μ'sの九人と部室で椅子に座り、今朝のテレビニュースの件について話していた。
その議題とは「逢崎会」会長 逢崎宗次郎氏が殺害されたと言う事。
「「逢崎」って昨日、ラブライブ 始まる前に舞台の前で話してた人だよね」
「うん、でもなんでいきなり‥‥」
穂乃果とことりが眉間にしわを寄せながら真相について考えていた。無理もない、昨日目にした人間が亡くなったと聞けば誰もがこういう反応になる。
かなり有名な家柄の人間が亡くなった事もあり、ネットでもその話題で持ちきりとなっていた。昨日直接会って話した僕と真姫、海未は驚きを隠せずにいた。
「殺害のされ方も刃物で喉を刺すってこれまた酷いやり方よね‥‥確か‥‥息子さんいたわよね。気の毒ね‥‥」
真姫が伏し目がちに息子の事を気にかける口振りで話していた。
「部屋以外、荒らされてた形跡がなくて犯人もまだ捕まってないらしいわね。恐らく犯人は「逢崎会」に恨みを持っていた者による犯行だってニュースでもやってたわ」
「日本の教育に影響を与え、非行に走る少年少女の教育‥‥こんな善良な人が殺されていい理由なんて‥‥」
部室内が暗い雰囲気に包まれる中、一人の少女が椅子から立ち上がり、手を叩いた。
「さぁ! 暗い話はこれで終わりっ! せっかくみんな集まったんだから屋上に行こーよ」
穂乃果が曇天に光を差すようにその言葉でみんなの表情にも笑みが戻る。
その後、僕達は穂乃果の言葉もあり、屋上に行き、ラブライブ で踊っていなかった曲のパフォーマンス練習をしていた。
学校が終わり、僕はそのままスーパーに寄って、夕飯の献立を考えながらカゴに商品を入れていく。
野菜やら魚やら色々なものをカゴに入れてレジで会計を済ませて店を後にした。
辺りはすっかり暗くなっていて、街灯の光が一定の間隔で夜道を照らし光の周りに蛾や他の小さな虫が集まっていた。
遠くの方に目を向けると小柄な少女らしき人物が両手に大きな袋を一つずつ持って歩いていた。
頭部を見て特徴的なツインテールが目に入り、自分の知り合いだと認識した。
「にこ先輩‥‥下の子達の為に毎日、大変だな‥‥‥」
片方の手が空いている僕は彼女を手伝おうと駆け足で向かっていると、突如彼女が消えた。
いや、正確には何者かに連れて行かれるようにして消えた。
「にこ先輩!!!!」
僕は手に持っていた買い物袋を道に捨て、一目散に走る。
乱暴に連れて行かれたのか、彼女のいたところに買い物袋が二つ地面に落ちている。
連れて行かれた方面の見ると路地裏があり、足を速める。すると路地裏の奥から抵抗するようなにこ先輩の呻き声が聞こえる。
声のする方に向かうと、にこ先輩が壁に体を押し当てられて口を塞がれている状態だった。
押し当てている人物の姿は異様なものだった。背丈は僕と同じくらいだが顔に黒い面を被り、全身黒いマントのようなもので纏っていたのだ。
抑えている左手にはハンカチのような布を持っていて、睡眠薬が染み込んでいるのかにこ先輩の目が虚になっていく。
「彼女から手を離せ‥‥でなければ容赦しない‥‥」
僕はあからさまに怒りを露わにして、園田流の構えをとる。
相手は右手から空いている右を懐から入れて、十センチ程の黒い棒を取り出す。
それを力強く下に降り下げるとなんと長い刃が出てきた。まるで刀そのものだ。
相手は矢澤先輩から手を離すと、両手で構える。 手を離したことで矢澤先輩は壁にもたれながら無気力に倒れていく。
突然、相手は僕に刀を斜めに振りかざして、咄嗟に後ろに下がる。
その後、下から切り上げて、逆の方に体を避けて刀との接触を避けていく。
ふと下に目をやると鉄パイプが落ちていてそれを拾い、水平にして刀から身を防ごうとしたものの刀の鋭利さが勝りパイプが真っ二つになる。あと少し、体がパイプに近ければ斬られていた。
相手が次の段階の為に大きく刀を振り上げた隙を狙い、溝うちに自分の手根部を強く当てる。
相手は応えたのか、刀を落として溝うちを抑えて後ずさりをして僕の方を見る。
「まだやりますか‥‥」
僕が再度構えをとると、襲うことなくそのまま更に奥の方へ走っていった。
「ふう‥‥‥なんとか退けたな‥‥」
相手の逃亡を確認してにこ先輩の元に向かい、胸に耳を当て鼓動を確認する。
「眠らされてるだけか‥‥」
にこ先輩を背負い、元来た場所に移動して落とした買い物袋を利き手の右手に二つ左手に一つ持って彼女の住む団地に向かった。
エレベーターに乗り、彼女の住む階に着いて部屋のインターホンを押す。
「は〜い」
部屋の中から声がして足音が近づいてくる。
鍵を解除して開閉音とともに、隙間から小さな少女が顔を覗かせる。
「あっ、悠人さん! っと‥‥お姉様! どうしたんですか!」
「やぁ、こころちゃん。にこ先輩疲れちゃったみたいで買い物帰りに息抜きのつもりが眠っちゃったみたいで」
僕は道中で考えていた家族へのその場しのぎの嘘をこころちゃんについた。
「そうでしたか。お姉様ったら‥‥とりあえず中にお入りください」
「ああ、お邪魔します」
僕は玄関に入り、買い物袋を置いてから彼女をリビングに向かう。
リビングにはここあちゃんと虎太郎君がいて、僕の方に近づいてきた。
こころちゃんが二人に向かって口元に人差し指を当てて静かにするように言い、布団を引いて彼女を横に寝かせる。
「これで良いかな‥‥」
玄関付近に置いた買い物袋に目を向ける。
「買い物してたって‥‥事はまだこの子達の食事がまだか‥‥」
六つのつぶらな瞳が僕の目に向けられる。
「良かったら‥‥作りましょうか?」
三人は勢いよく、首を振った。
「「「ご馳走様でした!」」」
「はい、お粗末様でした」
三人の幼子の感謝の言葉を受けて、笑顔を応えるとリビングの方から声が聞こえた。
「んっ‥‥ここは?」
「にこ先輩、おはようございます。先輩の家ですよ」
すると彼女は意識がはっきりしていくのと同時に僕に掴みかかった。
「あいつは! 私を捕まっ--」
「奴は僕が追い払いました。そして僕が眠っていた先輩をここまで運んできました。それから下の子達には一応嘘を言っておきました。真実を伝えればきっと怖がってしまいますからね‥‥」
にこ先輩を口を塞ぎ、耳元で話す。
「そうね‥‥分かったわ」
彼女から離れて、三人の幼子の方を見る。三人とも不思議そうな表情でこちらを見ていた。
「お姉さん。もう大丈夫ですよ」
そういうと、三人が一斉ににこ先輩の元に向かう。
「こころ、ここあ、虎太郎。心配かけたわね。お姉ちゃんもう大丈夫だから」
にこ先輩は三人を優しく抱きしめると、僕の方に目を向ける。
「あんたもありがとうね‥‥」
僕にそう言って、優しく微笑んだ。
その後、にこ先輩と食器を洗い終わった後、僕は自分の買い物袋を手にして四人に見送られながら部屋を去った。
僕は帰りの夜道ににこ先輩を襲った面を被った人物を思い出していた。
(奴は何故、にこ先輩を襲ったんだ。度が過ぎたファンか? いやなら何故刀を‥‥脅すなら安易に用意できる包丁やカッターで問題ないはず‥‥奴は一体‥‥)
胸の中に漠然と残る巨大な疑問と不安感を抱えながら僕は家路を急いだ。
黒絵の具さん、神崎龍斗さん
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