それではどうぞ!!!!
絵里と希がμ'sのみんなに連絡してくれた事により各自、家に帰っている途中だったみんなが悠人を探してくれる事になった。
「私は海未と一緒に悠人を探すわ。希は別の場所をお願い」
「分かった! 見つけたら連絡するわ!」
希は駆け足で人混みの中に消えていき、私と絵里も悠人を探し始める。
目に付いた人達に声をかけて、患者服を着た青年を見ていないか尋ねるも手掛かりは見つからないまま1時間が過ぎようとしていた。
「中々見つからないわね‥‥」
「ええ、一体どこに‥‥」
陽が先ほどより沈んできていて、このままでは後少しで夜になってしまい捜索は困難になり断行せざる得なくなる。
現状に焦りを覚えていると絵里の携帯が鳴って懐から取り出してみると、それは花陽からの着信だった。
「花陽からだわ。出てみる」
絵里が花陽からの着信に出て、会話を始める。彼女の表情はやや険しく何か深刻なことを聞いているようにも思えた。
「ええ、分かったわ。ありがとう花陽」
絵里は電話を切り、口を開いた。
「患者服を着た人がいたそうよ」
「!!」
私は声も上げず、絵里に目で驚きを訴えました。
「場所は‥‥‥ここから少し歩くわね」
「行きましょう」
私と絵里は悠人の目撃情報のあった場所に走りはじめた。
目撃情報のあった近くには公園と河川敷があり陽が沈んできたせいか周りにはほとんど人がいない。
二人で河川敷の近くを探索していると、とあるものが視界に入った。
なんと誰かが川に入っていく姿が目に入り、止めようと声をかけようとした時に私はその人物の正体に気づいた。
私達の探していた人が川の中に入って行っているのです。
「海未、あれって‥‥」
私は一目散に草の生い茂る坂を下りて、背後から呼ぶ絵里の声を振り払うように彼の元へ走る。
何度も彼の名前を呼びかけるも応答は一切なくただ俯いて川の中を進んでいるのです。
すると突然、彼が川の中に吸い込まれるように消えて行きました。恐らく水深の深い所に来てしまい足を踏み外したのでしょう。
私は走る速度は早めて川の前に着く。私は大きく息を吸い込んで川の中に飛び込んだ。
水中は冬の影響か凍えそうなくらい冷たかったが、悠人の命が何より優先のため堪えながら水を掻き分けるように進んでいく。
悠人は私の潜った真下に仰向けで沈んでいて
石のように動かなかった。
そして、彼の背中が川底に着いて砂埃が水中を舞う。
私も川底に着いて、目を瞑った彼の身を抱えて勢いよく川底を蹴って水面に目指して泳ぐ。
この時、私の息は後少しで切れそうになっていて私自身も少し焦っていて、いち早く浮上しなければならなかった。
そして、遂に水面から顔だして空気を多く吸い込んだ。 吸いすぎて少し咳が出た後に川岸を目指して泳ぐ。
「海未! みんなと病院には報告は入れたわ! 」
「ありがとうございます! 絵里!」
ここまで彼には何の変化もなく、恐らく今は呼吸が止まっている状態で川から上がり私と絵里で彼の体を引き上げる。
「海未? 寒くない?」
「いえ大丈夫です」
服はびしょ濡れでしたが寒すぎてむしろあまり寒さを感じなくなりました。
私はすかさず悠人の胸に耳を当てる。数秒間胸に手を当て、
「鼓動が聞こえません」
彼の胸から鼓動が聞こえず、まるで抜け殻のようだった。
」
「私のせいです‥‥‥私がもう少し見つけるのが早ければ‥‥‥」
自分の不甲斐なさに落胆していると、両肩に白くて綺麗な手が乗せられる。
「貴女のせいじゃないわ。 救急車が後少しで来るはずだから私達は出来ることをしましょう」
そう言うと絵里は立ち上がり、私と向かい合わせの所に移動して両手を重ねる。
「私も実践するのは初めてだけど‥‥‥」
悠人の胸の間に手を乗せて、何度も押して胸の手に当てる。
そして、絵里は体内に空気を送るために悠人の口を開けて自分の口を近づけて重ねようとする。不意に心が締め付けられるように苦しくなり、思わず胸元を左手で握る。
今、一刻を争うことだと自分でも十分に分かっている。こうした方が悠人が起きる確率が上がって、私情を挟む場合ではない事も分かっている‥‥‥それでも‥‥何故か心が痛んでしまう。
「まっ、待ってください!!!!」
絵里が驚き、近づけていた唇を止めて私の方を見た。
「ど、どうしたの? 海未?」
「わ、私がします。私が人工呼吸をします!」
私がそう言うと絵里は何かを悟ったかのような表情をしてすぐに妖艶な笑みを浮かべた。
「そうね、そうよねー 分かったわ」
「え、絵里! なんですか! その顔は!」
「いやーなんでも〜」
絵里はそう言いながらその場から離れて私は絵里のいた位置に座り、目先には意識を失っている青年が水浸しで横たわっていて私の横には不敵な笑みを浮かべながら私を見る絵里が立っている。
私は激しい心臓の鼓動を抑えながら、悠人の顔を覗き込む。彼の端正な顔立ちが目に写って更に胸の鼓動が激しくなる。
彼の胸の前で手を重ねて、胸元を何度も押す。
次に体の中に酸素を直接送り込む。つまり彼と私が唇を重ねなければならない。
胸の鼓動を抑えて、ゆっくりと顔を近づける。
そして‥‥‥‥‥
彼と私の唇が重なり、息を送りこんだ。
顔を離した後、初めての感覚に少し動揺して再び胸元を何度も押して、息を流す。
不意に絵里が視界に入った時、先ほどの妖艶な笑みを浮かべていた彼女とは違って林檎のように顔を赤くなっていた。
最初は羞恥心こそありましたが、回数を重ねていくごとにその意識も薄れていきました。
「起きてください。悠人! 起きてください!」
息を強く吹きかけた時に、彼が口から水を吐き出しながら、咳き込む。
「悠人!」
私と絵里が彼の名前を呼んで、彼はうっすら目を開ける。
「絵里先輩‥‥園田海未‥‥何故、ここに」
起きた時に私は安心した感情と同時に彼に対する怒りが湧いてきて彼の頬に平手打ちをする。
彼は驚いたような顔をして、私の顔を見る。
「‥‥‥を‥‥‥て‥‥か‥‥‥何をしてるんですか!!!!!」
私は彼の行動を理解できず、自分から命を捨てるという行動に対して怒りを覚えた。
「何で拾った命をまた捨てるようなことするんですか! なんでこんな愚かな事をするんですか!!!!」
私は悠人の胸を何度も叩く。
「‥‥‥僕は‥‥園田に復讐するために生きてきた。‥‥‥でも今は貴女に対する復讐心なんて微塵も残ってないんです。多分、もう疲れたんだと思います」
彼は私と目を合わさずに光の灯らない瞳でそう呟いた。
「悠人‥‥‥」
悠人の哀愁漂う姿に私は虚無感を感じていると遠くの方から私と絵里を呼ぶ聞き覚えのある馴染みの声が聞こえる。
声の方を振り返るとなんとμ'sのみんなが坂を下りてきていました。
「海未ちゃん! 大丈夫? びしょ濡れじゃん!」
穂乃果が大袈裟に私の状態を心配しつつも、どことなく安心した表情を浮かべる。
「海未ちゃん!」
穂乃果に続いてことりが駆けつけて私の身の回りを心配した。
他のメンバーも下りてきて、絵里と私の元に来る。
「さて、これは一体どういう事や? 悠人君?」
希が細めた目を悠人に向けて、他のメンバーもそれに連なるように悠人の方に目を向ける。
「悠人‥‥‥」
「悠人君‥‥‥」
「彼女が僕の救済処置を阻害したんですよ」
希とは視線を合わさず虚ろな目で返答をする。
「死のうとする事を救済処置って‥‥‥悠人君の昔の事は海未ちゃんのお父さんから聞いたよ。‥‥‥うちからは‥‥‥なんとも言われへん」
希はどうやらお父様から悠人の話を聞いたようで、悲しそうな目で悠人な事を見つめる。
「なら僕の事を止める権利はーー」
「だからね、悠人君に会わせたい人がおるんよ」
悠人が声を少し声を荒げながら話すと希が遮るよう話す。
「会わせたい人?」
「多分、もうそろそろ着くわ」
希がそういうと、坂の上から車のエンジン音が聞こえてきた。
車の方を見ると、車内から見覚えのある3人が出てきて、こちらに向かって下りて来る。
一人はお父様、もう一人はお母様でそして着物を着た白髪の女性が歩いてきた。
「お婆様‥‥‥」
3人が私達の元にやってきて一礼する。
「久しぶりだね。海未」
私の顔を見て、優しく微笑む。
「関西の方で日舞を教えにいっていたと聞きましたがどうしてこちらに‥‥」
「数日前に帰ってきてね、懐かしい友人たちとのお茶会の後に家でのんびりしていたら海未の友達が家を訪ねてきたんだよ」
そう言い、お婆様は横にいた穂乃果の方に目を向けて、穂乃果が頭を下げる。
「怪我の方は大丈夫かい?」
「はい、怪我はなんとか‥‥‥」
「そうかい‥‥‥それで」
お婆様が悠人の方に目を向けて、彼の元に駆け寄る。
「あんたが村雨の子かい?」
悠人がお婆様の目を見て無言で頷く。
「うちの孫とせがれをあんな目に合わせた理由は十分、承知だよ。だからこそあんたには話しておかなければならないね‥‥‥」
「何をですか‥‥‥」
悠人が先ほどと同じ虚ろな瞳をしながら聞く。
「園田が村雨を追放した本当の理由さ‥‥‥」
お婆様がそう言った時、彼の顔色が変わる。
「どういう事ですか‥‥‥」
彼は動揺を交えた声で質問するとお婆さんは一瞬、黙り込み重く閉じていた口を開いた。
「‥‥‥私の父は園田宗家の村雨に対する扱いと強いてきた悪行に大変心を痛めておった。
そして自分が当主になった時に村雨に行なわせてきたことをやめさせ、宗家と対等に扱うようにしようとしていたんだ」
「だが現実はそうは行かなかった。村雨は秘密裏に動いていたが,一部の連中は村雨の存在に気づいていて園田の敵対していた奴らが道場の弟子に紛れて来たこともあって怪我人まで出る事になった。
このような事態が起こり、村雨の存在が脅かされかねないと考えた父は苦渋の末に村雨を敵に悟られぬように所有していた土地に追放して、村雨との関係を切った。痕跡を残せば村雨の存在が露見しかないからね」
「それでは宗家は‥‥」
「村雨を守るために追放したんだよ」
「嘘だ! そんなものは!」
悠人は怒りの混じった声で反論すると,お婆様が再び口を開く。
「嘘と思ってくれて構わない。良かれと思ってした事が後世に最悪な出来事を招いてしまったんだからね」
お婆様がゆっくりと身を屈めて膝を地につけた。
「村雨を守るつもりがお前さんを片田舎に縛り付けて、かけがえの無いものまで失うことになってしまった。全ては真実を伝えなかった私に責任がある。今まで本当に申し訳なかったねぇ‥‥‥」
そう言いお婆様は指を地面につけた後,静かに額を地面につける。
「なんですか‥‥‥それ」
悠人は膝から崩れ落ちて俯く。
「悠人‥‥‥」
突きつけられた真実に落胆する彼を私は胸元を強く握りながら彼を見つめていた。μ'sのみんなも同じく黙り込んでいた。
「僕は‥‥ただ父と母といたかっただけなのに‥‥‥それだけで良かった‥‥‥なんで僕だけ‥‥‥」
彼は蚊の鳴くような声で呟いた後、伏せた顔から雫が落ちたのが見えた。
「父様‥‥母様‥‥一人にしないで‥‥‥」
私は自分を抑えきれず今にも崩れ落ちそうな彼を元にゆっくりと歩き出し、そっと抱きしめた。
「えっ?」
突然の出来事に驚いた彼に私は心に秘めた言葉を喉の奥から引き出す。
「私達がいます。私がずっとそばに居ます。
貴方をもう一人にはしません‥‥‥」
私は目に溜まっていた涙を流しながら彼の背中をさする。
私の耳元で彼のすすり泣く声がいつまでも聞こえた。
いかがだったでしょうか!
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