我輩はオリ主である。
生まれてまもなく、両親に捨てられてしまったあたりも、そう感じざるを得ない。
こんな補正は、いらなかったのであるが。
だがまあ、捨てられてしまったものは仕方が無い。この路地裏で、ダンボールの中、せいぜいミーミーと鳴くのみである。
なにせ、我輩は猫であるからして。
この世界。どうやら、いわゆるヒロアカ世界であるようで、個性なるものが存在するのだ。
その中でも、我輩は異形系。動物や虫の、珍妙な外見を持って生まれてしまった、少々人より外れた見た目の生き物なのだ。
せいぜい猫耳が生えている程度であったなら、もしかして我輩は捨てられなかったのであろうか。
顔は、毛もヒゲも生えている猫そのものである。目の左右辺りと頭の真ん中に縞模様の入った、黄色い毛の猫である。
捨てられたことが、存外に堪えておるらしい。どうにも、動こうという気にならぬ。
ここはひとつ、心のままに、不貞寝をしても良いのではなかろうか。
うむ。そうしよう。なにせ、ほら。我輩をしかる人も、せかす人も、助けてくれる人だって今はおらぬのだ。
自由である。
人はみんな、与えられた役割を生きている。それは雨の中、カサをさすように当たり前のことだ。
記憶を無くした街に住むネゴシエイターは、そう言われて、こう返した。
「雨の中、カサをささずに踊る人間がいてもいい。自由とはそういうことだ」
雨の中、カサをささなかったら、当然ぬれる。
体調を崩し、カゼもひくかも知れぬ。だが、それでも。踊ることを選ぶ自由は、人間なら誰でも持っているのだ。
バカなことをしても良い。賢くあることも、また良い。
「人生は絶え間なく連続した問題集や」
乾いた星で、銃を取った神父はそう言った。
何が正解かもわからない、答え合わせもできない、欠陥品の問題集だ。
なら、せめて自分が納得する答えを選んでも良いのではなかろうか。
捨てられた路地裏で、ダンボールの中で丸まっていても良い。
すぐさま立ち上がって、歩き出さなくても良い。
そうする自由くらいは、我輩にだって有ると思うのだ。
そう思っていた時期が、我輩にもありました。
捨てる神あれば、拾う神あり。
昔の人は、上手い事を言ったものであるな。
「さすがにこれは私も笑えないわねー」
そんなマジになってる自分にはウケる!
そう言って笑う、オカしな女に拾われてしまったのだ。
ええ~。
それが。我輩の、その時の素直な感想であった。
正直。今でも、あまり変わってはおらぬ。
スマイルヒーロー Ms.ジョーク。本名、福門
色々と、残念な人であった。
スマイルヒーローと名乗るだけあって、笑顔がよく似合う人であった。
なお、ヒーロー活動中はマスクで顔を隠す模様。
相手を強制的に笑わせることで、思考や行動を妨害する個性 爆笑 の持ち主でもあった。
対象が無差別で、敵も味方も自分も笑いながら戦う、その光景は狂気に満ちていると評されておる。
笑いの絶えない明るい家庭、が信条であるらしいのであるが。
その冗談は、実は笑えない出来のもののほうが、かなり多かった。
ただ、まあ。それでも、だ。
そんな彼女に、救われてしまったのも。また、事実である。
ゆえに、仕方が無い。仕方が無いのだ。
我輩がヒーローを目指してしまうのも、また、仕方が無いことなのである。
ただ。問題がひとつ。我輩の個性が、とんでもない厄ネタであった、ということだ。
死者の個性を、時折受け取る事ができるのだ。
死体と顔を合わせると、相手と目が合ったという感覚に襲われる。
そして相手が目を逸らせば、それで終わり。何も起きないままなのだが。
ナニカを差し出されたような感覚がやってくると、その人の持っておった個性を、受け取れてしまうのだ。
さすがに異形系は無理であろうし、いくつまで受け取れるのかも、わからぬ。
むしろ、わからぬことのほうが多い。なにせ、この個性。誰にも話してはおらぬゆえに。
なぜならば。ほら。居るではないか。この世界の、裏社会を統べるお方が。
オール・フォー・ワン。
キミ、いい個性持ってるね。あの人にそう思われたら、人生が終わってしまう。この世界のとびっきりの厄ネタである。
なにかよくわからない個性だけど、成長しているようだし、もう少しほうっておこうか。
あの人にはそう思ってもらって、見逃してもらい、あの人が逮捕されるまで生き延びる。それが我輩の計画である。
無論、目を付けられないのに越したことはない。しかし、それはなぜか無駄な気がするので、考慮しないことにしたのだ。
だって、ほら。目立ちたくないとか言ってるオリ主って、絶対に何かに巻き込まれるじゃろ?
だから、目立ったとしても、生き延びられるように。そういう意図であるのだ。
オリ主の端くれとして、雄英の入学を目指すのであるし。ある程度目立ってしまうのは、仕方が無いのだ。
Ms.ジョークが傑物高校の教師なので、そちらへの入学も考えたが。
面白くなさそうなので、却下である。
面白いかどうかで、決定したあたり。我輩も、Ms.ジョークの影響をかなり受けている気がしてならない。
そして個性を受け取ったり、その個性で事件に巻き込まれたり、事件を起こしたり。
たまたま通りすがった、我輩にソックリな猫のお巡りさんに「パパ?」と呟いてみたり。
口からダバーと何かを垂らす、黒い謎の生き物を連れた、やはり我輩ソックリな人物に、よくわからない個性をもらったり。
そんな様々な出来事を越えて、我輩は雄英高校へと入学を果たした。
そして、気付いた。
今が、原作の三年前だ、と。
つまり。
我輩が卒業した、その次の年から原作開始という、すれ違い状態であるな。
ダメじゃねーか。
思わず、素でツッコミを入れてしまったが。物は考えようだ。
「逆に考えるんだ」
あの英国紳士も言っておった。
この場合は、卒業なんてしなくってもいいやと考えるのだ。
留年してもよし。職員などの形で残るのもよし。要は、学校に居座ればいい。
とりあえずは、力だ。力があれば、あるだけ取れる選択肢が増える。
教員免許は大学に行かねば取れぬので、教師にはなれぬが。物質召喚や修復の個性を活かせば、用務員にはなれそうであるしな。
それらの個性をきたえつつ、コッソリと個性も増やしてゆこう。
さあ。高校生活の始まりだ。ここから、ヒーローになりに行こうか。
そして相澤先生にクビにされ、結局傑物に転入してヒーローになった我輩が、ここにおるじゃろ?
なんか軽いノリすぎて、不適格であると見なされてしまったらしいのだ。
個人的な復讐として、軽く洗脳の個性を使ってMs.ジョークとくっつけた我輩は、悪くないと思う。
なんだかんだで二人が幸せそうなので、そこは見逃して欲しい。
お義父さんと呼んだら、私はおかあさんと呼んでくれないのに、とMs.ジョークがスネた。
素直にそう呼んでみたら、コロッと機嫌が直ったが。チョロい。
そして。そういえばUSJだったかで、このお義父さんがボロボロになっておったっけ、と思い出したので。少し介入してみることにした結果。
原作補正さんが、完全に死亡してしまった。
死柄木 弔。登場と同時に、まさかの事故死である。
「『ボクは悪くない』」
二重にカッコ付けて言いたくなるほどに、我輩はそう主張するものである。
違うのだ。本当に、悪気は無かったのだ。
ただ、我輩は。ワープホールから、ワラワラとヴィランが出てこようとしているのを見て、当然の疑問を口にしただけなのだ。
「これ以上出てこれぬよう、無効化を!」
そう、言っただけなのだ。
その結果。
ワープの途中で、ワープホールが消滅してしまったら、どうなるのかというと、ね?
うむ。まあ。ひとことで言うならば、だ。
見せられないよ!
という、状態であるかなあ。
もしくはフレ/ンダ状態とでも言おうか。
それで、どうなったかって?
ヴィランとは言え、人死にが出たので騒動にはなった。主に、マスコミが騒動にした。
しかし謎生物の校長が、それを抑えた。個性 ハイスペックは伊達ではないらしい。
残された痕跡から、脳無の異常性や危険性を割り出した。そして、生徒たちの安全を守るための、適切な対応だった。そう、世間に理解させてしまったのだ。
おかげでウチのお義父さんは、ヒモに転落する危機から救われた。ありがたいことである。
一方、オール・フォー・ワンは後継者を亡くしたことから、地下へともぐった。
別の後継者を探して、育てるつもりなのかもしれない。
現在、我輩は彼の組織や情報網へ、気付かれぬようにコッソリと侵食を始めている。
洗脳による、乗っ取りだ。
ひとりひとり。ゆっくりと、だが確実に。二重スパイを量産中である。
別に、彼に成り代わろうとか、そういうことではない。
彼の作り上げてしまっている組織が、社会に深く根を張りすぎてしまっておるのだ。
仮に、それをそっくり取り除いたとしよう。きっと、その日のうちに、社会は壊れてしまうであろうさ。
オール・フォー・ワンその人のみを、取り除けるならばだ。残った組織の面々は、何食わぬ顔をして、表の社会の一員であり続けるだろう。
口をぬぐって、何もなかったようにふるまって、だ。
だが、しかしだ。もはや、そうはならない。ならないかも、しれないのだ。
そうしてしまったのは、我輩だ。
悪くは無いけれども、我輩だ。
責任くらいは、取らねばならぬ。自由にふるまった責任からは、逃げてはならぬ。
それが誇りというものだ。
正直、面倒ではある。だが、やってやるとしよう。
こちらの正体を悟らせず、組織を乗っ取り、黒幕を引きずり出す。
スリルとやりがいだけは、満点だ。ああ、やってやるのである。
ゆくぞ、オール・フォー・ワン。
そのラスボスの位置と、組織と、あわよくば個性までも。
その全てを、この妖怪ヒーロー トムキャットが受け取ってやるのである。
さあ。我輩の戦いはこれからだ!
<完>