一誠生存記 作:匿名
物心ついた最初の記憶を覚えているだろうか?俺は覚えている。あれは赤だった。単純な色の話じゃない。怒り、嘆き、憎しみ。それらが混じり合い、形を持ち、色を放っていた。あれは竜だった。その後ろに赤い人がたくさんいて、そいつらは恐ろしい目をしながらいつも叫んでた。
[白との決着を]
[あいつに復讐を!!]
[なぜ、なぜなんだ!!どうして!!]
知識がない時はよくわからなかった。今は彼らの台詞が分かる。もうどうしようもない、どうにも、出来ない。取り返しのつかない。それでも叫けばずにはいられない。行き場のない感情を訴えてたんだ。
それらがいつも俺の中で響いてた。自我形成に幼少期の経験は多大な影響を与えるそうだ。では、そんな明らかに危険なものと育った俺はどうなったか?生存本能がビンビンに刺激されてヤバかった。具体的に言うと、めっちゃムラムラしてたし、なんか体が丈夫になった。
ウッそだろお前ってなるだろ?ほんとなんだよなぁ
そのせいか、まだ、欲情などの言葉を知らない幼いころから俺は人一倍、異性の体に惹かれていた。せいぜい人より興味がある、ませた奴だと思うだろ?でもそういう年の奴らってせいぜい女の子と仲良くなりたいとか、異性が気になるとか、そういう微笑ましいものなんだ。
俺は違った。知識は薄い筈なのに、本能で直感的に見ていた。仲良くなりたいとか、そんなことに興味は無く、無意識で優れた雌を選んでいたんだ。種の保存から来たんだろうなぁ。容姿、能力、に注目していて、特に胸と尻には多大な関心を向けていた。良さそうな子を見つけると、自然と仲良くなった。いや仲良くなるように動いていたと言ったほうが正しい。運動は出来たから関心を持たれる切っ掛けはあった。あとはそれ足掛かりに進展させればいいだけだだった。
むき出しにすると逃げられることを本能で知っていた俺は巧妙に無意識で隠しつつ、接近していた。施設の人にもその異常性はばれていなかったのでそのままだと、確実に本懐を果たしていた所だった。
俺が止まれたのは公園のじいさんのお陰だった。じいさんはいつも公園で紙芝居をしていた。最初は、みんなに好かれていた紙芝居おじさんだった。子供心を擽るような面白い話をしてくれるじいさんは、いつも子供に囲まれ慕われていた。だが、奴は擬態していたのだ。安全な子供向けのを何回かやることにより、保護者たちの油断を誘い、怪しい老人から子供の相手をしてくれる優しいおじさんへクラスチェンジした奴は、保護者の監視が無くなると、少しずつエロスを物語に入れていった。とはいえ、子供たちにどきついのを見せるのは奴の良心を痛めたのか、直接的な表現はなく、抽象的な比喩で終わっていた。
ある日、紙芝居が終わりみんなが帰っていくなか、じいさんは俺に少し話をしないかと声をかけてきた。ベンチに座り夕日を二人で見た。じいさんは朗々と語り出した。
「本能のままに行動するとな、獣になってしまうのじゃ」
俺は驚いた。このじいさんには隠していた衝動が見抜かれてたんだ。言葉が出でくる。
「でも、じいさん。押さえきれないないんだ。」
何をやってもダメだった。他のことに熱中してみても奴らの声を聞く度に恐れ、いつも刺激されていた。みんなそんなことはないのに俺だけ違っていた。俺だけおかしかった。ありもしない物を見聞きしていた俺は少しずつおかしくなっていた。俺の声を聞いたじいさんはじっとこちらの目を見つめまた、語り始める。
「そうか、ならばそれは生まれ持ったお主の個性やろ」
「でもみんなと違うんだぜ。おかしくないか?」
疎外感を打ち明ける
「生まれもってきたものを否定することは難しい。それを向き合い付き合って、生きていくしかないんじゃ。みんなと違う?人違うのは当たり前じゃよ。まったく同じ人間なぞそうおらん。おかしいというのは人と比べることで生まれる物差しじゃ」
思わず聞き返す
「じゃあ、どうすればいいんだよ…」
「答えは自分で見つけるしかない」
即答だった。いつも穏やかに紙芝居をしてくれるじいさんが別人に見えた。
「悩んで悩んで答えを出すといい。じゃがな、今それを成すと取り返しのつかないことになる。今だけはやめとけ、もう少し待つといい」
そう言ってじいさんはベンチから立ち上がり去っていく。
公園から出る時、じいさんは言葉を溢した。
「後悔のない選択を」
そう言ってじいさんの姿はだんだんと遠くなっていった。
あれが、じいさんとの最後の会話だった。奴は、おっぱい紙芝居などという、とちくるったものを上映し、満足した顔で捕まっていった。法が奴を裁いた。綺麗な思い出が台無しだった。だが、じいさんの台詞でなんとか踏みとどまれた俺は、大きな事件を起こすこともなく今まで生きてこれた。ありがてぇことだ。
その後俺は、じいさんの言葉を切っ掛けに自分の性質と向き合うことにした。気になったのだ、奴らの正体が。最初は意味不明で怖くて、怯えていた。でも、ある程度たったら奴らに対してブチキレてた。なんなんだよ、てめぇらって。
でも怒りも長続きしなくて、寝てる時に奴らの記憶をみるようになったら、その気持ちも変わっていった。あいつらは、すげー苦しんでた。一人は復讐のために、一人は誰かを守るために、誰一人例外なく、激情の渦に呑まれながら死んでいった。赤い竜によると、使うと死ぬ技があるらしい、技?って思ったけどスルーして話を聞くと、それを使って死んだ奴らの意識が残っていって、使う度に歴代の怨念が溜まるからさらに凶悪になると。
なんで俺の中にいるんだよって聞くと、神器って奴が偶然、俺に宿ったからだとよ。ふざけた話だ。そうやってとりあえず奴らのボスっぽい赤い竜と話してたら正体がわかったのか、多少欲情が落ち着いた。まあ、それでも比較すると結構旺盛だけど。うまく付き合って生きていきたい。あとびっくりしたのはなんか人外がたくさんいて普通に死ねる世界らしい。日本は平和だった筈だったんけどなあ。夜中出歩かなければ大丈夫だろ?って赤い竜に聞くと、神器ってレアらしく自分に宿ってるのは[神滅具]と呼ばれる、神器の中でもかなり貴重な物だからバレたら普通に襲われるから気をつけろだと。各勢力発見しだい確保しにくるから注意しないといけない。えぇ、味方いないの?って聞くと人間に味方する勢力はいるにはいるけど宗教狂いとのこと。まともなのは?って聞くと、難しいって答えられた。平和が欲しい。ふと思いついて、誰かに神器渡せば俺狙われる理由無くなるじゃんって言ったら、赤い竜が、神器を抜かれると宿主は死ぬと答えた。辛い。
赤い竜の名前が気になって尋ねるとドライグって名前だそうだ。かっけぇ。ドライグは二天竜の片割れらしくもう片方の奴とは宿敵らしい。で、全盛期の時にやんちゃしたらしく、討伐され神器にされたそうだ。尚、互いに意識は残っているので宿主は二天竜の闘争本能引き摺られて殺し合う模様。迷惑すぎて困惑した。
神器を宿すメリットはないのかって聞くと、ドラゴンは古来より、色々引き寄せると答えた。女とかもいけるのか!?って尋ねると、いけるぞって返ってきた。女!?お釣がくるレベルじゃねぇか!!ちょろくないかと言われたけど関係ねぇ。女がくるなら、それ目当てに頑張るしかねぇ!!そうやって喜んでる俺にドライグが水を差してきた。お前が目覚めたということは今代の白いのがやがて来るから鍛えないと死ぬ。??????
え、俺が死ぬまで目覚めない可能性はないの?って聞くと例外はないらしい。
しかも闘いとか伝説級の存在も引き寄せる可能性があると、それは歴代の赤龍帝でも個人差があるからどの程度の規模なのかは不明だと。
童貞のまま死にたくねぇなぁ……