夏の暑さが少し残っていた9月の晴れの日,僕はある場所に向かっていた。
日差しが少し強かったため僕は右手を頭の上に乗せ、気だるげに歩いていた。そしてそんな僕の周りには登校中の女子生徒達が僕の方を見て,耳打ちしていた。
無理もない、普段自分達の着ている制服を男が来ているのだから,そんな好奇な視線を受けながら歩き続け立ち止まる。
見上げるとそこには大きな建物があった。 その中から女子生徒達の活気溢れる笑い声、挨拶などが聞こえてきた。
「ここが音ノ木坂学院」
僕は一人,そう呟き学校の門をくぐり校舎に入り,すぐに理事長室に向かった。
理事長室のドアをノックして、向こうから声がかかりドアを開ける。
部屋に入るとそこにはジャージを着ている少しサバサバしている女性教員と銀髪の若々しい女性が椅子に腰掛けていた。
「初めまして、本日から転入生としてお世話になります。村雨悠人と申します。よろしくお願い致します」
自己紹介をして一礼をする。
「初めまして、村雨悠人君。私はこの音ノ木坂学院の理事長を務めている南と申します。そしてこちらが貴方の担任を務める神沢 先生よ」
「神沢 直美だ。よろしくな」
サバサバした女性教員は僕に近づき,共に握手を交わした。
理事長は微笑ましそうにこちらを見ながら口を開く。
「まさか2学期に男子生徒が入るなんて思っても見なかったわ」
「急な話で申し訳ありません」
「良いのよ。それと村雨君、いくらうちの生徒が可愛い子が多いからって淫らなことしちゃ駄目よ」
理事長が悪戯が笑みを僕に向ける。
「いやいやしませんよ。そんな事」
僕は彼女の発言に笑いながら返す。 そんな目的で僕は来たんじゃないのに・・・
理事長との話が終わり、神沢先生と共に教室に向かった。
教室の前に着くと、中から多くの女子生徒達の声が聞こえてた。どうやら僕の話らしい。
「なーに,ただの自己紹介だ。楽にな」
緊張している風に見えたのか神沢先生は僕の肩を一度優しく叩いて教室の扉を開けた。
「あーい、全員注目。今日はみんなも知っている通り転校生がきたぞー,それじゃあ入ってきてくれ」
まだ少し騒つく教室に僕は足を踏み入れて教卓の横まで歩く。
「えっ、カッコいい」「綺麗な顔〜」
教卓について生徒達の方を見ている時に色々な声が聞こえてきた。
そして、僕の目線は一点に集中した。見つけたのだ,僕がこの学園に来た目的を・・・
黒く艶やかな髪,端正な顔立ち,凛とした雰囲気な彼女を・・・
世間から見れば間違いなく美少女である彼女も僕からすれば忌むべき相手でしかない。
そんなことを思いながら彼女を見ていると一瞬彼女と目が合い、彼女はゆっくりと視線を逸らした。
少し苛立ちを覚えながらも、これ以上見ると怪しまれる可能性があるため、教室の中心に視線を向けて口を開く。
「初めまして、村雨悠人と申します。皆さんどうかよろしくお願いします」
自己紹介をして頭を下げると、教室全体に生徒達の歓迎の拍手が響く。
その時の僕の表情はさぞ狂気的な笑みを浮かべていた事だろう。歓迎の拍手ではなくこの学校に来た理由に出会えた事に・・・
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