部屋の隅に設置されている暖炉から薪が燃える音と共に熱と煙を出す。
ウルティアが横たわるその部屋のベッドの傍らの椅子に腰掛け、私は少女の目覚めを待つ。
早く目を覚まして欲しい。そう思っているのだが反面、このまま眠り続けてくれたらと願ってしまう。
本の数刻前、隣街の外れに建てられていると聞いた彼女の母、ウルを訪ねるべく始まった旅の終着点に着いた。
ウルティアの話ではもう一年近くも会っていなかったらしく、久しぶりの再開を待ち望んでいた。
帰ったらやってもらいたい事も多くあり、色々聞かせてもらった。中には短かったアクノロギアとの生活を思い起こさせる物や、幼き時に私も望んでいたものもあったので、私自身も聞いていて楽しかった。
しかし、この親子が再開を果たすことはなかった。
ウルティアは母に会うことを楽しみにしていた。話を聞いていて母の方もそれを望んでいるのだと思っていた。
未成熟ながら会得している記憶を除き見る魔法によって見たところ母と別れてからウルティアは人体実験を施されていて辛かったようだ。明らかに子供にするような事ではない。
それをやっていた奴らにも、そんな所に渡った原因である彼女の母にも殺意が湧いた。
それを抑えられたのはうすぼんやり霞がかったように見えた一つの記憶のお陰だった。
不明瞭で断片的な部分が多く、はっきりと分かった訳ではない。だがウルという人物はウルティアに深い慈しみを抱いていたことは分かった。そうでなければウルティアにあそこまで好かれることはないだろう。
ただ、だからこそあれは酷い裏切りだろう
思い返すだけで腸が煮えくりかえるような気分になる。
自然と手に力がこもり、爪で掌の肉を抉ってしまう。
だがあまりの怒りが痛みも何もかもも感じさせないほどに膨れ上がっていく。
拷問のような実験を華奢で小さな身体に施され、長い間会うことも出来ずにいた母をずっと信頼し、愛し続けていた。
それなのに···
その相手は···
別の子供もと···
楽しそうに笑って生活をしている···?
ふざけるな!!
ああ、思い返すのも忌々しい。
親のいぬ私からしてみれば愛情なんてものを向けてくれたのは赤の他人である筈のアクノロギアのみだ。
友愛という意味ではメイビスやユーリたちも向けられていた。それに心地よさを感じた。
だからこそ百年前に見た身を挺して我が子を守ろうとする姿には僅かながら心を打たれたし、親から向けられる愛情というものに憧れもした。ウルティアの反応からもそんな人物なのだろうと思った。
この怒りは自分の勝手な勘違いからくるもので身勝手だということは百も承知だ。
それでも、この怒りはそうそう収まりそうにない。
私は一体、どうすべきなんだ