大和撫子と復讐の徒   作:蛙先輩

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前話から期間が空いてしまいしました。申し訳ありません。29話です!どうぞ!


29話

29話

 

 午前の授業が終わり、昼休みの教室で僕と海未、穂乃果、ことり含む二年生は教室の黒板より左上に設置されているテレビに釘付けになっていた。理由は一つ、逢崎宗次郎亡き後の「逢崎会」の新会長に息子である逢崎蓮氏の就任発表会が生放送で配信されているからである。

 

「ご両親の葬儀の後に就任式とは随分多忙ですね。心の整理する余裕すら与えられないなんて‥‥」

「全くですね‥‥」

 海未と僕は彼の身の出来事を哀れに想っていると途中で生放送の画面が右端に小さくなっていき、スタジオの司会者とコメンテーター達のトークが行われている。

 

「お父上が亡くなったとはいえ、十七歳の青年を会長に就任されるのは無理があるのでは?」

「そこは団体に所属していた方々も協力して活動していくでしょう」

 白髪の頭に顔に丸眼鏡をつけた年配の男性が右隣の席の四十代前半の女性との会話に他のコメンテーターも同意するかのように頷く。

 すると司会者が後ろに設置されているモニターを左手で触れると、『逢崎会』の 類い稀なる善業が映し出される。そこには海未が以前、逢崎会長本人の前でも話した行いの数々だった。

 

「『逢崎会』の行なって来たもので特に高く評価されていることがこちらです」 

 

 司会者が再びモニターを左手でタッチするとそこには何やら白い建物が映し出されている。

「これは十年前ほど前から逢崎宗次郎氏が考案した『非行少年少女更生プロジェクト』に使用されている施設で、『箱庭』と言われています。全国から非行に走った十二歳から十八歳の少年少女を対象にこの施設で更生のためのカリキュラムが施されるそうです。これまで多くの少年少女がこの施設に送られて、何百人と更生して家族の元に帰って来たと言います。例えば」

 

司会者がモニターをスライドして別の画面に映り、そこには更生した子達の例が並べられていて司会者が一例をピックアップする。

「Aさんの場合、かつて学校ではいじめや教師への暴力、家庭内でもご両親に手を挙げ、外では暴力事件を起こすなどしていましたが『箱庭』から帰って来たことには他者に温厚になり、何事にも真面目に取り組むなど、以前とは比べようがないほど更生したようです」

 

 司会者がモニターに手を向け、コメンテーター達に語りかけていると、司会者が左耳に手を当てる。

「現場から動きがあったそうなので会場に切り替えます」

 

 テレビ場面はスタジオから就任発表会場に切り替わり、 舞台の周りには多くの記者やカメラマンが舞台の下で彼が来るのを今か今かと待っているのがテレビ越しで映る。

舞台の上に司会担当を務めるであろう眼鏡をかけた、中年の男性がマイクで口元に近づける。

 

「えー、ただいま「逢崎会」新会長 逢崎蓮氏が舞台に上がられます。それではどうぞ‥‥」

舞台裏のカーテンから紺色のスーツ姿をした端正な顔立ちの青年が、姿を現してカメラのシャッターの音や設置ライトを浴びながらマイクスタンドの前に立つ。

 

「皆様、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。この度『逢崎会』新会長に就任いたしました。逢崎蓮と申します。父の死からあまり時間は経過していませんが、このように公の場で皆様に見守られながら会長の座につけることを心より嬉しく思います。本日、皆様にお集まりいただいたのはこれからの『逢崎会』の方針と『非行少年少女更生プロジェクト』についてお話させていただきます」

 

 彼はそう言い、首を下に向けて軽く息を吐いた後、ゆっくりと正面を向く。その時、一瞬だったが僕には彼の左の口角が僅かに上がったように見えて、僕は背筋に少し寒気を感じた。

 

「『逢崎会は』以前と同じく教育問題に携わり、一つでも多く解決に尽力していきたいと思います。そして‥‥‥『非行少年少女更生プロジェクト』のついてですがその前に一つ‥‥‥皆様、スクールアイドルとはご存知でしょうか?」

 

 彼の唐突の発言に現場の記者や液晶画面越しにいる僕達も首を傾けて眉間にシワを寄せる。

 

「スクールアイドル。近年、高校生の間で話題となっていて現在その人気は凄まじく、人気のグループの学校に入学希望者が続出するほどです。さらにはスクールアイドルの全国大会『ラブライブ』ここから実力を見出されプロのアイドルを目指す方もいると聞きます。前会長である私の父、逢崎宗次郎は『ラブライブ』及びスクールアイドルを支援していました。ですがこれによってあることが起こっているのです」

 

「ある事?」

 ことりが生唾を飲んでテレビに釘付けになる。

 

 

「学校内でのいじめ、格差問題です」

 僕は驚きのあまりに目を大きく見開いて、液晶画面の向こうも会場が一気にざわついてカメラのシャッターの音が一層激しくなる。

 

「スクールアイドルというものが出てから学校での問題も目立ち始めて来ました。入学希望者増加に貢献したスクールアイドルをしているものが他の生徒を罵倒する、また別の例としてスクールアイドルをしていじめに遭うなど、報告されています。ですが世間はスクールアイドルというものをプラス的に考えるのもそうですが、世に溢れるいじめ問題などでそういった件がもみ消されていったのも事実‥‥‥このような事態、会長として見過ごすわけにはいきません。この場で宣言します‥‥‥全国のスクールアイドルを『非行少年少女更生プロジェクト』の対象とします。及び、スクールアイドル活動の全面停止!!! 」

 

 会場では記者達が一斉に立ち上がり、彼に質問を投げかけるが彼は黙って正面を向いていた。教室内が一段と騒がしくなった。

 

「こんなのおかしいよ! 穂乃果達そんなことしてないもん!」

 穂乃果が椅子が倒れんばかりの勢いで立ち上がり、怒りを露わにして液晶画面の向こう側の彼に問いかける。

 

「そうだ! 発言を撤廃しろー!」

 教室にいたクラスメイトの数人もテレビに叫ぶ。

 

「穂乃果ちゃん‥‥‥」

 

「穂乃果」

 僕と海未、ことりは普段、温厚なはずの彼女から発せられた怒りの声に狼狽えていた。

 

「では会長はいつからそれを実行するおつもりですか!!」

一人の記者の怒号にも近い声で会場と教室が静まり返った。

 

「それは‥‥‥無論、本日です」

 彼は笑みを浮かべてそう答えた時、運動場側の窓硝子に気配を感じた。

 

「伏せろ!!!」

 

 僕が叫んだ瞬間、窓ガラスが一気に割れ始めて、少し遅れて教室にクラスメイトの悲鳴が響き渡り、割れた窓からカーテンに隠れて複数の何者かが入っていた。

 カーテンから見せた存在の恰好を見て、一気に体に力が入る。以前、にこ先輩を誘拐しようとした奴らの姿と同じだからだ。

 

 一瞬の出来事だった。黒いマントの一つがことりの胸ぐらを掴んで、抵抗ことりに意にも返さず再び、窓側に走り出す。

「ことり!」

 僕は彼女を助けようと走り出そうとした時、黒マントが窓から飛び降りた。

 

「穂乃果ちゃん! 海未ちゃん! 悠人くん!」

 彼女の断末魔に似た助けを求める声が下から聞こえる。

 

 すかさず、穂乃果の方に目を向けるとぐったりとした体勢の穂乃果が黒マントの肩に担がれて、運び出されようとしていた。その後ろで海未が黒いマントと激しい格闘戦を繰り広げていた。

 

「穂乃果!」

 彼女の元に向かおうとした時、目の前に二人の黒いマントが壁となり、懐の中から以前と同じく10センチほどの黒い棒を出して下に強く降る。案の定、黒くて長さは1メートル程で刃も峰も同一の黒一色でそれ見た生徒達の悲鳴がさらに現場を緊迫にさせる。他の生徒達のほとんどは廊下から教室を見ていて、数人は教室のすみで怯えている状況だった。

 

「邪魔だ!!」

 斬りかかって来た一人の刃を左に避けて右手の発勁を溝に打ち込み、怯んだ隙に刀を奪い取り後ろに下がる。

 下がった時に後ろを確認するとそこにはもう穂乃果の姿はなかった。自分の不甲斐なさに怒りを感じていると不意に追い詰められている海未の姿が目に入る。相手は既に刀を取り出していて彼女は回避する他なかった。

 

(くそっ! せめて彼女だけでも!)

 その時、黒いマントの一人が刀を水平に振ってきたので僕は体勢を低くして持ち手を変えて峰で相手の右肘を弾くように当てる。

 

 黒いマントは肘を抑えて手から刀が滑り落ちた。

「海未!」

 海未が僕の声に気づくとすかさず剣を彼女に投げ渡す。彼女は相手との距離を少し空けて、机の上を踏み台にして刀を受け取ると、横に一回転して僕の真横に着地した。

「ありがとうございます。悠人」

「ええ」

 僕と海未が刀を構えると、突然ブザーのような音が聞こえる。音の方を確認すると黒いマントの一人からだった。

「‥‥‥時間だ‥‥」

 一人がそう呟くと残りの黒いマント達も一斉に窓側に走っていき、僕と海未は奴らを追いかけようとした走り出す。窓側に着くと先ほどの黒いマントの三人が校門を出てすぐの位置にいた。

「海未、ここで待っていてください」

「ですが悠人!」

 僕は彼女の言葉に聞く耳を持たず刀を教室の床に置き、窓から飛び降りて着地する。着地時に走る足の痺れをこらえながら連中を追う。運動場を抜け、校門を出てすぐにあるの長い階段から下を見た時、目に入った光景に唖然とした。

 階段の下には知らぬ間に黒い中型トラックがグラウンドの真ん中にあり、その荷台には穂乃果、ことり、凛、花陽、真姫、絵里先輩、希先輩、にこ先輩が乱雑に乗せられていた。状態から見るに眠らされている様子だった。そして黒いマントを纏った二人が荷台に大きな布をかけた。

 

「待てっ!!!」

 僕は階段を駆け下りていくと黒いマントの二人は二台の中に入り込み、トラックはエンジンをふかしてゆっくりと走り出す。下に着くとトラックは先ほどより勢いを増して、距離が離れていく。

 

「みんな!!」

 僕は走りながらみんなを呼ぶも、叫び声を置いてくようにトラックは無慈悲に距離を離していく。そして着地時の痺れが再度蘇ってその場で倒れた。硬いアスファルトの顎を置いて、低い視点からトラックが角を曲がって見えなくなるのを僕は自責の念に駆られながら静かには見ていた。




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