ!!!!!!!」

「結構です」

 

 とはいえ、奏は大きくショックを受けているようで頭を抱えている。

 が、それもほどほどにブレイカークロスゼロは両腕を広げて、必死に熱い抱擁を交わそうとジェスチャーをするのだが、奏の言葉とは反して短い言葉で一蹴されてしまう。

 

「……全く。さていきなりですが、私も一緒にバトルをしていいですか、天才さん」

「えっ、あっ、ああ……」

 

 奏へ塩対応するものの、どこか嬉しそうに頬を緩ませる少女はそのままアラタへ通信を入れる。

 しかし天才を自称するもの今、出会ったばかりの彼女の前で言った覚えはなく釈然としないまま頷く。

 

「良かった。これで“借り”を返せそうです」

 

 しかし少女はハッキリとアラタを認識しているのか、口元に微笑を零す。

 少女の脳裏にはあるガンダムの戦い方とその声が半ば確信をもって今のアラタとν-ブレイカーにビッタリと一致しているのだ。すると少女は仕切り直すように、「では……」と短く声を漏らすと……。

 

「雨宮希空……ガンダムNEX クロスナイト、行きますッ!」

 

 少女……雨宮希空は愛機であるガンダムNEX クロスナイトと共に飛び出していく。

 それはまるで自分が望むままに飛び立っていくかのように……。

 




雨宮希空

【挿絵表示】

「クロスナイトの意味……ですか。……いつだって私の傍にいてくれる大切な人達からもじったものです。秘密、ですよ」

ガンダムNEX クロスナイト
WEAPON ビームサーベル(ガンダムAGE-2マグナム)
WEAPON ハイパードッズライフル
HEAD ライトニングガンダム
BODY ガンダムAGE-2
ARMS ガンダムAGE-2マグナム
LEGS イージスガンダム
BACKPACK ガンダムAGE-2
SHIELD シグルシールド

拡張装備 レーザー対艦刀×2(バックパック)
     ブーメラン型ブレードアンテナ(額)

詳しい外観は活動報告にリンクが載っております。

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