今回はμ'sとの対面です。
それでは!
理事長室を去った後、僕は海未に連れられて
屋上に向かっていた。
おそらく、彼女達と対面させようとしているのであろう。予選決勝の後の件といい入水自殺の件といい彼女達には迷惑をかけて正直、合わせる顔がない。
すると、園田海未は僕の顔を横目で見た後に立ち止まると、口を開いた。
「大丈夫です。みんな事情が理解していますし会いたいと言ったのは彼女達ですから」
園田海未がそう言って、優しく微笑む。
僕は無言で頷いて、そのまま階段を登る。
見覚えるのある鉄の扉が見えて、近づいていく事に聞き覚えのある声が聞こえて来る。
そして、海未がドアノブを回して開いたドアの隙間から彼女達の姿が視界に入っていき、向こうも扉の開閉音に気付いて視線をこちらに向ける。
「みんな、お待たせしてすみません」
彼女に連れられて屋上に床に足に踏み入れる。
僕の姿を確認した途端、僅かな沈黙がその場に流れる。当然といえば当然か‥‥‥
「悠人君」
穂乃果が僕の名前を呟くと、顔を伏せて駆け足で僕の元に来る。
目の前まで迫った時、右手を勢いよく僕の右頬に当てて振り切る。
彼女の平手打ちに周囲のみんなも驚いて目を丸くしていていた。
「穂乃果!」
海未が彼女の元に駆け寄ろうとした時、穂乃果から微かに声が聞こえた。
「‥‥‥ないで‥‥‥二度とあんな真似しないで!!!!」
穂乃果は涙を流しながら僕に激昂し、海未のそんな彼女の姿を見て思わず立ち止まる。
「なんで死のうとするの! 辛い事あったかも知れないけどあんな事しちゃダメだよ!!
確かに屋上の事で会うことが少なくなったけど穂乃果は考えてたんだよ! どうやったら前みたいになれるかなって? 私達の事好きになってもらえるかなって‥‥‥でも死んじゃったら意味ないよ‥‥‥」
彼女は綺麗な青い目から大粒の涙をボロボロと流しながら、何度も僕の胸を叩く。まるで僕の胸にある罪悪感を奮い立たすように
「穂乃果‥‥‥すみませんでした」
刺激された罪悪感に勝てず、心の底から謝罪する。
「本当に反省してる?」
不安げに聞く彼女に優しく笑みを浮かべて無言で頷くと穂乃果は拳で涙を拭いて、いつもの太陽のような暖かな笑顔を僕に向けた。
「皆さんもご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
残るμ'sメンバー7人の方に頭を下げる。
「頭上げなさい」
にこ先輩が許しを得て、頭をあげる。にこ先輩が腕組みをしながら鋭い目付きで僕の方を見ていた。
「言っとくけど私はアンタが前にここで言ったこと許してないから」
「にこ!」
「にこっち!」
「にこちゃん!」
「何よ! 理由はどうあれ好きなものを馬鹿にされたのよ! 怒るのは当然でしょ!」
にこ先輩に反感を抱いた他のメンバーが彼女に噛み付くが彼女の発言に負かされ,黙り込む。
「にこ先輩の言う通りです。理由はどうであれ僕はみんなの好きなものを‥‥大切な物を侮辱しました。それに変わりはありません。 これも因果応報‥‥罰を受ける覚悟も出来ています‥‥」
「悠人君‥‥‥」
希先輩が心配そうに僕の方を見る。
「だからこれからはみんなを心配させた分,μ'sに尽くしなさい! もちろん私には特にね! ふんっ!」
にこ先輩はそう言うと腕を組んだそっぽを向く。
「にこ先輩‥‥‥承りました」
僕はにこ先輩に向かって頭を下げる。小柄な彼女の体をいつもより大きくたくましく見えた。
「にこちゃん‥‥‥」
μ'sメンバーがにこ先輩に暖かな目を向けると、にこ先輩は顔を赤くする。
「そっ、それと!」
にこ先輩が再び、僕の方を向いて息を大きく吸って開口する。
「分家と宗家って何よ」
「にこちゃん‥‥‥」
「にこっち、分からんと海未ちゃんのお父さんの話聞いてたん‥‥‥」
先程の暖かな目とは違い、どこか冷めた目線がにこ先輩に向けられる。
「仕方ないでしょ! あの時雰囲気暗かったし聞ける状況じゃなかったじゃない!!!!
凛や穂乃果だって理解出来ない顔してたじゃない!」
にこ先輩が二人の名前も出すと、二人をしらを切るが明らかに動揺している。
二人にも動揺,μ'sメンバーの冷えた視線が向けられる。
「まっ‥‥まぁ一応説明しますね。宗家というのは基本は長男が当主を務める家で分家はその下の兄弟達,親族が当主と言う事です。宗家は分家に支援するかわりに分家は宗家に尽くす。まぁこの制度もあくまで戦前まであったものですからご存知ないのも無理はありません」
「予想していた通りね! 要は親戚ってことでしょ」
「そうですね」
にこ先輩が腕を組んで自信満々に答えるも冷えた視線が止むことはなかった。
「しかし、海未ちゃんと悠人君が親戚だなんて驚きだにゃー」
「かなり遠いですけどね」
苦笑いを浮かべながら僕の周りを猫のように回る凛の問いに答える。
「あっ、穂乃果ちゃん。悠人君に聞きたいと事あったんちゃう?」
「あっ、そうだった。悠人君」
「何ですか?」
不意に落ち着いた口調で呼ぶ彼女に驚きつつも目を向ける。
「前にうちのお店来た時にうちの饅頭食べた時‥‥‥なんで泣いてたの?」
周りの視線がこちらに向いて僕はいきなりの質問に少し驚いていると、彼女は何かを察したのか慌て始める。
「あっ、答えたくなかったら答えなくていいんだよ!ただ少し気になったから‥‥‥」
そういい眉をハの字して後頭部を掻きながら
苦笑いをする。
「‥‥似ていたんです‥‥‥母が作ってくれた和菓子の味に‥‥‥食べた時に少しそれを思い出して‥‥過去に浸ってしまいました。
もう二度と味わえないと思ってたから‥‥」
「悠人君‥‥‥」
「穂乃果‥‥また行ってもいいですか?」
僕は不安を抱えながら、喉の奥から声を掻き出す。
「うん! 」
穂乃果は再び、僕に太陽に勝るとも劣らない笑顔を僕に向ける。彼女には敵わないとつくづく思う。
その後、僕は彼女達に見送られて屋上を去り、家路に着いた。彼女達を支えるにはまず2週間の停学期間と課題を乗り越えなければならない。
今度は心から彼女達を支えようと窓の外で輝く月に誓った‥‥‥
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