ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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 今回、久しぶりに『彼ら』が登場します。 カメオ出演的なものですがw


チャプター3:強盗脅迫! 天災科学者たちの逆襲
第13話


 予想だにしない突然のクラブロスへの攻撃に、一同は開いた口が塞がらない思いであった。 鞄を持っていたエックスや覆いかぶさったキンコーソーダーでさえ。

 

「……今鞄から何が飛び出しやがったんだよ……オイ!!

 

 混乱するキンコーソーダーに詰め寄られるも沈黙するエックスだが、彼には一体何が起きたのか理解できていた。

 初めてダグラスに鞄を渡された時に、慌てて手を払いのけられた時の事を……そう、ロケットランチャーであった。

 投げ飛ばされエックス達を巻き込んで倒れ、慌てて立ち上がろうとした時に鞄に腕を突っ込んでしまい、それが誤射の原因となったのだろう。

 

 して、少しの間をおいて煙が晴れ、ロケットランチャーを撃ち込まれたクラブロスがようやく姿を現した。

 右肩の継ぎ目に炸裂したロケット弾頭は全身を黒く焦がし、彼の右肩から先を完全に持って行ってしまった。 焦点の合わない目つき、おぼつかぬ足元、ほどなくして彼は背後から仰向けに地面に倒れ伏せた。

 

「こ、こないなん撃ち込まれたんは……タコの……ゲイ術品……差し押さエヨウとした時に……撃たレタ……魚雷……イ……ラ……イヤ……

 かすれ声で呟くクラブロスに、もはや動く気力は残されていなかった。

 

「「「ク、クラブロス会長おおおおおおおおおおッ!!!!」」」

 

 突然の爆発に放心していた銀行員達が、ようやく我に返ったらしい。 右肩を無残に吹っ飛ばされ今にも昇天しそうなクラブロスに、人質という立場も忘れて慌てて駆け寄った。

 

「と、とにかく……逃げよっか」

 

 ひきつった笑みを浮かべながら、呆気にとられる残り3名へ呼びかける束。 死傷者を出さないどころか盛大に致命傷を負わせてしまった。 それも金融グループの会長様に。

 予定外の攻撃を放った自分自身が内心パニックに陥りそうになるが、今はとにかくこの場を離れなければ……エックス達は束に対し無言で頷き、銀行員達がクラブロスに気を取られている隙に来た廊下を引き返し、裏口にあたる非常階段の方へ駆けて行った。

 

 非常階段を下りた先には従業員用の地下駐車場に繋がっている。 適当な車を拝借して脱走しようと、4人は裏口の扉を開けて階段を駆け下り、素早く駐車場へと駆け込んだ。

 コンクリートと配管むき出しの構造物に囲まれた駐車場は中々に広く、数十台分はある白線で囲われた駐車スペースの大半を、白いバン等の商用車が埋め尽くしていた。

 4人乗れれば十分である為、エックス達は出来るだけ足の速い車を探すため手分けして探す事にし、エックスとゼロ、束とキンコーソーダーの二手に分かれた。

 

 そしてその中の一台から適当な車を……先に見つけたのはキンコーソーダー達で、クラブロスの乗っていた車と同型の黒塗りの高級車を見繕った。

 キンコーソーダーと束がガラス越しに中を覗き込む。

 

「んんっ……駄目ですよ誠君……そろそろ仕事に戻らなきゃ……」

「大丈夫だって安心しろよ……ちょっと早い昼休み休憩だって言えば……」

 

 後部座席で先客がお盛んだったようだ。 スーツを着込んだままの若い男性と長髪の胸の大きな女性が抱き合い、仕事をほっぽり出して抱き合い濃厚なキスから、今正におっぱじめる瞬間だったようだ。

 行為に夢中になっているからか店舗内が大変な騒ぎになっている事はおろか、自分達がのぞき込んでいるのさえ気づいていないようだ。

 強盗を仕掛けるもいい所を何も見せられず鬱憤も溜まっており、キンコーソーダーは兎に角腹を立てた。 時間も押しているので、ここは『アメリカ式』のやり方で車を拝借する事にした。

 

「ほら、力抜いて言葉――――」

「オィゴルァッ!! 降りろ!」

 

 キンコーソーダーの拳が後部座席のガラスをぶち抜き、中にいた『誠君』の首根っこをつかんでは車内から引きずり出した!

 

「うわあああああああああッ!!」 

「ま、誠君!!」

「鍵持ってんのかオラァッ!!」

 

 引きずり出した誠を乱暴に地面に投げ出すキンコーソーダー。 言葉と呼ばれた女性が慌てて割れた窓から顔を出し、地面へ転がされた誠を心配そうに見た。

 

「ンアーッ!! やめろぉ! 何をするッ!!」

「おうお前らクルルァを寄越せ! あくしろよ!」

「ふざけんな! そんな藪から棒に――――」

 

 巻き舌で捲し立てるキンコーソーダーの要求に当たり前だが誠は反発する。 しかしキンコーソーダーが上から跨がって握り拳に息を吐きかける仕草を見せつけると、誠はぎょっとした表情で沈黙した。

 

「わ、わかった……後で返してくれるんだな?」

 

 誠はポケットから犬のキーホルダーのついた車のキーリモコンを差し出した。

 

「おう、考えてやるよ」

 

 鍵をふんだくるとキンコーソーダーは誠のガラスの顎にお礼の一撃を浴びせた! テンプルの殴打は誠の脳を揺らし、いとも容易く昏睡させる。

 

「誠君!」

「アンタも降りるんだよ」

 

 悲鳴を上げる言葉の側頭部に、にこやかにキンコーソーダーの持ってたショットガンを突き付ける束。 歌舞伎メイクも相まって絵も知らぬ威圧感を漂わせていた。

 当然のように気圧された言葉は神妙な面持ちのまま無言で車を降り、昏睡する誠の両脇を抱えて引きずりながら逃げて行った。

 そんな彼女達とと入れ替わるように、音を聞きつけたゼロとエックスが合流した。 すれ違いざま、エックスは彼ら2人を目で追っていた。

 

「今の2人どこかで見たような……?」

「……さっきの声はあいつらか?」

「おうよ! ()()貸してくれたぜ!」

 

 キンコーソーダーは戦利品を掲げると、それをエックスに投げた。 エックスはキャッチしてゼロと共に運転席と助手席に乗り込み、束達もまた後部座席に滑り込んだ。

 エンジンをかけ発進し、出口を目指して飛ばし気味に走っていると、下がっている出口のゲートと警備員の詰め所が見えた。

 

「そこの車! 止まってください!」

 

 詰所から警備員らしきレプリロイドが飛び出し、両手を大きく開いて停車を求めてきた!

 

「どうする? そのまま突っ込むか!?」

「勿論だ!」

「そうこないとな!」

 

 問いかけに対しエックスが即答し強くアクセペダルを踏み込むと、ゼロは満足げに笑った。

 

「ヘッヘッヘ、車が凹んじまうだろ……わざわざぶつけたるこたぁねえ」

 

 運転席と助手席の掛け合いに、エックスの後ろにいたキンコーソーダーが、束に預けていたショットガンを片手に窓から身を乗り出した。

 

「おい! 何してるんだ! 止まれ――――」

()()()は持ってんぜ――――これだ!!

 

 発砲! マズルフラッシュが駐車場内を照らし、スラッグ弾が警備員の足元のコンクリートを弾き飛ばす!

 

「うわぁ!! ひいいいいいいいいいい!!!!」

 

 堪らずに警備員が足をもつれさせ、なんとかその場を飛び退いた。 身をかがめて頭をかばう警備員を流し見るように、悠々と横を駆け抜け木製のフェンスをぶち破る黒塗りの高級車。

 エックスとゼロは無言のまま「御免」と言わんばかりに掌を揚げた。

 

「フン! 警備員の癖に情けねぇ野郎だ。 俺が居たとこのイレギュラーハンターはもっと骨太だったぜ」

「お褒めいただき光栄だな……おっと、日本の民間の警備会社だってやる奴はやるんだぜ?」

「だったら今の奴が只のヘタレなんだろうよ!」

 

 ゼロの皮肉に思わず本音が混じってしまったが、幸いな事にキンコーソーダーは気を良くしていて聞き逃したようだ。 ゼロは小さく一息ついた。

 ゲートを超えた先のカーブを曲がり、日の光が眩いスロープを駆け上がりエックス達は再び地上へと躍り出た!

 

 大通りへ飛び出し、クラクションの嵐を掻い潜って強引に車線へ合流すると、騒ぎの渦中となったミナミの蟹銀行本店の前を通り過ぎる。

 

「ヘッヘッヘ、あばよ平和ボケのボンクラ共!」

 

 挑発がてら得意げに右腕を出して中指を立てていくキンコーソーダー。 大きな仕事を成功させ、彼は満足だった。

 彼らが持ち去った現金の束が詰まったカバンを見て、これまた成果に気持ちが高ぶった。 きちんとアシのつかないボロ札をチョイスしているあたり、奇抜な見た目と裏腹にやるべき仕事はこなす人物なのだと、彼の中で3人の歌舞伎役者へすっかり信頼を寄せていた。

 しかし強盗を成功させた次は逃走を成功させなければならない。 折角先立つ物を手に入れたとしても、警察に捕まってしまえばまったく意味がないからだ。

 場合によっては高飛びしてでも追っ手を撒くまでが、本当の仕事終わりなのだから。

 

 キンコーソーダーが逃げるまでの段取りを考えようとした時、その逃げるべき相手がルームミラー越しに映った。

 車道を走っていた他の一般車が道を譲るように真ん中を開け、開かれた道一杯に現れるは赤色灯を点灯させる大阪府警のパトカーの大群!

 

「来たか!!」

「っ!! 随分遅い到着じゃねぇか! いっそ来なくてもよかったんだがな!」

 

 実際はさっさと引き返したクラブロスが一早くに戻って来ただけだが、本来銀行前に集結して取り囲む筈だったパトカーとバン。 それらは標的が逃げたと知ったのか、店舗前には数台が止まっただけで目もくれず、一直線に照準をこちらに向けて追ってきた。

 夥しい数のサイレンが鳴り響き、車内であってもエンジンの音がサイレン音にかき消されそうになる。

 

<前のセンチュリー! 黒塗りのセンチュリーに告ぐ!! 今すぐ車を降りて投降しろ!!>

「誰が降りるか!! ――――飛ばせ!!

 

 ここにいる誰もがキンコーソーダーと同じ気持ちだった。 エックスは無言でアクセルを踏み込んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クラブロス会長! しっかりして下さい!」

 

 

「おい下手に揺らしちゃいかん! 救急隊の到着を待て!」

 

 

「……うぐぐ……!!」

 

 

「ッ!? か、会長!?」

 

 

「ワイの……携帯電話……車内から……取って……こ……い……」

 

 

 

 

 

 

 

 正午まであと数分前……掛け布団を蹴っ飛ばしシャツとショーツだけのラフな格好で眠っていたオータムが、朝の目覚めというには少々遅い起床を迎えていた。

 大きな欠伸をしながら心底かったるそうに身を起こし、長いオレンジの髪は寝癖がついており、目元の目やにを腕でこすりつけおぼつかぬ足取りでリビングへの扉を開ける。

 相方のスコールが優雅な姿勢でソファーに座りながら、相も変わらずタブレットを操作していた。

 

「ふわぁ……スコール……篠ノ之博士の事……何か進展遭ったかぁ……?」

「あらおはよう、随分遅い目覚めね。 テーブルの上にスマートフォンを置きっぱなしよ?」

「少し夜更かししちまったぁ……眠ぃったらありゃしねぇや……」

 

 身を投げ出すようにスコールの隣に座るオータム。 女性の体重とはいえ勢いよく体を押さえつけられたソファーが軋む。

 

「けしかけた連中から目撃情報はあったわ。 もっとも、捕まえるつもりで襲ったのはいいけど、手痛い反撃にあったみたいだわ」

「はぁ……つっかえ!

 

 2人は手に入れた鞄からお目当ての篠ノ之博士がいると踏み、ここ数日の内にその辺のチンピラをけしかけて情報を集めさせていた。

 そして読み通り確かに束の姿は捕捉できたが、確保までには至っておらず今一つ成果をあげられていない状態だった。

 それもスコールの言い分だと捕らえる寸前でしくじったらしく、オータムはたまらず悪態をついた。 しかしスコールは神妙な面持ちで続ける。

 

「何でも青と赤のイレギュラーハンターの2人が横槍を入れて、リーダー格のイレギュラーを紙みたいにクシャクシャに丸めたそうよ」

「――――は?」

 

 オータムはスコールからの状況説明に目が点になった。

 

「彼らの話によれば、お互いに漫才でもやってるかのようなやり取りだったらしいけど、青い方を()()()呼ばわりした途端豹変したらしいわ……加えて互いの事を『エックス』と『ゼロ』って呼んでたそうよ」

 

 その名前を聴いた途端、オータムは凄んでスコールに詰め寄った。

 

「ひょっとして()()イレギュラーハンターかぁッ!?」

 

 恐らくは……そう言いたげなスコールが無言で頷き、オータムは顔をしかめ片手で頭を抑えた。 厄介な連中が出てきたものだ、オータムは内心毒づいた。

 法を犯す者達として、幾度となく活躍してきた彼らイレギュラーハンターの存在を嫌と言うほど知っていた。 と言うのも、彼女達『亡国機業』も他の犯罪組織と黒い繋がりがある訳だが、その中でも特に『ヤァヌス』なる新興組織とは蜜月の関係にあったが、つい数か月前に彼らの抱いた野望と秘密基地もろとも叩き潰されてしまった。

 それを実行したのは他でもないエックス達である訳だが、彼らから依頼された仕事は割の良い物が多かった為、弱体化してしまった『亡国機業』にとっては貴重な収入源の1つを断たれた形となる為、直接の面識こそないが因縁が深い相手であった。

 

 とにかく、そんな彼らが篠ノ之束と接触したとあれば、恐らくは何らかの形で彼女を保護している可能性が高いだろう。 彼女を拉致するとなると相当やりづらくなる事を覚悟した時、置きっぱなしになっていたオータムのスマートフォンが、ガラステーブルを響かせた。

 

 スマートフォンを拾い上げ発信者の名前を見た時、オータムは苦虫を噛み潰したようなしかめっ面になる。

 発信者の欄には「クソッタレ蟹(クラブロス)」と書かれていた。 金融グループを率いる会長ながら、時には自ら取り立てに来る事さえある忌々しい債権者の名前だった。

 利息をジャンプしただけだが今月分の支払いは済ませており、特に催促をされる謂れ等ない筈だが……。

 とにかく電話に出なければ。 建前上犯罪者である事は当然伏せている為、オータムは表向き使用している名義である、折り目正しいOL『巻紙 礼子(まきがみ れいこ)』の名を使う為、軽く咳払いをして通話に出る事にした。

 知的な笑みを浮かべながら着信を取り、スマートフォンを耳元にあてるオータムもとい巻紙。

 

「はい、巻紙です。 本日はどのようなご用件で――――」

<お前……自前でIS持っとる……パイロットやろ……巻紙……いや……『オータム』>

 

 クラブロスからの言葉に、一瞬で巻紙から引き戻されたオータムの表情が凍り付いた。 相方の表情が青褪めたのを見たスコールも、ただ事ではないのを察知したように真顔になった。

 

<……電話切るなや……最後まで聞け……割の良い……バイトや……グフッ……相方のスコールとかと一緒に……前金は借金帳消しで……どうや……?>

 

 掠れるような細い小声のクラブロス。 どうやって知ったかはさて置き、相方の名前まで把握した上でなんと仕事を依頼して来たのだ。 それも債務者である彼女達にとって魅力的な条件をぶら下げて。

 オータムは少し考えた後スピーカーホンに切り替え、スコールも交えた上で話を聞く事にする。

 

「何が望みだ?」

 

 最早着飾る必要もない。 オータムは『亡国機業』の実動隊として話をする事にした。 電話の向こうのクラブロスは咳き込みながら、仕事の内容を告げた。

 

 

 

 

<ワイの銀行にカチコミかけた、強盗4人組を潰せ>

 

 

 

 

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