ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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 2週間ぶりの本編、始まります!


第15話

「チキショウ!! なんでこうなっちまったんだ!!」

「ムカつくゥゥゥゥゥゥ!!!! あの腐れパイロット!! いきなりナパームなんか撃ち込みやがって!!」

 

 後部座席のキンコーソーダーと束は怒り狂っていた。 警察が出動させた2機のIS、その片割れが独断で発射したナパーム弾が見事命中し、ルーフを吹き飛ばしてしまった。

 しかし焦った束が咄嗟に鞄を盾にしたのだが、彼女の知らない鞄に仕込まれた防弾・防爆加工の甲斐あって、幸い中にいた人員は無傷で済んだ。

 弾頭が命中した衝撃は流石に堪えたが、持ち前の人並外れた膂力のおかげで腕を持っていかれると言う事もなく無事だったものの、詰め込んでいたボロ札に着火。 延焼を恐れて大半を捨ててしまう羽目になったのだ。

 

「ひぃふぅみぃ……んが!! あんなリスク犯した割には三百万円しか残ってないッ!?

「クソッタレめ!! あのISぶち壊してやりてぇよ!!」

「ねえ前の二人!! 何か武器になりそうなものは無いの!? 自前の武器とか!」

 

 苦労の成果を台無しにした憎きISともう片方は、こちらを追いながらではあるが未だ内輪で揉めに揉めていた。

 あの忌々しい白と黒のツートン、特にナパームを撃ち込んだ畜生を撃ち落としてやりたい。 そう思った束は前にいるエックスとゼロに問いかけた。

 するとゼロは振り返って2人に告げた。

 

「そんなもんはない。 税関で引っかかるし、武器や他の装備は全部置いてきちまった。 バスターもだ」

「――――は?

「実は俺もだ」

 

 エックスもゼロに続いて、初期装備のバスターすら持ってないのを束に打ち明ける。 今初めて耳にした衝撃の事実に束は固まった。 

 唖然とする束をよそに、ゼロは余裕の笑みを浮かべながら親指を自分の下腹部に突き立てる。

 

「自前のバスターなら何時でも臨戦態勢なんだがな」

「アンタの粗末な豆バスターに興味ないってのッ!!」

「フッ、照れるなよ」

黙れ!! ――――ってか流石に武器何一つ持ってないのは計算外だったよ……うわぁ……」

 

 流れるようなセクハラ発言に対し罵倒を浴びせる束。 しかし当の本人は軽く流して意に介さない。

 イレギュラーハンターなのだから、有事の備えでバスターやセイバーの1つは持ち歩いているだろうと思っていただけに、束は完全に頭を抱えていた。

 

<ええい!! 犯人なんかさっさと殺っちまえば事件解決よ! 離せ!!>

<あっ!!>

 

 そんな時、女性2人の大声が後ろの空から聞こえてきた。 いの一番にキンコーソーダーが振り返ると、先程のパイロットが自身を取り押さえていた同僚を、強引に引きはがしているのが見えた。

 

<これで終わりよ!! くたばれダメ男共!!>

 

 もみ合いの際に拡声器のスイッチが入ってしまったのだろうか、やり取りが丸聞こえであった。

 引き剥がした勢いで次弾を発車しようと、再度照準をこちらに向けてきていた。

 

「ッ!! お、おい! あのISまた撃ってくるぞ!!」

 

 慌ててキンコーソーダーが告げるが、運転手のエックスを含む2人が振り向いた時には、既に引き金に指を掛けている状態だった。

 

「――――仕方ねぇな

「頼む!」

 

 見かねたゼロが席から立ち上がり、エックスの後押しを受けながら手早く後部座席に乗り換える。

 そして束が抱える鞄を取り上げ、手早く鞄の中身を漁り……そしてお目当ての物を探り当てほくそ笑む。 その一方で、照準をドンピシャに合わせたであろうISが次なる凶弾を発射する。

 

<死ねぇ!!>

<止めろぉぉぉぉぉぉ!!>

 

 同僚の制止空しく、パイロットは重火器のトリガーを引いた!

 

「遅いッ!!」

 

 刹那の瞬間をゼロは見逃さなかった。 鞄の中で掴んだであろう()()を目にも止まらぬスピードで投げつけた。 その速さたるや光の速さにも勝るとも劣らない、達人の居合抜きをも想起させる。

 放たれた()()は、ナパーム弾発射用の火薬に点火するよりも尚早く、重火器の銃口に突き刺さり弾頭の通り道を塞ぐ。

 その後はどうなったか、それは一瞬で分かった。

 

 出穴を塞がれたナパーム弾は銃口を詰めた()()と触れ合い大爆発!

 

<あっつぅぅぅぅぅぅぅぅぅッ!!!!>

 

 黒塗りの高級車の屋根を吹き飛ばした火力は、バレルはおろかレシーバーをも破損させながら、銃器の持ち主に容赦なく爆熱のフルコースを浴びせた!

 

<アッー! アーツィ! アーツ! アーツェ! アツゥイ! ヒュゥー、アッツ! アツウィー、アツーウィ!>

<うわぁ!! バカ!! こっちに寄るなぁ!! アッツ!! こら抱き着くな――――アッアッアッ、アツェ! アツェ! アッー!>

 

 全身を火焔に包まれるISが、躍起になって引きはがしにかかっていた同僚に今度は自ら抱き着いたのだ!

 絶対防御の効果で死にはしないが、それでも多少は熱が伝わる為、まあ全く熱くないで済まされる事は決して無い。

 当然それは抱き着かれた同僚の側にも同じ事が言える訳で、いつしかもつれ合う2人は次第に機体の姿勢を崩していった。

 

「お、おいお前ら何やって――――」

「まずいぞ! こっちに落ちてきた!!」

 

 2機とも火の玉と化して、エックス達を追走するパトカーの群れに落下するIS。 慌てて避けるも1台が避け損ね、見事に激突!

 スクラップと化したパトカーが派手にスピンを喫し、後続車に衝突し次々と玉突き事故を引き起こし、それこそ道路の真ん中に変形したパトカーの山が出来ていた。 間一髪回避したパトカーも歩道の生け垣や電信柱、中央分離帯を仕切るガードレールに突き刺さってエアバッグに突っ伏した。

 

<ち、チクショウ……私を振った彼氏が全部悪いのよぉ……!!>

<そんなだから振られたんだろ……いい加減にしろ……!!>

 

 次々とぶつかってきたパトカーの下敷きになりながら、グロッキーと化したISパイロットの2人が恨み節をぼやく。 はっきり言ってこのパイロット、迷惑以外の何者でもない。

 そんなく間に出来上がったテツクズの山を、遠ざかりながら束達は呆気にとられたように見ていた。 

 

「……何を投げつけたの?」

 

 何かを素早く投げつけたのを束は見ていたが、その形状を見切る事は流石に叶わなかった。

 束からの問いかけにゼロは得意げな顔をして、鞄の中にまだ残っている同じ種類の『ソレ』を取り出した。

 ゼロの手中に収まる『ソレ』を見て、束とキンコーソーダーは息を呑んだ。

 

「言ったろ。 自前のバスターは臨戦態勢ってな」

 

 デビットカードの残額目一杯に購入した、ゼロの『大人のおもちゃ』だった。

 

「俺の自前のに匹敵するのを俺自身が見出して買った代物だ。 つまりこれも立派に自前のバスターだ!」

「「……そんなんアリかよ」」

 

 歯を輝かせて得意げに語るゼロに、束とキンコーソーダーは何も言えなくなった。

 乗り気だったとはいえ、銀行強盗へ駆り立てる遠因となった『大人のおもちゃ』に救われるとは、束にしてみれば複雑な気分だった。

 

「いやらしいのについては相変わらずブレないな……ん?」

 

 物事をエロで貫き通すゼロの姿勢にある意味で感心するエックス。 そんな時、彼の目にある光景が飛び込んできた。

 レプリロイドも含む複数名の警察官が、フェンスと横並びに配置した大型の紺色のバンやパトカーをバックに道を塞いでいた。

 

検問(ロードブロック)か!」

<前の車止まれぇ!! もう逃げ道は無いぞ!>

 

 追っ手を撒いたかと思えば今度は人と車両のバリケード。 刑事らしきコート姿の中年男性が拡声器越しに停車を要求する。

 一難去ってまた一難……と言いたい所だが、先程追ってきたISを撃退した事に比べれば、あまりにチャチな妨害に思えた。

 後ろの3人はエックスに視線を寄せて彼の行動に期待するが、エックスは改めて尋ねるまでも無く次の一手を打つ。

 

「3人とも、しっかり掴まっててくれ……突っ込むぞッ!!

 

 アクセルペダルを踏み込み、強引に検問を突破する事にした。 後ろの3人は疑う事なく無言で頷いた。

 

<! おい聞こえないのか!! 止まれ!!>

 

 オープンカーと化した黒塗りの高級車が加速したのを受け、刑事は一層声を荒げて再度停車を促した。 勿論止まらない。

 

<やむを得ない! 威嚇射撃だ!!>

 

 横並びの警官隊が拳銃やサブマシンガン等の武器を、エックス達には当たらないよう車やタイヤだけを狙って発砲する。

 しかし真正面からでは足回りを狙い辛く、本当に殺傷するつもりで撃って来た先程のISに比べれば、こけおどしに過ぎないこの攻撃に、運転手を務める歴戦のイレギュラーハンターが怯む筈もない。

 グリルにボンネットを傷つけて跳ねる鉛弾など、エックスにとっては恐れるに足らなかった。

 

「るぅおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!」

 

 ハンドルを握りしめ、ペダルを底付させるまでアクセルを踏み込むエックスの雄叫び。

 唸るエンジンと合わさり、何人たりとも道を塞ぐことを許さぬ威圧感を発しながら猛スピードで検問に飛び込む。

 対峙した刑事は目を見開きながら、エックスの『本気』を感じ取った。

 

「いかん!! 皆伏せろおおおおおおおおおッ!!!!」

 

 刑事の発した警告と共に、自身を含む警官達が横っ飛びで緊急回避!

 全速力で飛び込んだエックス達は黒塗りの高級車の車重と速度を生かし、バンとパトカーの隙間に強引に車をねじ込んだ!

 自車のフロント周りとパトカーとバンのフェンダーパネルが見るも無残に潰れ、パトカーは半周程回転し、バンは重心の高さが災いしてしばし踏ん張った後に横転する。

 

 検問を突破したエックス操る高級車はしばし腰砕けになるが、ハンドルを揺すりタイヤからのスキール音を立てながら強引に挙動を立て直す。

 道路にタイヤ痕(ブラックマーク)と割れたランプの欠片を残し、エックス達は遂に警察の追走を振り払う事に成功した!

 

 

 

 

 そんな彼らの去り際を、横跳びから身を起こした刑事が見送りながら一言呟いた。

 

イカレた野郎(クレイジー)だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 激情に駆られて食堂の床を破砕したアクセルは、所変わってIS学園の用務員室にて、椅子に腰かけながら頭を抱え項垂れていた。

 

「やりやがったよあいつら……」

 

 正面のテーブルに置かれた液晶テレビに映る、同僚のおバカ2人がまさかの検問突破をやらかした一部始終を見たが為に。

 

「――――で、貴様が守るべきIS学園の施設を破壊した理由と何の関係がある?」

「大いに関係あるよ!!」

 

 アクセルは顔を見上げて叫んだ。 テレビの左右を挟むように腕を組んで立つご存知織斑先生こと千冬と、もう一人アクセルを咎めるように言葉を発した、軽装の鎧に身を包むロングストレートヘアの凛とした女性。

 更にそんな彼女の後ろで彼女達を宥めようと対応に苦慮している、童顔の緑髪の女教師計3人に対して。

 

「あの2人僕がいない間にやりたい放題やってんだよ! それでもう我慢できずについブチギレちゃって――――」

全く関係ない! 何たる失態だ! 出来る奴だと思ってたが、嘆かわしいぞアクセル!」

「話を聞いてよジブリル! ただでさえ日頃振り回されてて、ようやく忘れた頃にあんなの見ちゃったらどうしようもないよ!」

「問答無用!」

 

 鎧姿の女性……王族であるアイリスの近衛騎士団長『ジブリル・エミュレール』が、腰元の剣を抜き切っ先をアクセルに向けてくる。 剣先と同じくらい鋭い目つきと共に。

 アクセルは鼻の傷辺りに突き出された細身の剣を目で追いながら、気落ちしたようにぼやいた。

 

「……はあ、分かった。 大人しくここで謹慎しているよ」

 

 アクセル自身も、床を壊してしまった事は申し訳なく思っている。 ましてや理由があるとは言え、エックス達の無茶振りから無罪を主張するのは、流石に無理があるとは分かってはいた。

 それでも仲間2人がまさかの銀行強盗から、同じ公僕である筈の警察官とあんな激戦を繰り広げているのを見てしまえば、アクセルとしても流石に動揺せずに済むのは無理があった。

 

「はあ……もういい。 今日1日はそこで大人しくしていろ」

「まあまあ。 ジブリル、本人も反省していますし、彼も疲れていたんでしょう。 もう今日はそっとしておいてあげましょう」

「……真耶。 お前は相変わらず甘いな」

 

 ため息をつきながら、ジブリルはすぐ隣の女教師『山田 真耶(やまだ まや)』の仲裁に従い突きつけた細身の件を納めた。

 

「……それにしてもだな」

 

 口を閉ざしたままアクセルを睨んでいた千冬が、ここに来てスタジオの場面に切り替わったニュース画面を見ながら呟いた。

 

「あの『不束者』はまだしも、伝説のB級と謳われたイレギュラーハンターとその相棒が犯罪に加担しているとは、流石にアクセル……その、なんだ……もう少しマシな言い訳をだな……」

「彼らの事は学生時代の授業でも聞いた事ありますけど、どう考えても『ロックマン』がそんな事するなんて思えないですよ」

「確かに」

 

 山田にジブリルも千冬の言葉に賛同する。

 

「そんな事ないって! 毎日顔見てた僕が言うんだから間違いないよ! あれ間違いなくエックスとゼロだって!」

「アクセル君?」

 

 エックスとゼロの件についてはなお食い下がるアクセルに、仲裁していた筈の山田も苦言を呈した。

 

「だめですよ? 仲間の悪口なんて言ってはいけません」

「うっ……」

 

 少し怒ったように言う山田の様子に、もはやこの部屋に彼の言い分を信じる人はいないと、観念したアクセルは(こうべ)を垂れた。

 

「……はぁい、分かりました」

 

 気落ちしたアクセルの力のない返事だったが、実態を知らないとはいえ正論で説き伏せた山田は、少し困ったように笑みを浮かべながら、千冬とジブリルに軽くうなずくと、2人もそれに答え彼女に続いて部屋を出て行った。

 最後に千冬が部屋を出て扉を閉めようとした時、軽く身を乗り出して一言。

 

「今日はゆっくり休め」

 

 アクセルの心身を心配する傍ら、暗に行動を慎むように釘を刺して扉を閉めた。 3人分の足音が遠のいていくのを聞きながらアクセルはため息をついた。

 

「事実なんだよなぁ……でも誰も信じちゃくれない」

 

 表向きエックス達は何度も世界を救った『ロックマン』の1人で、それは正しい。 しかし平和の為に過激な行動に出たり相方はとにかくエロかったりと、日頃から無茶ばかりして事件を解決する一面については、彼らと直接関わった事がある立場にしか分からないので、中々信じてもらえないのは無理もなかった。

 それだけに出て行った3名がケイン博士に例の件で話を伺った時、よもや「アクセルの見間違いじゃ」とすっとぼけをやらかしてくれるとは思わなかったが。

 アクセルは膝に肘を立てて頬をつきながら切実に願った。

 

「何があったか知らないけど……これ以上、酷い事にならなきゃいいけどね」

 

 それが儚い願いだと知っていながらも。

 

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