私は父から告げられた驚きの事実に目を大きくして、再び悠人の方を見る。
彼は私の顔を見ると穏やかな笑みとは違う張り付いた笑顔を私に向けた。
「彼と・・・刀を交えた時に身のこなし方に違和感を感じて、重ねていくうちに理解したよ。
村雨・・・我が祖父から一度だけ聞いたことがあった。かつて園田家は宗家と分家に分かれていて、その一つに村雨が」
「曽お祖父様から・・・」
次々と明かされる真実に私は理解するのに精一杯でした。
「何が目的だ、園田悠人・・・ここまでしたんだ。それなりの・・・理由があっての行動だろう・・・」
父が息を切らしながら悠人に目的を聞くと、彼は左手を額に当てて笑い始めた。
「何がおかしいんですか。こんなことをして!」
私は彼の態度に怒りを覚えて、怒気を含んだ声で言い放った。
「そうかそうか、やはりご存知ないんですね・・・先先代当主は伝えなかったんですね。真実を」
「真実?」
私が彼の発言に疑問を感じていると、彼は開口した。
「先ほど当主がおっしゃった通り園田家はかつて宗家と分家に分かれていて、その一つが村雨でした。
村雨は宗家から遠戚だった為、末席の烙印を押されて汚れ仕事を受け持つことになりました」
「汚れ仕事?」
「当時、園田家は有名な家柄で敵も多かったので村雨はそんな輩を排除していた。即ち暗殺です」
「暗・・・殺・・・」
「何・・・」
私と父は彼から打ち明けられた真実にただ動揺するばかりでした。彼は動揺する私達を置いていくように話を続けた。
「そして時代が経つにつれ、園田家の脅威がなくなると今度は園田家の真実が露見しないように村雨を園田が所有していた山の一部に移るように命じた。
こうして私の代まで住み続けました」
彼の発言に頭を抱えていると、私は一つの疑問が浮かんだ。
「あなたのご先祖が山に住んだのなら貴方はどうしてここにいるんですか」
「ここからが本題です。宗家は村雨に山に移るように言った時、一つの約束をしました。山で暮らし、秘密を露見しないこと。
代わりに住処が脅かされることになれば、手を差し伸べると。それなのにもかかわらず・・・全て教えて差し上げます。私の過去を」
彼は拳を強く握りしめて、かつて故郷で起こった出来事を思い出した。
幼い悠人は物陰で両親が誰かと話しているのを見ていて、父はやや強張った表情で対話していた。
話し相手は数日前からよく訪問してくる三人の柄の悪そうな男で、両親にしつこく何かを交渉していて耳を凝らして話を聞く。
「村雨さ〜ん。うちの上がここじゃないとダメって言って聞かないんですよ、だから頼みますよ。
もちろんそれ相応の額を払わさせてもらいます」
「何度言っても無駄です。お金の話じゃないんです。とにかく出て行ってください」
男は腕時計を確認すると、舌打ちをして他の二人を連れて出る。
「村雨さん。諦めませんからね〜」
男はそう言い、立ち去る。
父は罰の悪そうな顔をして母と共に玄関の鍵を閉めて、悠人のところにくる。
「お父様、今の人たちって・・・」
「ああ、悠人の気にすることじゃないよ」
そう言うと、父は先ほどの強張った顔ではなく笑顔で僕の頭を撫でる。
悠人もいつもの父に戻ったのだと安堵した。
その日の夜、悠人は両親が部屋で何かを話しているのを扉に耳を当てて聞いていた。
「宗家に連絡しているが、一向に繋がらない。どうなっている」
「まさか、絶縁されたとか」
「それだと宗家と村雨の契約は・・・今はともかく奴らを追い出していくしかないのか」
「おそらくここ最近、ここらで耳にする事業団体の差し金でしょう。ここの土地が欲しくて私達が邪魔で追い出そうとしているんでしょう」
「なんて横暴な連中だ」
悠人は扉からゆっくり身を剥がして、自室の布団に潜った。
彼は自分の知らないところで何かが動いていることに不安感を感じていた。
眠ろう・・・明日はきっと笑える。
そう言い、彼は目を閉じた。
次の日、悠人は落ち込んでいるであろう両親の為に花を摘んで、それを両手に屋敷まで歩いていた。
すると家の方から多くの人の声が聞こえて胸騒ぎを感じて走り出す。
屋敷に着くと昨日きた男とその仲間であろう数人の男達が手にバットやパイプを持って屋敷の壁や庭を荒らしまわっていて、父は木刀を片手に母もしがみつくようにして男達を止めようと必死に抵抗していた。
「やめろー!」
彼は両手に持っていた花を投げ出し、鉄パイプで縁側を壊していた男の一人の足にしがみつく。
「このガキ!」
男の足振りに悠人は振り下ろされて、地面に倒れる。
「なめてんじゃねえぞ!」
男は懐からナイフを取り出して悠人に突きつけた時、母が男の腕に飛びかかる。
「やめて! この子だけは!」
「うるせえ!!」
男が母を振りほどこうとした時、刃先が何かに刺さる感覚がして妙な静けさが訪れる。
恐る恐る手元を見るとナイフは彼女の腹部を捉えていた。
「お母様!」
悠人は崩れゆく彼女の元に駆ける。別の相手をしていた父もそれに気付いてやってくる。
倒れた彼女は呼吸を荒くして刺し傷から鮮血が流れて地面の草を赤く染める。
刺した男はひどく動揺していて、仲間の一人から罵倒されていた。
「馬鹿野郎! ここに来る前に殺すなって言ったろ!」
「だってよお! あの女がっ!」
「お母様!」
「おい! 目を覚ませ!」
悠人と父が必死に声をかけて、患部を抑えるも出血が止まらず彼女の顔色も悪くなっていく。
「悠人・・・貴方・・・あ・・・い・・・し・・・てる」
途切れ途切れの言葉で二人に言葉を伝え、彼女は動かなくなった。
一瞬の静けさの後、少年の泣き声がその場に響いた。
今回はここまでです。中途半端ですみません!
いつも通り誤字、脱字、その他ご指摘ありましたらご連絡ください!!