ロックマンZAX3 亡国機業より愛をこめて   作:Easatoshi

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第3話

 エックス達が旅立って6日目、流石に人の通りも減り始めた大阪が道頓堀の夜。 店の外観にあしらわれたネオン管が夜の街を、まばらにいる仕事帰りのサラリーマンや酔った観光客を照らす。

 そんな街並みの中で、とあるラーメン屋から扉を開けてエックスとゼロが姿を現した。 2人して足取りはしっかりしているが、座った目つきに頬を紅潮させている。

 

「酒を飲んだ後の〆はラーメンに限るな」

「ゲームの収録の後にいつも寄ってたのを思い出すよ」

 

 酒を嗜み〆の食事に舌鼓を打ち、高揚した気分で宿泊先のホテルへと来た道を戻る。

 この大阪にやって来てからと言うものの、随分と開発は進んだが当時と雰囲気だけは変わらない街並みに、2人は収録のためにカプコン社を度々訪れていた在りし日に思いを馳せながら、観光や飲み食いをして大いに楽しんでいた。

 最初は難色を示していたゼロも、やはり気心の知れた相手と言う事もあって、当初思い描いていた春爛漫な一人旅でなくとも十分満喫していた。

 

「しかしまあ、大阪に居られるのも明日が最後か」

「明後日の夕方にはアメリカ帰りだもんな……楽しい時間も早いもんだよ」

「一部穏やかじゃない場面もあったがな」

「そうだね。 相変わらずな町の様子だったけど、でも俺は満足だったよ?」

「フッ、まあな」

 

 旅の途中通りがかった、重火器が飛び交うジャパニーズヤクザ同士の抗争に巻き込まれ、彼らを殲滅した上その親玉らしき人物がセプクスーサイドを果たしたのを思い返していた。

 読んで字のごとく自らの首を折る見事なまでのハラキリに、エックスとゼロは敵ながら身をもって責任を取る誇り高き精神に感服していた。

 ちょっとしたハプニングもあったが、何一つ不満のない懐かしき旅があと少しで終わってしまう事に、エックスはほんの少し寂しげであった。

 

 皆が帰路につき、人気の引いた歓楽街を後にエックス達が夜風を感じながら歩いていた時であった。

 

「……ん?」

「どうしたゼロ?」

 

 ゼロが何かに気付き足を止めると、仄かに街灯に照らされた夜道の奥の闇を指さした。

 

「向こうで誰かが走った気がするぜ?」

「え? 走ったかどうかはともかく、人ぐらいまだいてもおかしくないんじゃ?」

 

 突如として走っていく誰かの影を感じ取ったと言うゼロに、エックスは違和感を覚えた。

 彼自身が言う様に、酒の場を後にした誰かの影がたまたま目に入っただけではないのかと思っていた。

 だとすれば特に気に留めるほどの物ではない筈だが、しかしゼロはその上で『走っていた』という部分を強調する。

 いずれにせよ気にし過ぎではないかと思われたが――――

 

 

 

 

 

 ――――間髪入れずに聞こえてきた途切れる様に短い男の悲鳴と、闇の先にかすかに見える建物の間から、誰かが勢いよく押し出されるように倒れ込む瞬間を目撃する。

 

「「何だ!?」」

 

 同時に声を上げた直後、複数名の足音が何者かの押し出された路地裏に駆け込んでいく。 倒れた誰かを介抱する者は一人もいない。

 夜の歓楽街のもつもう一つの側面、危険な匂いをハンターとして培われた直感が2人を突き動かした。

 素早く倒れ込んだ誰かの元へ駆け寄る。 そこには髪を金に染め上げ、耳元にピアスと顔に奇妙な模様のタトゥーを彫り込んだ、見るからにガラの悪そうなジャンパー姿のチンピラが仰向けで倒れ込んでいた。 

 

「うう……あの(アマ)ぁ、何て馬鹿力してんだ……うぐぐ」

 

 薄暗い中でもはっきりと分かるぐらい、顔中に痣を作り痛めつけられたであろう様子を隠そうともせず。

 

「おい、何の騒ぎだ」

 

 ゼロが膝を屈めてチンピラに声をかける。 ただ事でない雰囲気からこちらも威圧感を漂わせながら。

 男はゼロの物言いに感が触ったのか、怪我をした所を見られて安っぽいプライドが刺激されたか、いかにもな態度をゼロに向ける。

 

 

「あ!? てめぇには関係ねぇよ! 殺すぞ!?」

「ほう? お前にイレギュラーハンターを殺れるか?」

 

 メンチをきる相手に対し、相応の態度を言わんばかりに殺気をこめて睨みつけるゼロ。

 すると相手は公僕の上に歴戦の戦士であるゼロに気圧されたのか、一転して恐怖に支配される。

 

「ハ、ハンター!? ち、違う!! 俺は悪くねぇ!!」

「……何の話だ?」

「女を追ったのは頼まれたからやっただけなんだッ!! し、知らねぇッ!!」

 

 チンピラは怪我をしているのが嘘のように素早く立ち上がると、そのまま脱兎のごとく夜の闇へと走っていく。

 

「待て!!」

 

 エックスも後を追おうとするが、それはゼロが横に差し出した手によって制止された。 チンピラの駆け足の音はすぐに消えてなくなった。

 

「放っておけ! それより誰かを追ってるって言ってたぞ!」

「!!」

「こっちだエックス! 行くぜ!!」

 

 逃げ出した輩は捨て置き、ネオンの輝きはおろか月の光さえ入り込む隙間もない、大きな悪意の蠢く薄汚い路地裏にゼロは誘われ、エックスも相方の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悔やんでも悔やみきれぬ忸怩たる思いに苛立ちながら、先の見えにくい路地裏を女性は走っていた。

 息を切らしながら走る彼女の体だが、所々ほつれて擦り切れた跡のある青と白のドレスに身を包み、肌の見える両腕と胸周りには薄ら傷跡と小さな痣が転々と、整った顔立ちと長い髪の頭には機械で出来ているらしい兎の耳が片方折れかかっていた。

 

「待てコラ! 逃げんな!」

 

 後ろからガラの悪い罵声を浴びせながら追ってくる何人もの輩。 かれこれ夕暮れ時から何時間も追いかけられ、いい加減しつこい事この上ない。

 ほんの一人二人程度なら、アスリート顔負けなオーバースペックな膂力でいなす事など容易いが、何人倒しても子虫のように湧いて出ては執拗に追いかけられるのだから、いい加減こちらも体力の限界に近い。

 

 とんでもない失態であった。 ある事から険悪になっていた女友達と仲直りの証として、何時も連れている相方を先に東京へ帰して呑みに行ったのも束の間。 酒の場で羽目を外して酔いつぶれた結果友人をかえって怒らせてしまい、逃げ回った果てに悪酔いして倒れ込んだ所をひったくりに逢い、手持ちの金や道具どころか連絡手段さえ失ってしまった。

 挙句の果てには空腹でふらつき回った結果チンピラとぶつかって絡まれてしまい、腹いせに叩きのめしてやったらこの様であった。

 

「逃げんのかよ!! さっさと俺らに捕まれや!!」

「――誰が捕まるかッ!! ああマジでムカつくなぁ!!」

 

 ならず者共の煽りが煩わしくてたまらない。 心底腹が立つ。 好き勝手言われながらも結局逃げる事しかできない今の現状がとにかく気に食わない!

 女性は顔をしかめながら、今置かれている自身の現状を呪った。 なぜ自分がこんな凡夫共に、烏合の衆に背中を見せて逃げなければならないのか。

 

「この束さんがなんで逃げなきゃなんないのッ!?」 

 

 当代きっての天才科学者『篠ノ之 束(しののの たばね)』が、このような醜態を見せるなどあってはならないのに!

 

 散らばった廃材に足を取られぬよう掻い潜りながら必死で逃げていたが、それは遂に終わりを迎えた。 女性……束は路地裏にあって月の光が差し込む開けた場所に入り込んだ。

 

「あ……」

 

 いや、袋小路にはまったと言うべきであろうか。 所々コンクリートの剥がれと隙間からの雑草の伸びっ放しなその空き地は、建物同士の隙間もあるにはあるがとても通り抜けられそうにない、完全な行き止まりであった。

 自分から逃げ場のない場所に逃げ込んでしまい、思わず口から自然と落胆の声が漏れる。

 そして後ろからやってくる重なる足音に、体は自然と空地の奥の壁へと足を進め、壁を背にしてもたれ掛かるように来た道を振り返る。

 乱れた呼吸を整えていると次々とやってくる、ガラの悪い連中が。

 

「へっへっへ……もう逃げられねぇぞ」

 

 やって来るなり半円を描くように束を囲い込む不埒な輩。 軽く見積もっても8人近くいるが、あるものはチェーンを手に、あるものはバットを、またある者はナイフを舌なめずりしながら束を睨みつけていた。

 全員男で内半数は、束にとってはある意味で人生にケチをつけてくれた忌々しい存在。

 

「……レプリロイド」

 

 真正面に立っている灰色のアーマー姿の男のいやらしい目つきに、束も鋭い目つきで睨み返す。

 今まで襲ってきてたこのチンピラ連中も人間だけならどうにかなっていた。 しかし膂力の優れたレプリロイドまでもが一緒に襲い掛かってきた事が、束を追い詰める主な要因となっていた。

 1体程度なら普通に倒せなくもないが、こうも徒党を組まれては流石に人並み外れた能力を持つ自分でもたまったものではない。 対するレプリロイドは状況を見越してか、疲労困憊ながらも気丈に振る舞う束を嘲笑った。 

 

「随分手こずらせてくれたなぁ。 だがもう終わりだぜ、8人に勝てる訳ねぇだろ」

「……ハンッ! レプリロイド(ブリキ人形)の癖に生身の女に興味があるって訳? 生憎だね……この束さんのわがままボディはそう安いものじゃないんだよ!」

「は? 馬鹿かお前は?」

 

 精一杯の強がりを鼻で笑うレプリロイドに、束は小さく舌打ちする。

 

「中にはそういう特殊な奴もいるがよ、俺の目的はこいつだ……」

 

 レプリロイドは背中のラックから、手の平より少し大きいレンズのついた黒い機械を取り出した。 あれはハンディカメラだ。

 スイッチを入れて録画を始めると、カメラのレンズを向けてこちらを撮り始める。

 

「ちょっとした小遣い稼ぎさ。 隣の人間のダチと遊んでもらうのを撮らせてもらうとよ、まあわりかし良い金になるんだなこれが。 なあお前ら?」

 

 レプリロイドは横隣りのワル共に目配りをする。 隣にいた人間の連中は「違いねぇ」と束の全身にくまなく目線をやりながら下衆な笑いを浮かべた。

 どうやら襲い掛かる直前から撮影し、自分達がこれから一人の女を寄ってたかって襲う瞬間を、余す事無く作品に仕上げてしまおうと言う魂胆らしい。

 冗談じゃない! 自分はこんな悪趣味な相手に純潔をくれてやる気はない! 下衆な連中の嫌らしい視線に束は露骨に嫌悪感を露にする。

 何とかして抵抗を試みたい所だが、生憎こちらはもう体力の限界であった。 飲まず食わずで休む間もなく走り回り、少なくない怪我も負わされている。

 

 詰んだ状況の中束の心に絶望が浮かび上がり、ふとカメラを構えたままのレプリロイドを見ながら思い返す。

 科学者である束だが、科学の結晶であるレプリロイドに対しては好意的ではない。

 彼女は間違いなく天才であり成果は確かに出している。 しかしそれが彼女が夢見たような遍く世間への広がりを見せたかと言えばそうではなく、それらを妨げたのが他でもないレプリロイドであったからだ。

 厳密にはレプリロイドが占めていたニッチに入り込めなかったと言うのが正しいが、彼女にとっては人生をかけた成果がたいして認められず、あまつさえこうして当のレプリロイドに犯罪に巻き込まれそうにもなれば、悪感情を抱くのも無理もない話であった。

 

「(ああ、そう言えば束さんからひったくったのもレプリロイドだっけ……)」

 

 泥酔していた最中に辛うじて覚えていた鞄を盗られた記憶、あれもコートを着たレプリロイドの仕業だったか。

 考えて見れば人生の大半をレプリロイドの存在に振り回されていた。 世が世なら天衣無縫の振る舞いだって出来たであろうに、散々人様の人生に汚い栞を挟み込んできたレプリロイド(ブリキ人形)に、束はせめて一言でも悪態をついてやりたくなった。

 薄ら笑いを浮かべながら、レプリロイド共の犯罪者にふさわしい蔑称を。

 

「そろそろ終わりにしようや。 一斉にかかりゃこの女も終わりだろう」

「精々楽しませてもらうぜ……行くぞお前らぁ!

 

 抑えの効かなくなったチンピラ共は滾る欲望をぶつけるべく、見た目通りのか弱い女性に過ぎない束に一斉に飛び掛かろうとした。

 

「ははっ……この、ばけもの(イレギュラー)

 

 チェックメイトだ。 束も流石に観念し、いっそ楽になろうと堪えていた意識を手放そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ!!」

 

「その辺にしておけよ。 イレギュラー」

 

 

 

 

 悪党共が失意の束に飛び掛かろうと一歩足を踏み出したと同時だった。 彼らの背後から2人の男の声がかかる。

 突然の来訪者に気を失いそうだった束もこれには反応し、一斉に振り返るチンピラ達の間からその姿を確認する。

 

 狭い路地の前に並んで立つ、蒼い月の光に照らされる青と赤のレプリロイドがそこにいた。

 

「全員動くな! イレギュラーハンターだ!」

「ったく、この町のガラの悪さは相変わらずみてぇだな」

 

 後ろから長い金髪を下した赤いレプリロイドが、振り返ったチンピラ達の間からこちらを覗き見て、彼の青い瞳とこちらとで目が合った。

 

「一人の女を寄って集って甚振るとはな」

「大人しく投降するんだ。 抵抗するなら容赦はしない!」

「っはあ? ったった2人で俺達とやんのかぁ?」

 

 チンピラ達は大いに笑った。 彼らは自分達をイレギュラーハンターと名乗ったようだが、束が見た所特に応援らしき姿も無くたった2人の上、丸腰で武器を持っているような様子は見当たらない。

 

「あのねぇお巡りさん? 俺達はこの姉ちゃんと一緒に楽しい事しようとしてるんだよ! 邪魔しないでくれる?」

「折角いい画が撮れそうなんだよ。 邪魔するんだったらサツだって容赦しねぇぞぉ?」

 

 やって来た正義の味方に一瞬驚きはしたものの、持つべき物を持たずのこのことやってきた2人を、チンピラ達は完全に舐めきっていた。

 いきり立つチンピラに対し2人はいずれも怯んだ様子は無く、青い方はむしろ鋭い視線で睨みつけ、赤い方は隣と同じような目つきながら、チンピラレプリロイドのビデオカメラと……さっきからちらちらとこちらを見ているようだった。

 

「(イレギュラーハンター(公僕)!? これはまずいかもッ!)」

 

 束は大いに焦った。 イレギュラーハンターとは、ご存知の通りイレギュラーに対するレプリロイド達を中心とした警察組織である。

 向こうは幸いこちらの身の上に気付いておらず、純粋に悪党を逮捕して保護するつもりのようだが、しかし今の自分にしてみれば助けでもなんでもない。

 何故なら自分は鞄を盗まれて途方に暮れた今までの間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()身の上なのだから。

 万全の状態ならいざ知らず、疲労困憊の上に袋小路に嵌った今の状態では――――

 

「楽しい撮影だと……だったら俺もその仲間に入れてもらおうか」

「ハッ、いい度胸してんじゃねぇかコラ」

 

 束が現れたハンター二名に気を取られている内に、チンピラの一人が赤いハンターに対しナイフをちらつかせて威嚇する。 しかし赤いのは目を閉じて呆れたように首を横に振る。

 

「違う、そっちじゃねぇ」

「あ? 喧嘩売っといて今更――――」

「楽しい事ヤるんだったら、俺にもビンビン♂のバスター撃たせろッ!!」

 

 赤いのは閉じた目を勢いよく見開き叫びながら、立てた右手の親指を突き立てる! ――――自身のそそり立つ白いパンツに。

 

 

「「「――――は?」」」

 

 今、何て言ったか? 得意げに笑みを浮かべる赤いのに対し、束自身も含めるこの場にいた全員が言葉を失った。

 見るからにおっきしたそこをアピールしながらの俺にも撃たせろと言う物言い。 何だそれは、つまり助けに来た訳では無いと言う事か?

 そっちの意味で乱入させろとのたまう赤いのに皆が絶句する中、隣にいた青いのは真顔になっていた。

 

 そして相方の方を振り向くなり瞬きする間もなく、既に赤いのの頭に腕を回して首を捻っていた。

 

 

ゴキリッ☆

 

 

 重々しくも乾いた音だけが、ワンテンポ遅れてやって来た。

 自分も混ぜろと言う赤いのの爆弾発言からの、瞬時の仲間割れに今度は声すら上げられなかった。

 首を90度横に寝かせる、あり得ない方向へ首を曲げられた赤いのの口から泡が出るが、例えレプリロイドでも機能停止を免れぬ致命傷を与えた、当の青いのは腕を離しにこやかに笑った。

 

「駄目じゃないかゼロ。 冗談は時と場合を弁えるべきだよ?」

「ガ、ガボッ! 済まんエックス! だがセクシー美女を前にそそられないのは男としてどうかと――――OK分かったから指を鳴らすな!

 

 しかし目は笑っていないエックスと呼ばれた青いハンターが、赤いの……ゼロの方は謝罪にもなっていない開き直りに対しもう一撃を浴びせようと指を鳴らし始めると、突き出した両手を横に振って慌てて取り下げる。

 

「お、おい何だありゃ……仲間割れしやがった」

「っていうか今の動きは何だ? 全く見えなかったぞ」

 

 余りに容赦ないエックスの制裁に、余裕を決め込んでいたチンピラ達が恐慌に陥りそうになっている。

 それは理由は違えど様子を見ていた束も同じであった。

 

「(エックス……ゼロ……!?)」

 

 束でさえ捉える事の出来なかった瞬時の動きに驚きを隠せなかったのは事実だが、それ以上に彼ら2人の名前に驚愕していた。

 普段他人に関心を寄せない彼女をしても知っている、何度も引き起こされたイレギュラーの騒乱を解決してきた、3人いるあのイレギュラーハンター達の名前。

 

「(どう言う事なの!? 聞いてた話と全然違う!?)」

 

 当たり前のように捻られた首を両手で戻すゼロと、改めてチンピラ共に対峙する笑顔の怖いエックスに対し、束も否応なしに心拍数が上がる。

 彼女が知っているのはゲームにもなった、彼らイレギュラーハンターのヒーローとしての姿。 それが出くわすなりセクハラ発言をかまし、対して首をへし折ると言う容赦のない行動を見せつけられ、余りにイメージとかけ離れた姿に大混乱であった。

 せめて普通のイレギュラーハンターであったのなら、このままチンピラ達と乱闘にでもなって逃げるチャンスを見出せたかもしれないが、一方でチンピラ達は既に腰が引けそうになっているようだった。

 

「お、落ち着けてめぇら! あんなの虚勢だ! ハッタリに決まってんだよ!」

 

 カメラを構えているレプリロイドの声がわずかに震えている。 この男なりに虚勢を張っていると言う事がひしひしと伝わって来る。

 ここでエックスの恐ろしさに素直になっていれば良かったのだが、安っぽく必死でお高く止まろうとするプライドが邪魔をする。

 

「おいどうした!? 来いよ! てめえなんかにビビるとでも思ってんのかよ!!」

 

 ……それだけに、彼はこの先の命運を分ける致命的なミスを犯してしまう。

 

 

 

 

「だっせぇブルマなんか履いてんじゃねぇよ!」

 

 

 

 

 げに恐ろしき(イレギュラー)を煽る禁句(タブー)を口にしてしまう、最悪な失敗を。

 

 




チンピラレプリロイド、無事死亡。



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