大和撫子と復讐の徒   作:蛙先輩

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一人称、三人称混ざるあたり自身の無能さを痛感します。がんばルビィ! すみません、それではどうぞ


30話

 黒マントの襲撃からしばらく時間が経った。僕は今、保健室で丸椅子に座り、先生に窓から飛び降りて着地の際に負傷した足首を見てもらっている。僕の隣の丸椅子から海未が心配そうな趣で僕の足首を見つめていた。

 

「少し痛みますよ」

 先生は救急箱から湿布と包帯を取り出して湿布を貼った後、慣れた手さばきで包帯を足首に巻いた。

「これでよしっ、しかし君も無茶をするね。教室から下に飛び降りるなんて」

「本当です! 全く貴方は!」

 先生が困り眉を浮かべて苦笑する先生とは別に、海未からは叱咤を受けるが彼女の声はどこか震えているようにも聞こえた。きっと本気で心配してくれたんだろう。

 

「すみません‥‥‥」

 僕は海未に頭を下げると、少ししてから頭の先でため息がした。

 

 手当てが終わり、海未と保健室の扉を閉めて廊下を改めて見ると、その凄惨な光景に思わずため息が出る。窓硝子が所々割られていて、床に落ちた硝子の破片を数人の女生徒達が切磋琢磨に箒とちりとりで掃除していた。

 そしてその後に気づいたのが妙に正門前が騒がしいことである。窓枠に近づいて正門前に目を凝らすと、カメラやその他の機材を持った複数の人たちが野次馬のように押し寄せている、おそらくマスコミである。閉じた正門から僕達の担任教員や他の教員達が見ている限り帰るように言っている。

 

「スクールアイドル達が襲撃されたから‥‥‥」

 

「ええ‥‥‥」

 正門前から硝子の破片を処理する女生徒達の方に目を向けると、一時間前の事が脳裏に浮かぶ。教室の廊下で怯えるクラスメイト、救いを求めることり、穂乃果、μ’sのみんな。特にことりの声が今も頭から離れない。彼女達の事を思うと拳を強く握りしめ、自身の無力さを呪おうとした時ーー

 

「悠人」

 隣から聞き慣れた声がして横を向くと海未がその場に立ち止まり、何か決心を滲ませた鋭い目で僕の事を見ていた。

「貴方のせいではありません。あの奇襲は誰もが予想できなかった事です。未曾有の事態に誰もが困惑している‥‥‥私達もその一人なんです。起こってしまったことは仕方ありません」

 

 彼女の強く、どこか優しい言葉に僕は胸の中に強く響いた。

 

「さあ、教室に向かいましょう。私たちにも出来ることがあるはずです」

階段を登って僕達の教室前に着くとやはり、僕達の教室の中と廊下をクラスメイト達が割れた硝子の破片などを箒でかき集めて捨てていた。

 

クラスメイト達が僕達が戻ってくるのに気がつくと、何人かのクラスメイトが駆け寄って足の具合を尋ねてきた。僕が手当てを受けたので問題ないと答えると安堵したが、瞬時に険しい顔になり、クラスメイトの一人が懐から携帯を取り出し、僕と海未の前に表示画面を見せた。

「これは‥‥‥」

 海未が目を大きく目を見開いて小さな液晶画面に映る、漠然とした現実にもはや言葉も出ないという様子だった。そこに移っていたのは『ラブライブ』公式ホームページだが、そこから関東地区のスクールアイドル『A-RISE』『Mutant Girls』『Midnight Cats』『Yeast Heart』その他のアイドルグループの名前が消えていたのだ。

 

「名前が消えているってことは‥‥‥」

「おそらく捕まってしまったということでしょう‥‥‥」

「でもこれを見て」

 そう言いクラスメイトの女生徒が画面を再び、指で下になぞるとそこには『μ’s』の名前があった。

 

「おそらくまだ海未が捕まっていないことが原因でしょうね」

 僕はそういうと海未とクラスメイトは納得したように頷く。

 

「お前ら、掃除は捗っているのか?」

 声のする方を見ると、担任の女性教員が廊下の奥からこちらに歩いてきた。

「先生、マスコミの人達は?」

 

「ああ、しつこくしたら警察呼ぶぞっつったら蜘蛛の子散らすようにどっかいっちまったよ、それで」

 海未の質問に答えると、女性教員は僕の足首に目を向ける。

 

「村雨、足の方は大丈夫なのか?」

 女性教員は顎で僕の足首を指した。

 

「ええ、まあそれよりこの惨状は‥‥‥」

 僕が改めて廊下や周囲の校内を目視すると、クラスメイト達も釣られるように周りを見る。辺りは相変わらず割れた硝子の破片が散らばって割れて常に通風状態のままで時より風が舞い込んできた。

 

「このことに関しては南理事長も逢崎会長に進言するつもりらしい。何せ自分の娘も連れて行かれたんだしな‥‥‥」

 

「ことり‥‥‥」

 海未を含めたその場にいたクラスメイト達がことりやμ’sのみんなの事を思いだして、その場で目を伏せていると、手を叩くような音がする。

 

「とりあえずホームルームだ。教室に戻れ」

 女性教員が手を叩いた後のような状態で手を下ろして教室に入っていき、それに続いて僕達も入室した。

 

 

 

 

 

 ホームルームが終わり、教室の生徒達が足音を立てて教室を出ていく。女性教員が園田海未に対して身の回りに気をつけるように言うと、そのまま教室を去っていった。今回の件は各学校の教員達も困惑するばかりである。海未に声をかけられ僕も席を立って、スクールバッグを肩にかけて教室を出る。

 校舎の玄関を出ると、女性教員の言った通り既にマスコミ連中の姿はそこにはなかった。

 

 すると携帯の着信音が鳴り、海未が自分のスクールバックを漁り携帯を取り出して着信に出る。何やら真剣な趣で話していて、電話を切るとこちらに顔を向ける。

「父が階段の下に車で待っているらしくて何やら悠人にも話があるようで来るようにと‥‥‥」

 

「分かりました」

 階段を降りていくと海未の言った通り、一台の黒い車が車道の脇に停車していて車のすぐ横の歩道に当主が立っていた。

 

「お父様」

 海未はそういうと実父の方に駆け寄ると、当主はそっと抱きしめる。

「よく無事だった‥‥‥」

 当主は娘を胸に抱きながら肩を震わせて、希望を必死に離さぬように強く抱きしめていた。

 

 車に乗って海未は助手席に座り、僕は後部座席の真ん中から運転中の当主に一つの疑問を問いかける。

「何故、僕も同伴なんですか?」

「実は今、家に人が来ていてな、初めは追い返そうとしたんだがどうしても二人に伝えたいことがあると言ってな‥‥‥」

 

「僕に?」

「まあ、着いて話せばわかるさ」

 数分後、車は園田宅に着いて、車から降りる。

 

 

「マスコミはいないんですね‥‥‥」

「さっきまでいたが、追い返したよ‥‥‥全く騒々しいったらありゃせん」

 当主は胸の前で腕を組み、憤りを感じていた。

 

 玄関の戸を開けて、長い木製の廊下を進んでいくと障子が貼られた戸が見えて、当主が横に引く。

部屋は畳敷きで中央に木製の大きな机がありその近くに座布団で正座するスーツ姿の男性が座っていた。僕は彼の姿を見た時、思い出した。ラブライブ決勝戦の後、彼女達の待機室に向かう時、廊下でぶつかった男性だ。

 男性は僕達の姿を確認するとその場で立ち上がり、当主に一礼したあと僕らの方に向き替える。

 

「初めまして、園田海未さん、村雨悠人さん。フリーライターの真鍋洋一と申します」

 そう言い、爽やかな笑みを浮かべた後、僕達に頭を下げた。

 




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