大和撫子と復讐の徒   作:蛙先輩

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最近、知ったんですけどラブライブで優木あんじゅ役を務めた大橋歩夕さんがご結婚ご出産なさったそうです。本人に届きませんがおめでとうございます。末長くお幸せに!

それでは20話どうぞ!


20話

僕は重い瞼をゆっくりと開ける。

 

薄い視界が徐々に定まっていき、はっきりと見えるようになり一番最初に見えたのは真っ白な天井で、その次に自分がベットの上で横たわっている事が分かった。

 

手首に違和感を覚えて確認すると、長い管が付いた注射針が刺さっていて、上に伸びる管を目で辿っていくと血液パックに繋がっている。

 

そうか、ここは病院か。彼女との斬り合いでこうなったのか・・・

 

腰を上げて辺りを見渡そうとした時に肋部分に滲むような痛みを感じて、思わず顔を歪ませる。

 

服をめくって患部の確認をすると、丁寧に包帯を巻かれていて、患部を見たときに微かに残る眠気と脱力感を感じながら、彼女と刃を交えた事を思い出す。

 

互いに肋部分を裂いた時、一瞬の事で斬られた事すら気づかず数秒後に体から力が抜けていき、その際に視線を後ろにそらした。

 

彼女も糸の切れた人形のように無気力に前へ傾倒して行く。

 

冬の外気で冷えた土に身を重ねて、僕の意識は途絶えた。

 

記憶を巡ると同時に、大きな溜息をついて、僕は漆黒といっても良いほど黒く塗り潰された自身の心とは正反対な色をした純白の天井を見る。

 

結局、殺めることが出来なかった。

目的にたどり着くときに足元が崩れて奈落に突き落とされた気分だ。

 

這い上がる気力も体力も何一つ僕には無くて、彼女に対する復讐心は最早、微塵も残っていなかった。

 

あの家を壊すために必死に特訓した。 それ以外どうでも良かったのだ。

 

それさえ成す事が出来れば・・・それなのに・・・

 

 

 

 

 

全てが無意味になってしまった・・・

 

恐らくここにいれば退院した後、園田が警察に僕を引き渡すだろう。最期まで園田に僕は

お世話になるのかと考えると嫌気がさしてきた。

 

 

僕は手首に刺さっていた針を抜き取り、近くにあったらティッシュを素早く何枚か取り出して止血した後、近くにあったゴミ箱に捨てた。

 

ベットから体を下ろして、床に置いてあったスリッパに足を入れる。

 

窓を開けると、外は茜色の夕焼けが町の建物を照らしていて陽の当たらない箇所は真っ暗になっていた。今の僕にはそれがμ'sと僕の立場にも見える。

 

病院の下を見ると、かなりの高さだったがいつ看護婦が戻ってきてもおかしく無いので僕は窓から身を乗り出して,窓の横に設置されていた長い雨どいパイプに手を伸ばして,ゆっくりと下に降りる。

 

下には数人、病院から出てきたな人達が家路を急いでいて彼らを警戒しつつ、周りを見ながら下へと体を下ろして行き、ようやく地面についた僕は人目を警戒してゆっくりと病院を抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院を抜け、僕は河川敷を歩いていた。ここに来るまでに色々な所を歩いていたので、スリッパは土や砂で汚れていた。

抜けた最初は人目を警戒していたものの、人が少なくなって行くにつれて、あまり気にしなくなっていた。

 

 

 

 

夕陽が病院で見たときより沈んで、周囲の気温も下がっていて歩き疲れた僕は河川敷の草の生えた坂に腰を下ろして視線の先に流れる大きな川を見る。

 

人の声も聞こえず、耳に入ってくるのは時より吹く風の音くらいでそれ以外は何も無い。

 

川を見ていると故郷での日々が頭をよぎる。

 

よく父と山女魚や岩魚などを捕まえて塩焼きにして食べた事や、夜になるとたくさんの蛍が水面を照らしていた事など昨日のことのように思い出す。

 

 

僕は重い腰を上げ,目の前にある大きな川に目を向けて坂を下りて行く。

 

坂を下りてゆっくりと川に足を近づけ、遂に足首が水に浸かった。

 

その瞬間、履いていたスリッパの隙間に冬の気温で水温の下がった川の水が足を満たして足首の感覚が冷たさから瞬時にして痛みに変わって行く。

 

だが足を止める事なく進んでいき、その間に水が足首から膝元まで達して歩きづらくなる。

 

水の中を進んでいると僕は以前、読んだ小説を思い出す。

その小説の主人公も僕と同じく、人に本音や素顔を隠して知人達と関わっていた。

 

そう言えば、その小説の作者も死因は入水自殺だったな。

 

そんなどうでも良い事を考えながら進んでいると水位が腰まで達していた時、突然足元の感覚がなくなり僕は一瞬して水の中に姿を消した。

 

本能的に少し慌てるが、すぐに冷静になりそのまま水中に体を預ける。

 

僕は水中で仰向けになり、夕陽で薄く茜色の入った水面を見ていた。

 

水面が遠ざかっていき、川底に近付くほどに

徐々に意識が遠のいていると脳裏に父と母との日々を思い出す。

 

父と共に剣道をした事、母と花遊びをした事、晴れた日に庭で三人で昼食と食べた事が

映写機のフィルムのように流れる。

 

ああ、これが走馬灯か・・・

 

そして、その後に父と母の血塗られた姿、

園田を討ち取る事を誓った在りし日の自分、

音ノ木坂学院に入学して園田海未と会った事。

そして、μ'sでの日々・・・最期まで僕の脳裏を離れなかった存在・・・

 

僕は徐々に薄れゆく意識を感じながらゆっくりと目を閉じて、川底に引き寄せられていく。

 

 

目を閉じる寸前、水面に微かに何かの気配を感じたが今の僕にそれを確かめる術はなかった・・・

 

 




今回もありがとうございました!
そして、新たに評価を下さった。
ヨーソローさん、新庄雄太郎さん、ライオギンさん

繰り上げ評価をして下さった黒っぽい猫さん。
その他の多数お気に入り誠にありがとうございます!!!!

そして誤字脱字その他ご指摘ありましたらご連絡ください! それでは!
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