ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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 連続投稿3話目、投下します!


第9話

 

 指を差しながら怒号を上げるクラブロスの目線は、束の背後でエラーを吐き続けるATMに注がれていた!

 

「(やばっ!!)」

 

 思わず仰け反って液晶画面を体でブロックする束。

 しかし割と離れた距離から異変を察知した血走った眼のクラブロスは、慌てて不正を隠そうとする束との距離を詰め、彼女を横にどかせようと腕で押してきた!

 

「こらボケッ!! そこどかんかいッ!!」

「べ、別に何もおかしな事になってないよ!! 私何もしてないから!!」

「アホぬかせッ!! どう見てもエラー吐いとるやんけッ!! この機械に何さらしたんじゃあッ!!」

 

 揉み合いなってでも調べられるのを阻止しようとした束だが、流石にクラブロス相手に力負けしたか横側に突き飛ばされてしまった。

 

「キャッ!!」

 

 思わず尻もちをついてしまい、その拍子に被っていたハンチング帽が脱げてしまう束。 帽子の下の彼女の顔に周囲からどよめきの声が沸き上がる。

 

「あの子って篠ノ之束じゃないのか!?」

「えっ? あの『白騎士事件』を起こした!?」

「道理で妙な恰好してると思ったら……何だってまた銀行なんかに」

 

「束! 大丈夫かい!? ――――何をするんだクラブロス!

 

 周囲の混乱に包まれる中エックスとゼロが駆け寄り、倒れた束を介抱しつつも乱暴な手つきで彼女を押し倒したクラブロスを非難する。

 しかしクラブロスは悪いと思った様子もなければ、むしろこちらを責め立てるような鋭い視線を向けてきた。

 

「それはこっちのセリフやな……お前ら口座の金も無いんちゃうかったんか?」

 

 クラブロスは厳しい目つきでこちらを睨みながら、不具合を起こしたATMに親指を向ける。

 機械からはエラーだけでなく、紙幣の挿入口から溢れる程の大量の札束が吐き出されていた!

 

「おい束……お前機械に何かしたか?」

「あ、あはははははははっ! いやちょっとね! 機械が故障したもんだから、この天才束さんが修理するついでに()()()()弾んでもらおうかな~って……」

「……クラックしたのか

 

 唖然とするエックスと束に白い目線を送るゼロに対し、束は乾いた笑いを浮かべてごまかすしかなかった。

 

「このアホ……防犯カメラついてんのにそないな事を――――」

 

 クラブロスは身を震わせながら天井近くにある、束が整備不良を起こしている事を確認した防犯カメラに目をやった。

 直後クラブロスは目を丸くした。 なぜ彼女が人のいる中でこのような行為に及んだのか、合点がいったクラブロスは店内の職員に怒鳴り散らす。

 

「コラボケッ!! カメラ壊れとるやんけッ!! こないな事なるから防犯だけはケチんな言うとったやろッ!! 溶かすぞ!!」

「ひっひえっ! す、すみません会長!! 今日び堂々と盗み働く輩がいないと思って、後回しにしてましたぁ!!」

「どんな判断や! 金ドブに捨てる気かッ!! これでこのアホのド畜生が、ワイの銀行で(ゼニ)パクったろとか考えた訳やな!」

 

 クラブロスにすれば当然なのだろうが、心底馬鹿にしたような態度で徹底してこき下ろす物言い。 それが束の癪に障ったのか、顔をしかめて売り言葉に買い言葉で返しはじめた。

 

「……さっきからアホとかボケとか、この束さんに対して随分な言い方してくれるね」

「おっ? なんや逆ギレか? 人様のモンパクろうとしとって図太い根性しとるやんけ!」

「待て、やめるんだ束!」

 

 クラブロスの煽りに反応した束をエックスが制止する。 しかし一度火のついた彼女の歯に衣着せぬ物言いはどうにも止まらない。

 

「知ってる? 蟹のような節足動物ってそもそも脳みそなんかついてないんだよ? ひょっとしたら会長なんて大層なご身分のくせに、襟首捕まえるなり口汚い言葉しかロクに使えないのは、モチーフ元らしいド低能だからかな?」

「ド低能でも金稼げて会長になれとんのに、空飛ぶもん作った割には鳴かず飛ばずのお尋ねモンで、逃げ回ってばっかりの生き方しかでけへん癖に言うてくれるやんけ! ……ま、脱兎のごとくって言葉があるからな!」

「束さんの何知ってるってんだよ! 自由気ままで好きに生きられてる私と違って、アンタなんかただ明日の金の為にしか生きられない中身スッカスカのケチな蟹だね!」

「ハンッ! ケチな蟹から金毟らんとやってけん無一文のビンボー人が何か言うとるわ! お前みたいな兎気取りの減らず口は、一回出したオノレのうんこでも食っとけばええんや!」

「何を――――」

 

「もうやめてくれえええええええええええええええッ!!!!」

 

 両者とも全く譲らない口論……もとい聞くに堪えない罵詈雑言の嵐に、遂にエックスが動いた!

 エックスは目にも留まらぬ速さで束の背後から腕を回し―――――

 

「エックス――――グエッ!

 

 素早く首を絞めた。 気管を塞がれる苦しさに声を上げる束だったが、抵抗する間もなく白目を剥いて全身の力が抜け落ちた。

 彼なりに束を苦しめないよう一瞬で気絶させたようだが、しかし目先の蟹を差し置いて見事なまでに口から泡を吹く束と、エックスの容赦の無さと手際の良さにクラブロスとゼロは呆気にとられてしまう。

 

「……こいつ絞め落としおったで……」

「おまっ……本当に全く容赦無いのな……」

 

 むしろ両者引き気味であったが、エックスは気絶させた束の肩をもってやりクラブロスに向き合った。

 

「騒ぎを起こしたのは悪かったクラブロス。 だが俺達はさる理由で彼女をイレギュラーハンターの元で保護しなければならないんだ。 どうかここはこの辺で手打ちにして欲しい」

 

 エックスはクラブロスに起こした面倒の件を素直に謝罪しつつも、これ以上の騒ぎにしないようクラブロスに求める。

 クラブロスはエックスの言葉を受けて少し考えるような仕草の後、こう切り出した。

 

「1500万円や」

「「えっ」」

「ATMの修理代金と迷惑料に口止め料、そしてカメラの修理代ってとこやな。 ま、今ここで払うのは勘弁したるけど、キッチリハンターベースに請求させてもらうで!」

「ちょっ、ちょっと待て! いくら何でもその金額は法外だろ! 第一監視カメラは関係ねえだろ!?」

 

 これ見よがしに吹っ掛けるクラブロスにゼロが反論するが、しかしこちらの足元を見るかのようにクラブロスは突っぱねる。

 

「ワイの銀行でこないな迷惑かけといて内密にしろとか抜かしとんやぞ! 法外が何や! これで水に流したる言うてんねんから、カメラ代ごとき上乗せされた言うてガタガタ騒ぐなや!」

「「むぐっ」」

「さ、話は済んだな! 分かったらその躾のなっとらんアホタレ兎さっさと連れて帰れ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくの後、束が目を覚ましたのはベンチの上だった。

 硬くひんやりとした感触を背中に覚えながら、青々と茂る樹の木漏れ日が重たい瞼に差し込むたび、意識がはっきりとしていく。

 

 束は飛び起きるとすぐに辺りを見渡した。

 

「あれ? ムカつく蟹はどこ行ったの? それにここは……?」

 

 乾いた土のグラウンドに、少し離れた場所に設置された滑り台やジャングルジムと言った遊具で遊ぶ子供達。 その反対側にあるベンチには子供達の保護者と思わしき主婦が談笑していた。

 木々とそのすぐ後にビル群が立ち並び、ちょうど束の背後辺りには先程騒いだミナミの蟹銀行の玄関口が大通り越しに存在した。 ここは先程の銀行の正面にあった公園のようだった。

 

「気が付いたようだな」

 

 束の左隣からゼロの声がした。 振り向いた先には憔悴した表情で項垂れ、朗らかな雰囲気に包まれた公園に似つかわしくない黄昏た様子で、ベンチに腰掛けるゼロとエックスの姿があった。

 

「1時間ちょっと気絶してたんだ。 全く、君がすごい科学者なのは知ってるけど、あんな無茶はしないでくれ」

 

 エックスは呆れたように束のすぐ後ろを指差す。 差した先には鉄柱の頂点に備え付けられた公園の時計があり、時刻にして既に11時過ぎを示していた。

 先程の行き過ぎた行動を咎めるようなエックスに対し、束は顔をしかめてエックスに詰め寄った。

 

「折角庇ってくれたのに何自分で絞め落としてくれてんの!? どうせやるんだったらせめてあの蟹にやってよ!!」

「すまない。 ああしなければ収拾がつかないと思ったんだ。 ()()()()乱暴だったのは謝るよ」

()()()()!? 下手したらのんきに二度寝するどころか、三途の川行ってたかもしれないのに!?」

 

 悪びれてない訳ではなさそうだが、落としたにしては軽いリアクションに余計に束の怒りを煽る。

 

「ああもう!! そもそもお金ないって言うから、人前でATMいじってあんな騒動になったんだよ!! 誰の為にこんな事したと思ってるの!?」

「「いや、それは(お前)の不手際だろ」」

「ムキイイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!」

 

 ATMの件については束自身の問題だと2人してキッパリ告げられ、ただでさえ抱え込んだ不満が余計にやり場を失った。

 何一つ思い通りにいかない苛立ちから束は地団駄を踏む中で、ふとミナミの蟹銀行の玄関口に目が行った。 

 見ると開かれた入り口のガラスの扉からクラブロスが現れ、玄関先で待機していた運転手に黒塗りの高級車へと導かれているようだった。 彼のすぐ後ろでは先程の銀行員が低姿勢で見送っていた。

 様子が気になった束はエックスとゼロの座るベンチを駆け足で横切り、公園と大通りの歩道を仕切る生け垣の陰に隠れた。

 

「おい束! 勝手にどこかへ行くな――――」

「しっ!」

 

 後を追ってきたエックスとゼロ。 咎めるように声を荒げるゼロに対し束は立てた人差し指を口元に宛てて、声を出さないように促した。

 

「何なんだ? 別に隠れてコソコソ聞く事でもねぇだろ」

「いいから!」

 

 クラブロスは職員と話しながら車に乗り込もうとしているが、エックスとゼロの2人は束に言われるまま、揃って生け垣の木陰に隠れながら彼らの話に聞き耳を立てた。

 

「お疲れさまでしたクラブロス会長! 貴方が来ていただかなければどうなっていたか」

「お前らも客の金預かってるんやからもっとシャンとしとけや! あないなアホタレ3人にいいようにされとったら舐められんで!」

「は、はい! 恐縮です!」

 

 クラブロスの叱咤に身が引き締まる職員達。 話を聞いていた束は歯ぎしりする。 

 

「……しかし宜しかったのでしょうか。 相手があのイレギュラーハンターとはいえ、地元の警察に通報せずに行かせてしまって……」

「しかも内一人はあの『篠ノ之束』ですよね? 彼女保護されてるとは言ってましたが、ハンターに守られてるのをいい事に何か騒ぎを――――」

 

 不安げに呟く職員達に対し、クラブロスは口を閉じるよう求めるように手を突き出した。

 

かまへんかまへん! あの兎がわざわざセコイドロボーやっとるようやったら、どうせ何もできん程落ちぶれとるやろし。 取るに足らんわ」

「何をっ――――」

 

 クラブロスの発言に頭に血が上った束は、静かに見るよう促した言い出しっぺに関わらずつい立ち上がりそうになるが、エックスに覆いかぶさるように口を塞がれ身動きをとれない。

 もがく束だが生け垣の様子に気づかないクラブロスはなお言いたい放題であった。

 

エックスとゼロもや! 公僕の癖にガキの躾もできんブルマと染みつきブリーフなんか、テキトーにあしらっとったらええ! ……さ、ワイはもう行くからキビキビ働きや!」

「「は、はい!」」

 

 激励の言葉を残し、クラブロスの乗り込んだ黒塗りの高級車は走り去っていった。 職員達は車が大通りに消えていくまで玄関で頭を深々と下げていたが、無事見送ると店内に踵を返し業務へと戻っていった。

 その間、3人は物陰で固まったままだった。 口を塞がれたままの束は苦しそうであったが、やっとの事でエックスの腕を振りほどいた。

 

ぶはっ!! い、息が詰まるかと思った――――あの蟹言いたい放題言ってくれて!! マジムカつくッ!!

 

 車の走り去っていった方向を憎々しげに睨みつけながら、束は悪態をついた。

 

「ここまで言われるんだったら、やっぱあの時何としてでも現金ブン盗ってやるんだったよ!!」

「落ち着け束。 今更どうこう騒いでも仕方がねぇだろ!」

「これが落ち着いていられるってのゼロ!! ムカつくものはムカつくんだよ!! 何でこの天才束さんがここまでぞんざいにされなきゃなんないのさ!!」

 

 自制できない程の怒りの感情に、この場で暴れだしそうになる束。 一方でゼロとエックスは冷静に努め、怒れる彼女をなだめつかせようとする。

 

「ゼロの言う通りだよ束。 今は兎に角君を東京まで連れていかなきゃならないんだから」

「っ!! あのさあエックス!! 2人だって気にしている事好き勝手言われてるんだよ!! どうしてそこまで冷静でいられる訳!?」

「こういう時だからこそさ……そう言えばお昼時だったね今は」

「それが何!?」

 

 そう、これでもかと言うほど冷静だった。 不気味なまでに。

 

「ちょっと早いけど、こういう時は食事をしよう。 ……丁度あっちに大きな蟹もいるし()()してもいいかな?」

「――――えっ?

 

 にこやかに、それでいてどこか威圧感を伴いながら、エックスの口にしたセリフからは不穏さがにじみ出ていた。

 

「おいおいエックス。 その蟹は車で運ばれちまったんだぜ? 今更どうするんだ?」

「走って追いかければいいさ。 銀行の前だと迷惑だって言ってたし、むしろ好都合じゃないか

「フッ、それもそうだな。 今日の昼飯は焼きガニと言った所か

「材料費どころかお金貰えそうだね。 持 っ て そ う だ し 

 

 ゼロもエックスと同じ気持ちだったようだ。 どうやら彼ら2人して、あのたった一言で相当腸が煮えくり返っているらしい。

 

「(うわあ……束さんよりキレてるよこの人達)」

 

 束は少々圧倒されていた。 先程まで自分に冷静でいるよう求めていたにも関わらず、気にしている事とは言え既にあの憎たらしい蟹を『料理』する気でいる。

 あんまりなクラブロスの物言いに怒り、エックス達にも馬鹿にされた悔しさは無いのかと問い詰めていた束だが、いざ一瞬で前言を撤回されると流石に思う所があった。 

 

 エックス達の静かな怒りに引き気味であった時、再び束の目にある者が留まった。

 

「(ん? あれは――――)」

 

 それはミナミの蟹銀行の入口より少し離れた場所にあった。 飾りっ気のない地味なコートに身を包んでいる何者か。 少しばかり醸し出される異様な雰囲気に、周囲の人間が通りすがりに思わず道を譲る怪しげな光景だ。

 銀行の方に向かって歩いていくその姿を見た瞬間、束は蟹の料理法を談義しているエックスとゼロを呼び止めた。

 

「エックス! ゼロ! ちょっと!」

 

 慌てるような束の呼びかけに、エックスとゼロは話を中断して束の方を向いた。

 

「アイツだよ!! 私の鞄盗んだ奴だッ!!」

 

 怒気を孕んだ声で、束はエックス達に見せつける様にコート姿の何物かを指差した。 その姿を見た瞬間エックスとゼロの顔が驚愕に染まる。

 

 2人にとってもコート姿の誰かは見覚えがあった。 厚手のコートの襟を立てて顔の大半を隠してはいるが、隙間からは工事帽の様な黄色のヘルメットと目を赤く爛々と光らせるガスマスクの様な顔、歩く度に機械音を鳴らしながら姿を覗かせる膝から下は武骨な脚部が見えており、正体はレプリロイドである事が伺える。

 エックスとゼロはこれらの特徴から確信する。 それは紛れもなくエックス達の顔見知りであり、イレギュラーであり、そして本来はこの地にて会う筈のない人物。

 

 

「「キンコーソーダーッ!?」」

 

 

 




 復帰記念と言う事でちょっと頑張ってみました。 今後そうそうやらないと思います、はいw
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