そして、またキリンが酷い目にあいます。キリン嫌いじゃないですよ?
キリンを狩ろうと思ったとき、運良く村長の緊急クエストに、キリン討伐のクエストが入った。
「キリンのクエストって、安定してないんですね?」
「幻のモンスターって言われてるくらいだから、中々姿を見せないからだと思うよ。」
「その割には、前の時は結構出てきてたみたいですね。」
「そりゃ、イビルジョーのせいだ。」
あの時の密林のキリンによる人里の畑や配送中の野菜荒しは、密林に迷い込んできたイビルジョーに餌を奪われてしまったので仕方なくやった可能性が高いのだ。
「それにしても、なんでイビルジョーみたいな、この地方にいないモンスターが来たんですかね?」
「イビルジョーは、環境適応能力が極めて高いらしい。あの食欲だから、そうじゃないと生きられないんだろう。」
「つまり、イビルジョーは、どこにでも現れる可能性があるってことね。」
「イビルジョーがよく目撃される地域じゃ、クエスト中に乱入してくることが多いらしい。」
「うわ…、それ嫌ですね。」
「確か…、他のモンスターを呼び寄せる能力を持ったモンスターもいて、そいつが呼び寄せることもあるって聞いたな。」
「そんなモンスターが?」
「でも、それって、自分が食べられる可能性があるんじゃない?」
「……聞いた話だと、イビルジョーを呼んだら、ソイツは、食われるらしい。」
「それって自動自得じゃないかしら?」
「ハンターに狩られて死ぬよりはマシってことかな?」
「そこまでして……。」
モンスター達からしてみれば、ハンターは害悪でしかないのだろう。ハンターを見つけると率先して攻撃してくる理由がそれならなんとなく分かる。
やられる前にやれとは、よく言ったものだ。
「まあ、とにかく、前イビルジョーの乱入でダメになったクエストだから、今度こそやってみよう。」
「今度は…、出ないだろうな…?」
「出たら、逃げるしかない。」
「うわぁ。」
イビルジョーの乱入が再び起こる可能性はゼロではないのだ。
イビルジョーが三度現れる可能性を危惧しつつ、キリン討伐のための準備を整えた。
***
二度あることは三度ある。……誰が言った?
「どーすんだよぉ…。」
「シッ! 静かに。」
大岩の影に隠れた三人。
セエが、ソーッと様子をうかがう。
イビルジョーとキリンが今、対決している。
イビルジョーの大きさは、見たところ最初に見た個体よりはやや小さく見えるが、それでもキリンと比べるとかなりの巨体だ。
キリンが雷と落としまくる。
しかしイビルジョーは、まったく意に介さず、大口を開けてキリンに迫る。
キリンは、俊敏な動きでそれを避け、再び雷を放つ。
イビルジョーは、クルリっと方向転換し、足を踏ん張ると、口から赤黒いブレスを吐いた。
キリンが素早くそれを避けると……。
「わあああああああああ!」
三人が隠れていた岩に当たり、砕けてしまって三人は慌ててその場から離れてしまった。その結果、キリンとイビルジョーに存在がバレてしまった。
キリンがこちらに気を取られた瞬間、凄まじいスピードで近寄ったイビルジョーの大口がキリンを捕えた。
暴れて雷を闇雲に放つキリン。だがイビルジョーは雷などお構いなしで、地面にキリンを押さえつけて首を捻る。強靱な顎力とイビルジョーの太すぎる首の力により、地面に頭を擦りつけられた拍子に、キリンの首があり得ない方向に曲がった。
動かなくなったキリンを、イビルジョーは、貪り食った。
「う…。」
ルイズがその様を見て吐き気を感じた。
「逃げるぞ!」
セエが叫び踵を返したとき、二人はハッとしてセエの後ろに続いて走った。
背後で、イビルジョーが咆吼をあげ、追ってきた。
イビルジョーは、見かけによらず速い。
キャンプ地まで逃げる途中、サイトがこけた。
「サイト!」
「くっ!」
背後から迫るイビルジョーがこけたサイトを食おうと大口を開けた。
ルイズが咄嗟にライトボウガンを構えるが、間に合わない。
セエが走り、サイトの身体を蹴って横へ転がした。
その直後、セエの身体がイビルジョーの口に捕われた。
「ぐっ!」
「セエさん!」
メキメキ、ギシギシとイビルジョーの歯が身体に食い込んでくる。
セエを捕えたまま、イビルジョーは、頭を振り上げ、そのまま地面に叩き付けた。
「がっ、ハッ…!!」
叩き付けられ、骨が折れる感触と共に、セエは吐血した。
「この野郎! セエさんを離しやがれ!」
サイトが双剣を抜いて、イビルジョーに斬りかかり、ルイズもライトボウガンを構えて撃った。
セエは、血で溺れかけながら道具袋から、何かを取り出したが、イビルジョーが首を動かしたため、そのアイテムが地面に落ちて転がった。
「さ…い……と…、そ…れ…を……。」
「セエさん! セエさん!」
「サイト、そのアイテムを使うのよ!」
「えっ?」
サイトは、自分の足の近くに転がってきたそれを拾った。
しかし、拾い上げて、顔をしかめる。
その時、再びイビルジョーが頭を振り上げた。セエにトドメを刺す気だと気づいたサイトは、望みを託して、そのアイテムをイビルジョーに投げつけた。
途端、凄まじい悪臭が広がり、イビルジョーは、首を振り回しながら口を開けてセエを離した。
「う…ぐぁ…。」
「セエさん!」
セエは、血を流しながら、震える手で道具袋を探り、回復薬グレートを取り出して、飲み込んだ。
途端、傷が一気に塞がり、立ち上がった。
イビルジョーは、まだ悶えている。
その隙に、三人は走り、安全なキャンプ地まで逃げ込んだ。
「……さすがに…、死ぬって思った。」
「あの…セエさん…。」
「なに?」
「あのアイテムって…。」
「ああ…、こやし玉だ。」
イビルジョー攻略のアイテムとして、ギルドから教えてもらっていた物を、念のため用意していたのだ。
「万が一、イビルジョーの口に捕まった時に有効だって聞いたから。」
「……。」
するとルイズが泣き出した。
「ルイズ? どうした、どこか痛いのか?」
「違う…。セエさんが無事でよかった…。」
「……ごめん。」
緊張感が解けて、涙を零すルイズの頭を、セエが撫でた。
「…うっ! 臭っ!」
「セエさん、臭いっす!」
「あ…。」
至近距離でイビルジョーに投げつけられたこやし玉の匂いが、自分にも染みついてしまっていたのだった。
自分の身体を匂って、「うわっ、臭っ!」っと鼻を曲げるセエ。
ついでに、散布されてしまったこやし玉の匂いは、サイトとルイズにもついていて、三人は笑い合った。
その後、迎えの者達に消臭玉を投げつけられ、匂いは取れたのだった。
***
村に帰ると、すぐにギルドと村長に、イビルジョーがまた現れたことを伝えた。
「ううむ…。こう何度も現れるということは、どこかで繁殖しておる可能性が高いのう。」
「そうなれば、遠征費を考えると、中央からの救援は難しくなりますな。」
「うむ…。」
村長は、その後、ギルドの人間達と話し合い…。そして。
「セエよ。」
「はい。」
「お主…。いや、お主らじゃな。」
「はい?」
「イビルジョーの討伐をせぬか?」
「えっ!?」
それを聞いたセエは驚き、サイトもルイズ驚いて顔を見合わせた。
「イビルジョーは、確かに凶悪な竜じゃが、勝てぬ相手ではない。中央のハンターが勝てるのじゃ。お主らが勝てぬ道理はない。」
「しかし…。自分は、危うく食われて死ぬところでした。」
「じゃが、うまくこやし玉を使ったのじゃろう?」
「サイトに使ってもらいました。」
「攻略法さえ分かれば、勝つことは難しくはないはずじゃ。」
「ですが…。」
「我々からも頼む。」
するとギルドの人間達から頭を下げられた。
セエは、考え……そして。
「分かりました。」
「セエさん…。」
「ですが、一人でやらせていただきます。」
「! セエさん!?」
「それは…、これまで通りソロでやる気か。」
「はい。」
「俺達、そんな役に立ちませんか!?」
「いや、違う…。俺は…、二人をアイツ(イビルジョー)に食わせたくないんだ。」
「自分の身くらい自分で守れるわ!」
「ルイズ…。」
「俺だってやりますよ!」
「サイト…。」
「二人もこう言っておる。まだまだ半人前じゃが、お主の力となるじゃろう。」
「…それでいいの?」
「抜け駆けなんてしないでくださいよ。俺だって、アイツ(イビルジョー)に負けてられません!」
「私だって!」
「二人とも…。」
セエは、少し涙ぐんだ。
「では、決まりのようじゃな。我らはこれより、イビルジョーの討伐のクエストを発足する。準備が出来たら、来なさい。」
「はい!」
三人は、村長の方を向き、力強く返事をした。
イビルジョーの出現頻度が多くなっているのは、近くで繁殖しているから?っということにしました。
なので、この地方のハンター達は、必然的にイビルジョーとの戦いをしなければならなくなりました。
イビルジョーとは、まだ遭遇したことないので、動画を参考にします。
あと、三人による戦いになるので、頑張って戦闘書こうと思います。