ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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チャプター6:亡国機業より愛をこめて
第29話


「束さん!! 大丈夫ですか!? 俺が来たからにはもう安心です!! 早くこの偽者何とかして、飛行機を安全な所に着陸させましょう!!」

「え? 偽者? 誰の事?」

 

 何やら勘違いをしている一夏の弁に、束も理解しかねているようだった。

 

「そこの2人ですよ! 束さんを強盗へけしかけようだなんてとんでもない話だ! その上に検査場無理から通り抜けて、飛行機まで落とそうなんて――――」

「ちょっと待って!? 何言ってるか分かんない!! ここにいるエックスとゼロは本物だよ!?」

「えっ?」

 

 どうも話が噛み合わないと言うか、さっきから嵌められただの偽者だの、どこからそんな話が出てきたと言わんばかりの憶測が展開されている。

 

「えー、じゃあ……ここにいるエックスとゼロは本物? じゃあアクセルの言ってたことは正しい……いやでも、それじゃイレギュラーハンターが重犯罪に手を染めたって事に……いやでも……」

 

 何やら独り言を小声で呟き始めた一夏。 自分なりに考えを咀嚼しようとしているつもりなのだろうが、どうも彼自身をして話がまとまり切っていないように感じられた。

 

「アクセルが派遣されてたIS学園の生徒だったよな……強盗事件の事知ってるみてぇだが、ニュースとか一緒に見て吹き込まれたってか?」

「その割には、俺達の事偽者だって思いこんでるみたいだけど?」

「……イレギュラーハンターの2人が事件起こしたなんて信じたくないとか? それにしても、やっぱり見る奴が見たらバレる変装だったんだね」

 

 エックス達も一夏の発した情報から、どんな勘違いをしているのか推測を立てる。 そしてそれは当たっていた。

 このようなネジの数本は外れているようなぶっ飛んだ人物であるが、表向きは正義のヒーロー『ロックマン』が一人だ。

 しかし先程の強盗の件について一夏の剣幕を見るに、自分達を本物と悟った所で、あの変装を見破ってしまっている以上は迂闊に真実を知ると、自分が本物か偽者かは関係なしに攻撃してくるだろうとは容易に想像できる。

 折角『亡国機業』を撃退したのに事態をややこしくされてはたまらない。 それならばここは一夏には騙すようで悪いが、彼の間違った認識を利用させてもらう事にした。

 

 エックスは一歩前に出て一夏に言った。

 

「一夏君、聞いてくれ! あの強盗事件は……俺達を陥れようとした奴らの罠だ!!

 

 独り言に耽っていた一夏の呟きが止まる。

 

「俺とゼロは、彼女を無事にIS学園に連れて行く為に『亡国機業』から保護していたんだ! だけど奴ら、俺達が東京へ行こうとしているのを妨害しようと、俺達の姿に変装した上からバレやすい仮装をして事件を起こし、いずれ俺達に捜査の手が及ぶように仕向けたんだ!」

「――――!!」

「既にお尋ね者になってる束と一緒にいるのを見られたらマズい。 そう思った俺達は無理を承知で束を隠して飛行機に乗ったんだ。 そしたら奴ら、それを見計らって飛行機をハイジャックしてきた! 奴らは撃退したが、爆弾でエンジンを壊されてオートパイロットもいじられた! このままじゃこの飛行機はIS学園に墜落だ!!」

 

 エックスとゼロは驚く一夏に畳みかける様に、次から次へと口から出まかせを言った。 息を吐くように嘘をつく奴らだとでも思っているのだろう、隣にいる束がこれでもかと乾いた笑いを浮かべている。

 何より自分自身をして、相当嘘を嘘で塗り固めている無茶苦茶な言い逃れだと感じていた。 しかし――――

 

「そ、そんな!! なんて事を!! エックス、ゼロ、アンタ達を疑って悪かったよ!!」

 

 ――――純粋な一夏君は気持ちいいぐらいに、こちらの言い分を信じてくれた。 素直なのは今はありがたいが、若干心配になる単純さだと3人は一様に思った。  

 

「!! そうだいっくん! 折角ISで来てくれたんだからちょっと協力して! いっくん側のエンジン生きてるけど、実はそっちにも時限式の爆弾がセットされてるの!!」

「ええ!?」

「空を飛べるISならエックス達より安全に作業できるし、IS学園でも爆弾解体のカリキュラムあったでしょ!? お願い!!」

「わ、分かりました!! 何とかやってみます!!」

 

 束は工具箱を掲げると、一夏はそれを受け取って生きている右側エンジンに飛んでいく。 すると束の前面に、一夏の上半身が映ったウィンドウが展開される。

 

「俺達は機内へ戻ろう! 操縦席を修理しなければ! まだ積載されてる工具はあったか!?」

「備え付けの工具は2セットあったから大丈夫だよ!」

「よし!」

 

 エックス達は束と同じ手順で旅客機内へと戻った。 操縦室と客席はこの搭乗口のある狭いフロアで仕切られているが、客席の方からは非常事態にも関わらず驚くほどに静かだった。

 恐らく『亡国機業』の指し金ではない、真っ当なCAが乗客に冷静に努めるよう指示を出しているのかもしれない。 エックス達には大変ありがたかった。

 してぐ左側の機体の最前にあたる操縦席の扉を開けると、そこには2つ並びの椅子に座ったまま昏倒し、帽子を地面に落としたまま項垂れている機長と副機長の姿。 そして乱雑に引っぺがされて基盤や配線がむき出しのまま、火花を上げている無残な計器類が目についた。

 エックスとゼロは彼らの背後に立って様子を窺った。 外傷はない、どうやら気絶させられた程度で済んだようだった。

 

「機長! しっかりしてください!!」

 

 エックスは軽く揺すったり、失礼を承知で顔を数回軽く叩いてみた。 ゼロも同様に隣の副機長を立ち直らせようと試みたが、深く気を失っているからか目覚める気配はなかった。

 埒が明かず、エックス達はとりあえず彼らを担いで背後の壁側へ座らせた。 その間束は壊れたコンソールを見ていたが、渋い表情をするにあたり状況は芳しくないものと見えた。

 

「派手に壊してくれて……確かにこれは専用の部品が必要だね……鬱陶しいな!!」

「じゃあ機材は直せないのか!?」

 

 束は首を横に振った。

 

「奴らが言ったように、操縦桿周りなら何とかなるかも! オートパイロットはもうどうしようもないけど、手動操作に切り替えればまだチャンスはあるよ!」

<束さん! 爆弾を見つけました!! どうすればいいです!?>

 

 投影されたウィンドウ超しに、爆弾を発見した一夏が報告する。 画面に目をやると、エンジンと主翼の付け根のそれも前方に、爆発まであと2分足らずを示すタイマーが不気味に赤く点滅するデジタルタイマー、この航空機を死の着陸点へと導く爆弾がそこにあった。

 束は爆弾を見て少し考え、一夏に指示をした。

 

「……よかった、爆弾自体はそう難しいものじゃないよ! 束さんの指示通りやれば、十分残り時間に余裕持たせて取り外せるよ!」

「それはありがたい! ……で、俺達はどうすればいい?」

「工具の手渡しとか力仕事手伝ってくれたらいいよ! ここまで壊されたら束さんじゃなきゃ直せないからね……どりゃああああああああああああああ!!!!

 

 束は壊れた操縦桿のパネルをこじ開けて上半身を突っ込むと、既に手に持っていた工具類で、目にもとまらぬ速さで機材を修理していった。 破損した部品の飛び散るその圧倒的な速度に、エックス達はケイン博士のそれを思い出す。

 

「す、すごい! 瞬く間に機材が直っていく!」

 

 ねじ曲がったパネルをひん曲げ、舐めたネジをこじり、ちぎれた配線を素早く結んでできる限り元の状態に近い状態に戻していく。 

 

「2人とも! ぼさっとしてないでドライバーとニッパー頂戴! あとダクトテープも! 配線がかなりやられてるから、ショートさせてでも復旧させなきゃ! 折れたシャフトはテープと補強材で何とかするよ! 早く!」

「わ、分かった!」

「ほら! いっくんももっと慎重に作業して! そいつは振動センサーだから下手に触るとドカンだよ!」

<はい!>

 

 束はてきぱきと修繕作業を行いながら、エックス達と外で作業する一夏にアシストを指示する。 同時並行の的確な指示により、機材はつぎはぎだらけではあるが、機能上問題がないレベルにまで修理されていく。 爆弾の解体もスムーズに進んでいる。 天才の面目躍如と言った所だろう。

 

<束さん! ネジを外したら中から青と赤の配線が出てきたよ! これが最後の仕掛けだ!>

 

 一夏もまた最終局面に来ていた。 一通りの部品を外し終わり、残す所は2本の色違いのコードによる爆弾のタイマーの主電源のみとなった。 投影されたその映像を見て判断する束。 これについて判断材料はたった一つ、ヤマ勘のみであるが、しばし考えた後に束は答えた。

 

「……赤だね! 連中みたいな派手好きには、危険の赤が正解って相場が決まってるよ!」

<本当にいいんですね!? 切りますよ!?>

「他にヒントなんてないでしょ! 悠長に構えていたら時間無くなっちゃうよ!」

 

 悩むより早くコードを切るよう、束は一夏をせっつかす。 一夏にしてみれば、しくじったらエンジンがお陀仏する事態なだけに慎重に行きたいだろうが、どのみち悩んだ所でヒントがない以上、束の考えを信じる以外になかった。

 一夏本人や、手伝いながら様子を窺うエックスやゼロも生唾を飲み込んだ。 一夏の握ったニッパーの切っ先が、赤の被膜の配線に触れたまま震えていた。 しばしの間を開けた後、意を決した一夏のニッパーの刃先が閉じられた――――

 

 

 

 ――――無言の一時が流れる。 爆弾の様子を見ていたエックス達や、間近で解体に当たっていた一夏達が息をするのも忘れて爆弾を見つめる中、赤いタイマーはカウントを止める。 配線を切った瞬間の『0:55』の状態で制止しているが、何も起こる気配はなく……ワンテンポ遅れて赤く光るデジタル数字が完全に消滅。 電源が落ちたと言う事を再確認した。

 

<――――っぷはあぁぁぁぁぁぁ……合ってて良かったぁ……>

 

 為に溜め込んだ息を吐き、いつの間にか溜まっていた額の汗を拭う一夏。 どうやら、これで無事に一難は去ったようだった。

 

「良かったぁ……これでエンジンが壊されずに済みそうだ」

「言ったでしょ? 危険の赤だって」

「全くだ、束様様だな。 操縦桿の修理はどうなっている?」

「あとちょっとだよ! 修理が終わったら操縦は任せたよ! 無線もついでに直しておいたから、救助を呼んで近くの海に不時着してね!」

 

 話している内に彼女が同時に進めている手動操縦周りの機材も、無事に修理が終わりつつあるようだった。 同時に指示を出しながら自分の修理もてきぱきとこなす彼女。 正に天才科学者だった。

 こんな彼女が何故追われる身にならなければならないのか、エックスは彼女を罠に嵌めたと言う『亡国機業』の所業を許せなく思っていた。 どちらにせよこれだけの貢献もしたからには、何としても束には正道を歩んで欲しいと願った。

 

「後はここをこうすれば……よしOK!

 

 操縦桿に突っ込んだ姿勢から身を起こし、スパナを握った手で頬についたオイルを拭う束。 こちらの方も問題なく作業を終える事が出来たようだ――――

 

「ちょ、ちょっと束! 胸元が!」

<げ!!>

「? ……うひゃっ!!

 

 無事に修理を終えて後は後退するだけ……と思ったのも(つか)の間、束の胸元の生地が操縦桿に引っ張られ、()()()が見えるか見えないかと言う、きわどい位置まで引っ張られてしまっているではないか!

 これには指摘したエックスは驚くだけで済んでいるが、通信越しにうっかり見てしまった一夏や、胸元をはだけた束本人は赤面する。

 

「な、何だってこんな事になってるんだ!?」

「ああもう!! シャフトの固定に使ったダクトテープが胸元に巻き込んでる! くそっ! 取れないなあ!!」

 

 顔を真っ赤にするも、つい目を逸らす事も出来ず固まる健康な青少年の一夏をよそに、慌てて生地についたテープを剥がそうとする束。 しかし粘着力が思いの外強力な上に、以外と厄介なくっつき方をしているダクトテープは剥がれない。

 

「面倒だな、そんなもん適当に剥がしちまえばいいだろ!」

 

 あたふたする一同をよそに、胸の谷間が見えた程度では今更動じない『紳士』なゼロが助け舟を出した。 生地を引っ張るダクトテープをゼロの白い手が引っ掴む。

 

「こうやって――――な!

 

 そして腕を引っ張り、強引にテープを引きちぎった!

 

 

 そりゃあもう、ビリっと――――

 

 

「「<あっ>」」

 

 

束の服の生地もビリっと。

 

「あ、いっけね」

 

 うっかり胸元を破いてしまったゼロは、頬を掻きながらお約束通り再び露になった天災パイオツをガン見していた。

 

「まあそのなんだ、許せ

「それが謝る態度かぁ!! また脱がせたなああああッ!!!!」

「じゃばああああああああああああああああッ!!!!」

 

 悪びれる気配もない赤いイレギュラーを、今度は放心して固まらずに怒りを露にしながら、渾身のストレートをゼロの顔面に叩きこんだ! ゼロをぶっ倒した束はそのまま馬乗りになり、不届きな危険の赤を解体すべく執拗に何度も顔面を殴打する!

 

「危険の赤はアンタだったかあああああああ!!!! このままバラバラにして夢の島に送ってやるううううううううッ!!!!」

「ちょっとしたサービスシーンみたいなもんだろ! 一夏とか言う奴だって喜んでるぞ――――ゲフッ!!

「いっくんとアンタを一緒にするなあああああああッ!!!!」

 

 フォローのつもりが煽りにしかなっていないゼロの発言が、余計に束の神経を逆撫でする。 懲りない奴だとエックスも最早呆れ顔だが、ふと束の近くで展開されたままの、一夏との通信画面にて異変を感じ取った。

 目を見開いたまま、何かをガン見して動悸を早めていく彼の様子に、ただならぬ何かに気付いたエックスは、追い打ちをかける束を呼び止める。

 

「束!! いいから早く胸元を隠すんだ!! 一夏君の様子が変だ!!」

「へっ!?」

 

 ゼロへの攻撃に我を忘れそうだった束だったが、一夏の様子を引き合いに出すエックスの発言に顔を見上げたその瞬間。

 

<ぶっふぉあッ!!>

 

 何 と ま さ か の 鼻 血 ブ ー 。

 

「「ファーーーーーーーーーーッ!!」」

 

 噴水の様に両鼻から鼻血を噴いて、大きく仰け反る一夏に驚きの声を上げながら、そこはかとなく微笑ましくも懐かしい、少年漫画のお色気シーンの様なリアクションを感じ取った。

 

 

 

 

 ――――しかしそんな大げさな漫画チックな一夏の反応が、彼自身をして血を噴き出すのが鼻からだけでは済まない事態を招いてしまう。

 こんな上空で大きく鼻血を噴いて目を晦ませる一夏だが、まさしくその反応こそが命取りであった。 姿勢を崩した彼は爆弾を抱えたまま、そのまま流れるようにエンジン前方へ倒れ込む。

 

 

 

 そして当然のようにエンジン前方から彼の身体が吸い込まれてしまい、次の瞬間にはエンジンは大爆発した。

 

「「「は?」」」

 

 爆弾抱えたターキーブレストと化した一夏の身体を張ったリアクションは、エンジンを笑点……もとい昇天させた。 その様子を画面越しに見ながら機体の振動に揺さぶられた3人が、笑いどころか絶望の渦に叩きこまれたのは言うまでもない。

 

 

――――織斑一夏、バードストライクする。

 




 ……ワンサマー、ターキーシュートさせちゃいました。(白目)
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