ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて 作:Easatoshi
兎のコスプレした女性を無理から詰め込んだり、特に卑猥なアダルトグッズと同じ鞄に入れて巧妙に偽装したりしないよう、ご協力をお願いします。
紆余曲折あったものの、何とか成田行きの飛行機に搭乗できたエックス達。 鞄を荷物入れの中にしまって幅の広い4列シートにてゼロを窓際に、自身が通路側に陣取る形で着席した。
そして飛行機は定刻通り離陸して30分が経過、雲の上の景色を楽しみながら無料サービスのドリンクを片手に、到着までの時間を余裕をもって過ごすのみとなった。
「これで後は成田にさえつけば」
「ああ、電車とモノレールを乗り継げばそこから1時間でIS学園に到着だ。 何とかサミット開始までに間に合いそうだ」
「何事もなければ、ね」
エックスは頭上の荷物入れの中にしまい込んだ鞄の中の束に視線をやる。 かなり無理を言って検査場を通り抜けたものの、その為にケイン博士の名前まで使ってしまったのが気がかりであった。
後で当局から来るだろう問い合わせによって、確実に迷惑をかけてしまうかもしれず、今からその事を考えると少し気が重かった。
「……悩んでても仕方がねぇ。 俺達はやれるだけの事はやったんだ。 あのジィさんからの文句は後で考えろ……あ、すまん。 コーヒーを一つくれ」
「かしこまりました」
エックスの不安を見透かしたように言葉を口にするゼロ。 しかし、本気で怒ったケイン博士の恐ろしさは身に染みているだけあって、それを後回しにして考えるのは中々に難しい話だった。
よく見ればゼロもどこか浮かない表情であり、ドリンクの入ったカートを押す
白人女性と思われる金髪の麗らかなCAは嫌な顔一つせず、溜まりに溜まったゼロの空の紙コップを回収し、その場で熱々のブラックコーヒーを新たに注ぎ、ドリンクホルダーに置いて去っていった。
……割り切ったフリはしているものの、やはりゼロもケイン博士からの叱責を恐れているのは、さっきからしきりに飲み物を要求する様子から想像に難くはなかった。
「(束もその口だもんな……いずれ年を取って怖い人にならなきゃいいけど)」
同行する束こと篠ノ之博士も、科学者であると同時に体力面でも優れている。 今回の旅でさぞかし嫌な目に遭っているが、元々奇抜で過激な一面のある感性の持ち主であるだけに、これを切欠に変な方向にブレでしまわなければ良いが。
まあ、彼女の身柄をサミットまでにIS学園に送り届ければ、晴れて彼女は無罪放免。 堂々と日の下を歩ける人間になれるのだから、今度こそ真っ当な道へと進んでくれればそれでよいとエックスは思った。
して、何事もなくフライトは続いたに見えたが、ドリンクを配り終えて手ぶらで引き返してきた金髪のCAが、エックス達のいる席の列に通りがかったその時であった。
束入りの鞄を収めているエックス達の頭上の荷物入れが、突如として機体が乱気流の中にでも入ったかのように、大きな音を立てて揺れ始めたのだ!
これにはエックス達はおろか、隣にいたCAや周囲の他の乗客も、驚きを隠せない様子で一斉に荷物入れの方に目を奪われた。
「(おいエックス! あいつ暴れてるぜ!)」
「(くっ! やはりあの鞄のサイズに、1時間以上も詰めっぱなしにするのは無理があったか!?)」
「……お客様?」
騒ぎ始める乗客に対し、CAはプロらしく冷静な態度でこちらに話しかけ始めた。
「何か、鞄の中に大きく音を立てたり振動するような物を入れてはおられませんか?」
「え? ええ……ひょっとしたら、うっかり目覚まし時計のスイッチか何かが入っちゃったのかもしれません! この隣にいる赤いのが寝起きが悪くて、ベッドひっくり返さなきゃ起きてこない時もあるほどなんですよ!」
「は、はは! 実はそうなんだ! 荷台で鳴らすとここまで大きく揺れてしまうとは思わなかった! 迷惑かけちまった! 正直すまんかった!」
自分でも相当に苦しい言い訳をするエックス。 勿論CAは微笑みを崩してはいないものの、その眼差しに疑いの色が滲み出ており、あくまで他の乗客の為に冷静に勤めているだけに過ぎない。
CAはひと呼吸間を開けて、次のような言葉を述べた。
「お客様、荷台が激しく揺れるような目覚まし時計は他のお客様のご迷惑となります――――つきましては大変恐縮ですが、一度手荷物をこちらの方で預からせて戴いてもよろしいでしょうか?」
エックスとゼロの背筋が凍った。 不気味ささえ感じさせる穏やかな口調だが、これはもう要望ではなく実質命令だろう。
――――これはまずい!! 今鞄を渡すような事があれば、確実に
周囲の乗客が向けてくる怪訝な眼差しも気になって仕方がない。 だからと言って
「いえいえ! それには及びません! 今ここで電池を抜いておけば動き出す心配はありませんから! 他の皆さんにもご迷惑おかけしました! ははっ!」
こうなっては、エックス達には笑ってしらを切る以外にやる事がない。 内心冷や汗物だが平謝りしつつも相手の要求を拒み、立ち上がって荷台を開け、小刻みに震える中の旅行鞄を取り出そうとする。
「そうですか、それでは仕方ありませんね」
震える鞄に両手を添えた時、CAの声色が変わった――――次の瞬間だった!
背中を通してただならぬ気配を感じ取ったエックスは、CAへ振り返る事無く鞄を掴んで横っ飛び! ゼロもまた瞬時に、空のコップを置いていたトレイを押しのけ、背を預けていた椅子から飛び上がる!
――――ゼロの肩が前席の背もたれにぶつかり、トレイの空の紙コップが地面に落ちるよりも先に、エックスごと巻き込むつもりだっただろうCAの腕が、ゼロが座っていた椅子に勢い良く突き刺さった!!
突然のCAの狼藉。 それも生身の女性にはありえない一撃で優等席を破壊するその様子は、エックス達の様子を窺っていた乗客達に悲鳴を上げさせるには十分過ぎた。
「……乗客への対応にしちゃ、随分と乱暴なやり口だな」
突き刺した腕を引き抜くCAを憎々しげに見つめるゼロ。 抜き取られたCAの腕は、きっちりと着こなされた長袖の制服の上から、鋭い爪先を持つ機械仕掛けの腕へと変化していた。
エックスとゼロには、その腕が何なのかは瞬時に見当がついた。
「――――ISか!?」
攻撃を避けて通路に出たエックスが、CAの次の出方を窺いながら鞄を右脇に抱えて身構えた。 突然の、それもISによる攻撃は……まさか!
「……最近はマナーの悪い客も多いわ。 指示に従わないような手合いには――――」
口元を釣り上げながらエックスの方を振り向くCAの両腕――――ISを展開した右腕とそうでない左腕の中が光を放つ。 瞬きする間に両側にISの腕が装備され、それぞれの手には大がかりな拳銃が握られていた。
「力づくでも搭乗を拒否しなければいけないもの」
片方をエックスに、もう片方をゼロ……ではなく、明後日の方向にある窓ガラスに向ける。
「おっと、イレギュラーハンターのゼロ……だったかしら? 私のハイパーセンサーは背を向けていても、しっかりと貴方の動きを捉えているわ。 下手な真似をするなら航空機の壁に穴を空ける羽目なるわよ?」
乗客にどよめきが走った。 高度を飛ぶ航空機の内部は与圧されているだけに、もし一か所でも風穴が空こうと言うものなら、そこから機体は一気に亀裂が走り、大穴が空くと同時に空中へと吸い出されてしまい、最悪機体そのものが空中分解しかねない。
ゼロは避けた後の姿勢のまま迂闊に動く事ができなかった。
「……そうか、お前が『亡国機業』か!」
「あら、伝説のB級ハンターに名が知られているとは光栄ね。 私は『スコール』……ご察しの通り『亡国機業』の実働隊を率いているわ」
「俺達を狙う目的はなんだ!?」
エックスが問いかけると、CA……もといスコールと名乗った女は肩を竦めた。
「分かり切った話でしょう? 『そんな真似』までして彼女の身を隠すなんて……その旅行鞄をこちらに渡しなさい」
「断る!」
エックスの抱える旅行鞄に手を差し伸べるスコールの要求を、一言で突っぱねる。 当然だ。 この鞄の中には束が入っている。 ISを犯罪に用いる手合いがその生みの親を狙う理由など一つしかない。
即答するエックスに対し、スコールはそう来ると分かっていたと言わんばかりに目を細めた。
「機を人質にとられてる割には随分強気なのね……それならこれはどうかしら?」
スコールはガラスに向けていた方の手を耳元にかざす。
そして高らかに叫んだ次の瞬間――――機体の左側面で大きな爆発音が大きく機体を揺らした。
乗客の悲鳴、揺れ動く機体、荷物入れの蓋が開いて乗客の私物が通路に散乱する。 ゼロも席にしがみついて腰砕けになり、エックスもその大きな揺れに思わず鞄を落としてしまった。
この揺れ方は乱気流によるものではない、もっと激しく致命的な何かが機体を襲ったのだ。
――――あれを見ろ!! 左側席の窓側にいた乗客の一人が窓の外を指さした。 全員がつられて見ると、視線の先には無残に破壊され燃え盛るエンジンの残骸の姿が見えた。
幸い主翼はへし折れずに済んだが、エンジンからの爆炎が瞬く間に燃え広がる勢いであった。
「――――貰った!」
エックスもそちらに気を取られた瞬間、取り落とした鞄をスコールに拾われてしまった。
「しまった!!」
慌てて取り返そうとするが、スコールが素早く数発IS用拳銃をエックスの体に放つ。 貫通こそしなかったが、青いアーマーに数発大きな凹みを作りながら、エックスは後方へと吹き飛んだ!
「ぐはっ!!」
「エックス――――」
ゼロも通路に飛び出してスコールを取り押さえようとするが、スコールはそれを見計らったように素早くゼロの足に銃弾を1発!
「ぬおっ――――」
飛び掛かる勢いのまま膝を砕かれ床に倒れこむゼロを、スコールは嗜虐的な笑みを浮かべ、硝煙の立ち上る銃口に息を吹きかける。
「スキだらけね、伝説のハンター2人が聞いて呆れるわ……鞄は頂いていくわよ」
「く、こんなところで……!!」
「クソッタレ! ざまあねぇぜ……!!」
鞄を持ったまま悠々とゼロの傍を通り過ぎるスコールを、身を起こすエックスとゼロの2人は憎々しげに睨みつけるしかできなかった。
余裕の表情で搭乗口へと続く通路を歩いて去っていく彼女を、このまま見送る羽目になるのか……そう思った時であった。
「全く拍子抜けね。 この程度の不意打ちにやられるようじゃ、正面切ってエックスを倒したと示しがつかない――――ん?」
彼女が奪った旅行鞄だが、しきりに揺れる様子が気になって目をやってみると、エックスが手に取っていた時には閉じていたファスナーがいつの間にやら開いていた――――次の瞬間、空け口からドライバーを握った女性の腕が飛び出した!
「なっ!?」
腕はスコールの背中を一突きした! ドライバーの切っ先が生身に触れた瞬間、搭乗者を守る為の防御機能で展開されていなかった胴体部分が瞬時に待機状態を解除! 物理的にISの装甲が出現するもののドライバーの切っ先は、展開された装甲部分に突き刺さる!
突き刺さった手ごたえを感じたのか、腕はドライバーを横に捩じってISの脊椎にあたる出っ張り部分を抉る。 するとどうだろうか、スコールの身を包んでいたISの装甲がひとりでに剥がれ、待機状態で展開されていなかった肩のスラスター部分や脚部までもが現れ、地面や椅子に座っていた乗客達の体に降り注いだ!
「しまっ――――」
ISの強制解除――――降り注ぐ重たい部品に乗客達が身を庇い、ISを容易く引っぺがされたスコールが驚きの声を上げる間もなく、鞄の中からその
「ぶぺっ!」
鞄から飛び出すも地面に倒れこむは、兎の耳のヘアバンドを被ったドレス姿の女性……篠ノ之束の姿だった。 周りの人々にとっては驚嘆の連続だろう。
「た、束……!!」
「おおおおお……し、死ぬかと思った……!!」
エックスがその名を口にした彼女だが、サイズの合わない鞄に無理矢理詰め込まれたのが堪えているのか、うつ伏せでやっとこさ両手をついて立ち上がろうとしているものの、息も絶え絶えで身を震わせるばかり。
その光景に目を奪われた人々は、皆一様に言葉を失った。 床に散らばった大人のおもちゃに取り囲まれ、異様な雰囲気を醸し出していた。
身じろぎするスコールの表情には焦りの色が浮かぶ。 このまま連れ去るつもりだった束にISを解除されただけでなく、鞄の拘束を逃れて外に飛び出してきたのが大きかった。
「……よくも好き勝手やってくれたね。 この束さんを舐めたツケは大きいよ」
幽鬼のようなおぼつかない足取りでゆっくりと立ち上がる束。 顔の上半分に影がかかり、目つきを見る事は叶わない。
しかし彼女の震える唇が、正面から対峙したエックスに微かな怒りの感情が滲み出ている事を伝えていた。 そして次の瞬間、束は飛び掛かる――――
――――その勢いで身を起こそうとしていたエックスの胴体にドロップキックを炸裂!!
「ぐっはああああああああああああああああッ!!!!」
「あんな狭くて卑猥な鞄に無理から押し込みやがって!! 殺してやるッ!!!!」
「がっ!! な、なにをするんだ束ッ!! やめるんだッぐは!!」
蹴り倒した直後に、怒りのままに何度もエックスの上でジャンプして体をストンピングする束。 己を連れ去ろうとしたスコールをして置き、ここぞとばかりにこれまでの恨みをぶつけにかかる束の猛攻に、少なからずダメージを負っているエックスは身動きをとれない。
唖然とする空気の中スコールは、皆が憤怒の束に気を取られている隙に分解されたISのコアだけを回収、身を翻してその場を後にした。
「おい束!! あの亡国なんちゃらの奴逃げてるぞ!!」
「知るかそんなもん!! アンタもヤキ入れてやるッ!!」
「あっ!! こら何しやがる!! 胸倉掴むんじゃねぇ!!」
「死んじまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」
こんだけ束さんがキレまくってるSSはロックマンZAXだけ!(白目)