ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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 アクセル黒い天使説……第31話です!


第31話

不躾な来訪者に押され、遂に校舎への侵入を許してしまったアクセル。

 背後からコンクリートの壁やガラスやらをぶち破り、逃げ惑う女生徒達の姿を見送る羽目になりながらも、それでも懸命にこれ以上の破壊を食い止めようと必死で耐えていた。 並のレプリロイドならとっくに押しつぶされている状況の中、アクセルは理不尽な状況に怒りを感じていた。

 

「(何でこうなるんだよ!! 僕はただサミットの警備に来ただけだってのに!!)」

 

 飛行機のコックピットを見上げるアクセルは、中にいるであろう例の仲間2人を憎々しげに思っていた。

 

「(ちょっと目を離した隙に、どこまでも事態引っかき回して……俺法とか抜かして調子こいてくれて!! もう頭にきたッ!!)」

 

 サミットという各国の重役が集まる一大イベントとはいえ、この平和な日本国がIS学園という場所に、よりにもよってトンデモ騒動を持ち込んだのが仲間2人。

 いつものことと言えばその通りだが、折角お騒がせな日常から逃れられたと思ったところに、意地でも厄介事を持ち込むトラブルメーカーに対し、アクセルの怒りは今まさにピークに達した!

 

「いい加減……止まれって言ってんだろおおおおおおおおッ!!!!

 

 全力を出していなかった訳では無い。 しかし、これ以上されるがままはゴメンだというアクセルの反骨心が、既に体の限界を超えたこの状況下で更なる力を絞り出す!

 それはレプリロイドが持ちうる可能性と言うべきか、あるいは只のギャグ体質なのか、アクセルは両手のみならず体も押さえつけて飛行機に対抗する!

 するとどうだろうか――――ISに乗った箒達でも弾き飛ばされていた飛行機が、校舎に突っ込んだ衝撃による抵抗も相まって、急激に減速を開始!

 

 

「止まれバァロオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 

 見開かれた目は血走り、口からも鼻からも変な汁を出しながら狂乱するアクセルの倍プッシュ! アクセルを押し潰さんと校舎を抉る飛行機だが、それ以上のアクセルの限界を超えた気合いと根性を前についに根負けしたのか、飛行機は段々とその速度を弱めていき……やがてアクセルもろとも、敷地内の中の方にある体育館兼講堂の扉をぶち破って、ついに停止した。

  そしてワンテンポ遅れて、校舎への突入中にぶっちぎれた右主翼が、ひしゃげたエンジンをぶら下げて突入してきたものの、そちらも機首の横を滑って奥の壇上に突き刺ささり、動きを止めた。 突入前は燃えていたエンジンだが、不幸中の幸いか激突のショックで火は消えてしまっていたようだった。

 

 耳をつんざくような破砕と摩擦の音がようやく止み、現時刻において誰も使っていない講堂の静寂とした空気が、両手足を開いて機首にしがみついていたアクセルを包み込む。

 ここに来てようやく、アクセルは全身に込めた力を解き放った。

 

ーーーーッ!! っぷはぁ!! はぁ……はぁ……や、やっと止まった……!!」

 

膝をつき、開いた両手でそのまま逆手に地面を突いて、もたれるように背を支えるアクセル。 呼吸は荒く、関節から煙を噴く彼の姿は、文字通り限界を超えて力を出し切った事を見せつけていた。 アクセルは機首を見上げた。 正面から校舎に突っ込んだ割には原形を留めている事に驚きではあるが、コクピット周りは当然のようにひしゃげ、機首全てに亀裂が入っているようだった。 この様子だと間もなくして崩落が始まるだろう。

 アクセルはそれに巻き込まれぬよう、直後の事で足腰が立たない重たい体を肘で引きずり、機首から距離をとった。 そしてその読みは正しかった。 

危機感を覚えて離れたまさにその直後、機首は崩壊し残骸がアクセルの座り込んだあたりに積み重なった。

 

「あいた!!」

「うわ!!」

「ぬお!!」

 

 そして、見慣れぬファンシーな女性と、見飽きた2人のイレギュラーハンターも落ちてきた。

 

「うう……何てこった……IS学園に突っ込んでしまった……」

「とんでもねぇ目に遭ったぜ……束! 何でエックスの邪魔しやがった!?」

「あああああああああ!!!! どうしようどうしようどうしようどうしよう!!!!」

 

 見間違えるはずもない、2人のハンターはエックスとゼロだ! 彼らはボロボロながらも立ち上がろうとするが、束と呼ばれた女性は憔悴した様子で頭を抱え、その場でうずくまっていた。

 ……束? それでは彼女が噂の篠ノ之博士だというのだろうか。 アクセルが3人のやりとりを眺めていると、講堂の側面の扉が開かれる音がした。 アクセルは来訪者に目を向けた。

 

「大丈夫かアクセル!? ……これは!?」

「な、何てことだ……!!」

 

 息を切らした様子の千冬と、彼女の肩に腕を担がれる足元のおぼつかぬ箒の姿であった。 2人は徹底的に破壊された講堂と、見るも無惨な姿になった旅客機に唖然とした。

 

「織斑センセ! 箒! 2人も無事だったんだ!」

馬鹿者! それはこちらの台詞だ! ……っというか思ったより傷が軽いなお前は」

「伊達にイレギュラーハンターやってないからね……箒は体の怪我は大丈夫なの?」

「私は弾かれた程度だからこの程度で済んだんだ……どう考えても心配されるべきはお前の方だぞ――――って」

 

 箒はアクセルの正面にいる3人に目を向けた。 千冬もそれに続いて彼らを見ると、一瞬の硬直の後に、2人して親の敵を見るような鋭い目つきを向ける。

 

「姉さん……!!」

「束……これはお前の仕業か!?

 

 アクセルも束の方を向いて見た。

 

「ヒッ……あ……ああ……!!」

 

 そこには彼女らの視線に怯える哀れな子ウサギの姿があった。  今にも泣きそうな顔で身を震わせ、ボロボロで特に胸元が露出したままの服装は見るからに痛々しい。

 

「不束者め……イレギュラーとつるんで、随分好き勝手やってくれたな!」

 

  千冬が箒を肩に担いだまま一歩ずつ束に歩み寄ると――――

 

「い、いやああああああああああああああああああッ!!!!」

 

 何とアクセルのいる方に全力疾走した! これには箒と千冬、そしてアクセルまでもが驚いたが、束はそのままアクセルの背中に隠れて怯えていた。

 

「ちょっと! 何で僕の背中に隠れてんのさ!」

「やだやだやだ殺さないで殺さないで殺さないでごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「た、束……な、何があったんだ?」

 

 背中に隠れて泣いて許しを請う束の姿に、千冬と箒は困惑していた……アクセル自身も。 箒からの話では、彼女はいつだって周りを煙に巻くような、自信の塊のような人物だと聞いていたが――――

 

「アクセル! 無事で良かった!」

「全く……とんだ旅行になっちまったよ」

 

 エックスとゼロも、重々しい体を引きずりながらこちらにやってきた。

 

「ヒィィィィィィィ!!!!」

 

 歩み寄る彼らの姿に、束はより一層の怯えを強調し、アクセルの背中に顔を埋めて歯を鳴らしながら震えた。 千冬や箒よりも、同伴していたエックス達の方に強く恐怖を感じているようにも見えたが、その理由は彼女自身の口から語られた。

 

「もう嫌!! セクハラは嫌催涙ガスは嫌鞄に詰め込まれるの嫌乱暴なのは嫌!!」

 

 顔を埋めながら必死で許しを請う束の言葉に、呆気にとられる一同。 一体何があったのかは知らないが、束の異常な怯えようを見るに、相当酷い目に遭ったことは想像に難くなかった。

 千冬と箒は先程束に向けていた鋭い視線を、今度はエックス達に向けた。

 

「随分と友人を可愛がってくれたみたいだな……こんな対人に問題抱えたダメな奴だが、長い付き合いなんだ……!!」

 

身を震わせる千冬に続き、今度は箒が激しい剣幕でまくし立てた!

 

「お前達は何者だ!! ロックマンのフリをする偽者なのは分かってるんだぞ!! よくも私の姉をそそのかした上に、ここまでボロボロにしてくれたな!!」

 

 詰め寄る2人の女性に対し、エックス達は困惑を隠せないでいた。

 

「偽者!? 待ってくれ!! 俺は束を保護する為に――――」

 

 エックスが弁明をし始めようとしたあたりで、不意に壇上に突っ込んだ右エンジンから金属を叩くような物音が聞こえた。 一同音のした方を見るが、何と破損したエンジンが内側から突き上げるように揺れ動き――――破裂した!

 

「ブハァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」

 

 内部から何者かが躍り出てきた! その姿にアクセル達は言葉を失った――――そこには、折れたタービンブレードが全身に突き刺さり、血みどろで虫の息な一夏の変わり果てた姿があった!!

 

「殺ス……心ノ臓ヲ止メテヤル……!!」

 

「「い、一夏……!?」」

 

 口から血反吐と瘴気を吐きながら、物々しい口上と共に殺気を漂わせてにじり寄る一夏。

 怒りに突き動かされかけていた箒と千冬も、それぞれにとっての初恋の相手と可愛い実弟のおぞましい姿に衝撃を受けていた。

 

「い、いいいいいいいいいっくぅぅぅぅぅぅんッ!? 生きてたのぉ!?」

  

 死んだと思っていたかのような口ぶりの束は、もう膝が笑っており、気を抜けば失禁一歩手前の状態と言っても良かった。

 

 それにしても、あんなに爽やかだった好青年の一夏の身に、一体何があったのだろうか? エンジンの中からズタズタの状態で現れたと言うことは、恐らく彼はバードストライクを喫してしまったのかもしれない。 まさかそれが墜落の原因ではないだろうか……それをこれ見よがしな殺意と憎悪を漂わせて近づいてくると言う事は、背中の束……というより、むしろ目を丸くして呆気にとられている、エックスとゼロの方に原因を疑いたくなる。

 まあ、あえて聞かずとも、アクセルにとっては自身の嫌な予感が最悪な形で的中してしまったことは間違いないのだが、それでもあえて問わずにはいられなかった。

 

「ねえエックス、ゼロ……いや、今のあんたらは『偽者』かな?」

「「!?」」

 

 エックスとゼロが怪訝なまなざしを向けてくる。 アクセルには勿論、目の前にいるイレギュラーハンター2人が、紛れもない本人であることは見抜いている。 千冬や箒達が疑った偽者説など、先入観が齎す勘違いに過ぎないのだが、あえてアクセルはそれに乗っかるとした。 何故なら彼らのやらかしたお騒がせを考えれば、見方によってはそれはある意味で間違いではないのだから。

 

「強盗やらかした足で、しかも飛行機をIS学園に落としてくれるなんて、随分とやってくれるじゃない……」

「殺ス……殺ス……」

 

 地面に血の滴る跡を残しながら、アクセルの隣まで来た一夏。 束の目は見開かれ、完全に青ざめていた。

 

「いやぁ!! お兄さん許して!! ごめんなさい許してください何でもしますからッ!!」

 

 必死で命乞いする束に対し、アクセルはいったん彼女を背中で押して強引に剥がすと、素早く彼女に振り向いて両肩に手を置く。

 

「ひぃ!!」

「本当に何でもするんだね?」

 

 束に対し、アクセルは怒気の滲み出た顔を近づけて返事を迫る。 束は涙目になりながら2度も頷いた。 それを肯定の返事と見ると、アクセルは打って変わって天使のような優しげな笑みを浮かべた。

 

「待っててね。 今全てを終わらせるから」

 

 そう言ってアクセルは、彼女を優しく押して千冬達に預けた。

 

「もう一人任せちゃってごめんね織村センセ。 でも友達でしょ? ちょっとここの馬鹿2人に落とし前つけるから、その人をお願い!」

「お、おいアクセル!?」

「大丈夫、キッチリ落とし前はつけるから!」

 

 箒と千冬の声を無視し、再度エックス達に向き合うアクセル。 彼らにとっての年貢の納め時がやってきたようだ。




 試験的に新機能のフォント使ってみた……やばい、これ目茶苦茶面白いです!w


 ……執筆カロリー増えそう(確信)
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