我輩は相談中である。
お相手は、ヴィラン連合の若い衆ら。まあ、下っ端であるな。
なお。我輩は、相談に乗っている側である。
これでも組織の立ち上げ前から、ボスと共に居る幹部であり。
金回りが良くなってからは、組織に金を出しておる金主でもあるのだ。
実は、偉いのであるよ。うん。
自分でも、全く実感が無いのであるがな。
だが幹部であるのは事実であるので。たまに、こうして相談に来る若手もおるのだ。
で。今回の相談内容であるが。
辞職願と、人生相談。この二つであった。
重いのである。
そういうマジなヤツは。我輩、苦手であるなあ。
それが正直な気持ちではあったが。さすがに面と向かっては言えぬ。
仕方がなしに、しぶしぶという態度を隠して、相談に乗った。
そもそも、なぜに組織からの足抜けを?
ふんふん。
人生に真面目でなかったせいで、落っこちて。何となく群れて、たむろっておった所をボスに拾われて。
雄英にカチ込んだり、ダンスのレッスンしたり、筋トレしたり、手品を覚えたり。
最近、自分たちが何をやっているのか、わからなくなってきた、と。ふむ。
ごめん。
我輩は、素直に謝った。犯人たちに、心当たりしかないのである。
うむ。すまぬ。
それで。つい、今までの人生を見つめなおしてみた、と。
ほう。それでアルバイトを、始めてみたのか。
それで、たまたま、君らは外食産業で働く事になって。
仕事を覚えて、調理も一部任されて。だんだん腕が上がって。
元定食屋の息子と、和食職人の弟子崩れがおったので、そいつらと一緒に、将来自分らで店を持ちたいという夢が出来た、と。
うむ。いい話であるなあ。
不良が立ち直って、夢を持って、真っ当な人生を歩き出す。
古典的、かつ典型的ではあるものの、それでも良い話である。
我輩は、そういう善い事をしたくて、ヴィランをやっておるのだよ!
雨の中、捨て猫に傘を差しだす不良を量産するように!
いや、少し違うな。
ジャイ○ンを、常に劇場版のキレイな彼にすべく、毎日事件を起こすように!
よし、気に入った! 今すぐ店を出すが良い!
金なら我輩が出してやるのである!
ああん? まだ準備不足?
かまわん。やれ。
自分らで、実際に店を回してみたほうが、何倍も勉強になるのである。
さあ。まずは店の位置だ。
コンビニなどでは、これで上手く行くかどうかが、8割以上決まるぞ。
自分らで、どれだけのお客をサバけるのか。一日の来客数は。その客単価は。利益率は。
考える事など、山とあるぞ。
さあ。がんばれ。
そして店は完成し。明日から通常営業、というところで。
我輩たちヴィラン連合で貸し切りにして、宴会を開いたのであるが。
なぜかあそこに、マスキュラーと意気投合しておる、ボスがおるじゃろ?
飲んでおる最中に、突然。
「あっ。思い出したわ」
そんな軽い調子で。自らのオリジンを語りだしたのだ。
家族がムカついたんで、全滅させた。
要約すると、一行で終わったのであるが。
幼児にとって、家庭とは、世界全てである。その家庭に苛立ち、壊したという事は。
ボスの生まれ持ってか、育ててしまったのかはわからぬが。
その破壊衝動は、とてつもないものであったに違いない。
「あいつらが キライだった」
だから、壊した。
そういうボスに、何人かは共感を示した。
さすがはヴィラン連合。悪人と社会不適合者の集まりである。
マスキュラーなどは、そうだよ、ぶっ壊しちまえばいいんだよ。とボスを肯定しまくっておる。
マグ姐さんも、そーよぉ。家族でも、解ってくれるとは限らないし。とボスに酒を注いでおるな。
荼毘くんも、なにやらうなづいておるな。ボスと目と目で、会話をしておるようだ。
渡我ちゃんをはじめとして、他のものたちも、多かれ少なかれ理解を示しておる。
家族に何やらあったワケありが、多すぎぬであろうか。
いや、我輩も、生まれてすぐに捨てられてはおるのであるが。
だがしかし。別にやり返したいとか、死んでしまえとか。そういう激しい何かは無いのであるのよなあ。
しかしもしも、だ。
もしも、目の前に出てきて。ごめんなさい、などと言われてしまったら。まあ、その時は……
「おまえらが 好きだ」
不意に飛び出した、ボスのそのひとことで。
店内を覆い始めていた、暗くて重い空気が、吹き飛んだ。
「ワタシも好きよー!」「嫌いじゃないです」「ハッ! そうだな」「俺も好きだよ!」「いや無理!」
口々に。言葉が、その場にあふれ出た。
出てくる口と、出てきた言葉は違ったが。その意味は、おおむね同じであった。
かつてボスは世界を壊して、その外へと放り出されて。そうして独り
ここにいる面々も。多分、おそらく。独り
だがもう、今はそうではない。
壊しても、手放しても。その壊して、手放した手でも。
別の何かならば、つかめるのではなかろうか。
ボスが壊すのならば。我輩が、何かを作ろう。
もしくは、壊す前に、作り変えてしまおう。
そうすれば、きっと。我輩たちは、ひとりではないのだろうから。