ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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 のっけから感想欄での話題をかっさらっていく、アクセルの存在の大きさよw ……第2話投稿です!


第2話

 

「ダグラス、旅行鞄の在庫を見なかったか?」

 

 多忙な職員のごった返すハンターベース内でもひと際騒がしい開発室。 イレギュラーハンターに雇われた技術者達が、ハンターの用いる装備のメンテナンスから研究開発までを引き受け、今も工員が所狭しと工具やタブレットを持ち歩きつつ、整備対象の武器一式からライドアーマーや無輪浮遊式バイクであるライドチェイサーに至るまで、現物の整備やデーターロガーからのフィードバックを目的に投影式のモニターとにらめっこしている。

 工具や整備用の資材がそこらに置かれた中を、エックスがここの主任であるダグラスを訪ねて辺りを見渡していた所、あるリフトに持ち上げられたパトカーの車体底面を見上げ、作業に取り込んでいたダグラスがこちらに気付きご対面と相成った。

 

「おうエックス。 出発は明後日の朝だろ? 旅行の準備はできてるのか?」

 

 ダグラスの煤とオイルで少しばかり汚れたいかにもなメカニック顔。 ハツラツとした笑顔をエックスに向けながらダグラスが言う。

 

「いや、使わずじまいで倉庫に眠ったままだった旅行鞄を使わせて貰おうと思ったんだけど、君がカバンを持っていったと保管庫の管理をしている職員から聞いたんだ」

 

 エックスは用件を切り出した。 急に決まった旅行なので鞄を用意しようとしたが持ち合わせが無く、生憎近所のアパレルショップは定休日で手に入れる事が出来ず、どうしたものかと考えていた所通りがかったエイリアに保管庫にあると教えられた。

 曰く随分前に職員の慰安旅行の為に事前に支給された鞄で、エックスも持っていたが使い古して処分してしまっていたのだが、使われずじまいの新古品が1つだけ余っていると告げられたのだが……。

 

「ああアレか。 古くなってたからお前の旅行に合わせて俺が()()しておいたんだ。 ちょっと待ってな!」

 

 どうやら身に覚えがあったらしく、ダグラスは駆け足でフロアの奥にある工員の控室へ向かった。 彼の言葉にエックスは首を傾げる。

 ――――()()? エックスの記憶が正しければ、あの旅行鞄は合成繊維でできたただのダッフルバッグだった筈。 仮にダグラスに鞄の仕立て直しをする技量があったとしても()()とは?

 言葉の(アヤ)なのかは知らないが、それにしても妙な言い回しをするものだと腑に落ちない気分であった。

 

 暫くすると、ダグラスがエックスの記憶にもあるお目当ての鞄をもってこちらに駆け戻ってきた。

 

「待たせたな! 俺の自信作だ!」

 

 心なしか高揚した気分で鞄を適当なテーブルの上に置くダグラス。 彼の言った通り、新古品とは言え少々年季が入っている割には小綺麗に仕立て直されているようだ。

 エックスのボディの色と同じく青を基調とした生地は色褪せた様子も無く、新品同様の鮮やかな色調であった。 これにはエックスも喜んだ。

 

「ありがとうダグラス! こんなに綺麗にしてくれるなんて嬉しいよ! ちょっと中身も見せてくれ!」

 

 エックスが大喜びで開け口のチャックに手を掛けた時であった。

 

「よせエックス! まだ使い方説明してねぇぞ!」

 

 突然ダグラスが慌てた様子でエックスの手を払いのけたのだ。 迂闊に触れるなと言わんばかりの乱暴な手つきにエックスは呆気にとられる。

 

「こいつには開け方の手順があるんだよ! 今のじゃロケットランチャーが発射されちまうぞ!?」

「――――は?

 

 今ダグラスは何と言っただろうか? 彼の言葉を一瞬理解できずエックスは気の抜けた声を上げる。 唐突に武器の名前が出てきたりした気がするがが、それは一体どう言う事だろうか。

 しばし固まるエックスであったが、察したダグラスがしばし視線を泳がせたのち咳払いをする。

 

「ああ、いやなに。 俺は007シリーズが好きでパレットの奴にも見せたら、あいつすっかりジェームズ・ボンドのファンになっちまってな。 自分も『Q』さながらに007の使っている秘密道具を作ってみたいって話になってな。 ついつい在庫の余ってたこの旅行鞄で張り切っちまったんだよ」

「……それでまさか、ロケット弾撃てるように改造したって話か?」

「ロケットランチャーだけじゃないぜ? 他にもあるんだよ!」

 

 映画に触発されたと言うだけで鞄に変な細工をしたダグラスに圧倒されるエックスであったが、しかし彼の口から出た言葉はそれだけではないとの事。 ダグラスは自ら鞄を手にかけ他の機能を手際よく紹介していく。

 

「まずこの鞄は防弾性能がある。 鞄を支える力さえあれば対物ライフルの弾丸すら止めちまう代物だ。 続いてこれは催涙ガス。 人間相手だけじゃなく、レプリロイドにも一定の妨害効果を期待する為にガスに白い塗料を混ぜ込んである。 もし付着したら中々落ちないからな、万が一つかないよう注意してくれ。 お次は緊急脱出装置、IS技術の応用で作った使い捨てのPIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)さ。 手錠が掛かって手首を固定した後、猛烈な勢いですっ飛ぶからどんな奴からだって逃げ切れるぜ。 最後はお約束の自爆装置だ。 マイクロジーロン弾を採用している。 メガトン級の大爆発で相手もろとも木っ端微塵って訳だ」

「お、おいダグラス……俺達旅行に行くんだぞ?」

「分かってるって。 絶縁加工に短時間だが量子化技術で内容物を偽装する機能も入れてある。 何入れたって金属探知機どころかX線や目視による検査もパスできるようにしてあるぜ!」

「完璧だ」

 

 それを待っていたと言わんばかりに、先程までの態度を一変させダグラスを賛辞する。 二人して熱い握手を交わし、鞄を肩から下げるエックス。 ギミックの分だけ少々重いが、これはダグラスの仲間へ対する旅行への期待と安全への気遣いの重みだ。

 

「いいかエックス! 内蔵しているロケットランチャーは一発だけだぞ! ここぞと言う時に使えよ!?」

「分かってる! いい鞄をありがとう、愉しんでくるよ!」

「おう! 行ってこい!」

 

 エックスはダグラスに手を振って見送られながら、自分も同じように手を振り返し意気揚々と開発室を後にした。 これだけの素晴らしい装備を提供して貰えたのなら、旅先でどんなトラブルがあったとしても問題は無いだろう。

 久しぶりの大阪を愉しませてもらおう。 エックスは背後で出入口の扉が閉まるのを聞き取り、期待に浮かれながら廊下を歩いて行った。

 

 それだけにエックスは気づかない。 ダグラスとの話を聞いていた開発室の他の工員達に、エックス達の旅行に対し不安を覚えられていたのを。 その上で口は禍いの元と悟り、仕事に没頭しながら聞かぬフリをしていた事を、エックスは知る由も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ……今帰ったぜスコール」

 

 

 3LDKの間取りを持つとあるマンションの、白亜の壁紙と艶めかしいフローリングの床で統一されたさる一室。 

 目元に隈を浮かべ見るからに眠そうにしているブロンドヘアーの女が、何やら重そうな荷物を片手で担ぎながら、リビングの扉を開けるなり部屋の中にいるもう一人の部屋の主に声をかける。

 朝方の優しげな光が、ベランダのガラス戸から薄手のカーテン越しに差し込むリビングの左側、壁掛けの液晶テレビに向かい合うように置かれた本革のソファに足を組んで座り、タブレット端末を操作している金髪の女性『スコール』が出迎えた。

 

「あら、遅かったのねオータム」 

「すっかり朝帰りになっちまった。 サツの野郎がしつこくてたまんなかったよ……ああ、眠ぃ」

 

 重そうな荷物を乱雑に足元に放り投げる『オータム』と呼ばれた女は、ヘアスタイルの崩れも気にせず頭をひっかきながら欠伸をする。

 口調からしても悪い言い方をすればガサツそうな彼女に対し、タブレットの液晶端末に触れていた指を止め、温和に微笑みを向けるスコールの身にまとう雰囲気は、高貴で優雅ささえ感じられる。

 

「お疲れ様……成果はどうだったかしら?」

「ああ、今日の収穫はこいつさ」

 

 重々しい音を立ててフローリングの床に置いた荷物、飾りっ気のないオリーブカラーのズタ袋の口を開き、開けた口の中には大小さまざまな種類の鞄が中に入っていた。

 それらを取り出しては、スコールの座っているソファーと壁掛けテレビの間にあるガラスのテーブルの前に膝をつき、丁寧に一つ一つ置いていく。

 スコールもタブレットを側に置いて共に中身を確認する。 鞄の開け口の中身が部屋の明かりに照らされると、財布や通帳、或いは現金の束や宝石等の金品が入っている事が確認できる。

 

「中々のもんだろ。 これなら暫くは『亡国機業(ファントム・タスク)』の活動資金に難儀する事もねぇな」

「そうね……何より利息が膨らんだ分も幾ばくか返せるわね」

 

 二人して顔を見合わせ表情を綻ばせる。 何やら世知辛い現実が垣間見える話をしながら。

 

「ああ、私達の組織何だかんだで借金抱えてるもんな」

「素性を問わずに融資してくれた『クラブロス金融』には足を向けて寝れないわ……ね」

「……レプリロイドの経営するメガバンクだけどな」

 

 会話を続ける程に、特に『クラブロス金融』なる企業の名を口にした時、二人の笑顔は嫌な現実に頬を引きつらせる宜しくないものになっていく。

 特にオータムに至っては『仕事の成果」を握りしめた手がわずかに震えて……心の中が弾けたようにそれを壁際に投げ出した!

 

「情けねぇッ!!」

 

 黒い鞄が壁に叩きつけられ、中に入っていた宝石類が床にぶちまけられる。 豹変した相方の態度にスコールは注意する。

 

「オータム! 壁紙に傷が入ったら修繕費は私達が――――」

「修繕費だぁ!? 何でそんなしょっぱい金額いちいち気にしなきゃなんねぇんだよ!?」

 

 叱りつけるスコールの声を遮り、力いっぱい握り拳を作った両手をテーブルに叩きつけて叫ぶオータム。

 

「どでかい事がやりたくて組織に入ったってのに、やってる事はいっつもしょぼい学校行事の妨害と、ケチなスリから盗品横取りするみみっちいハイエナ稼業! いつからこんなビンボー臭い組織に成り下がった!?」

「仕方ないわよ! 歴史の長い組織だからこそ、今みたいに衰退している時期だってあるわよ! それを何とか再興しようとこうして――――」

「折角のIS使ってまでこんな事やってたら世話ねぇよ! おまけに借金塗れで借りてる相手は、よりによって忌々しいレプリロイド(ブリキ人形)だぜ!? これでキレずにいられるかよ!」

「っ! そ、それは……」

 

 言い争いを始めてしまう二人であったが、折れたのはスコールであった。 とは言え不満をぶつけるオータムも、自分の口にした言葉に幾分打ちのめされたのか気持ち涙目になってしまった。

 どうしてこうなってしまったのか。 彼女達の言葉の中に出てきた『亡国機業(ファントム・タスク)』とは――――

 

 

 

 ――――起源はWW2(第二次世界大戦)真っ只中に生まれた秘密結社。 政界のドンから国を股にかけるテロリストまで、人種や国籍を問わず裏社会において影響力を持った者達が集う、文字通りあらゆる手段を講じて勢力を拡大してきた巨大組織(シンジケート)であった。

 そんな組織の歴史の中で、世の中に誕生したレプリロイドと接触したのは大きなターニングポイントであった。

 人間社会と共存していく彼らレプリロイドの中には、人間社会の中枢に食い込んで発言力を持つ者もあらわれ、それは亡国機業においても例外は無かった。

 とは言え有能な者が取り仕切る分には、組織としては恩恵をもたらすので最初は歓迎されていたが、ある時を境に状況は一変する。

 

 そう、最高傑作とされたレプリロイド『Σ(シグマ)』が、既に一定の社会の地位を確立していたレプリロイド達を扇動し、以後何度も大戦を引き起こしたのだ。

 カリスマ的存在のシグマに賛同し離反したレプリロイドは数知れず、亡国機業内の人間とレプリロイドの構成員の間で軋轢が生じ、度々内紛を起こしては組織力を大きく衰退させる原因となったのだ。

 

 オータムはため息をつき、肩を落とす。 彼女もまた、ストリートチルドレンで荒んだ幼少期を過ごしていた身の上で、弱体化前の亡国機業に見出された事を誇りに思っていた。

 それがいまや組織間の各部署もバラバラで連携も取れず、一部は自分達みたく予算の工面にも手を焼く有様。  彼女達の今いるこの部屋も組織所有のマンションでもなく、辛うじて自身の努力でなんとか間借りしている一室に過ぎない。

 

「私だってよぉ……ガキの頃に拾ってくれた組織が、どこぞの顎と尻を取り違えたとしか思えねぇ畜生(イレギュラー)一人のせいで、ここまでガタガタになっちまうなんて思わなかったんだよなあ。 このISにしたってそうだ。 組織のお偉いさん方は人類の巻き返しの時だっつって配備したのはいいけどよ……その辺の雑魚はまだしも、ちょっと強ぇレプリロイドには結局手を焼く羽目になってんだからな」

 

 確かにISは人類にとっては強力な兵器になりうる。  重力を無視し、あらゆる攻撃を受け付けず装備も豊富なISが有利な面は多々あるが、しかし既存のレプリロイドもその点については負けてはおらず、特A級ハンターの特に飛行能力を有する相手ともなれば一筋縄にはいかない。

 その上こちらは総数が500にも満たない少数でいかに性能で上回ろうとも、既に量産体制が整って数を取り揃えて、そこそこの性能を持つレプリロイド達の牙城を崩すには至っていない。

 思った以上に身動きが取れない現状にオータムはげんなりした様子で、右側頭部の髪につけた蜘蛛の形をしたブローチを撫でた。

 本体さえも格納できるISの量子化技術であるが、機体を使わない待機状態の時はこのようにアクセサリー然とした小物に変化する。

 

「全部レプリロイドが悪いんだよクソッタレめ! こんな事なら、この前の大阪城公園で巻き上げたあのクソ土方、もう少し痛めつけときゃ良かったぜ!」

 

 組織を弱らせ財布も握られと踏んだり蹴ったり。 生活を困窮していた時代に逆戻りさせつつある事実もあって、彼女は根っからのレプリロイド嫌いをこじらせている。

 そんな中でオータムは数日前の出来事……夜の大阪城公園で金品を横取りしてやった、工事帽のようなヘルメットに厚手のコートを着たレプリロイドを憎々しげに思い出す。

 フリとはいえバッグをかっぱらわれたり、誇示したISを前に啖呵を切ってきたりなど、いやに根性だけは座っていて気に入らない思いをしたものだ。

 

 これ以上悪態をつくのは流石に見かねたのか、沈黙を守っていたスコールが怒りを蒸し返しつつあるオータムを窘める。

 

「オータム……その辺にしておきましょう。 悲しくなってくるわ」

「ッ! そ、そうだな……」

 

 肩に手を置くスコールに、オータムも流石に彼女の意を汲んで噴き出しそうな気持ちを堪えたその時。 ソファの上に置いたままだったスコールのタブレットから、チャットアプリの着信音が鳴り響く。

 気づいたスコールがタブレットを拾い上げて相手を確認すると、そこには亡国機業とつながりのあるISの技術者からだった。

 オータムもスコールの横から画面をのぞき込み、共に書き込まれたチャットの中身を確認すると、そこには彼女達にとって驚くべき内容が書かれていた。

 

()()()()()()()()()()の中身が……本物!?」

「マジか! 『第5世代』なんてガセかと思ってたのによ!」

 

 それはオータムが先程思い出していた、工事帽を被ったレプリロイドから巻き上げた鞄の中身の件であった。

 奪った相手にふさわしくない、余りにファンシーな造詣のピンクのバッグだったが、中身は僅かばかりの金品が入った財布と何故か使いこまれた工具箱、そして小さなメモリスティックが発見された。

 財布の中には身分証の類は無く、工具も使用感はあるが精度の高い良品である以外これと言った特徴も無い。 そしてフラッシュメモリには『インフィニット・ストラトス第5世代型』なる名前のついた、ISの設計図らしきイメージファイルが入っていた。

 インチキかと思いつつも、一応気になって件の知り合いにファイルを送って分析を頼んでおいたのだが、まさか正真正銘の新型だったとは。

 

「ISって確か今ようやく『第4世代』がお披露目になったばかりだよな……んで、もう『第5世代』だと?」

「これが本物だって事は、そんな設計図を書ける人物と言えば――――」

 

 

 ISは作られた時期や用いられる技術によって、最初期の機体を『第1世代』としていくつかの世代に区分されているが、今現在主流なのが『第3世代』と呼ばれる物で、ごく少数だが()()()()の手で作られた最先端を行く『第4世代』がある。

 ……その()()()()なのだが、オータムとスコールはおろかISパイロットならば皆が知っている。

 それはISの生みの親にして、突飛なセンスに裏付けされたエキセントリックな天才。 今なお精力的に研究開発に勤しみ、世界の主流などどこ吹く風で最先端を突っ走る()()()()であると2人は記憶していた。

 

 突如として出てきた『第5世代』なる設計図に驚きを隠せない2人であったが、ふと脳裏によぎった彼女が書いたならこの設計図の存在に納得がいく。 何よりこのメモリスティックの入っていたカバンの造詣こそが――――

 

「ねえオータム。 貴女あの鞄、大阪城公園で横取りしたのよね?」

 

 スコールが疑問を口にした辺りで、オータムとスコールは互いに顔を見合わせ異口同音に叫ぶ。

 

 

 

「「『篠ノ之 束(しののの たばね)』が大阪にいる!?」」

 

 

 

 




 ギミック満載の小道具に自爆装置は大事ってそれ一番言われてるから。
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