ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて 作:Easatoshi
「俺は束に覚悟の決め方を教えただけだぜ?」
「だからって本当に胸を露出させる奴があるか!! 束マジ泣きしてたぞ!?」
811号室、ロイヤルスイート『ゾット』。 高級マンション顔負けの豪華絢爛な設備と、3人で使ってもなお広い間取りのリビングにて、ゼロはやはりと言うかエックスに正座を求められ説教されていた。
色仕掛けで迫ったのは他ならぬ束自身だが、まさか仲間から本当に生地をずり下げられ、男の夢の詰まったパイオツを露出させられるとは思わなかっただろう。
泣きわめくのを何とか宥めつかせ、不貞腐れながらではあるがようやく落ち着いて眠りについたのは記憶に新しい。 すぐ隣のベッドルームにて身の着のまま純白のシーツにくるまれる彼女の姿が見える。
そしてゼロだが、エックスが落ち着かせるのに苦慮しながら束を寝かしつけたあたりで、ようやく何時ものようにしれっと復活し、今に至ると言う訳だ。
「そうか……そこまでショックを受けていたのは俺も誤算だった。 胸がダメならせめて尻を見せるように――――おいエックス波動拳の構えはやめろ!!」
反省する気ゼロな相方に、エックスは無言で腰を落として必殺技を放たんとする構えを取っていた。 これにはゼロも流石に慌てふためいた。
「見せる部分の問題じゃないだろ……いい加減にしないとまた股間に波動拳撃ち込むぞ!?」
「だから俺の自前のバスター狙うな!! また妖怪になっちまうだろ!!」
「それは困るな。 じゃあ髪の毛縛ってベランダから吊るそうか?」
「分かった分かった!! 俺が悪かった!! 束が起きたらキチンと謝る!! だからまた高層ホテルから叩き出すのはやめろって!!」
威圧感を増すおっかないエックスを前に、ようやくゼロも折れたようだ。 以前高級ホテルの上階から波動拳を食らって叩き出された記憶もあって、エックスの本気を感じとったゼロは両手を合わせ謝罪する。
エックスもゼロの謝意を感じ取ったのか、これ以上問い詰めても泥沼になるだけだと思い、今日一日の疲れもあって怒りをひっこめる事にした。 ゼロも矛先を収めるエックスに安堵の息をついた。
「……はあ、何だか一気に疲れた。 ニュース番組でも見て俺も寝よう」
エックスはソファーの前に回り込み、テーブルの上に置かれた壁掛けの液晶テレビのリモコンを拾い、スイッチを入れる。
画面にニュース番組が映し出され、昼間の銀行での大暴れからカーチェイスまでの話題で持ちきりであった。
そして画面下に一緒に表示されるテロップだが、事件に巻き込まれ負傷した3人分の名前が表示されていた。 いずれも軽傷か怪我無しだが、うち一人は重症で未だ意識不明と出ていた。
勿論、重体患者とはクラブロスの事であった。 エックスとゼロは非常に気まずそうに顔をしかめた。
「クラブロスへのロケットランチャーは完全にやらかしだったな……」
「けが人を出すつもりはなかったのに……まさか俺もあそこまで事態が悪化するなんて思わなかったよ」
あの騒ぎに便乗したのは束の口車に乗せられた感はあったが、エックス達なりには自己責任の下で、あくまでけが人は出さず主犯のキンコーソーダーもろとも盗んだ金も返し(お金儲けをたくらむのはイレギュラーだから、ちょっとだけ『押収』はしたが)、なるだけ穏便にカタをつけるつもりではあった。
しかし店舗の破壊に派手なカーチェイス、それに大半のお金が燃え尽きてしまい、極めつけは非常用に持ち込んだロケットランチャーの誤射。 想定外の事態が立て続けに起きてしまったのには、内心冷や汗はかいていた――――が。
暴言と名誉の棄損を厳格に取り締まる。
とりあえず今日はもう休もう。 明日は飛行機のチケットを東京経由でアメリカに帰る便に変更して、なおかつ同じ物を束の為に用意しなければならない。
ギリギリまで空席状況を確認できないのは歯がゆいが、それも束の言った傍受の危険性を考慮すればやむなしであった。 2人は束とは別室の、ベッドルームにて就寝する事とした。
<事件発生からおよそ10時間以上経過しましたが、未だ解決に向けての進展はありません。 銀行強盗4人の行方は未だ分かっていないそうです――――それではコマーシャルです>
強盗事件の特集を一旦CMで中断するニュースキャスター。 彼の言葉が2人の耳に引っかかり、思わず顔を見合わせた。
「今の聞いたかエックス」
「ああ……
耳に残った部分をエックスが口にするとゼロは頷いた。 どうやらお互い同じ部分が気になったようだ。
「アイツがあの拘束から逃げ出したって事か?」
「それはありえねぇな。 あそこまできつく縛っておけば、仮に拘束を外せたとしても、アイツがやっとこさ逃げ出せる頃には直ぐに捕まっちまう筈だ……」
ゼロの言う通りであった。 エックスはちょっとやそっとじゃ外れないよう固定を頑丈にしておいた。 自力で簡単に外せる物ではないのは3人全員が確認している。 第一束にとっちめられて気絶していたのだから、そもそもが逃げ出せた可能性は無いに等しいだろう。
もしかしたらニュース内容自体を読み違えた可能性というのも否定はできないが、本当に警察に発見されなかった理由が他にあるとしたら――――
「……誰かが警察より先にキンコーソーダーを連れ出した?」
「分からねぇ。 だが――――」
ゼロは部屋で眠る束に視線を注いだ。 エックスも一歩遅れてそれに倣う。
「もし可能性があるとしたら、な」
神妙な面持ちで束を見つめるゼロ。 エックスもゼロの言いたい事を理解したのか、深くは追及せずとも彼と同じく一抹の不安を感じているような表情だった。
しかしサミットは明日に控えている。 それまでに無事束を送り出さなければならないと、決意を新たにした。
所変わり、同時刻のIS学園にて。
「一夏、引き返すなら今だぞ?」
「いいんだよ。 友達があんなに取り乱しててじっとしてられるかよ」
「……フン、わざわざ夜中に抜け出すとは酔狂だな」
一夏を挟んで箒とマドカの3人が、消灯時間を過ぎたIS学園の学生寮を、人目を忍びながら廊下を歩いていた。 当然ながら廊下の照明は全て消え、窓から差し込む月明かりだけを頼りに、一夏達はおっかなびっくりしながらさる場所を目指していた。
「いいのか? こんな所、織斑千冬……姉さんに見つかったらただじゃ済まんぞ?」
「そう言うマドカもしっかりついて来てるだろ。 アクセルが気になるからってアイリスの目まで盗んで」
「!! 言うな!」
暗がりで表情を伺いにくいが、一夏の言葉に対して照れ隠しに怒っているような仕草を見せるマドカ。 箒は呆れたような微笑ましいような、生暖かい視線を送っていた。
一夏達生徒はあの騒動以来、用務員室に謹慎を命じられたアクセルと今日1日の接触を禁じられていた。 そんな彼の元を、人目を盗んで訪ねようとしている所である。 何故か、それはアクセル曰く仲間2人……エックスとゼロが箒の姉共々強盗に参加してたと言う話、どうして彼らならやりうると言ったのかその心を知りたいのが理由だった。
しかしこの学生寮に定められた規則には、意味なく消灯時間を過ぎて宛がわれた自室以外をうろついて回るのは厳禁とされており、規則を破った者にはあのおっかない一夏の姉こと、織斑千冬大先生による懲罰が待っている。
それもその筈、彼女こそがこの学生寮の寮長を兼任しているからだ。 しきりに居もしない周りの目線を気にしながら歩いているのはその為である。
「だがまあアレだ……あの姉さんなら強盗みたいなネジの外れた真似くらいやらかしかねないが……アクセルの言う仲間2人までと言うのは、どうも私としても気になるがな」
「だろ? なのに用務員室に謹慎になる直前まで、アクセルは同僚を疑ってかかってたんだぜ? 何があったか知らないけど、見間違いかなんかだろ?」
一夏と箒はどうにも腑に落ちないでいた。 エックスとゼロ、共に彼らと働いているアクセルの言い分を信じるのが筋であるが、簪にも後で詳しく教えてもらった彼らイレギュラーハンターの解決してきた事件。 それらの詳細を見ていく限り、彼らの出した結論は「ロックマンがそんなバカな事するのはあり得ない」という結論だった。
アイリスの出身地であるルクーゼンブルクがエネルゲン水晶の鉱山を奪還した事や、つい最近でも衛星兵器の乗っ取りを企てていた犯罪組織の撲滅など、全て彼らが解決に尽力したからこその成果なのだ。
勿論親しいなりにアクセルにしか分からない、気性難な一面があるのかもしれないと推測するが、それでこれらの事件を全て引っ繰り返してもなお余りある、イレギュラー同然な振舞いをするとはにわかに信じ難かった。
「まあ本人ともっと話してみれば、きっとアクセルも誤解だったって信じてくれるさ。 朝からじいさんに追いかけ回されてたし、少し参ってたんだろ」
「大いにあるな……ケイン博士だったか? 正直あの時は、千冬さんより怖かった……」
「……あの人より恐ろしいのか」
身震いする箒とマドカに、一夏もまた少し怖気づいた。 そうこうしている内に一夏達は階層を折り、ケイン博士よりかは幾分マシだが十分怖い寮長と遭遇する事も無く、無事に用務員室の前に辿り着いた。
「ここか……」
3人は扉の前に立つ。 一見何の変哲もない、しかし高級ホテルにも見劣りしない木製だがしっかりと重厚感のある、金の装飾のされたドアレバーの用務員室の扉。 隙間からは光は漏れていない、寝ているのかもしれない。
一夏は改めて周囲を軽く見渡すと、ドアレバーを握って力を入れた。 しかしレバーを少し動かすと、つっかえたような抵抗感が手の中に伝わった。 やはりと言うべきか鍵がかかっているようだ。
「どけ、私が開ける」
一夏の手をそっと払うマドカ。 おもむろに制服の腕の裾から針金を引き出し、鍵穴に挿入して内部のピンを押し上げ、器用にピッキングしていく。
その手つきは自ら買って出ただけあって見事であり、ものの数秒もしない内にあっさりと鍵を解除した。 薄暗い廊下に小さく響く、小気味良い解錠音に一夏と箒も感嘆の声を上げ、マドカもほんの少しだけ得意げに笑う。
邪魔な鍵は外し、いよいよこの扉を開ければアクセルとご対面だ。 鍵を開けたマドカがドアレバーを捻ろうとした――――
「ッ!!」
しかし、何かに怯えたように咄嗟に手を放して後ろに飛び退くマドカ。 驚き慌てる妹の様子に一夏が彼女の顔を覗くと、ひどく青褪めて冷や汗を流しながら息を荒げるマドカの顔があった。
「と、とてつもなく嫌な感じがした……!!」
「……?」
恐ろしいものを感じ取ったように身を震わせるマドカに、一夏と箒は呆気にとられたように顔を見合わせた。
「お、お前達には分からないのか!? この扉の向こうから嫌な気配がするぞ!」
「……ここまで来て何を言っている?」
「この部屋にいるのはアクセルだけだろ? ほら、先生達に見つかる前にさっさと入るぞ」
「ま、待て――――」
マドカの制止を意にも介さず、一夏は用務員室の扉を押して開け放った。 思わず身を庇うマドカだったが、部屋の中から何かが飛び出してくるような気配はない。
扉の先にあったのは、月明かりさえ入らずひと際暗い用務員室の中であった。 一寸先は闇を体現するような、ここからでは細かい様子が伺えない程の暗さであるが、しかしマドカが恐れていたような恐ろしさは感じない。
「何もないぞ? 気にし過ぎだったんじゃないか?」
「……?」
全く動じない一夏達の様子に、マドカも恐る恐る腕をどけて中の様子を見た。 一夏の言う通りただ闇が広がるだけで、特に恐ろしげな雰囲気は感じない。 闇の中など、裏組織にいた自分にとってはむしろ慣れたものだ。
マドカはかえって混乱した。 ドアレバーを手にかけた時に走った悪寒は、一体何だったんだと言わんばかりに首を傾げた。
付き合いきれなくなったのか、一夏と箒はマドカに後に続くよう促すと、さっさと部屋の中に足を進めていった。 残っていても仕方が無いので、マドカも渋々後に続く事にした。
して中の部屋だが、用務員室と特別に名が割り振られているものの、より暗がりがきつくなった室内で目を凝らしてみる限りは、学生寮の一室と間取りに差はないような印象があった。 窓にはカーテンが掛けられて外の僅かなな光は遮られ、それがこの部屋をひと際暗くしている原因のようだ。
そうなれば部屋の奥にベッドが設置されている筈だが、足を進めると人一人分膨らんだシーツがそこにあった。 間違いない、アクセルはこの中に寝ている。 仕事疲れもあるところ悪いが、一夏はアクセルを起こそうとベッドに手を差し伸べた。
その手はシーツに触れる事無く、横から腕をつかんだマドカによって阻止された。
「マドカ?」
「触るな! ……さっきと同じ悪寒がこのベッドの中から感じる」
「え?」
身震いしながら一夏を止めるマドカだが、やはりと言うか一夏と箒は訳が分からないでいるようだった……その時である。
「うっ……うう……」
シーツの中からアクセルの呻き声が聞こえてきた。 今のやり取りで起きてしまったのだろうか?
「……ハンターベース……ガソリンスタンドが爆発したぁ……やめろぉカメリーオ……僕の全身を舐めるなぁ……」
「うん?」
聞きなれない単語を口にするアクセル。 どうやら寝言を言っているようで、アクセルは続けて呟いた。
「妖怪がぁ……スパ施設が燃えるぅ……ミニスカサンタ……スモーチャンプ……ビルが崩れる……ゼロのきんた〇レーザー兵器……下着泥棒……」
寝言と言うには、悪夢にうなされる様に苦し気に呻くアクセル。 が……それにしては話に脈絡が無い気がする。 所々下品な言葉が飛び出し、一体どんな夢を見ているのか一夏達にはにわかに想像がつき難かった。
「な、何の夢を見ているんだアクセルは――――」
「アッー!」
異様なアクセルの寝言に箒が引き気味になった時、アクセルが突然叫びながらベッドを震わせた! 3人一斉にベッドから距離を置いた。
「アーツィ!! アーツ!! アーツェ!! アツゥイ!! アツーェ!! ――――あああああああもうやだああああああッ!!!! 僕の尻を焼くなあああああああああああああッ!!!!」
「い、一体アクセルは夢の中でナニされてるんだ!?」
「分からん!!」
「だから嫌な予感がすると言ったんだ!!」
中からつつき回す様に暴れまわるベッドのシーツ。 一夏達は少し距離を開けた位置から固唾を呑んで様子を見ていた。 が、やがてベッドの軋みが収まり、暴れていたシーツは元の形に収まった。
一瞬の間を開けて何かを仕掛けてくるのではないかと身構えたままだったが、しばらく待っても立て続けに何かが起きる兆候はなく、一夏は胸を撫で下ろした。
「脅かすなよ……ただ悪い夢にうなされてただけだったんだな」
突如、ベッドのシーツを払いのけて立ち上がるは、怒気に包まれたアクセルだった!! 彼の叫び声は室内を揺らし、締め切っていた筈のカーテンが声の圧に開いてしまったではないか!
3人、声にならない叫びを上げた! 部屋の中に差し込んできた僅かな明るさがアクセルの顔を照らすが、レプリロイドらしからぬ血走った瞳と眉間に皺寄せた鬼気迫る表情、口元からは瘴気が溢れ、何と右手にはリボルバー『スパイラルマグナム』が握られていた!
「落ち着けアクセル!! 俺は一夏だ!!」
「嘘つけ!! 一夏が部屋に鍵かけてたのわざわざこじ開けて入ってくるもんか!! クジャッカーの回し者だろッ!!」
「クジャッカーって誰なんだ!? やめろアクセル!!」
アクセルに落ち着くよう求める一夏と箒。 そんな彼らの制止も耳に届かず、アクセルは銃を携えたままベッドを降りて歩み寄ろうとした。
「今のこいつは正気じゃない!!」
「マドカ!!」
マドカは待機させていたISの展開を試みた――――しかし!
それよりも更に早く、アクセルが腰に当てた銃が火を噴き、腕に巻いていた彼女のISらしき黒いガントレットが弾き飛ばされた!
「な!?」
腕の痺れと共に驚愕するマドカ。 一夏と箒も言葉を失うが、これはアクセルが昨日の夜に披露した早撃ちの極意……よりも尚早く正確だった。
一夏も後に倣って咄嗟にISを展開しようとするが、先にアクセルに銃を向けられて動きを止めた。 今しがた学校の生徒に向けて容赦なく発砲した、怪しい動きをすれば即座に次の弾を発射するだろう。
「そんなもの振りかざそうとするなんて……やっぱり僕を襲おうとした……!!」
「や、やめろアクセル!! 今のお前はどうかしてるんだ!!」
「そうだぞアクセル!! 落ち着いて話を聞いてくれ!!」
「この期に及んでまだシラを切るかあ!? 覚悟しろイレギュラアアアアアッ!!」
アクセルは獰猛に飛び掛かった!
それからはもう、用務員室の中は目も当てられない有様だった。 抵抗する一夏に構わず発砲するアクセル。 それをやっとこさ隙を見てISを展開できた箒とマドカだが、どういう訳か激高するアクセル相手には普通に力負けし、一夏を押し倒して銃を向けようとしていたアクセルを止める事が出来ずにいた。
収拾がつかなくなりそうになったその瞬間、異常を察知した我らが寮長にして担任である千冬がドアを蹴り破って入ってきた! 部屋の電気をつけ、寝起きを叩き起こされてすさまじく機嫌の悪い中で彼女が目の当たりにした光景とは。
「消灯時間だってとっくに過ぎてるんだぞ――――」
千冬は硬直した。 そこには四つん這いでひん剥かれた尻を突き出しながら倒れ伏す一夏に対し、ISを着用した箒とマドカに抑えられながらも、狂気に駆られ銃を一夏の尻に突きつけるアクセルの姿があった。
「――――ハッ!」
部屋の照明がついた途端、アクセルは我に返ったように素面の表情に戻った。 混乱したように周囲を見渡すアクセル。
「えっ? どうして皆がここに!? あれ!? 僕銃なんか出して……何で一夏が四つん這いで倒れてんの!?」
状況を把握しきれず目の前で起きている事を反芻するように口にするアクセル。
「な、何も覚えてないのか……?」
「覚えるも何も、僕さっきまで寝てただけだよ!! ……なんかすっごく嫌な夢見た気がするけど」
一夏達は唖然とした。 どうやらただ単に寝ぼけた頭で暴れまわっていただけだった。 それを千冬がやってきて部屋の電気をつけた事で意識が覚醒したのだろう。
「……で、一夏達もそうだけど……どうして織斑センセ、そんなに怒った顔してるの?」
アクセルは、先程からこちらを見て肩を震わせる千冬に対し、危機感を募らせながらも恐る恐る尋ねてみた。 その無自覚な一言が、千冬の爆弾に火をつけるには十分だった。
千冬姉の怒りの鉄拳が、理不尽な痛みと共にアクセルの顔面に突き刺さる――――
注)アクセルの悪夢、全部実話。