10月が過ぎると、少し肌寒くなってきて、セーターを着ている生徒も増えてきた。
僕は教室で本屋で購入した小説を読んでいた。こうして小説を読んでいる時が一番落ち着く。
文章に書いてある事を脳内の中にある映写機が映し出し、想像と挿し絵の違いを楽しんだりもしている。
風の噂で聞いたがμ'sはハロウィンイベンドで人気を博したとか。
次はとうとう2次予選、これでラブライブ 出場が決定するのだから、メンバー達はより練習に励んでいるに違いない。
僕の席の横でいつも通り穂乃果、ことり、園田海未の楽しそうな話し声が聞こえる。
たまに園田海未が穂乃果を嗜める発言も耳に入ってくる。
すると、僕の横に誰かの近づく気配を感じて本から視線を横にそらすと園田海未が立っていた。
「おはようございます。悠人」
「ああ、おはようございます。園田さん」
彼女の挨拶に僕は他人行儀で返す。僕と彼女は今はただのクラスメイト、μ'sの手伝いをしていた頃とは違う。
学校が終わり僕は自分の家で一人、教室で読んでいた小説を読んでいると空腹感を感じて本を置いて、冷蔵庫に向かう。
冷蔵庫を開けると、食材がないことに気付き
眉間に手をあてる。
夜になると部屋にいても肌寒く感じたのでパーカーを一枚来て外に出る事にした。
アパートの階段を降りて、一人近くのスーパーまで買い物に向かう。
店内に入ると、夕飯の食事の買い出しか子連れの女性達が店内に多数確認できた。
東京に来た時、都会でスーパーを見つけた時は魚、野菜、肉、などなんでもある事に目を丸くしたのを覚えている。
そんなことを思い出しながら買い物かごに食材を入れていき、野菜コーナーに向かいレタスに手をつけようとした時、誰かの手が当たる。
「あっ、すみません」
「いえ、こちらこそ申し訳ありません」
相手の方を見た時、そこには東條先輩が立っていた。
「悠人君・・・」
「すみませんでした。東條先輩、失礼します」
その場からすぐに立ち去ろうと足を前に出した時に後ろから東條先輩が僕を呼んだ。
「悠人君・・・少し話さへんか?」
「・・・分かりました」
買い物を済ました僕達は公園のベンチに座った。暗くなり公園の灯りがよく目立っていて、僕達以外、公園にいる人がいないため弱々しく吹く風の音がよく聞こえるほど静寂に包まれていた。
「それで話とはどういったことでしょうか?」
「自分でも分かってるやろ?」
おそらく屋上での一件の事だろう。
「屋上での件なら、僕の本音はあの時に話した事で間違い無いですよ」
「本当にそうやろか?」
「はい?」
「ウチはあれが悠人君の本音やとは思ってない。多分、何か理由があってそれで仕方なく言った言葉やと思うんよ。
たしかに悠人君はいっつも手伝える事なくなったら壁にもたれて一人で本読んでるけど、
私達の事、ちゃんと考えてくれてるってのは分かるんよ」
「そんなんじゃないですよ。手作っていたのは高坂さんに言われたからどんなものか気になり、手伝っただけですよ」
「悠人君、なんで辞めたんか教えてくれへんか? みんなの前で言ったことは嘘やってのはわかってる。嘘は昔から人の嘘を見抜くのは得意なんよ」
東條先輩は真っ直ぐな目で僕の目を捉えてそう言った。 そういえば屋上でμ'sを侮辱した時、悲しそうな顔を浮かべるメンバー達の中で彼女だけは僕の事を今と同じような目で見ていた。
「仮に僕を嘘を言ったとしても何になると言うんですか? 今となっては意味のないことでしょうか」
「そうかもしれん。でもな悠人君はあの日々をμ'sのみんなと関わってて楽しそうやった。
初めて君と会ったとき目を見た時、分かってん。この子は孤独やったんやろなって・・・」
この時、東條先輩に心の虚を突かれたのか僕は少し動揺を覚えた。それ後に虚から怒りマグマが出てくる感覚がした。
「だから、ウチに話してほしい、そしたらμ'sのみんなもー」
「貴女に! 僕の分かるって言うんですか!?
μ's、μ'sってそんなにアレが大切か!?
大切なモノなんていつかは無くなるんだ。音もなく終わりが来るんだ! 」
僕は彼女の言葉を遮り、心から噴き出たマグマを発散した。
東條先輩は僕のいきなりの大声に驚いて、僕の発言を聞いたあと、少し悲しそうな顔をした。
「すみません。大声出して・・・話はそれだけですよね? もう帰りますね」
僕はベンチに置いてあったレジ袋を取り、早急に立ち去った。
レジ袋を取る際に、東條先輩の顔が視界に入った時、目が少し潤んでいた。
なんだその目は・・・
僕は暗闇を所々、照らす街灯を頼りに家への道を歩いた。
歩いている際、公園での事が脳裏をよぎり、その度に拳を握りしめる。
忘れようと決心する為に、故郷に戻ったのに
その後にこの出来事だ。
どこまでも邪魔だ・・・いや、僕の心の弱さが原因だ。
だがこの苦悩、懊悩もあと少しで終わる。
それから何もないまま予選当日を迎えた。その日は大雪と吹雪が強く、歩く事すら困難なほどであった。
僕は廊下の窓から外の光景を眺めていると、
向こう側から穂乃果、ことり、園田海未が急ぎ足で向かって来た。
彼女達が横を通り過ぎる時、園田海未と目が合う。すると彼女の足が止まる。
「悠人、まだ学校にいたんですか。外は雪が積もっているので気をつけてくださいね」
彼女はそう言い歩き出そうとした時、僕は彼女の名前を呼ぶ。彼女は驚いたような顔をして再び足を止める。
「・・・頑張ってくださいね」
僕は彼女にそう伝えると彼女は嬉しそうに微笑んで、歩き出した。
さて、僕も始めるか・・・
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